中島隆の輝く中小企業を探して 略歴

2014年09月26日

世界一、おもしろいパンツをつくろうとする会社/前編 (第21回)

はき心地世界一、証明するため「ギネスに挑戦や!」

 みなさんの中には、楽しくはたらけそうな会社がないかなあ、と探している方がいるとおもいます。
 でも、そう簡単に見つかるわけがありません。

 わたしは、みなさんに紹介したい中小企業をさがす日々をおくっていますが、正直、いつも悩んでいます。ネットで検索し、口コミでうわさを聞き……、そして、その会社に足を運んでみる。お話をきき「この会社を取り上げたい」と思えたときの達成感は、なんともいえません。

 みなさんには、企業の合同説明会という「きっかけ」があります。積極的に参加して、会社の人に話をきいて、ネットで調べて、そして会社に足を運んでみてください。きっと、あなたの好みにぴったりの中小企業を探し出すことができるでしょう。

 さて、今回と次回の2回にわけて、神戸市の「バリュープランニング」という会社を紹介しましょう。おもに女性向けのストレッチパンツを開発、販売しています。全国におよそ250店、香港やシンガポールにも店があります。

 社長の井元憲生(のりお)さん(61)が、1994年6月に起業した会社です。社名には、「あらたな価値をつくっていく」という思いが込められています。

 バリュー社は、こんな自負をもっています。

 「うちのパンツのはき心地は、世界ナンバー1だ」

 生地を引っ張ると3割ほど伸びるし、しかも軽いのです。でも自分たちでいくら「世界一や」といったところで、信じてくれる人はいません。
 だれか証明してくれんやろか、そうや、ギネス記録に挑戦や。
 そう、社長は決心します。
 2005年10月、ギネスに相談します。

 「よく伸びるパンツをつくって申請したいと思います」

「興味ありません」
 ギネスからは、素っ気ない返事がかえってきました。

 だったら、何に興味があるのでしょうか。聞くと、「世界一大きなパンツ」だと。

 ポーランドで、たて8メートルあまり、胴回り5メートルあまりのパンツがつくられた、という記録がありました。

 世界一おもしろいパンツをつくる。これが、バリュー社のコンセプトです。世界一でっかいパンツをつくるプロジェクトが、はじまります。

 制作に2カ月かけて、できたのが写真(バリュープランニング提供)のパンツ。左に寝ている女性と比べたら、その大きさが分かるでしょう。たて10メートル、胴回り6メートル。ふだん売っているパンツの、それぞれ10倍以上の大きさ、面積にすると100倍以上になります。女性の平均身長を160センチとすると、このパンツをはくのは身長16メートルの巨人、ということになります。

 これでギネスに申請します。2007年、みごとに認定されました。もっとも、この記録は、すでに破られてしまいました。

 井元さんはいいます。

「大きさ追求はやめました。じつは、ほかのことでギネスに挑戦しています。内容は、ヒミツです」
(社長の井元憲生さん。本社は、山陽新幹線・新神戸駅のほどちかくにあります)

創業翌年、あの大災害が……

 ギネスに挑戦する会社って、楽しそうじゃありませんか? 世界一おもしろいパンツをつくろうとする会社って、楽しそうじゃありませんか。

「ベンチャー精神、チャレンジ精神をもっている学生さん、ぜひわが社へ」

 そう井元さんは、みなさんに訴えています。

 大企業ですと、社長と新入社員が顔を合わせることは、ほとんどありません。でも、中小企業の場合は、社長と新入社員の距離がちかい。毎日のように顔を合わせるかもしれません。

 次回は、井元さんってどんな人物なのかを、ひもといていきましょう。なぜ会社をつくったのでしょう。ベンチャー精神、チャレンジ精神いっぱいのドラマになります。

 そして、経営は、ずっと順婦満帆だったのでしょうか。
 そんなわけがありません。会社の設立は、1994年6月、場所は神戸です。翌年1月、あの大災害がおこってしまうのです……。(つづく)