SDGsに貢献する仕事

積水ハウス株式会社

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積水ハウス〈前編〉「5本の樹」で住宅地に鳥と蝶が 子ども・環境活動のNPO支援【SDGsに貢献する仕事】

2022年08月03日

 SDGs(持続可能な開発目標)関連の業務に携わっている若手・中堅社員に直撃インタビューする新企画「SDGsに貢献する仕事」。第2回は、太陽光発電と高断熱を組み合わせてエネルギー消費を実質ゼロにする「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH=ゼッチ)」で業界をリードする積水ハウスです。SDGsとも深く関わるのが、環境や社会問題に配慮するESG(環境・社会・企業統治)。現場の営業を経験した後、若くしてESG経営推進の部門で働いている社員にお話をうかがってきました。(編集長・木之本敬介)

(冒頭のSDGsアイコンは、積水ハウスがとくに重視するゴール)

【お話をうかがった社員のプロフィル】
●大家有喜(おおや・ゆうき)さん/ESG経営推進本部
 2014年、慶応義塾大学文学部卒(アメリカンフットボール部所属)、同年入社し東日本特建支店配属(RC造賃貸住宅新築営業、リノベーション営業)、兵庫シャーメゾン支店(鉄骨造賃貸住宅新築営業)を経て、2021年から現職

ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス累積棟数1位

■自己紹介
 ──自己紹介をお願いします。
 大家さん 入社9年目です。最初の5年間は賃貸住宅やオフィスの土地活用を地主さんに提案する営業を担当し、3年前から兵庫県の事業所で「シャーメゾン」という新築賃貸住宅の営業をして、2021年6月に今の部署に来ました。
 ESG経営推進本部では、主に三つの業務を担当しています。創発型表彰制度「SHIP」の推進、二つ目は社会貢献活動「積水ハウスマッチングプログラム」関連、もう一つが小中学生向けのプログラミング教育です。

 ――ESG部門への異動を希望したんですか。
 希望はしていなくて、営業でずっといくと思っていたので、びっくりしました。SDGsは、お客様との会話で「積水ハウスさんといえば」と出てきて話すことはありましたが、あまり身近には感じていませんでした。

■積水ハウスのSDGs
 ──積水ハウスにとってSDGsとは?
 弊社はグローバルビジョンとして“「わが家」を世界一幸せな場所にする”を掲げ、さらにESG経営のリーディングカンパニーになる目標を立てています。ESG経営推進本部はそのためにできた部署です。今年の「Value Report」では「サステナビリティビジョン2050」を発表しました。「脱炭素社会へ先導」など、2050年に達成するべき五つの課題を決め、それぞれにSDGsをひもづけて考えています。SDGsは「サステナビリティビジョン2050」を達成するためのマイルストーンと考えています。

 ──SDGsの17目標のうち、とくに重視しているのは?
 17ゴールのうち12のゴールが当社と関連しています。部署によって関係するゴールは違いますが、対外的に打ち出しているのは「15陸の豊かさも守ろう」ですね。ZEHなどの脱炭素や生物多様性保全の取り組み「5本の樹」計画も「陸の豊かさ」に関連しています。積水ハウスの戸建住宅のZEH比率は92%(2021年度受注)。累積棟数は業界ナンバーワンです。

 ──「5本の樹」計画とは?
 「3本は鳥のために、2本は蝶のために、地域の在来樹種を」との思いを込めて、地域の気候風土に調和し、鳥や蝶などと相性が良い在来樹種を中心とした庭づくりをする積水ハウスの取り組みです。最近よく自然を増やす「ネイチャー・ポジティブ」が言われますが、庭に鳥や蝶が来れば住んでいる人にも心が安らぐメリットがあります。「5本の樹」計画の庭が点在することで、生態系が周囲の自然環境とつながり、まちなかの庭にも鳥や蝶が飛んでくるようになります。生息域を増やすことで生態系の保全に貢献しており、2001年から始めて累計1800万本以上、植樹してきました。今後も「5本の樹」をさらに広げていきたいと考えています。

 ──家を建てるときに提案するのですか。
 家づくりでは外構(庭)の計画も重要です。外構計画をご提案する際に、「5本の樹」計画についてお話をします。もちろんお客様が植えたい樹があれば強制はしませんが、人気の樹種であっても外来種だと、なかなか多種類の鳥や蝶が来ないんですね。「できれば、在来樹種を植えましょう」とご提案しています。樹木の数を5本に限るわけではなく、適切な数、種類の配置を提案します。
 建築には生物多様性を壊してしまう側面もあるので、生物多様性をなんとか復活させたい思いがありました。実際の効果については、琉球大学の久保田康裕教授が生物多様性のビッグデータをお持ちだったので、積水ハウス独自のデータをお渡しし、分析していただいたところ、「地域の在来種の樹種数が10倍、そして住宅地に呼び込める鳥の種類は2倍、蝶約5倍に増えた」と言ってもらいました。

 ──住んでいる方の感想は?
 戸建にお住いのお客様から「窓から見える緑に癒される」と何度か聞いたことがあります。戸建営業ではなかった私が聞くくらいですから、かなり多くの方の思いなのではないかと思います。

(写真は、屋根一体型の太陽光パネルを並べた積水ハウスのZEH=同社提供)

ESGを自分事化する表彰制度

■ESGを自分事にする表彰制度
 ──大家さんの三つの仕事について教えてください。
 一つ目の創発型表彰制度「SHIP」(Sekisui House Innovation&Performance Awards)は2021年に始めました。全社員が参加して、「会社をもっとこうしたい」「こんな事業ができるんじゃないか」という自由なアイデアを気軽に出し合い、その成果を発表し、社長をはじめ役員が審査をする社内コンペです。当社は「イノベーション&コミュニケーション」を改革の合言葉としており、イノベーティブな人材を創出し続け、自律的な人や組織を目指しています。

 ──SDGsには関係あるのですか。
 SDGsというよりESG経営ですね。全従業員が参加して、ESGを自分事化するのが目的です。積水ハウスの中にESGがあるのではなく、積水ハウスがESGの中にあり、その先にSDGsがあります。会社全体がSDGs、ESGに包まれているという考え方ですね。ただ、社内には温度差があるので、全員参加でSDGsの行動につながる活動をしていこうという狙いです。

 ――どんなアイデアが表彰されたのですか。
 いろいろなアイデアが表彰されましたが、SDGs関連のものも多く含まれていました。詳しくは言えませんが、たとえば法人のお客様からの受注を増やすための施策に、当社のSDGsの取り組みを活かす、といったものなど……。

 ──全社員に広めるのは大変そうですね。
 難しいし大変です。営業の現場では、本社の考えは良いことだと分かっていても、少し遠く感じてしまうんです。「SHIPに参加してください」と言っても 1回では届かないので、浸透には時間がかかります。社内通知システムに流したり、ポスターを貼ったり、社長ブログに書いてもらったり、社内広報誌に載せたり、繰り返しあの手この手で露出度を増やすようにしています。

 ──どのくらいの社員が参加したのですか。
 SHIPのアプリには全社員がアイデアを投稿できるのですが、その登録者数がグループ全社員約2万8000人のうち60%を超えたところです。匿名で、誰かが出したアイデアに、誰でも参画できます。
 毎年1回の開催で、今は第2回の準備中です。ホテルを借りて経営陣の前でアイデアを発表します。スティーブ・ジョブズのプレゼンみたいな感じです(笑)。WEB配信もして、グループ社員の誰もが見られるようにしています。

 ──営業と本社の両方を経験して思うことは?
 会社全体のことがわかるようになったと思います。本社では会社のESG推進を一番の目的として業務を行っていますが、社員みんなにやってもらわないと意味がない。営業のときには考えもしなかった世界が広がっていて、毎日面白いなと思います。

地域の団体支援で社会貢献と経済の両輪が回る

■積水ハウスマッチングプログラム
 ──二つ目の「積水ハウスマッチングプログラム」について教えてください。
 「積水ハウスマッチングプログラム」は社員と会社の共同寄付制度で、一口100円から寄付でき、社員と同額を会社が寄付します。寄付先は社会課題の解決に取り組む、SDGsに沿った活動をしている団体で、中でも「子ども」と「環境」に関する活動をしている団体が対象です。2006年に始めて、加入社員は8000人弱、全体の約30%で、これまでNPOを中心に累計496団体に5億円を超える寄付をしてきました。
 私が担当しているのは、オンラインの社内セミナー「つながりカフェ」です。企画とMCをしています。毎月1回40分ほど、ゲストを招いて講演してもらいます。「積水ハウスマッチングプログラム」という社会貢献活動を、社員により身近に感じてもらうために始めました。ゲストは、プログラムで助成している団体です。全社員に「今月はこのテーマに関連する団体をお呼びしています。ご希望の方は是非」とお知らせして参加を呼びかけています。

 ──なぜ社員と会社の共同寄付なんですか。
 社員の主体性を大事にするためです。会社が寄付するのは簡単ですが、それだと社員が認知しません。毎月100円でも自分の給料から寄付することで社会貢献に関わっている意識を持つことが大事だと思います。
 各地域の団体という点もポイントです。社員に、自分が仕事をしている地域に根ざした活動をしている団体を知ってもらい、地元の地域に目を向けてほしい。地域課題に取り組んでいる団体と連携を深めれば、積水ハウスが地域に貢献できますし、気づくことで社員や会社の成長にもつながります。社会貢献活動と経済活動の両輪が回ることになります。
 支援している団体は喜んでくれますし、社員も社会貢献ができ、地元とつながりができてよかったと言ってくれます。投資家からはこうした取り組みを開示するように言われます。社会貢献活動に対する会社の取り組みは関心が高いようです。

 ──「子ども」と「環境」ということですが、具体的にはどんな活動ですか。
 たとえばここ数年、コロナ禍で子どもたちが外で遊べなかったので、自然の中で遊べる環境を整備する活動に寄付しました。あるいはDV(家庭内暴力)や学校でいじめを受けて自分の居場所がないと感じる子どもたちの居場所づくりをしている団体や、シェルター、子ども食堂も支援しました。「環境」では、震災災害のレスキュー、小学生向けのビオトープ(小さな生態系のある場所)づくり、カンボジアや東ティモールで自然保護の活動をしている団体にも支援しています。

 ──団体はどうやって選ぶのですか。
 参加している社員(会員)による投票と、会員から代表して選任されたメンバーで構成された「積水ハウスマッチングプログラムの会」で決議されます。また、団体がエントリーするためには、社員の推薦を必須としています。地域に根ざした活動をし、その地域の事業所やグループ会社が連携しているほどポイントが高くなります。

 ──「つながりカフェ」にはどんなゲストを?
 アトピーのお子さんを支援している団体に、被災地への支援物資にアレルギー除去食がなく、食べて発作を起こすことがあるという話をしてもらいました。環境の関係では、阪神淡路大震災27年目の当日にレスキューの団体を、東日本大震災の3月11日には別の団体を招き、当時の被災地の様子を聞きました。改めて生の声を聞き、自分たちに何ができるか考えるのも重要です。
 地域の社会課題ってこんなにあるんだと驚きます。目に見えない課題に取り組んでいる方、報酬に関係なく信念に基づいて活動されている方が大勢います。

 ──反響はどうですか。
 「この時間を楽しみにしています」という固定ファンもいれば、「このテーマだから聞きに来ました」という社員もいます。1年で12回開催し、計1200人が参加してくれました。ただ、まだ存在を知らない社員が大多数です。まずは認知度を上げるのが課題ですが、最終的にはマッチングプログラムの会員数を増やしていきたいです。
後編に続く

(写真・MIKIKO)

SDGsでメッセージ!

 積水ハウスはSDGsの17のゴールのうち、14のゴールに携わっているので、おそらく興味のあるゴールのどこかには携われます。そこは魅力です。いろんな職場の人たちと関わりながら前に進む会社なので、興味がなくても自然とSDGsに触れられます。学びが多く、SDGsに興味ある学生は何かしらの貢献ができます。SDGsの達成は2030年が目標ですが、今の学生が社会の中心になっているのは2050年ごろですよね。また違う目標ができていると思いますし、17ゴールのその先も見たほうがいいかもしれません。

積水ハウス株式会社

【住宅メーカー】

 積水ハウスは、お客様がそれぞれに望まれる暮らしを、自由設計と、先進の技術による、快適で安全安心な住まいで実現します。そしてさまざまな研究開発から設計施工・アフターメンテナンス、リフォームまで、一貫して高い品質、サービスを自社グループで行い、お客様をサポートしています。こうして培った技術やノウハウを生かし、賃貸住宅やマンションをはじめ、街づくり、都市開発や国際事業など、よりよい住環境に貢献する事業を行っています。