
■インドネシア
──日中さんの入社後の経歴を教えてください。
約1年間の新入社員研修を経て、新潟県上越市のLNG(液化天然ガス)受入基地の建設現場に配属されました。オーストラリアで生産しているLNGを日本に船で輸送し、パイプラインを通じて需要家に供給していますが、LNG受入基地は液化して日本に運んできたLNGをガスに戻す施設です。当時は基地を建設中で、建設工事や試運転、運転開始後のトラブル対応を担当しました。現場の事務所で、ずっと作業服でしたね。
LNG受入基地の操業が一段落したこともあり、2014年にもともと関心があった再エネ事業を実施している再生可能エネルギー・新分野事業本部に異動しました。
──何のプロジェクトを担当したのですか。
最初に担当したのはインドネシア・スマトラ島のサルーラ地熱発電事業です。地熱発電事業は地下を調査、掘削し、蒸気を生産するため、我々の石油・天然ガスで培った技術を生かすことができます。また、インドネシアは当社が以前から石油・天然ガスを開発してきた国でもあり、2015年から同プロジェクトに参画しています。
──どんな事業だったのでしょう。
このプロジェクトの出資者は、九州電力、伊藤忠商事、インドネシアのPT Medco Power Indonesia、イスラエルのOrmat Technologies, Inc.という地熱発電設備のメーカー、そしてINPEXの5社です。プロジェクトの実施主体は、5社それぞれの子会社を通じて出資する事業会社・サルーラオペレーションズ社で、出力約 330メガワットの地熱発電所を建設した後、発電する電力をインドネシア国営電力公社に 30 年間にわたって売電する事業です。
──日中さんの具体的な仕事は?
私は出資者の立場であるINPEXの担当者としてこの事業に関わりました。地熱井の掘削や発電所の建設工事は、事業会社であるサルーラオペレーションズ社が担当します。一方、INPEXは事業会社に人材や技術、資金を提供してプロジェクトをサポートするとともに、出資者として事業会社の事業運営方針の意思決定を行います。たとえば、事業会社から毎年、作業計画予算の承認依頼が出資者に来るので、INPEX内部で決裁を取る必要があります。私は計画の内容を確認したうえで、社内決裁を取るための説明資料作成や決裁取得後の事務手続きを担当していました。
出資者の立場でのINPEXのチームは数名です。基本的には東京での仕事ですが、ジャカルタで開かれる事業会社の取締役会に定期的にオブザーバー参加していましたし、建設工事現場にも何回か行く機会がありました。
──エンジニアとはかけ離れた仕事ですね。
INPEXとしても初めての海外での再エネプロジェクトで、最初は本当に分からないことだらけでしたが、上司や関係者のサポートも得ながら、もがきながらやっていくうちに、ひと通りは分かるようになりました。心がけたのは、分からないことをそのまま放置しないということです。
──貴重な経験だったのでしょうね。
若かったこともあり、とにかくがむしゃらに取り組みました。さまざまなトラブルに直面し、その都度対応を迫られましたが、最終的に商業運転を開始したときの達成感は今でも忘れられません。
(写真・インドネシアのサルーラ地熱発電事業の工事現場を訪ねた日中さん=INPEX提供)