中小企業に使える方法
過酷な労働などを強いて社員を使い捨てる。そんな会社を、ブラック企業と呼びます。
企業がブラックかどうか、どうやって見分ければいいのでしょうか。AERAにもありましたが、よく言われるのは、「労働組合の有無」や「3年後離職率の高低」などです。
労組がないということは、会社に抗議する仕組みがない、ということなので、要チェック。東洋経済新報社が出している「就職四季報」には、各企業の「3年後離職率」が載っています。新入社員が3年後に何%退社したか、という割合のことです。その率が高かったり、無回答だったりしている会社は要チェック。
このふたつの方法は、大企業を推し量る場合には、有効だと思います。
でも、中小企業ではつかえません。
社員がすくない中小企業で、労組のあるなしで判断するのは、現実的ではありません。もちろん、労組がある中小企業はたくさんありますが。
「就職四季報」に掲載されない中小企業ですと、離職率をチェックしようがありません。毎年数人、いや1人、いえいえ毎年入社しているかどうかも分からない。そんな中小企業を「3年後離職率」で推し量ることは意味がないでしょう。
では、ブラックではない中小企業を、どうやったら探せるでしょう。
わたしがもし就活生だったら、たとえば、こうします。
まず、パソコンで、全国47都道府県にある中小企業家同友会のホームページに行きます。興味がある都道府県の名前と、「中小企業家同友会」をキーワードに検索すれば、行きつきます。そのトップページをみると、どこかに「共同求人」というキーワードがでていますので、そこに入ります。さらに進んでいくと、いくつか企業名がでてくると思います。
中小企業家同友会の会員になっている企業は、全国で4万を超えています。経営者のみなさんが会員になるのは、理想の経営者になりたいから。会員企業の経営者たちと、社員を大切にする会社にするためにはどうすればいいのか、まじめに議論をしています。
その中でも、学生のみなさんの採用に積極的な企業が、共同求人にかかわっています。採用したくても、1社だけではみなさんに振り向いてもらえない。同友会の会員企業が力をあわせて、みなさんを振り向かせたい。それが共同求人です。セミナーなどを通じて、すこしでも皆さんにPRしようとしています。この共同求人に参加している中小企業は、まずブラックではありません。
不安だったら、同友会の事務局に行って話を聞くのもいいかもしれません。
もうひとつ、わたしが注目するとしたら、障害者雇用に積極的かどうかです。従業員50人以上の会社には、従業員のうち2%は障害者を雇うように、と法律で義務づけられています。つまり50人いたら1人は障害者を雇え、というわけです。
50人未満の会社なのに、障害者雇用をすすめている、あるいは、50人以上の会社だけれど、法定雇用率をはるかに超えて障害者を雇用している会社に、まずブラック企業はありません。障害者に優しい会社は、社員に優しい会社です。各社の名前と、「障害者」をキーワードにパソコンで検索し、雇用をすすめている会社であれば、おそらく大丈夫です。
このコラムでもお話ししたことがある「大家族主義」の会社も、まず安心です。社員を家族の一員とかんがえる経営者は、「子どもたち」に惨いことはしません。
とはいえ、会社の規模に関係なく、ブラック企業はあります。残念なことですが、それもまた現実です。でも、むかしもひどかったんです。去る者は追わず、と社員を使い捨てていくことは、いくらでもありました。100人以上採用して、3年後に残ったのは数人、という超有名企業を、わたしは知っています。
現在は、ブラック企業への監視の目が厳しくなっています。これからますます、不当労働行為をしないことが、会社の生き残りのキーワードになってくるはずです。
御社はブラック企業ですか? と正面から聞いたところで、はいそうです、という会社は、ありません。ぜったいに見破る方法など、ないと思います。なので、できる範囲でチェックするのはいいことですが、神経質になりすぎてはいけません。
入社してあまりにひどくても、とりあえず、がむしゃらに仕事をしてみましょう。いろいろな経験を積み、技術、ノウハウを身につく手段としては、かえって有効かもしれません。
ただ、ひどい仕打ちがつづいているのに、何年も何年も我慢してはいけません。張り詰めた心は、ある日、とつぜん、壊れるものです。お恥ずかしい話ですが、わたしはあることで自分自身を追い込んでしまい、心療内科に通ったことがあります。わたしの心は壊れず、いまがあるのですが……。
転職すればいいんです。中小企業に目を向ければ、中途採用に力をいれている会社は、わんさかあります。自分で会社をつくったっていいんです。
「どんと来い、ブラック企業!」「どんと来い、就職活動!」
さあ、元気に参りましょう。