中島隆の輝く中小企業を探して 略歴

2013年12月26日

社員は家族と同じ!経営方針は「大家族主義」:上(第4回)

わが社の目的は、社員全員をしあわせにすること

 会社って何のためにあるのでしょう。こんなことを考えたことがありますか?
 株式を証券取引所に上場している、でっかい会社のなかには、あきらかに、こんな経営をしているところがあります。
 「会社は、利益をあげるためにある。社員のしあわせは、あとまわしである」
 上場会社の場合、会社の株を買ってくれる人は、不特定多数です。そんな投資家たちは、おおくの場合、会社に縁もゆかりもありません。投資家たちは、会社にカネを出しているのですから、見返りを求めます。そのひとつは、株価の上昇です。もうひとつは、株をもっていたらもらえる「配当金」というカネです。特に、外国人の株主は、その傾向が強い、強い、強い。

 その結果、会社は、「稼げ」、「利益をあげろ」、と社員にハッパをかけます。社員は、がむしゃらに仕事をしなくてはなりません。
 がむしゃらに仕事をするのは、悪いことではありません。でも、使えない、と上司に判断されたら、切り捨てられるかもしれません。そんなプレッシャーのなか、社内で、激しい競争がはじまります。「俺が俺が」、「私が私が」。自分さえよければいい、という社風になっていきます。
 もちろん、すべての上場会社がそうだ、というわけではありません。でも、使えないと判断した社員を「追い出し部屋」と呼ばれる部署に追いやって退職するのを待つ、ということをしている大会社は、いくつもあります。
 まえおきが長くなりました。ですが、大会社に就職してしあわせになるには、きびしい社内競争に生き残らなければならないのです。勝利者になって、しあわせな社員になるかもしれませんが、そのほかの社員になるかもしれない、ということなのです。だから、あえて書きました。
 さて、中小企業のなかには、こんな経営方針を貫いている会社があります。
 「大家族主義」
 経営者から新入社員まで、全員が家族。おおきな家族なんだから、みんなでしあわせになろうよ、という考え方です。
 京都市に「ロマンライフ」という会社があります。
 春は桜、夏は青葉、秋は桔梗(ききょう)、冬は椿(つばき)を表現する。そんな京都らしさを表現するお菓子をつくって、売っています。ブランド名は「京都北山マールブランシュ」。京都を中心に、デパートにも出店しています。わたしが会社をたずねたのは12月20日。クリスマスのケーキづくりで、大忙しでした。

自慢のお菓子「茶の菓」は、お茶の風味とホワイトチョコレートをバランスよく仕上げている

(写真:自慢のお菓子「茶の菓」は、お茶の風味とホワイトチョコレートをバランスよく仕上げている)
 また、京都の風情にこだわった料理店を展開しています。「茶の湯」でいわれる、わび、さび、を大事にした店づくりをし、料理を出します。店の名は「侘家」。わびや、と読みます。
 社員は250人あまり、売上高50億円あまり。いまから60年ほどまえ、いま会長をつとめる河内誠一さんが、ちいさな喫茶店「純喫茶ロマン」を開業し、そこから成長してきた会社です。
 おいしいお菓子を口にすると、だれもが笑顔になります。うまい鳥料理を食べると、こころが豊かになりますね。社員、お客さん、そして取引先、すべての人の生活にロマンを、感動を届けたい。そんな思いを、社名にこめています。
 京都には、全国からはもちろん、世界から観光客がきます。金閣寺、銀閣寺とともに、観光の目玉としてロマンライフの店にきてくれれば。それを悲願に、パリやニューヨークなどでPR活動もしています。
社長の河内誠さん  さて、いま社長をしているのは2代目、1958年うまれのナイスミドル、河内誠さん(写真)。彼は、こう宣言します。「わが社の目的は、社員全員をしあわせにすることです。利益をあげることは、目的ではありません、しあわせになるための手段です」
 会社全体が、家族なのです。祖父が会長、父親が社長、そして、社員たちは、息子、娘。みーんなしあわせにならなくてはならないのです。
 え―、そんなことできるの~~? きれいごとじゃないの~?
 それは、みなさんの考えちがい。できるんです。この会社の場合、キーワードは、「成長」です。長くなりました、次回、ご説明しましょう。