
■今後の展開
──今後の目標は?
洋上風力は他の再エネと比較すると発電規模が大きいのが特徴で、会社が掲げる量的な目標に貢献する要になると考えています。洋上風力事業の拡大を通じて会社のKPI(重要業績評価指標)達成に貢献していきたいですね。
──日本は海に囲まれているのに欧州に比べて洋上風力が遅れていますね。
これまで日本の洋上風力はコストがなかなか下がらず、海域の占用権の課題もあって導入が進みませんでした。一方で欧州では急速に普及し、台湾、韓国も洋上風力の導入拡大を計画しています。日本でもようやく制度面が追いつき、洋上風力が再エネの主力電源化に向けた「切り札」と位置付けられるようになったところです。
日本は浅い海が少なく、沖合に出るとすぐ深くなる地理的な特徴があります。深い海で洋上風力発電をするときに採用されるのが「浮体式」の技術です。水底に基礎部分が刺さっておらず、浮体構造物の上に風車が乗っています。まだ世界でも商用ベースで建設や運転をしているプロジェクトは限定的です。そのひとつが五島沖プロジェクトであり、早い段階から参画しているのは大きな強みなので「浮体式洋上風力」を積極的に実施していきたいと考えます。
──浮体式洋上風力事業でのINPEXの強みはどこですか。
我々はもともと岸から数十キロ離れた厳しい気象・海象条件の所で石油天然ガスの開発を実施してきました。着床式洋上風力と異なり、浮体式洋上風力は長期的にはまさにそのような環境での開発・操業になると思うので、海洋構造物の建造・設置ノウハウと併せて我々の強みがいかせると考えています。
──部品を数万点使う洋上風力は裾野が広い産業ともいわれますね。
風力発電に重要なのはサプライチェーン(供給網)の構築です。数十基単位で風車をつくるには、専用の港や特殊船が必要です。欧州やアメリカ製の風車を使うとしても、そこに使うギアボックスなどのパーツに日本企業が関与できる機会はあります。工事には数百人単位の作業員が必要で、作業員のためのホテルや食事などまで考えると、波及効果は非常に大きいと考えます。いろんな業界が洋上風力に関わることが日本全体の発展につながると思っています。
(写真・ベトナムの風力発電所を視察した日中さん=INPEX提供)
■働き方
──SDGsには働き方やジェンダー平等の目標もあります。INPEXの取り組みは?
コアタイムのないスーパーフレックス制度を取り入れています。月に最低何時間働く必要があるかはあらかじめ決まっていますが、自分の生活リズムにあわせることができ、たとえば子どもがいる社員が朝早く働き始めて夕方早く切り上げるといった柔軟な働き方ができます。在宅勤務も東京五輪前の2020年に導入済みです。
──エネルギー会社には男性の職場というイメージもありますが、女性社員の比率は?
女性比率は20%強です。24時間エネルギーを安定供給するために夜勤をする社員もいるため、他業種に比べればまだまだ男社会の面はあると思いますが、育休の取りやすさなど制度面では劣っていないと思います。国から、子育てや介護がしやすい「くるみん認定」も取得しています。海外のビジネスが多く出張や駐在も多いのですが、最近では子持ちの女性社員が子供を帯同して海外赴任する例も出てきました。