さて、このコラムをつづってきたなかで、わたしが強調してきたことがあります。
それは、中小企業に入社したら、あなたはすぐに戦力として活躍できる、いや、活躍しなくてはならないということです。
社員が何千人、何万人もいる大企業ですと、間違いなく、しばらくは、もしかしたらかなりの間、もしかしたらずーーーっと、組織の歯車にならなくてはなりません。おそらくあなたがいなくても、組織は回ります。
ごくごく細かい分野の仕事を、いくつか、すこしずつ、人事異動をともなってこなしていくことになるでしょう。
アイデアが浮かんだとしても、なかなか採用されません。だって、社長、副社長、専務、常務、取締役、部長、課長、係長……。上司がたくさんいるのですから。
ところが、中小企業は違います。社員の数がすくないのですから、あなたは歯車ではありません。いいえ歯車であることは許されないのです。
ひとりでいくつもの仕事をこなさなくてはならないでしょう。たいへんかもしれませんが、知識をたくわえることができます。経験も積むことができます。そして、社会人として、会社員としての実力もつくでしょう。
アイデアが浮かんだら、採用される可能性が、かなりあります。だって、たくさん上司がいるわけではないのですから。
だから、あなたが有名大企業を志望していたけれどダメだったとしても、なーーんてことありません。組織の歯車になることなんか、こっちから願い下げだね、と思えばいいんです。
中小企業を志望しているあなた、または結果として中小企業に入社することになったあなた、おめでとうございます。あなたは積極果敢な社会人になる道を歩むのです。もしかしたら、あなたのちょっとしたアイデアが、世の中を動かすかもしれませんよ。
京都府の長岡京市に「日本グリーンパックス」という会社があります。会社設立は1969年、東京、神奈川、静岡に営業所があります。官公庁とともにゴミの減量化にとりくんだり、企業や一般家庭に、さまざまな省エネの仕組みを提案したりしています。人と環境にやさしい入浴剤や家庭用洗剤なども開発し、売っています。地球環境のために、をキーワードにさまざまな事業をする商社といっていいでしょう。
社員は、グループ会社もふくめて70人ほどです。わざわざ「グループ会社もふくめて」とかきましたが、ここに意味があります。
エコビジネス、太陽光ビジネスなどのグループ会社が4つもあるのです。この会社の規模のわりには、グループ会社が多すぎる感じがします。ところが、ここが、この会社の味のあるところなのです。
社長の山中利一さん(57)は言います。
「社員が『こんな新事業をしたい』と提案してきて、なるほどと思わせてくれたなら、独立させているんです」
山中さんは、社員にあたらしいことを生み出す人間になってもらいたい、のだそうです。「はたらく理由、それは、経済的なやりがいと精神的なやりがいを求めて、ということでしょう。経済的なやりがいは給与ですね。でも、カネだけじゃあないんです」
「カネがもらえるからと、奴隷のようになって働きますか? 精神的なやりがいがなければ、苦しいだけです」
「だから、会社という道具をつかって、精神的なやりがいも手に入れてほしい。それには、自分がしたいことを見つけて、グループ会社をつくらせるのが一番だと思うのです。資本金は、もちろん会社が出します」