SDGsに貢献する仕事

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INPEX〈後編〉洋上風力は再エネの「切り札」 数十年単位の「時間軸」で働く【SDGsに貢献する仕事】

2023年05月24日

 「SDGsに貢献する仕事」をしている若手・中堅社員に聞くシリーズの第8回、INPEXの後編です。欧州などに比べ出遅れていた日本の風力発電ですが、制度面の整備が進み、まだ世界でも珍しい「浮体式」を軸に再生エネルギーの「切り札」と位置づけられるようになりました。未来のエネルギーの中核を担う社員は、どんな就活をして、なぜINPEXを選んだのか、どんな会社なのか、じっくり聞いてきました。(編集長・木之本敬介)
前編はこちら

(冒頭のSDGsアイコンは、INPEXがとくに重視するゴール)

【お話をうかがった社員のプロフィル】
●日中亮太(ひなか・りょうた)さん=INPEX 再生可能エネルギー・新分野事業本部 技術ユニット 風力事業グループ
 2012年、筑波大学大学院修了(システム情報工学研究科 構造エネルギー工学専攻)、同年、施設エンジニア(電気)として入社。直江津LNG基地での建設・試運転業務を経て現職。風力事業のプロジェクトマネジャーとして国内外の洋上風力発電事業の開発・管理を担当。

浮体式構造物に強み 普及のカギは供給網

■今後の展開
 ──今後の目標は?
 洋上風力は他の再エネと比較すると発電規模が大きいのが特徴で、会社が掲げる量的な目標に貢献する要になると考えています。洋上風力事業の拡大を通じて会社のKPI(重要業績評価指標)達成に貢献していきたいですね。

 ──日本は海に囲まれているのに欧州に比べて洋上風力が遅れていますね。
 これまで日本の洋上風力はコストがなかなか下がらず、海域の占用権の課題もあって導入が進みませんでした。一方で欧州では急速に普及し、台湾、韓国も洋上風力の導入拡大を計画しています。日本でもようやく制度面が追いつき、洋上風力が再エネの主力電源化に向けた「切り札」と位置付けられるようになったところです。
 日本は浅い海が少なく、沖合に出るとすぐ深くなる地理的な特徴があります。深い海で洋上風力発電をするときに採用されるのが「浮体式」の技術です。水底に基礎部分が刺さっておらず、浮体構造物の上に風車が乗っています。まだ世界でも商用ベースで建設や運転をしているプロジェクトは限定的です。そのひとつが五島沖プロジェクトであり、早い段階から参画しているのは大きな強みなので「浮体式洋上風力」を積極的に実施していきたいと考えます。

 ──浮体式洋上風力事業でのINPEXの強みはどこですか。
 我々はもともと岸から数十キロ離れた厳しい気象・海象条件の所で石油天然ガスの開発を実施してきました。着床式洋上風力と異なり、浮体式洋上風力は長期的にはまさにそのような環境での開発・操業になると思うので、海洋構造物の建造・設置ノウハウと併せて我々の強みがいかせると考えています。

 ──部品を数万点使う洋上風力は裾野が広い産業ともいわれますね。
 風力発電に重要なのはサプライチェーン(供給網)の構築です。数十基単位で風車をつくるには、専用の港や特殊船が必要です。欧州やアメリカ製の風車を使うとしても、そこに使うギアボックスなどのパーツに日本企業が関与できる機会はあります。工事には数百人単位の作業員が必要で、作業員のためのホテルや食事などまで考えると、波及効果は非常に大きいと考えます。いろんな業界が洋上風力に関わることが日本全体の発展につながると思っています。

(写真・ベトナムの風力発電所を視察した日中さん=INPEX提供)

■働き方
 ──SDGsには働き方やジェンダー平等の目標もあります。INPEXの取り組みは?
 コアタイムのないスーパーフレックス制度を取り入れています。月に最低何時間働く必要があるかはあらかじめ決まっていますが、自分の生活リズムにあわせることができ、たとえば子どもがいる社員が朝早く働き始めて夕方早く切り上げるといった柔軟な働き方ができます。在宅勤務も東京五輪前の2020年に導入済みです。

 ──エネルギー会社には男性の職場というイメージもありますが、女性社員の比率は?
 女性比率は20%強です。24時間エネルギーを安定供給するために夜勤をする社員もいるため、他業種に比べればまだまだ男社会の面はあると思いますが、育休の取りやすさなど制度面では劣っていないと思います。国から、子育てや介護がしやすい「くるみん認定」も取得しています。海外のビジネスが多く出張や駐在も多いのですが、最近では子持ちの女性社員が子供を帯同して海外赴任する例も出てきました。

「海外」「電気」「再エネ」を軸に就活

■日中さんの就活
 ──学生時代に専攻した「構造エネルギー工学」はどんな内容ですか。
 基本的には電気工学です。海外の再エネ由来の電気を直流送電で日本に送り、再エネ比率を上げるような電力システムの実現可能性を研究していました。

 ──もともと再エネに興味が?
 はい、高校時代に興味を持ったのは燃料電池でした。水素と酸素から発電できて、出てくるのは水だけという技術が面白そうだと思い、電気工学を専攻しました。

 ──どんな就活をしたのですか。研究室推薦で就職したのですか。
 推薦もありましたが、私は自由応募でした。同じ研究室の同期と比べて、そこまで研究に熱心に打ち込めず研究職には向いていないと感じていました。そのため、メーカーの研究職というよりはエンジニアの職種のほうが向いているんだろうと。電気エンジニアのポジションがある電力会社やゼネコンを中心に、JRなど鉄道会社も見ていました。工事やインフラ関係ですね。

 ──どうしてインフラに興味を?
 学生時代に友だちとよく東南アジアに旅行に行っていて、いきなり停電になる経験をしました。東南アジアの田舎はまだまだ電気が足りていないという事実を初めて知り、その人たちの生活を支えるような仕事がしたいなと思っていました。

 ──なぜINPEXに?
 「海外で働きたい」「電気のバックグラウンドを生かしたい」「関心があった再エネの事業に将来携われる可能性があるかどうか」、この三つが大きな軸で、INPEXはすべてに当てはまっていたんです。当時はまだ再エネはCSR(企業の社会的責任)的な側面が強く、本格導入まで時間がかかるのではと思っていましたがINPEXならいずれチャンスがあるだろうというのも決め手でした。

 ──入ってみたら、いきなり担当に。
 思った以上に世の中の流れが早く、再エネが重要なエネルギーとなりました。もともといつかやりたいと思っていた再エネ事業に若いうちから関与することできたのは、今考えると非常に良かったと思っています。

 ──SDGsに興味があっても、学生時代に日中さんのような勉強をしている人は必ずしも多くありません。
 私は電気専攻で再エネに関することもやってはいましたが、現在の仕事は会社に入ってゼロから学びました。また、再エネのプロジェクトは技術、財務、法務などいろんなバックグラウンドを持った人材がチームを組んで進めていくのが特徴です。ですから、本人のバックグラウンドもプロジェクトのどこかで生かせるチャンスがくると思いますし、プロジェクトを通じて学ぶことのほうが多いと思います。

「短期・個人」ではなく「長期・チーム」で

■社風
 ──INPEXの選考で印象に残っていることは?
 大学の研究室の二つ上の先輩が入社していたので話は聞いていましたが、他社と比べて感じたのはスケールの大きさです。ひとつのプロジェクトの規模、関わる人数、それが長期的な時間軸で行われるところが印象的で、それに対応できる人材を求めていると感じました。新入社員研修が1年間(当時)というのも、他社に比べると非常に手厚いと思います。スケールの大きさや長期的な視野で物事を考えている印象があります。

 ──入社してみて、どんな社員が多いと感じますか。
 多様な人材が必要でいろんなバックグラウンドの人が集まっている会社ですが、私が一番の特徴だと思うのはプロジェクトの「時間軸」です。石油・天然ガスや洋上風力もそうですが、プロジェクトのライフサイクルが数十年にわたります。だから、他の業界の営業のように1日とか1カ月で数字が出てすぐ成果につながるわけではありません。数十年単位のプロジェクトに腰を据えて粘り強く取り組んでいる人が多く、比較的落ち着いた社風だと感じます。

 ──どんな人が向いているのでしょう?
 就職活動中に会社から「個人で1日、2日、死ぬほど頑張っても全体としてはそんなに変わらない。個人として何かをするよりチームで動く。数百人、多いと千人単位のプロジェクトなので、一人ひとりが短期間で集中してやる仕事ではない。長期的にチーム一体で進めていく必要がある」と言われました。長い目線で仕事ができる人、その素地がある人が向いているように思います。

 ──日中さんは目線の長いタイプなんですね。
 いや、ガツガツしていたと思います(笑)。ただ、中途入社の社員から「他社はもっとガツガツしているし、日々のノルマや数字の意識がすごく強い。しっかり腰を据えてプロジェクトに取り組めるすごく良い会社だよ」と聞いたこともあります。
 INPEXだけでなく、電力や鉄道などインフラの仕事はライフタイムが長いように感じます。我々は投資して終わりではなく、10年、20年、30年と使い続けながら利益を上げていくので、業種や働き方、ビジネスモデルから来ている特徴ではないでしょうか。

 ──ロシアによるウクライナ侵攻で世界のエネルギー情勢が激変しました。そんな時代にエネルギー会社で働く責任をどう感じていますか。
 ロシアとウクライナの問題を通じて、改めてエネルギーセキュリティーの重要性を再認識したと思います。脱炭素化は課題ですが、今日、明日で実現できるものではありません。まずは世界のエネルギー需要に応えて、本業の石油・天然ガス事業をしっかりやって必要としている人たちに届ける。ただ、従来と同じやり方ではなく、なるべく低炭素、クリーンな技術を使いながら供給していく。そのうえで長期的な視点に立ち、再エネを含む水素などの技術開発も進めながら、長期的なカーボンニュートラルに貢献していきます。短期的な視野と長期的な視野を使い分けながら、事業を進める必要があると思います。

 ──学生がSDGsを含めて、社会課題を「自分事」として考えるにはどうしたらいいでしょうか。
 今は変化が大きい世の中です。極端な言い方すると、昨日の常識が明日の常識じゃないかもしれない。しっかり情報をキャッチアップし、正しい情報をインプットして理解するのが、SDGsに限らず全ての物事において大事です。そのうえで大なり小なり何でもいいので、自分が過去に取り組んできた経験と照らし合わせて、何かできることがないかと考えてみるのが、小さくても第一歩だと思います。

(インタビュー写真・植田真紗美)

SDGsでメッセージ!

 INPEXはエネルギーの開発会社で、SDGsでは7番目のゴール「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」がメインで関わってくるところです。石油・天然ガスの開発が本業なので、将来的にどうなのかという目線で見る学生もいると思いますが、よく会社を見てもらうと、長期的な視野に立って次世代の再生可能エネルギー、水素、それらを支える技術へも積極的に投資しているので、いろんなエネルギーのいろんな分野に関与できる機会があります。石油・天然ガスも当面は必要なエネルギーで、求めている国も多くあります。それを供給できるやりがいもありますし、その次のエネルギーの開発に関与できるチャンスも十分あるのがINPEXの一番の魅力です。そうした切り口で見てもらうと、INPEXの魅力を分かってもらえると思います。

株式会社INPEX

【資源・エネルギー開発】

 株式会社INPEXは、日本最大級の総合エネルギー開発企業です。日本のエネルギー消費量の約1割を、オーストラリアをはじめとする世界各地で開発生産しています。
 Energy Transformation(EX)のパイオニアとして、石油・天然ガスから水素、再生可能エネルギーまで多様でクリーンなエネルギーの安定供給を目指しています。ネットゼロカーボン社会を理想から現実に。そのような思いで2022年に策定した「INPEX Vision@2022」の達成に向けて、エネルギーの安定供給とEXの二刀流で果敢に挑戦しています。