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2017年05月17日

銀行が抱える「5つのリスク」とは

銀行・証券・保険

大手銀、3年連続で減益

 大手銀行7グループの2017年3月期連結決算が出そろいました(表)。純利益の合計は、前年比4%減となりました。減益となるのは3年連続です。日銀のマイナス金利政策の影響を受け、企業や個人への融資で得られる利益が減ったことが主な原因です。今年度は久しぶりの増益といきたいところですが、先行きには様々なリスクもあります。現時点で横たわっているリスクを5つあげてみます。
(2017年5月15日朝日新聞デジタル)

リスク1「東芝の苦境」

 巨大企業の東芝が苦境に陥っています。2016年度決算は、監査法人の承認が得られず、まだ発表できていません。このままでは、上場廃止の可能性も出てきます。また、メモリー事業を売却して財務内容を改善しようとしていますが、協業先のアメリカの会社から待ったをかける申し立てが国際仲裁裁判所に起こされ、シナリオに狂いが生じています。もし、東芝の再建ができないとすると、融資している金融機関は大きな損失を抱えます。主力行は三井住友、みずほ、三井住友信託の3行ですが、三菱UFJも準主力行です。各行は何千億円という融資をしています。警戒は強まっていて、債務区分を「正常先」から「要注意先」や「要管理債権」などに引き下げて、引当金も積み増しています。でも、引き当てているのはまだ一部で、東芝の再建問題は大きなリスクになっています。
(写真は、東京・港区の東芝本社)

リスク2「日銀金融緩和の出口」

 アベノミクスは始まって4年を過ぎました。日本銀行が国債などを買いまくる「異次元の金融緩和」は、今も続いています。しかし、物価を上げる効果は薄く、リスクばかりが膨らんでいます。何かのきっかけで国債が暴落するリスクです。きっかけになる可能性となり得るのが、出口です。つまり、金融緩和から引き締めに転換する時です。いつかは出口に向かわないといけません。市場に買いまくるだけの国債がなくなったり、日銀の財務内容に不安が出たり、円が暴落したりする場合です。アメリカやヨーロッパは出口に向かっていますし、黒田日銀総裁も最近は出口のことにも言及し始めています。出口は近づいているのは間違いありません。しかし、出口とは日銀が国債を売るという連想になりますから、国債価格が暴落する恐れがあります。万が一そうなると、国債を保有している金融機関は大きな含み損を抱えることになりますし、金利急騰は経済の混乱を招きます。銀行にとってはやはり大きなリスクです。
(写真は、東京・中央区の日銀本館です)

リスク3「カードローン破産」

 銀行は、企業融資が伸びないため、個人向けのカードローンに力を入れてきました。消費者金融は貸出額や宣伝に規制がかけられており、銀行がとって代わる形で融資額を伸ばしてきました。しかし、ここにきてカードローンによる破産を問題視する声が強くなってきました。銀行は、貸付額の上限を下げたり、テレビCMを減らしたりする対応を取り始めています。ただ、対応策を強化すると利益が大きく減りますし、対応策をとらないと社会問題となって銀行の信用に傷がつく恐れがあります。カードローンへの対応もリスクになってきました。
(写真は、各行のカードローンの案内チラシ)

リスク4「中国経済の失速」

 中国経済はバブルだとここ数年言われ続けています。とはいえ、まだはじけずに膨らみ続けています。特に最近の都市部の不動産価格は、一段と弾みがついて上がっていると言われています。バブルはいつかはじけるものです。「そろそろ危険水域に入ってきた」と言う人もいます。中国経済が大失速すると、日本の銀行にも影響してきます。銀行が直接、間接に中国に投資しているカネが戻ってこない事態になるからです。

リスク5「トランプ政権の混乱」

 アメリカの波乱要因はトランプ大統領(写真)です。トランプ政権は、米大統領選への介入疑惑などロシア関連の問題で不安定さを増しています。4年間の任期を全うできるかどうか、不安になっています。もし、トランプ大統領が辞任に追い込まれるようなことがあると、アメリカの経済も混乱しそうです。今、アメリカ経済は好調ですが、バブルだという人もいます。辞任がバブル崩壊のきっかけになるかもしれません。そうなった場合、影響は世界経済全体に及びます。もちろん日本の銀行も、らち外ではいられません。

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