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東急株式会社
東急〈前編〉創業から受け継ぐ「サステナブルなまちづくり」への思い【SDGsに貢献する仕事】
2023年09月27日
(冒頭のSDGsアイコンは、東急株式会社がとくに重視するゴール)
【お話をうかがった社員のプロフィル】
●小林更紗(こばやし・さらさ)さん(写真左)=社長室ESG推進グループ。2021年早稲田大学商学部卒業、同年入社、現部署に配属される。
●藤井美緒(ふじい・みお)さん(写真右)=ビル運用事業部 事業推進第二グループ。2016年同志社大学商学部卒業。同年に関西の南海電気鉄道に入社し、不動産部門で駅前開発プロジェクトや駅物件の開業などに携わる。2020年に東急株式会社に入社し、現部署に配属され東京都町田市の「南町田グランベリーパーク」の商業施設の資産管理ならびにまち運営のマネジメント業務を担当。
(撮影地・南町田グランベリーパーク)
社会課題を起点にしたまちづくりに創業以来取り組む
──お二人の、今の仕事の内容を教えてください。
小林更紗さん(左) メインの業務は、企業のESG(環境・社会・ガバナンス)に対する取り組み状況を評価して格付けを行うESG評価機関への情報開示です。それに加えてSDGsを社内へ浸透させたり、東急線沿線にお住まいの方々に環境に配慮した商品やサービスを選んでいただく方を増やしたりするという目標を立て、そのための施策を考えています。また、環境や人権に配慮したサプライチェーンマネジメントなどにも携わっています。サステナビリティの推進に取り組んでいるチーム員は10人程度です。
藤井美緒さん(右) ビル運用事業部は、東急線沿線で当社が所有している不動産物件の資産管理 や、運用を通じた物件価値を向上させる仕事を担当しています。そのなかで私は、今日取材に来ていただいた「南町田グランベリーパーク」(東京都町田市)の商業施設のマネジメント業務を担当しています。行政や周辺事業者、グループ会社とも連携しながら、まち全体が中長期的に持続可能的に発展していくために、エリアの価値向上や地域との連携などに取り組んでいます。
──東急は鉄道やバスなどの交通インフラから沿線の都市開発、各種サービスの提供に至るまで事業範囲が幅広いですが、SDGsについては何を重点的に取り組まれているのでしょうか。
小林 人口が集中し東京都市部の住環境が悪化していた大正時代、東京郊外での緑豊かな住宅や都市の開発を手がける「田園都市株式会社」が渋沢栄一らによって設立されました。SDGsという言葉ができるはるか前から、自然と調和したまちづくりをめざしていたんです。
その分譲地(洗足、田園調布など)と都心を結ぶ鉄道として1922年に創業された目黒蒲田電鉄が、当社の前身です。それ以来、当社は一貫して「社会課題を起点にしたまちづくり」に取り組んできました。SDGsのゴールすべてに取り組んでいますが(図参照)、そのなかでも11番のゴール「住み続けられるまちづくりを」を一番重視するゴールとして定めています。東急グループは「美しい時代へ」というスローガンを掲げており、美しさとは、「人、社会、自然が調和した中で、国を超え時代を超え、一人ひとりの心に深い感動を呼び起こすありようのこと」と定義づけています。人と社会と自然の調和がもたらす「美しさ」は、SDGsのいう「持続可能性」にもつながる概念だと考えています。
小林 創業の原点である鉄道は環境に優しい移動手段であり、鉄道事業を続けていくことはサステナブルなまちづくりの1つにつながると思います。都市開発でも南町田グランベリーパークのように自然の環境に配慮したり、再生可能エネルギー(再エネ)導入や創エネ(エネルギーの創造)などを通じSDGsに配慮したり、といった取り組みを続けています。
──同業他社と比べて、東急株式会社のSDGsに取り組む上での特色は。
小林 同業他社の中でも、当社のように幅広く事業を行い、SDGs全部のゴールを包含している会社はかなり特殊だと思います。鉄道では2022年4月から東急線の全路線で、再生可能エネルギーなど非化石電源の環境価値を証書にした「非化石証書」の活用により再生可能エネルギーに由来する電力を実質的に100%利用して運行するという業界に先駆けた取り組みも行っています。駅の設備まで再エネを使っており、鉄軌道全路線で再エネを使用するのは日本初の取り組みです。
沿線住民の行動変容にも働きかける
──鉄道では「SDGsトレイン」も走らせましたね。
小林 はい、1編成ずつ5路線に入り、毎日運行しています。レアな車両なので、乗っていただいたお客様から「すごく嬉しかったです」という声をいただいたりしています。SDGsトレインの車内には東急のSDGsへの取り組み、協働各社や沿線の自治体の取り組みに関するポスターを載せていて、それへの反響もいただきます。
毎年、東急線沿線の「SDGs意識調査 」をしていまして、いまはもうほとんどの方がSDGsという言葉はご存じと思っています。そこからSDGsに共感していただき、SDGsのための具体的な行動をしていただくところに私たちとしてはフォーカスしていきたいです。そのために、お客さまに考えてもらうエッセンスをちりばめようと考えています。
──沿線の住民に行動を変えてもらうのも御社のミッションですか。
小林 はい。2022年に策定した「環境ビジョン2030」の長期環境目標としてCO2の削減や廃棄物、水の使用量の削減とあわせて「街への取り組み」という項目もあり、その中の1つに「SDGs行動する人※の割合を3割向上させる」という目標があります。かなりチャレンジングですが、やりがいのある取り組みです
さらに、街への取り組みだけではなく、2030年度までに100件以上の環境負荷を低減するサービスや商品を提供するという目標を掲げています。鉄道の再エネ運行のほか、南町田グランベリーパーク駅ではユニリーバさんと共同して使用済みプラスチック容器の回収をするなど、コツコツと取り組んでいます。
※SDGs意識調査において、SDGs17のゴールのいずれか1つ以上で企業を選ぶ/行動する意向のある人
(写真・東急株式会社提供)
小林 SDGsの理念に共感して、SDGsに配慮したサービスや商品を提供している会社を選ぶというところで、まずはその商品がSDGsに結びついていると知ってもらうことが第一歩と思います。SDGsに貢献しているという実感は、そういった知識がないと生まれないと思います。SDGsトレインや様々な媒体を通じて、「何がSDGsにつながるか」を知ってもらいたいです。
──どういう啓発が一番効くと思われますか
小林 それが分かればいいですよね。最近はメディアでもSDGs、SDGsと言われていて、「SDGs疲れ」というワードも出てきているので、「押しつけずに知っていただく」というところのバランス感覚が難しいですね。
例えば「電車が環境に優しい」というのは、私も入社してから知ったんですけど、知らない人もいると思います。電車を利用するのは、かなり日常に溶け込んでいる行動ですが、「一種のSDGs達成につながる行動です」というアピール方法もあると思います。先ほど「環境ビジョン2030」を策定したと言いましたが、そのコンセプトで「なにげない日々が未来をうごかす」とあります。負担感なく、皆さんにSDGsや環境に配慮した行動を取っていただくために、当社にいろんなタッチポイントがあると考えています。
──SDGsトレインを運営するにあたって、思い出深いことは。
小林 SDGsトレインは沿線の自治体に、行っているSDGsの取り組みをPRするプラットフォームとして使っていただいているのですが、各自治体にお声がけをしてSDGsトレインの想いや取り組みに共感・賛同してもらって、一緒に歩みを進めていく過程が記憶に残っています。
──SDGsトレインは東急で企画されたのですか。
小林 もともとは関西の阪急阪神ホールディングスさんで企画されたものを、「東西で協働を」とのことで、東急グループにも声をかけていただきました。当社の創業者である五島慶太と、阪急を創設された小林一三さんとの交流があり、そのご縁でお声がけいただいたと聞いています。
──ほかにも御社のSDGsに関する取り組みで、小林さんがアピールしたいものはありますか。
小林 最近の取り組みでは、2023年に開業した東急歌舞伎町タワーが、SDGsの「誰一人取り残さない」という理念にかなり近いと思います。「好きを極める」というコンセプトを掲げ、ジャンルを問わず伸び盛りのクリエイターやコアなファンたちが活躍、熱狂できる場を提供しています。一人ひとりの趣味嗜好 を社会や当社が尊重して伸ばしていく場であり、来場してくれた方々が楽しんでもらえる建物だと思います。
──ご自身では何かSDGsについて行動をされていますか。
小林 本当の本当にちょっとのことですが、入社からずっと会社にはペットボトルではなく、毎日水筒を持ってきています。こうした「なにげない日々が、未来をうごかす」と思っています。
──小林さんが考える、東急株式会社の魅力は。
小林 電車を引いて、その周りのまちづくりをして、開発してきたという創業からの想い、DNAが続いていて、ぶれていないのが特長の1つだと思います。
商業施設と公園を官民一体でつなぐ
──藤井さんが担当されている南町田グランベリーパークは、具体的にどういう点がSDGsに配慮しているのでしょうか。
藤井 もともと南町田には2000年に 田園都市線の南町田駅(当時)直結でグランベリーモールという商業施設を開業し、その隣には東京都町田市が所有する鶴間公園がありました。ただ、せっかく駅直結で商業施設と公園があるのに、施設と公園のあいだが道路で分断されていて、お互い連携されていない状況で、公園も木がうっそうとしていて川が近く、治安面や防災面での不安も指摘されていました。そこで2013年に、当社と町田市の官民連携でまち全体を新しく作り替えようという動きがスタートしたのです。当時はまだSDGsという言葉は一般的ではなかったと思いますが、当社の創業からの思いとして持続可能なまちづくりを自然とめざしていました。
――どのように作り替えたのですか。
道路で分断されていた部分をつなぎ、歩車分離、かつバリアフリーにしたほか、公園をリニューアルして、安全面も向上させました。また、各施設の一部を災害時の避難場所に指定しており、安全性という面でも「住み続けられるまちづくりを」というゴールにあてはまっていると思います。今は商業施設と鶴間公園、その間をつなぐパークライフ・サイトという3施設が連携して、まちを盛り上げるイベントもしています。
藤井 例えば、毎年恒例で行っている「つるまパーク大作戦」という市民参加型のイベント(写真)は、2023年は11月3日に実施予定ですが、毎年1万人以上が集まり、リピーターも増えてきて定着しつつあるのを感じます。主催は公園の指定管理者ですが、私たちも協力して町田市以外の大和市や相模原市の観光協会をはじめ、地域の方々に参加の声かけをしています。たくさんの人が来てくれることによって、まちの価値が上がっていくのは当社にとってもメリットです。また、9月に実施した防災イベントでは、防災というと固いイメージがありますが、遊んで楽しんで学べるようなコンテンツを用意し、まち全体で防災意識の向上を目指しています。ほかにも、まちでは大小さまざまなイベントを行っています。
──御社はどういったサポートをされていますか。
藤井 当社は3施設がイベントを行ったり、まちの魅力をPRしたりするのをバックでサポートする、町田市と東急が立ち上げた一般財団法人の事務局を担っています。町田市と東急は、まちのお財布機能を果たす一般財団法人に対して資金を投入し、みなさんがやりたいことを実現できる仕組みを整えています。
プロジェクトの発足当時からは担当者も変わっていて、当初の思いやコンセプトを引き継ぎながらも同じ思いでやってもらうのは少し難しいところもあるかもしれません。それは当然のことだと思います。「無理にやっている」感が出るといいものができないので、定例の会議以外にも個別にコミュニケーションの機会を持ち、ギャップを埋められる部分は埋めて、共通する部分は一緒にやっていきましょうという思想を今のメンバーで作っていければ、と思っています。
(後編はこちらから)
(写真・山本友来)
SDGsでメッセージ!
私は就活のときに、交通課題を解決したいという想いを起点にやりたいことを考えました。みなさんも「社会はこうあるべき」「こうなったらより良くなるのに」という想いがあると思います。そういった想いをぜひ大切にして、就活をしてもらえればと思います。当社は不動産と交通だけではなく本当に幅広い事業をしているので、社会課題の解決や、持続可能な社会をつくる取り組みに携わるチャンスが多い会社だと思います。そんな視点で、当社を選んでいただけたら嬉しいです。(小林さん)
時間をかけて自分のことを掘り下げ、企業のことを調べたり、将来のことを考えたりする機会は就活以外になかなかないと思います。まずは自分の興味のあることに絞って、それにおける課題を自分なりに考えた上で、どういう世界になったら、みんなが楽しく幸せになれるかを想像してもらいたいと思います。その想像する世界が、東急グループ が目指している世界と共通するところがあったら、ぜひ一緒に働きたいと思います。私は中途入社ですが、当社は働きやすい環境が整っていて、いろいろな働き方ができます。チャレンジを応援する制度もたくさんあり、社内副業のように他部署の仕事が募集されている枠があって、応募することもできます。(藤井さん)
東急株式会社
【不動産、交通事業など】
源流は1918年に渋沢栄一を発起人として誕生した「田園都市株式会社」。その鉄道部門を別会社とした「目黒蒲田電鉄株式会社」が1922年に設立され、現在の東急(株)につながりました。戦後の東京圏における住宅不足の解消と生活環境改善を目指し、鉄道および都市開発事業にて発展しています。現在は交通インフラ事業、都市開発事業、生活創造・リテール事業、ホスピタリティ事業など、東急線沿線を中心に多様な事業を展開。2019年に東京急行電鉄株式会社から東急株式会社へ商号変更。あわせて鉄軌道事業を東急電鉄(株)として分社化しました。
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※就活割に申し込むと、月額2000円(通常3800円)で朝日新聞デジタルが読めます。
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