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三井住友海上火災保険株式会社
三井住友海上火災保険〈前編〉「海」を通じて地球環境と共生すすめ 損害保険の事業領域広げる【SDGsに貢献する仕事】
2023年10月25日
SDGs(持続可能な開発目標)関連の業務に携わっている若手・中堅社員に直撃インタビューする「SDGsに貢献する仕事」の第12回は、損害保険大手の三井住友海上火災保険です。「海上」の名にふさわしく、船舶や海上保険に強みを持つ同社。海を中心とする経済圏「ブルーエコノミー」を展開するミッションを掲げています。でも、ブルーエコノミーっていったい何? 損害保険とはどういう関わりが? このインタビューでくわしく説明します。(編集部・福井洋平)
(冒頭のSDGsアイコンは、三井住友海上火災保険が重視するゴール)
【お話をうかがった社員のプロフィル】
●山野辺傑(やまのべ・たけし)さん=左
船舶営業部海洋エネルギー室 海洋・再生可能エネルギー開発推進担当
2010年早稲田大学教育学部卒業、同年入社。船舶営業部第一課で船舶保険を担当。2012年に船舶営業部中国船舶課に異動し広島勤務。2016年に現部署に異動。
●岡野峻彦(おかの・たかひこ)さん=右
ビジネスデザイン部 企画チーム
2015年早稲田大学政治経済学部卒業、同年入社。公務第一部で国土交通省マーケットの営業を担当、国土交通省出向を経て2022年に現部署に異動。
(冒頭のSDGsアイコンは、三井住友海上火災保険が重視するゴール)
【お話をうかがった社員のプロフィル】
●山野辺傑(やまのべ・たけし)さん=左
船舶営業部海洋エネルギー室 海洋・再生可能エネルギー開発推進担当
2010年早稲田大学教育学部卒業、同年入社。船舶営業部第一課で船舶保険を担当。2012年に船舶営業部中国船舶課に異動し広島勤務。2016年に現部署に異動。
●岡野峻彦(おかの・たかひこ)さん=右
ビジネスデザイン部 企画チーム
2015年早稲田大学政治経済学部卒業、同年入社。公務第一部で国土交通省マーケットの営業を担当、国土交通省出向を経て2022年に現部署に異動。
サステナビリティは会社の1丁目1番地
■お2人のお仕事
──山野辺さん、岡野さんのこれまでの経歴を教えてください。
山野辺傑さん 2010年4月に入社後、最初に配属されたのが船舶営業部第一課で、主に国内の三井系グループの海運会社、商社等の商船を持っているお客さまの船舶保険を担当していました。2012年の4月に広島の船舶営業部中国船舶課に異動し、2016年にいまの部署に着任しました。
岡野峻彦さん 2015年4月に入社し、公務第一部営業第二課という公務営業、いわゆる官公庁のマーケットの営業部に5年半いました。そこでは国土交通省のマーケットを担当し、住宅マーケット、建設マーケットの団体保険の制度運営や推進、それから国交省の職員向けの保険、鉄道会社や高速道路会社といった企業の保険等を扱っていました。2020年10月から2年間は国土交通省の道路局に出向して国の職員として仕事をし、そのあとが現職です。
――ビジネスデザイン部とはどういう部署ですか。
岡野 新規ビジネスを生み出すのが一番のミッションです。会社がイノベーション企業になっていくための人材育成、風土醸成という2つの目的もあります。米国やシンガポールなどの海外拠点とも連携をし、イノベーション活動を行っています。
■三井住友海上とSDGs
──三井住友海上はSDGsに対してどのように取り組んでいますか。
岡野 6年ほど前からSDGsに着目し、全社的に取り組んでいます。2022年から2025年までの中期経営計画で「地球環境との共生」、社会課題に取り組んでいく意義を全社員にも伝え、各プロジェクトを推進しています。
山野辺 会社の大きな舵取りをしていく経営企画部の中にサステナビリティトランスフォーメーション(SX)推進チームを立ち上げています。サステナビリティはもう会社の取り組みの1丁目1番地という位置づけです。SDGsを達成していくために何が必要か、ビジネスデザイン部を中心に取り組んでいますが、私自身は現場の日常業務に会社のこういった方針がどれくらい落ちてくるかがきわめて重要と思っています。社内ではサステナビリティに関するセミナーも開かれ、会社全体でカルチャー変革に取り組んでいるところです。
──山野辺さん、岡野さんのこれまでの経歴を教えてください。
山野辺傑さん 2010年4月に入社後、最初に配属されたのが船舶営業部第一課で、主に国内の三井系グループの海運会社、商社等の商船を持っているお客さまの船舶保険を担当していました。2012年の4月に広島の船舶営業部中国船舶課に異動し、2016年にいまの部署に着任しました。
岡野峻彦さん 2015年4月に入社し、公務第一部営業第二課という公務営業、いわゆる官公庁のマーケットの営業部に5年半いました。そこでは国土交通省のマーケットを担当し、住宅マーケット、建設マーケットの団体保険の制度運営や推進、それから国交省の職員向けの保険、鉄道会社や高速道路会社といった企業の保険等を扱っていました。2020年10月から2年間は国土交通省の道路局に出向して国の職員として仕事をし、そのあとが現職です。
――ビジネスデザイン部とはどういう部署ですか。
岡野 新規ビジネスを生み出すのが一番のミッションです。会社がイノベーション企業になっていくための人材育成、風土醸成という2つの目的もあります。米国やシンガポールなどの海外拠点とも連携をし、イノベーション活動を行っています。
■三井住友海上とSDGs
──三井住友海上はSDGsに対してどのように取り組んでいますか。
岡野 6年ほど前からSDGsに着目し、全社的に取り組んでいます。2022年から2025年までの中期経営計画で「地球環境との共生」、社会課題に取り組んでいく意義を全社員にも伝え、各プロジェクトを推進しています。
山野辺 会社の大きな舵取りをしていく経営企画部の中にサステナビリティトランスフォーメーション(SX)推進チームを立ち上げています。サステナビリティはもう会社の取り組みの1丁目1番地という位置づけです。SDGsを達成していくために何が必要か、ビジネスデザイン部を中心に取り組んでいますが、私自身は現場の日常業務に会社のこういった方針がどれくらい落ちてくるかがきわめて重要と思っています。社内ではサステナビリティに関するセミナーも開かれ、会社全体でカルチャー変革に取り組んでいるところです。
サステナビリティ+大きな事業機会
■ブルーエコノミープロジェクト
──岡野さんが手がけているブルーエコノミープロジェクトについてお聞きしたいのですが、まず「ブルーエコノミー」とは何ですか。
岡野 漁業や海運業、海洋資源開発といった海洋産業と、海の生態系を含んだ経済圏のことをブルーエコノミーといいます。海の環境を守りながら海洋産業を発展させ、社会をサステナブルに進化させていく考え方も含んでいます。
当社は2022年10月に「ブルーエコノミープロジェクト」を立ち上げました。自然資本の持続可能性の向上、気候変動への対応というブルーエコノミーの考え方が、中期経営計画で掲げた重大課題のひとつである「地球環境との共生」に資するということで全社横断的なプロジェクトとしました。
──損害保険という業態と地球環境は、どういう関係にあるのでしょうか。
岡野 自然災害が起きたときに損害保険で経済的な補填をしますが、近年は「数十年に一度起こる」といわれる災害が毎年のように起きています。そうなると我々としても適切なリスクを取ったり、補償を提供したりすることが難しくなります。「地球環境との共生」というプロジェクトは、保険という本来の役割と親和性があるのです。
山野辺 自然災害の激甚化を最小化するためには気候変動対策が必要で、そのためには温室効果ガス排出量の削減、脱炭素社会を実現しなければいけません。ブルーエコノミープロジェクトでも、温室効果ガスの削減に資する取り組みに1つ大きなテーマを置いています。
■「海」に注目した理由
──「地球環境」のなかでも、なぜ特に海に着目されたのでしょうか。
岡野 サステナビリティを実現するための非常に有意義なプロジェクトであることに加え、大きな事業機会もあるためです。ある試算ではブルーエコノミー市場は、2030年までに3兆米ドルの市場規模が見込まれています。日本は海に囲まれ、世界第6位のEEZを保有していますので、成長に資する事業機会があると考えました。
山野辺 日本の主力電源をみると天然ガスや原油が果たす役割は非常に大きいのですが、日本が輸入しているガスや石油の大半は海底下にあります。私がいる海洋エネルギー室は、そういった天然ガスや原油を採取、生産するプロジェクトの保険引き受けを手がけています。その開発をしている会社が脱炭素の流れのなかで注目しているのが再生可能エネルギーで、たとえば洋上風力発電や、水素、アンモニアといったカーボンニュートラル実現のための取り組みを加速しているのです。そういったお客さまの取り組みにどういったソリューションを提供しようか考えているときに、会社の経営方針として「ブルーエコノミー」というテーマが降りてきた。トップダウンとボトムアップの流れがちょうどこのテーマで合致し、プロジェクトが大きく前進するきっかけとなりました。
──お客さまは日本の企業に限らずということですね。
山野辺 そうですね。我々のチームでは主に日系企業を担当していますが、海外のオイルメジャーや洋上風力発電事業者等、日系企業の事業パートナーとなる非日系企業も担当しています。
──損害保険会社はビジネスのプロジェクトのどの辺から関わるのですか。
山野辺 事業計画の段階からです。洋上風力発電なら、「日本のこの海域で、洋上風力ビジネスを始めようと思っています」という計画の段階から関与し、数年間、伴走支援をしながら取り組みを進めます。
損害保険会社は保険の引き受けだけではなく、リスクマネジメントという大きなくくりで価値を提供することが求められています。これがどこの保険会社も同じかというと、実はそうではなくて、特に我々のチームは海洋エネルギーの領域では国内のマーケットシェア50%を超えています。船舶保険種目ナンバーワンの損保としてお客さまから保険の引き受けだけではなく、リスクマネジメント全体のパートナーとして、うちの会社に声をかけていただくという流れでやってきています。
──ブルーエコノミープロジェクトが、このタイミングでのリリースになったのは、何かステップがあったんでしょうか。
岡野 山野辺が言ったように営業は営業でプロジェクトを進めていたのですが、やはり組織としてプロジェクトを進めていくには営業、本社部門、保険商品の開発は商品部、と全社的に横断した組織のプロジェクト体制が非常に重要になってきます。バラバラだった取り組みをまずは1つにまとめて、全社的に取り組めるような体制をつくり上げようというところでプロジェクトが組成されました。
──岡野さんが手がけているブルーエコノミープロジェクトについてお聞きしたいのですが、まず「ブルーエコノミー」とは何ですか。
岡野 漁業や海運業、海洋資源開発といった海洋産業と、海の生態系を含んだ経済圏のことをブルーエコノミーといいます。海の環境を守りながら海洋産業を発展させ、社会をサステナブルに進化させていく考え方も含んでいます。
当社は2022年10月に「ブルーエコノミープロジェクト」を立ち上げました。自然資本の持続可能性の向上、気候変動への対応というブルーエコノミーの考え方が、中期経営計画で掲げた重大課題のひとつである「地球環境との共生」に資するということで全社横断的なプロジェクトとしました。
──損害保険という業態と地球環境は、どういう関係にあるのでしょうか。
岡野 自然災害が起きたときに損害保険で経済的な補填をしますが、近年は「数十年に一度起こる」といわれる災害が毎年のように起きています。そうなると我々としても適切なリスクを取ったり、補償を提供したりすることが難しくなります。「地球環境との共生」というプロジェクトは、保険という本来の役割と親和性があるのです。
山野辺 自然災害の激甚化を最小化するためには気候変動対策が必要で、そのためには温室効果ガス排出量の削減、脱炭素社会を実現しなければいけません。ブルーエコノミープロジェクトでも、温室効果ガスの削減に資する取り組みに1つ大きなテーマを置いています。
■「海」に注目した理由
──「地球環境」のなかでも、なぜ特に海に着目されたのでしょうか。
岡野 サステナビリティを実現するための非常に有意義なプロジェクトであることに加え、大きな事業機会もあるためです。ある試算ではブルーエコノミー市場は、2030年までに3兆米ドルの市場規模が見込まれています。日本は海に囲まれ、世界第6位のEEZを保有していますので、成長に資する事業機会があると考えました。
山野辺 日本の主力電源をみると天然ガスや原油が果たす役割は非常に大きいのですが、日本が輸入しているガスや石油の大半は海底下にあります。私がいる海洋エネルギー室は、そういった天然ガスや原油を採取、生産するプロジェクトの保険引き受けを手がけています。その開発をしている会社が脱炭素の流れのなかで注目しているのが再生可能エネルギーで、たとえば洋上風力発電や、水素、アンモニアといったカーボンニュートラル実現のための取り組みを加速しているのです。そういったお客さまの取り組みにどういったソリューションを提供しようか考えているときに、会社の経営方針として「ブルーエコノミー」というテーマが降りてきた。トップダウンとボトムアップの流れがちょうどこのテーマで合致し、プロジェクトが大きく前進するきっかけとなりました。
──お客さまは日本の企業に限らずということですね。
山野辺 そうですね。我々のチームでは主に日系企業を担当していますが、海外のオイルメジャーや洋上風力発電事業者等、日系企業の事業パートナーとなる非日系企業も担当しています。
──損害保険会社はビジネスのプロジェクトのどの辺から関わるのですか。
山野辺 事業計画の段階からです。洋上風力発電なら、「日本のこの海域で、洋上風力ビジネスを始めようと思っています」という計画の段階から関与し、数年間、伴走支援をしながら取り組みを進めます。
損害保険会社は保険の引き受けだけではなく、リスクマネジメントという大きなくくりで価値を提供することが求められています。これがどこの保険会社も同じかというと、実はそうではなくて、特に我々のチームは海洋エネルギーの領域では国内のマーケットシェア50%を超えています。船舶保険種目ナンバーワンの損保としてお客さまから保険の引き受けだけではなく、リスクマネジメント全体のパートナーとして、うちの会社に声をかけていただくという流れでやってきています。
──ブルーエコノミープロジェクトが、このタイミングでのリリースになったのは、何かステップがあったんでしょうか。
岡野 山野辺が言ったように営業は営業でプロジェクトを進めていたのですが、やはり組織としてプロジェクトを進めていくには営業、本社部門、保険商品の開発は商品部、と全社的に横断した組織のプロジェクト体制が非常に重要になってきます。バラバラだった取り組みをまずは1つにまとめて、全社的に取り組めるような体制をつくり上げようというところでプロジェクトが組成されました。
損害保険のビジネスモデルを変革
■「藻場」の再生
──海洋エネルギー室以外に以前からブルーエコノミーに取り組んでいる部署はありましたか。
山野辺 公務開発部ではブルーカーボンの領域で、日本の沿岸域にある「藻場」の再生とブルーカーボンクレジットの創出に取り組んでいます。日本では磯焼けといって、ウニが沿岸の藻場を食べ尽くし海が砂漠化しています。これも、温暖化に伴う海水温上昇の影響ではないかといわれています。これは漁獲量にも影響を与えますが、実は海洋は世界の大気中のCO₂の約25%を吸収しているとされており、陸域と並び自然界で最大級のCO₂吸収源といわれています。 特に海洋の国土が広い日本においては非常に重要で、藻場の再生と、そこから生まれるブルーカーボンクレジットでビジネスができないかと公務開発部が模索しています。
──ブルーエコノミーという全社的な取り組みにしたことのメリットはありましたか。
山野辺 具体例ですと、洋上風力発電のプロジェクトがあります。導入するときには、その海で暮らしている漁業者の人たちの理解を得るのが大事です。私たちは五島沖のプロジェクトに参画していますが、五島沖の漁業者の皆さんも磯焼けを非常に問題視されていて、独自に対策をとられて再生が進んでいる状況でした。そういった漁業者の人たちの取り組みを我々が理解できるようになり、相互理解をつくりながら保険の引き受けをすることができるようになったと思っています。
■新しいビジネスモデル
──自動車保険で一般消費者向けのビジネスもなさっていますが、ブルーエコノミープロジェクトを進めていく上で一般の人々に向けてはどのようなアプローチを考えていますか。
山野辺 ブルーエコノミーも究極的には、ブランディングです。サステナビリティに対する企業への社会的な期待の高まりというのは当然あるわけですから、我々は「会社としてはこういうことをやっていますよ」ということでイメージが向上していくかなとは思いますね。
今、当社は「保険を引き受けて、保険金を払う」という従来の損害保険の機能から事業領域を広げようとしています。ブルーエコノミープロジェクトもその一環で、保険の引き受けをして収益を上げるという事業構造だけではなく、保険というくくりから出て、新しいことをやっていこう、会社として変わっていこうとするプロジェクトです。学生のみなさんは損害保険と聞くと自動車保険とか火災保険を想像すると思います。その在来型の事業ももちろん大事ですが、当社の方針としては、そういった事業領域をさらに発展させて、新しい領域を広げていこうとしています。ぜひ、そういったところを感じ取っていただければと思っています。
──御社が目指す新しいビジネスモデルとは?
山野辺 「補償の前後」という言い方をしています。例えば、保険を引き受けるときはプロジェクトが始まる前に、リスクをどうマネジメントするかというところから関与します。インターリスク総研というグループ会社があり、我々と連携をしてリスクに関するコンサルティングサービスを提供したりもしています。これらの事故・災害を未然に防ぐ取組が「補償の前」です。
そして、実際に事故が発生した後、回復を支援する取組が「補償の後」です。例えば「防災ダッシュボード」では、地震や洪水の発災後速やかに被災規模を可視化することで、初動対応を迅速化することが可能です。このようなデジタルツールを活用することで、単に保険金を支払う機能から拡張した新たなビジネスの開発を進めています。
──海洋エネルギー室以外に以前からブルーエコノミーに取り組んでいる部署はありましたか。
山野辺 公務開発部ではブルーカーボンの領域で、日本の沿岸域にある「藻場」の再生とブルーカーボンクレジットの創出に取り組んでいます。日本では磯焼けといって、ウニが沿岸の藻場を食べ尽くし海が砂漠化しています。これも、温暖化に伴う海水温上昇の影響ではないかといわれています。これは漁獲量にも影響を与えますが、実は海洋は世界の大気中のCO₂の約25%を吸収しているとされており、陸域と並び自然界で最大級のCO₂吸収源といわれています。 特に海洋の国土が広い日本においては非常に重要で、藻場の再生と、そこから生まれるブルーカーボンクレジットでビジネスができないかと公務開発部が模索しています。
──ブルーエコノミーという全社的な取り組みにしたことのメリットはありましたか。
山野辺 具体例ですと、洋上風力発電のプロジェクトがあります。導入するときには、その海で暮らしている漁業者の人たちの理解を得るのが大事です。私たちは五島沖のプロジェクトに参画していますが、五島沖の漁業者の皆さんも磯焼けを非常に問題視されていて、独自に対策をとられて再生が進んでいる状況でした。そういった漁業者の人たちの取り組みを我々が理解できるようになり、相互理解をつくりながら保険の引き受けをすることができるようになったと思っています。
■新しいビジネスモデル
──自動車保険で一般消費者向けのビジネスもなさっていますが、ブルーエコノミープロジェクトを進めていく上で一般の人々に向けてはどのようなアプローチを考えていますか。
山野辺 ブルーエコノミーも究極的には、ブランディングです。サステナビリティに対する企業への社会的な期待の高まりというのは当然あるわけですから、我々は「会社としてはこういうことをやっていますよ」ということでイメージが向上していくかなとは思いますね。
今、当社は「保険を引き受けて、保険金を払う」という従来の損害保険の機能から事業領域を広げようとしています。ブルーエコノミープロジェクトもその一環で、保険の引き受けをして収益を上げるという事業構造だけではなく、保険というくくりから出て、新しいことをやっていこう、会社として変わっていこうとするプロジェクトです。学生のみなさんは損害保険と聞くと自動車保険とか火災保険を想像すると思います。その在来型の事業ももちろん大事ですが、当社の方針としては、そういった事業領域をさらに発展させて、新しい領域を広げていこうとしています。ぜひ、そういったところを感じ取っていただければと思っています。
──御社が目指す新しいビジネスモデルとは?
山野辺 「補償の前後」という言い方をしています。例えば、保険を引き受けるときはプロジェクトが始まる前に、リスクをどうマネジメントするかというところから関与します。インターリスク総研というグループ会社があり、我々と連携をしてリスクに関するコンサルティングサービスを提供したりもしています。これらの事故・災害を未然に防ぐ取組が「補償の前」です。
そして、実際に事故が発生した後、回復を支援する取組が「補償の後」です。例えば「防災ダッシュボード」では、地震や洪水の発災後速やかに被災規模を可視化することで、初動対応を迅速化することが可能です。このようなデジタルツールを活用することで、単に保険金を支払う機能から拡張した新たなビジネスの開発を進めています。
欧州3カ所の洋上風力取得 ノウハウ生かし事業拡大へ
■ブルーエコノミープロジェクトの進展
──海に関する引き受けが3メガの中でもトップなのは、どういう経緯があったんでしょうか。
山野辺 三井海上と住友海上が合併して以降、いわゆる船舶保険の分野と貨物保険の分野ではずっとナンバーワンです。三井と住友の企業グループの存在が大きいと思います。
──今後、ブルーエコノミープロジェクトはどういう形で進めていかれるのですか。
岡野 ブルーカーボンクレジットがより普及していくのを後押しできるような保険やサービスの提供ですね。保険はこれから開発しますが、サービスにあたっては自社のリソースだけでは厳しいところもあるので、スタートアップとの連携も考えています。
──ブルーエコノミー分野でほかに進んでいるプロジェクトは。
岡野 1つは船舶の自動運航ですね。25年までに実用化を目指しています。国のロードマップがあり、船舶関連企業がいろいろと取り組みを進めているんですけど、我々も実証実験に参画をしています。その船舶の保険の引き受けだったり、実際の自動運行にかかるリスクの整理だったり、それをプロジェクトとしてやっていこうとしています。
──船舶は自動航行することで事故が回避できるのでしょうか。
岡野 事故の回避よりは省力化が目的です。人手不足などの問題があるので、できるだけ自動化をしていくと。衝突リスクに加えて、着岸と離岸のリスクが高いんじゃないかという仮説を立てています。あとは自動運行システムが乗っ取られるといったサイバーリスクがあるのではないかと考えています。
(後編はこちらから)
(インタビュー写真・大嶋千尋)
──海に関する引き受けが3メガの中でもトップなのは、どういう経緯があったんでしょうか。
山野辺 三井海上と住友海上が合併して以降、いわゆる船舶保険の分野と貨物保険の分野ではずっとナンバーワンです。三井と住友の企業グループの存在が大きいと思います。
──今後、ブルーエコノミープロジェクトはどういう形で進めていかれるのですか。
岡野 ブルーカーボンクレジットがより普及していくのを後押しできるような保険やサービスの提供ですね。保険はこれから開発しますが、サービスにあたっては自社のリソースだけでは厳しいところもあるので、スタートアップとの連携も考えています。
──ブルーエコノミー分野でほかに進んでいるプロジェクトは。
岡野 1つは船舶の自動運航ですね。25年までに実用化を目指しています。国のロードマップがあり、船舶関連企業がいろいろと取り組みを進めているんですけど、我々も実証実験に参画をしています。その船舶の保険の引き受けだったり、実際の自動運行にかかるリスクの整理だったり、それをプロジェクトとしてやっていこうとしています。
──船舶は自動航行することで事故が回避できるのでしょうか。
岡野 事故の回避よりは省力化が目的です。人手不足などの問題があるので、できるだけ自動化をしていくと。衝突リスクに加えて、着岸と離岸のリスクが高いんじゃないかという仮説を立てています。あとは自動運行システムが乗っ取られるといったサイバーリスクがあるのではないかと考えています。
(後編はこちらから)
(インタビュー写真・大嶋千尋)
SDGsでメッセージ!
損害保険と聞いて、具体的に何をやっているんだろうとイメージしにくいかもしれませんし、身近な自動車保険、火災保険を思い浮かべるかもしれません。しかし、今の弊社が進めている取り組みは、既存の保険事業から領域を大きく広げて、補償の前後取り組みを展開しています。学生のみなさんの中でも、具体的に何がやりたいか決まっていない人も多くいると思うんですが、損害保険の1つの魅力はあらゆる業種のみなさまと一緒に事業ができるところです。ここから先、今の事業にとらわれない働き方をやってみたい、何か挑戦してみたいと思う人がいれば、ぜひ弊社も選択の中の1つに入れてもらえればと思います。一緒にサステナビリティの取り組みを進めていきましょう。(山野辺さん)
弊社は損害保険会社、保険という概念にとらわれず、今は未来を変える取り組みをしています。そこに挑戦するフィールドはありますので、みなさんをお待ちしています。(岡野さん)
三井住友海上火災保険株式会社
【損害保険】
当社は「未来にわたって、世界のリスク・課題の解決でリーダーシップを発揮するイノベーション企業」を目指す姿として掲げています。 その実現に向けて、保険本来の機能に加えて補償前後の価値を創造・提供する「リスクソリューションのプラットフォーマー」として、 社会のサステナビリティと当社のサステナビリティを同時実現する「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」を推進しています。
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