
■技術の進化
──一番大変だと思ったことは。
春木 まずはバリア性を高めないとお客様に出せないのですが、バリア性を追求するとフィルムの色味が変化するなど製品の外観に影響が出るのが今の課題で、そこに対するアプローチをチームメンバー全員で考えています。
──難しいですね。でも、このジャンルの需要は高いんですか。
春木 はい、需要は高いです。例えば、消費電力を抑えたディスプレイ、高精細なディスプレイの需要が今、どんどん高まっています。最近、「QDテレビ」といわれるクォンタムドット技術を使った高精細で省電力なテレビが登場してきていますが、QD素子が水蒸気や酸素に弱いため、DNPのバリアフィルムがこのQDテレビに使われています。バリアフィルムはテレビが発する色を邪魔しないように、透明性がとても重要になります。バリアフィルムがQD素子を守ることで、テレビの長寿命化に直結し、SDGsに貢献する技術だと思います。
──春木さんは入社7年目ですが、この7年間で技術は進化しているのですか。
春木 私が入社したときDNPはまだディスプレイ分野に参入できていなかったのですが、この7年間でディスプレイに求められる高い品質に対応できる技術を培ってきており、ディスプレイ用途での実績も拡大しています。特に海外ではQDテレビ用バリアフィルムの高いシェアを誇っています。
──なぜ、進化し続けることができるのでしょうか。
春木 まず第一に、世の中のニーズが高まっていることが大きいと思います。それに加えて、実際に我々がお客様のニーズに合わせて材料の選定から製品の生産まで、様々な試行錯誤を重ねてきたことが結果につながっていると思います。
──試行錯誤の量がすごいというのは、DNPならではですか。
春木 もちろん他社も試行錯誤されていると思いますが、お客様のニーズがどこにあって、この先何を開発したいのかというところを営業の方がしっかり引き出してきてくれていると感じます。その情報をもとに、開発である我々がスピーディーに開発を進めて適切なタイミングで次の提案を出来ていると思います。営業と開発が連携することで、正しく試行錯誤ができているというイメージです。
──世界的に見ると、どこがライバルですか。
春木 世界的に見ても、バリアフィルムの分野は日本が強いです。そのなかでもTOPPANさんはもちろん 、基材メーカー、蒸着加工メーカーなど各業界の強みを持つメーカーがライバルにあたります。蒸着や塗工など精密加工することに強みを持つ印刷会社ならではの強みが発揮できる領域だと感じますが、世界的に見ても、日本のような総合的な印刷会社は珍しいと思いますし、世界で戦える強みを持っているとも思います。