SDGsに貢献する仕事

大日本印刷株式会社

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大日本印刷〈後編〉社内で違う分野の技術者とも交流 未来につながる技術生まれる【SDGsに貢献する仕事】

2024年03月27日

SDGs(持続可能な開発目標)関連の業務に携わっている若手・中堅社員に直撃インタビューする「SDGsに貢献する仕事」の第15回は、世界最大級の総合印刷会社、大日本印刷(DNP)です。次世代電池の外装材やリサイクルしやすいフィルム材など、印刷技術の強みを活用して最先端の素材や製品の開発にチャンレジしている2人。さまざまな技術を扱う会社ならではの社内交流イベントもあり、未来につながる技術が生まれる環境が整っているといいます。(編集長・福井洋平)

(冒頭のSDGsアイコンは、大日本印刷が重視するゴール)

(前編はこちらから)

【お話をうかがった社員のプロフィル】
事業開発本部環境とエネルギー事業開発ユニット 住田裕代さん(右)
2020年早稲田大学大学院先進理工学研究科応用化学専攻卒業、同年入社。2022年の9月までは高機能マテリアル事業部で北九州の戸畑工場に勤務し、2022年10月から現部署に。

基礎技術開発本部コンバーティング製品開発ユニット 春木暁人さん(左)
2017年慶応義塾大学大学院理工学研究科基礎理工学専攻卒業、同年入社。福島県白河郡の泉崎工場で2年間生産技術を担当し、2019年から現部署に。

透明でバリア性も高いフィルム開発

■産業用途への拡張
 ──今の春木さんの課題はどのようなことですか。
 春木 今は、IB-FILM(アイビーフィルム:Innovative Barrier Film) を産業用途へ展開しようと開発を進めています。食品パッケージは表面に絵柄が印刷してあるものが多いと思いますが、絵柄の印刷をほどこす場合はフィルム自体の透明性はそこまで必要ありません。一方で産業用途では求められる機能が異なり、透明性もバリア性も、食品パッケージ以上に高くないといけない場合が多くあります。

 ──産業用途とは、具体的にどんな用途ですか。
 春木 ディスプレイ向けや、太陽電池向けなどです。ディスプレイの中にも酸素や水蒸気を嫌う素材があり、それを守るための層としてこのバリアフィルムを使います。

 ──透明性やバリア性を高めるためには、どういうことが必要ですか。
 春木 今、我々は蒸着という酸化アルミや酸化ケイ素を吹き付ける「ドライコーティング」の技術と、バリアコーティング液を塗る「ウェットコーティング」の技術、この2種類のコーティング技術を使ってバリアフィルムを作っています。この2つの組み合わせ、コーティング材料や条件が非常に肝となります。

 ──酸化アルミなどを吹き付けても、透明性は保てるのですか。
 春木 アルミをそのまま蒸着すると、ポテトチップスの内側のような銀色の外観になりますが、アルミを酸化させ、数ナノレベルでコントロールしてうすい膜としてつけることで、透明性の高い状態を保つことができます。なおかつこの薄い膜は、水や酸素を通しにくい性質を持ちます。

 ──サンプルは手作りですか。
 春木 そうですね。まずは柏(千葉県)の研究室で塗工したり、ラボサイズの機械で蒸着したりして性能を見ます。それから月に1回ぐらいは工場に赴き、実際に機械を動かしながらバリアフィルムの試作を行っています。
 ラボ実験でも工場試作でも、ある要素がよくなると、別の要素が悪くなる、というトレードオフが発生することが多いですね。狙っている性能を達成するためには、一方の性能を改善させつつ別の性能が悪化しないギリギリの条件をいくつか組み合わせながら試作をしないといけないので、そこがまた難しいところです。

客のニーズつかみ正しく試行錯誤

■技術の進化
 ──一番大変だと思ったことは。
 春木 まずはバリア性を高めないとお客様に出せないのですが、バリア性を追求するとフィルムの色味が変化するなど製品の外観に影響が出るのが今の課題で、そこに対するアプローチをチームメンバー全員で考えています。

 ──難しいですね。でも、このジャンルの需要は高いんですか。
 春木 はい、需要は高いです。例えば、消費電力を抑えたディスプレイ、高精細なディスプレイの需要が今、どんどん高まっています。最近、「QDテレビ」といわれるクォンタムドット技術を使った高精細で省電力なテレビが登場してきていますが、QD素子が水蒸気や酸素に弱いため、DNPのバリアフィルムがこのQDテレビに使われています。バリアフィルムはテレビが発する色を邪魔しないように、透明性がとても重要になります。バリアフィルムがQD素子を守ることで、テレビの長寿命化に直結し、SDGsに貢献する技術だと思います。

 ──春木さんは入社7年目ですが、この7年間で技術は進化しているのですか。
 春木 私が入社したときDNPはまだディスプレイ分野に参入できていなかったのですが、この7年間でディスプレイに求められる高い品質に対応できる技術を培ってきており、ディスプレイ用途での実績も拡大しています。特に海外ではQDテレビ用バリアフィルムの高いシェアを誇っています。

 ──なぜ、進化し続けることができるのでしょうか。
 春木 まず第一に、世の中のニーズが高まっていることが大きいと思います。それに加えて、実際に我々がお客様のニーズに合わせて材料の選定から製品の生産まで、様々な試行錯誤を重ねてきたことが結果につながっていると思います。

 ──試行錯誤の量がすごいというのは、DNPならではですか。
 春木 もちろん他社も試行錯誤されていると思いますが、お客様のニーズがどこにあって、この先何を開発したいのかというところを営業の方がしっかり引き出してきてくれていると感じます。その情報をもとに、開発である我々がスピーディーに開発を進めて適切なタイミングで次の提案を出来ていると思います。営業と開発が連携することで、正しく試行錯誤ができているというイメージです。

 ──世界的に見ると、どこがライバルですか。
 春木 世界的に見ても、バリアフィルムの分野は日本が強いです。そのなかでもTOPPANさんはもちろん 、基材メーカー、蒸着加工メーカーなど各業界の強みを持つメーカーがライバルにあたります。蒸着や塗工など精密加工することに強みを持つ印刷会社ならではの強みが発揮できる領域だと感じますが、世界的に見ても、日本のような総合的な印刷会社は珍しいと思いますし、世界で戦える強みを持っているとも思います。
■大日本印刷の強み
 ──住田さんは大日本印刷の強みは何だと思いますか。
 住田 バッテリーパウチの分野においては、世界シェア6~7割で、車載向けなら9割を占めます(中国を除く)。自動車は売る前に「使用期間以上を見越して何十年もテストしてから売る」ということはできませんが、実際に今も15年以上、無事故でちゃんと車が安全に走っているということが何よりの信頼と実績です。初期からバッテリー事業に参入して、ずっと使い続けてもらっているということが、技術的にも実績としても本当に強みだと思います。

 ──日ごろ研究開発されていて、DNPの良さは感じますか。
 住田 自社製品をたくさん使っていただいているからこそ、お客様からも早く声をかけてもらい、ニーズをキャッチアップできます。量産する上でも各工場の製造拠点で、すごく昔から培ってきたコアな技術を軸に更なる開発をすすめています。その技術力と、DNPのバッテリーパウチを搭載した製品をずっと使ってもらえているという信頼が両方あることで、自信を持って次世代向けのパウチの開発もできますし、お客様にも提案できます。歴史と技術力が強みですね。

全く違う分野の技術者と交流できる

■住田さんの経歴
 ──住田さんは就活時、「ここに行きたい」というのはありましたか。
 住田 もともと学部から修士課程まで高分子化学を専攻していました。学部や研究室で学んだ化学の知識を使いつつ、身の回りにあるモノづくりに携わりたいなというのが就活の軸でした。そこで最終製品から中間製品ぐらいのメーカー、企業を中心に就活しました。

 ―─大学ではどんな研究をされていましたか。
 住田 高分子を使って、曲がるけど割れにくいコーティング材料などの研究をしていました。当時、いろんな企業と学生の共同研究をしていて、「モノづくりって楽しい」「モノづくりに関わる仕事がしたいな」と思っていました。研究していく中で、「何か1つの最終製品というよりは、もうちょっと中間の、色々な最終製品に使われるモノを作ることに携われる方が、自分がやっている研究があれにもこれにも応用できて楽しそうだな」と思いが変わってきました。最終的には「入ってからどんなことでもできるんじゃないか」という思いで事業が多岐にわたっているDNPを選びました。身近な先輩で入社した人も多く、働き方を聞いていたので「すごく安心して働けそうな会社だな」と、まだ受かっていないときから思っていました。

 ──就活で、SDGsは意識しましたか。
 住田 そんなにすごく意識したわけではないですが、SDGsに関する取り組みをしているとか、関連している事業があることは長く継続的に事業を発展させていく上での強みになると思っていたので、SDGsに関連している取り組みやコア技術があるかどうかは気にしていました。

 ──先輩から聞いた中で、DNPがいいなと思った点は。
 住田 いろんなことをやっている会社だから、自分が何か困ったときに違う部門の人に相談すると「まるで別の会社から得た情報かのように、全く違う視点の意見や情報をもらえる」と。いろいろな技術を持って幅広い事業を展開しているところが強みだなと思いました。
 ──実際に入ってみていかがでしたか。
 住田 バッテリーパウチの開発のときも、全く違う分野の方にアドバイスをもらいました。
 社内の取り組みとして「こういうことに困っています」というニーズカードを用意して、研究開発・事業化推進センター全員が聞けるような会議もあります。ほかにも技術的な展示会なども多いので、違う部門の人から「私のところで○○のときに○○を使ってみたら良かったから、もしかしたら、使えるかもしれないよ」とアドバイスをもらえる環境です。
 DNPでは、開発中の技術などを社員に紹介する社内展示会を実施しています(写真、大日本印刷提供)。開発途中のものも含めて、「こういった面白い技術を開発した」「課題解決につながりそうだ」というものをたくさん持ち寄って、その技術開発部門同士で交流するほか、営業や企画の人も参加して、社会や得意先の課題をぶつけて、ディスカッションしています。社員自身がDNPの開発力・技術力への理解を深め、新たな価値を創出することを狙いとして、継続的に開催しています。

 ──就活のときは、どんな面接でしたか。
 住田 理系の学生は技術面接で、自分が研究室で取り組んできたことを紹介して、技術的なディスカッションをします。私が受けた会社の中では、DNPは技術面接の時間が長かった印象です。でも、本当に気さくに、自分がやってきた研究内容、研究中に苦労したことを聞いてくださって、面接というよりは対話という雰囲気でした。質疑応答というより「私も会社でそういうことあります。それは大変だったね」というような、寄り添ってくれる面接でした。

通常業務と違うミッションにも取り組みリフレッシュ

■春木さんの経歴
 ──春木さんは大学で何をされていましたか。
 春木 大学院での専攻は応用化学分野でした。研究室では有機磁性体というものを扱っていて、文字通り磁石の性質を持つような有機化合物の研究をしていました。

 ──就活時はどういうところを目指していましたか。
 春木 私ももともとモノづくりに携わりたいと思って就活を始めました。最初は、カメラや家電などが好きだったので、最終製品に魅力を感じ、そういったメーカーを幅広く受けました。その中でDNPも受け、扱っている商材 がすごく幅広くて何でも出来そうだと思ったことが決め手になりました。
 私も化学を専攻していましたが、「化学一本でやっていけるのかな」という不安が就活のときにありました。そういった意味でDNPは、会社に入ってからいろんな製品開発に関わったり、化学以外の分野にも活躍の場を拡げたりできるのではないかなと感じましたね。

 ──面接ではどんなことを聞かれましたか。
 春木 研究に対しての想いや取り組みの内容を聞かれました。先ほど住田さんもおっしゃいましたが、技術面接では課長クラスの人たちが、研究テーマの良さや、苦労したことなどを引き出して下さいました。すごくアットホームな雰囲気で面接をしたのを覚えています。
■働きやすさ
 ──DNPの働きやすさはどういったところですか。
 春木 全社的な取り組みとして、2019年から社内複業制度が始まりました。募集や面接を経て、社内にいながら希望する組織の仕事に取り組むことができます。週5日間のうちの1日を使い、別の部署に行って仕事をします。自分の普段の業務との関連性はなくてもOKで、外部の企業で副業するくらい幅広い選択肢が社内にあるので、自分の可能性を拡げられる、すごくありがたい制度だと思います。

 ―─実際に複業をしているのですか。
 春木 これからチャレンジしたいと思っています。今、私の仕事は製品開発に近いところなので、私たち開発が製品として作ったものが世の中にハードウェアとして出ていきます。ディスプレイ分野で言えば、そのハードウェアで表示したり再生したりするコンテンツやソフトウェアの企画や開発をしている部署もあるので、社内複業のチャンスがあれば、そういったソフトウェア側の仕事にも挑戦して、仕事の幅を拡げてみたいです。

 ──住田さんは、どんな点が働きやすいと思いますか。
 住田 DNP価値目標制度(DVO制度)というオリジナルの目標・評価制度があるのですが、個人の業績等の目標に加えて、新しい価値を生み出すためにチーム(課)ごとで自由にボトムアップの目標を設定することができるものです。採算性や実現性は一旦置いておき、ゼロから興味のあるテーマに挑戦することもできます。
 私の場合は課で3チームぐらいに分かれ、みんな普段はEVやバッテリーパウチの開発をしていますが、DVOでは新しい化粧品パッケージの検討という、通常業務とは全く異なるテーマに取り組んでいます。私の課は女性が多いので、働く女性という視点で日頃自分たちがどんな時に困っているか、出張時の苦労話から始まりました。専門分野である包装材の知見と、他部門のDNPの技術や実績、自分たちの興味や経験を掛け合わせて取り組みます。全く新しいことを自分たちで一から調べるので、普段の業務に追われている頭をリフレッシュする時間になっていて、この活動を通して職場の雰囲気もより明るく、活発になりました。

 ──週に何回ぐらいあるんですか。
 住田 週に1回、みんなで1~2時間ぐらい集まって、実験します。その結果をシェアして、次の自分たちのグループの活動に生かします。

 ──春木さんも何かされていますか。
 春木 私は課の中でアイデアワークショップを開催しています。課で集まっていろんな社会課題や、個々人が課題に思っていることをポストイットでバーッと貼り付け、それに対して解決策を討論し、新規テーマをブラッシュアップするようなワークショップです。

(インタビュー写真・大嶋千尋)

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SDGsでメッセージ!

春木 SDGsと聞くと漠然としたイメージしか持てないかもしれませんが、SDGsとは「全ての人にとってより良い未来、持続可能な開発目標」です。まずは自分、そして周りの人たちにとってより良い未来や社会を思い描いてほしいと思います。また、会社は、思っている以上に一人ひとりの熱意、思い、働きが、提供する製品やサービスの質に大きく影響すると感じます。1人で成し遂げることは難しくても、その思いは周りに伝わり、仕事を良くしていくきっかけになります。ぜひ、みなさんが思う「より良い未来」を、DNPの幅広い事業領域と多様な人材を活かして一緒に作っていけたらいいなと思っています。

住田 私は学生のとき、社会人になったら、分からないことや仕事の進め方をすべて自分で責任を持って決めないといけないのかな、と少し不安でした。でも、入社してみると本当にさまざまな研修制度や指導制度が充実していますし、たくさんの人たちと関わりながら仕事を進めています。そのおかげで私は今ずっとやりたかったモノづくりの仕事に携わることができています。学生のみなさんも就職活動のときはしっかり自分と向き合って、自分が一番楽しくやりがいを持って働けるような仕事を見つけてもらいたいなと思っています。

大日本印刷株式会社

【印刷業】

 大日本印刷(DNP)は、国内外の顧客企業や生活者に対し、多様な製品やサービスを提供する世界最大規模の総合印刷会社です。
 他社にはない独自の「P&I(印刷と情報)」の強みを掛け合わせ、多くのパートナーと協業を行い、出版印刷やセールスプロモーション、包装、建材、ディスプレイ製品、環境とエネルギー、ライフサイエンス分野などにも進出し、社会課題の解決とともに、人々の期待に応える新しい価値の創出に力を入れています。