中島隆の輝く中小企業を探して 略歴

2013年12月19日

科学技術集団が生む「イノベーション」(第3回)

あすの科学を担うスターはあなたかもしれない!

 みなさんは、どんな学生生活を送っていますか。しっかり学問していますか。
 わたしの学生生活では……、ひどいもんです。学問は超、超、最低、底抜けにサイテーでした。それでも卒業できちゃうんですから、いい時代でした。みなさんに謝りたい気分です。

 さて、学問にいっしょうけんめい取り組んでいる方の中には、こんなことを思っている人がいるでしょう。
 「おれは、科学を使って世の中を変えてやる!」
 「わたしは、社会学や経営学のノウハウで新しいビジネスをしたいわ」
 でも、どうすればいいんだ。何をすればいいのかしら。うーん。悩むところです。
 そんなとき、ヒントをくれそうな会社が、東京・四谷にあります。およそ50人の科学技術者集団「リバネス」(資本金・6千万円)という会社です。10年ほどまえ、大学院生たちが出資して起業しました。

 会社名には、「leave a nest」、つまり「巣立つ」という意味を込めたそうです。
 ひたすら科学を愛することからはじめ、独創的な発想のもとに、あらたなイノベーション(革新)という卵を生み、育てて立派な事業に仕上げていく。社員も一人前の科学者として巣立っていく、というのです。もちろん、科学は、自然科学でも人文科学でもOK、つまり学問ならエブリシングOKです。

 取引先は、たとえば大企業の研究所です。行き詰まった研究所の相談にリバネスの社員が乗り、ときにはピンチヒッターとして研究開発をします。また、大企業などに「この特許をつかって、こんな事業をしませんか」と提案します。手がけてきた分野は、微生物、農業、畜産業、ロボット、宇宙開発などなど。
 さらに、学校に出向いて、「出前実験教室」をして回っています。リバネスは、科学の楽しさを知った子どもたちが大人へと成長していくための「巣づくり」もしているのです。
 社長の丸幸弘(まる・ゆきひろ)さんは1978年生まれ、血液型はA型。農学博士で、生命科学のことなら、どーんと来いの人です。毎年10人の採用、を目安にしています。「こんなイノベーションをおこしたい、と目標を明確にしている人がほしいですね」と丸さん。
 そんなこと言われても、困りますよね。でっかい志はあっても、どんなイノベーションをおこしたいのか、頭の整理ができていませんよね。

(写真はリバネスの社長・丸さん)
 ご安心のほどを。まず、リバネスの採用選考は、インターンシップなどを経験してもらうことから始まります。そして、社長の丸さんと面談します。丸さんが学生を評価するのではありません。学生が、丸さんに質問し、丸さんを評価するのです。この社長といっしょに働きたいかどうか、自分の気持ちを見極めます。
 「よし、ここで働きたい」。そう思ったら、社員による面談が行われます。その結果は、社員たちに報告されます。
 さて、ここからどうなるでしょうか。

 むかし、「スター誕生」というオーディション番組がありました。スターになりたい人が歌い、それを芸能プロダクションの人たちが見ます。この子の面倒をみたいと思ったプロダクションの人がプラカードをあげれば、スターへの階段を一歩踏み出すことになります。プラカードがあがらなかった人は残念、ということになります。
 山口百恵、桜田淳子らは、この番組をきっけかにデビューしました。司会者は、萩本欽一さんで、だれも合格者が出なかったら「ばんざーい、なしよ」をして……、脱線しすぎました。古いなあ、わたしって。

 要するに、これと同じです。面談の結果をきいた社員たちは、「面倒をみてやりたい」と思えば手をあげます。手が上がらなかったら、その学生は残念だったね、ということなります。もちろん、スタ誕ではありませんので、学生のいない社内会議でおこなわれます。
 つぎに、第一関門を突破した学生と、手をあげた社員とがタッグを組みます。じつは、最後に、全社員のまえでプレゼンをしなくてはならないのです。プレゼンの場にいない社員も、大阪や沖縄にいる社員も、ネットを通じて見ます。そこで拍手を浴びれば、内定です。
 そのプレゼンの中身を、学生と社員が、いっしょに考えるのです。社員は本気で、いち押しの学生の内定をとりにいきます。まるで、芸能プロの人が、スカウトした「卵」をスターにするために必死になるように。

 社長の丸さんは言います。「科学への思いがあるのなら、チャレンジは何度でも歓迎です。あなたの活躍の場所をいっしょに考えていきましょう」
 知識と科学への愛がある方。イノベーションを起こしたい方。自分が何をしたいのか見極めるうえでも、リバネスの門をたたいてみたらいかがでしょう。あすの科学を担うスターは、あなたかもしれません。