SDGsに貢献する仕事

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ヤマハ〈後編〉楽器と木の結びつき、伝えて、育てる【SDGsに貢献する仕事】

2024年06月12日

 SDGs(持続可能な開発目標)関連の業務に携わっている若手・中堅社員に直撃インタビューする「SDGsに貢献する仕事」の第16回、楽器・音響機器の製造・販売から音楽教室、音楽出版まで音・音楽に関する事業をグローバルに展開するヤマハの後編をお届けします。楽器と木との結びつきは意外と知られていませんが、ヤマハは「木育」を通して木の大切さを啓発し、育成活動にも取り組んでいます。インタビューに登場したお二人ともグローバルで働きたいという夢を抱いてヤマハに入社、その願いをかなえ、さらに社会への貢献ができるというところにやりがいを感じています。(編集長・福井洋平)
前編はこちらから

【お話をうかがった社員のプロフィル】
●楽器・音響営業本部 AP営業統括部音楽普及グループ 渡辺一樹(わたなべ・かずき)さん 
2021年早稲田大学政治経済学部卒業、同年ヤマハ入社。同年8月から銀座店で店舗研修をうけ、2022年2月から現職。

●ブランド戦略本部 コーポレート・マーケティング部 ブランドプロモーショングループ 海外遥香(かいがい・はるか)さん 
2017年神戸市外国語大学外国語学部卒業、同年ヤマハ入社。同年7月に生産部門の材料調達グループに配属され、ピアノなどに使われる木材の調達などを担当。2022年7月から現職。

カスタネットづくりで楽器と木のつながりを伝える

■海外さんと「おとの森プロジェクト」
 ──海外さんは楽器につかう木を生み出す森づくりを支援する「おとの森プロジェクト」に関わられているとのことですが、具体的にはどういう仕事を担当していますか。
 海外遥香さん プロジェクトの発信を担当しています。プロジェクトには3つの柱がありまして、1つ目が森づくり、2つ目が楽器をつくるときに使われなかった部分の材料の有効活用、3つ目が木についての教育=木育の発信面です。私は3つ目の木育を担当しています。森づくりや材料開発は長い目で見る必要がありますが、前提として木と楽器のつながりが見えてこないと多くの人に共感してもらえません。そのため木と楽器のつながりを伝えたり、木と音楽を通して森のことを主体的に考えられたりする人を増やしていくところを担当しています。
 ──木育の対象はどういった人ですか。
 海外 幅広く、子どもから大人までです。活動を知ってもらうために、ワークショップで楽器の未利用材を使ったカスタネットをつくっています(写真)。このカスタネットはウォルナットというクルミの木の一種で、ピアノの弦を叩くときのハンマーの芯にも使われています。一般的にカスタネットには硬い広葉樹を上下セットで使うことが多いのですが、ワークショップでは片方は必ずやわらかい針葉樹のアカエゾマツ、もう片方は広葉樹のメイプル、ホンジュラスローズウッドなどから選べるようにして、木の個性を伝えています。

──ワークショップはどこでやっていますか。
 海外 去年からヤマハ銀座店や、東京のSDGs関連イベント、北海道の遠軽でも行いました。子どもたちが「この木がいい」「僕、ピアノ習っているからこれにする」と、目をキラキラさせながら選んでくれるのを見ると、こちらもテンションが上がります。保護者の方も「こういう木が使われているんだね」と感心しながら聞いてくださる方が多いですね。たくさんの人に一気に発信できる活動ではありませんが、地道に少しずつ理解を得られて、共感が広がっていると感じます。

タンザニアでの産業育成にもつなげる

■タンザニアでの取り組み
 ──「おとの森プロジェクト」では、サステナビリティとビジネスの両立についてはどう考えていますか。
 海外 北海道の取り組みではイメージしづらいかもしれませんが、同じようにアフリカのタンザニアでも、クラリネットなどの木管楽器に使うアフリカンブラックウッドの植林、保全を進めています。ヤマハをはじめとする楽器メーカーが木を買って使っていく一方で、現地でしっかり栽培技術を伝えて楽器に使えるような木を育てていく取り組みです。そうすることで現地では産業が確立され、自分たちの生活を支えられるようになり、ヤマハも材料を一緒に育てながらつくれるというところがサステナブルですね。

 ──アフリカンブラックウッドは早く製材になるのですか。
 海外 いえ、これも何十年もかかります。すでに育っている木もありますが、植栽エリアを増やし、新たに植えたり、使った分を植えたりしています。アフリカンブラックウッドは、タンザニアやモザンビーク辺りにしかありません。クラリネットにはアフリカンブラックウッド(楽器業界ではグラナディラと呼ばれる)が最適とされ、伝統的に使われているので、そこは品質を変えずにつくり続けていけるよう森づくりをしています。

 ──北海道のアカエゾマツのプロジェクトの目標は。
 海外 北海道とアフリカでは少し考え方が違います。アフリカのプロジェクトは現地の産業育成がメインで、北海道はアカエゾマツを地元の誇りとして大事に思ってもらうようにする意味合いが強いです。

 ──ヤマハには楽器と木のつながりがずっとあったと思いますが、このタイミングでプロジェクトを始められたのはなぜですか。
 海外 原材料の調達が徐々に難しくなってきているという背景があります。まだ豊富にある木材もありますが、一部の置き換えられない樹種については今保護活動を始めないと未来に同じ品質の楽器を残せないという状況が少しずつ見えてきました。

 ──プロジェクトの中で一番大変だと思われたのは。
 海外 楽器と木がまだつながって理解されていないところですね。活動のことをお伝えしようと思っても、そこの理解がないと難しいですね。

大学時代のボランティア活動から海外志向に

■渡辺さんの就活
 ──渡辺さんは2021年入社ですが、その前は楽器をやってらっしゃったそうですね。
 渡辺 中学時代にすごくロックが好きで、ギターに興味を持ちました。小・中学校は野球一筋だったのですが、高校に野球部がなくて。当時私が好きだったMAN WITH A MISSIONというバンドがヤマハのギターを使っていた影響で自分も高校からヤマハのギターを弾き始めました。

 ──もうそこからヤマハとのご縁があったと。
 渡辺 そうですね。うっすらご縁がありました。

 ──大学時代の就活のときにはどういう業界を見ていましたか。
 渡辺 海外で仕事をしたいという思いがありまして、社会へのインパクトの大きさを考えると、新興国と日本をつなげる存在になりたいという希望が出てきました。メーカー、JETRO、JICA、JBICなどの政府機関、商社を中心に、海外とつながりのある企業・団体を見ていました。
 学生時代にフィリピンや、特にマレーシアでボランティアをしていました。非正規移民の子どもたちは公教育を受けられないので、そういった子どもたちに授業をする大学のサークルに入り、実際に自分もフィリピンのストリートチルドレンやマレーシアの非正規移民に会いに行きました。そういった経験の中で、新興国や東南アジアに興味を持ったのが就活の軸につながりました。

 ──なぜ、ボランティアを始められたのですか。
 渡辺 高校時代は国際科に所属していましたが、海外出身のネイティブの先生が欧州難民危機のトピックをたくさん授業で取り扱っていたのが興味の源泉です。それで社会問題に興味を持ち、大学時代も国際政治を勉強しました。ボランティアサークルでは算数や英語を教えたり、すごく大きなパズルをつくったりしました。今思えば、みんなで協力して、完成した達成感を味わう経験が、「生きる力」を育成することにつながっていると思います。

誰のためになっているかが見える仕事にやりがい

■ヤマハ入社の決め手
 ──ヤマハに入社した決め手は何でしたか。
 渡辺 新興国とつながれるというのが一番大きかったです。スクールプロジェクトのことも少しは知っていましたし、別会社ですがヤマハ発動機(ヤマハとはルーツが同じ)のバイクは新興国の人たちも知っていて、「ヤマハ」は世界で通用する名前だと思いました。政府機関にも内定をいただきましたが、自分には向いていないとも思いヤマハを選びました。

 ──就活の面接で印象に残っていることはありますか。
 渡辺 ヤマハの面接では「自分を見てくれているな」と感じました。他社では「うちの会社で何をしてくれるの」「どういうことをやってくれるの」という話が多かったですが、ヤマハでは最終面接のときも東南アジアでのボランティアや新興国のことを本当にざっくばらんに聞いてくれて、それまでの自分をすごく見てくれたのが印象的でした。

 ──最終面接はいつごろ、何対何でしたか。
 渡辺 たしか5人でした。人事の方が2人、本部長や執行役員が3人ぐらいだったと思います。時期は5月末で、オンライン面接なんてしたことがなかったので、ネットで「オンライン面接Tips」を見て臨みました。

 ──今の仕事はどういうところにやりがいを感じますか。
 渡辺 2つあります。1つ目は自分がヤマハにどう貢献しているかが分かること。もう1つは自分の仕事が誰のためになっているのかが分かることです。
 1つ目のやりがいのためには、楽器の演奏人口を増やして需要を高め、ヤマハのビジネスと子どもたちの可能性を広げること、両方につなげていきたいです。ヤマハは「世界中の人々のこころ豊かなくらし」を企業ミッションにしていますが、我々の仕事は、世界中の子どもたちのこころ豊かなくらしに貢献することです。ヤマハが会社として一番上に掲げている目標が、すごく自分の身近にあると感じます。
 2つ目についてですが、プロジェクトで実際に現場に行ったとき、インドの子どもたちはすごく楽しそうに伝統音楽を歌っていました。そういった中で子どもたちがリコーダーを手にしたときに、「上手くできるかな」ではなく「どう演奏するのかな」「どう楽しむのかな」とわくわくしましたし、実際に1年後に学校に行ったら、子どもたちが一生懸命に演奏しているのを見て、「やってよかったな」と思いました。何を誰のためにやっているのが、直感的に分かる仕事ができているのがやりがいです。

 ──子どもたちからはどんな反応をもらいましたか。
 渡辺 我々の教材ではリコーダーを楽しく演奏できるように、伴奏音源をつけています。USBをポータブルキーボードに差すと、伴奏音源が流れます。子どもたちからは「伴奏音源に合わせて演奏するのが楽しい」というフィードバックがあるのですが、それは我々にしかできないことなので嬉しいなと思います。
(写真はヤマハ提供)

■ヤマハの働きやすさ、今後の目標
 ──ヤマハの社内で働きやすさを感じる点を教えてください。
 渡辺 研修後からこのチームにいますが、キャリアに関係なく何でもやらせてもらえる環境です。私が初めてオンラインで「スクールプロジェクトとは何か」を説明した相手はインドの日本大使館でした。社内でトレーニングがあるのかと思ったら「まず、やってみようか」という感じで。いろいろやらせてもらえて、風通しがいいです。それから、自分の同級生とかは「もう仕事しかしてない」という話も聞くんですけど、自分はプライベートもしっかり取れています。

 ──今も音楽活動をしていますか。
 渡辺 やったり、やらなかったりですね。実は、今使っているギターは高校のときに買ったヤマハ製のものなのですが、10年経っても問題なく使えています。

 ──楽器の良さって何だと思いますか。
 渡辺 楽器を演奏しているときは自分に没頭できて、練習していて気づいたら平気で2時間、3時間経っています。そういうものは他にあまりないので、何かそういうものを1つ持っていると安心できるというか。

 ──これからプロジェクトをどういうふうにしていきたいですか。
 渡辺 今は7カ国でプロジェクトを展開しているんですけれども、展開国を増やしていきたいし、プロジェクトを体験する子どもたちの数も増やしていきたいです。インドもデリーの教育委員会と連携していますが、この活動をもっと広く、かつ深く取り組んでいきたいです。

「相棒」のトランペットがヤマハ製だった

■海外さんの就活
 ──海外さんは就活のときはどういうところを見てらっしゃったんですか。
 海外 私はメーカーや物流を主に見ていました。正直、最初は何がしたいかが分からなかったのですが、会社説明会に参加する中で共感できるポイントが「グローバル」だと感じました。そのなかでもメーカーや物流の仕事に共感をもったので、「こっちの方向だな」と絞りました。
 私も外国語大学の国際関係学科で学んでいたので、グローバルに働けるところ、かつモノづくりの現場だったり、日本から海外にモノが伝わって良い品質のものが評価されたりする。その点で私も貢献したい、社会とつながりたいと思い始めました。

 ──ヤマハを選んだ決め手は。
 海外 もともと中高大と吹奏楽部でトランペットを吹いていました。中学時代に買ってもらったトランペットがヤマハ製で、ずっと相棒のように使っていたので、愛着もあって決めました。

 ──就活のときに気をつけていたことはありますか。
 海外 けっこう緊張する方なので、緊張をほぐすために毎回面接のときは別の就活生に「緊張しますね」みたいな感じで話しかけていました。ヤマハの面接のときに話しかけた人は、同期になりました。

 ──ヤマハで働きやすい点を教えて下さい。
 海外 趣味を大事にしている人が多いので、自分の時間を取ることへの理解は深い会社です。「休みを取ります」と言っても「どうして?」と細かく聞かれませんし、休みを取りたいときに取れます。
 ──ヤマハでの働きがいは何ですか。
 海外 調達部門にいたときも、今のSNSを担当していても、ヤマハグループの子会社や工場、販社といった人たちとのやりとりのスケールが大きく、グローバルに働けます。その点ではもともとの希望に叶っていますし、社会と関わり合えることにもやりがいを感じています。

 ──今後の目標は。
 海外 カスタネットのワークショップも今は北海道と東京でしか実績がないので、今後はもっと他のエリアやたくさんの人にやってもらって、楽器と木のつながりを知ってもらいたいです。「おとの森プロジェクト」のWebページができたので、発信も強化していきたいです。

■二人とSDGs
 ──お2人は普段からSDGsについて意識されることはありますか。
 渡辺 日常的にそれぞれのゴールのロゴを見ています。出張で東京に行くとSDGsのロゴを付けている人が多いですし、少し前に比べたらすごく身近になったなと思います。

 海外 安いものを買ってすぐ捨てるのではなく、しっかりと長く使うというマインドになりました。

SDGsでメッセージ!

 渡辺 私は就活で、日本と新興国をつなげる存在になりたいと思って、ヤマハに入りました。今こうやって新興国と一緒に仕事をしていることがすごく楽しく、会社のみなさんのサポートもあって、自分の仕事にやりがいを持って取り組めているのが嬉しいです。ヤマハに入るときも「質の高い教育をみんなに」というSDGsのロゴを見て入ったところもあります。みなさんもいろんな企業の掲げているSDGsを参考にしながら、就職活動を頑張ってください。

海外 選考ではグループワーク、エントリーシート、面接とたくさん不安になる部分、緊張する部分があると思いますが、みなさんがやりたいこと、共感していること、それを大事な軸として、まっすぐ伝えてほしいと思います。そのやりたいこと、共感していることがもしSDGsに関係することであればとても素敵なことだと思います。「おとの森プロジェクト」も最初はボトムアップで、そうした思いを持った人が始めた活動です。そういう人を応援する土台もありますので、もし音楽の観点からそういうことをやりたいと思っている人がいれば、選択肢の中にヤマハを入れていただければと思います。

ヤマハ株式会社

【メーカー】

ヤマハは世界最大の総合楽器メーカーです。音・音楽を中心にした事業を通じて磨いてきた感性と多彩な技術を融合し、楽器、音響機器、部品・装置、その他の領域でグローバルに事業を展開しています。「感動を・ともに・創る」を企業理念として、音・音楽を通じて「世界中の人々のこころ豊かなくらし」に貢献することを目指しています。