中島隆の輝く中小企業を探して 略歴

2014年04月30日

中小企業、「会社の雰囲気」は「社長の性格」で変わる (第14回)

母親のような3代目社長

  輝く中小企業をさがすうえで大切なことがあります。それは、社長がどんな人なのかを調べることです。おおきな会社とちがい、中小企業では、社長としょっちゅう顔を合わせます。社員の数が少なく、組織も大きくありません。ということは、社長がどんな性格の人かで、その会社の雰囲気が、がらーっと変わります。

 さて、東京の品川区に、「吉村」という会社があります。1932年に創業し、お茶、のりといった食品をいれるパッケージなどを企画、製造、販売する会社です。年商は50億円ほど。社員数は200人ほどで、静岡に工場、福岡や仙台などに営業所があります。
 ここの3代目社長は、橋本久美子さん。めっちゃ明るく、パワフルな人です。まず、「わたしはデブでブスですから」と、ケラケラと笑い飛ばしてしまいます。演劇部出身なので、声が大きい。そして、社長だからとイスにすわっているのではなく、先頭にたって行動してしまいます。たとえば、お茶屋さんでのキャンペーンでは、通りに響く声で、通行人を呼び込み、お茶をすすめていました。

(写真:社長の橋本久美子さん)
 社員とのコミュニケーションを大切にします。社員の意見に耳をかたむけます。もちろん、社長ですから、ときに厳しい。でも、それは、母親の優しさかもしれません。
 自分の業績があがればいい、という会社ではありません。営業、企画、工場……。ほかの部署をまきこみ、みんなが目標を達成すれば、それだけ手当てが増える、という仕組みにもなっています。その目標は、社員みずからが決めます。橋本さんは、ぜったいに上乗せをしません。みずから目標をたて達成する。そんな経験をつうじて、社員に自信をつけさせるのだといいます。どうです、母親みたいでしょ?

 採用に学歴は関係ありません。だって、橋本さん、こんなふうに言い切っちゃうんですから。
 「むかし暴走族をしていた、なんて子の方が、問題を解決する力があるのよ。どうやったら警察につかまらないか、いつも考えてきたからかしら」
 「家の事情で学校に行けなかったひとは、ハングリー精神がすばらしい」
 橋本さんの原動力は、お茶文化のピンチにあります。
 「お茶の素(もと)からお茶ができる、と思っているんです」
 「やぶきたって何県にあるんですか、と聞かれたことがあるんです」
 「深むし茶には、どんな虫が入っているんですか、ですって」

 もちろん、お茶は、お茶畑でとれる葉を、摘んで蒸して、もんで乾燥してつくります。やぶきたは、お茶の種類です。深むし茶の「むし」は、蒸し。むし違いです。
 もちろん、みなさんは知ってましたよね……えー、マジですか!
(写真:吉村がつくった日本茶をいれるパッケージ)