中島隆の輝く中小企業を探して 略歴

2015年04月30日

社内イベント数日本一めざす! とことん社員の自主性にまかせる会社(第29回)

 このコラム、しばらく休載していました。ごめんなさい。再開します。読んでいただいているみなさん、あらためてありがとうございます。
 そして、読んでいただいているあなたなら分かっていることだと思いますが、強調しすぎてもしきれないことがあります。

 大企業に入社することと、中小企業に入社することは、まるっきり違うということです。何が違うか。それはあなたという存在の大きさです。
 大企業に入ると、あなたは間違いなく、組織の歯車になります。自分が何かをしたくても、希望は簡単にはかなわないでしょう。もしかしたら、ずーーーっとかなわないかもしれません。
 自分がある事業を企画したとしましょう。その企画、通りますか? 係長がOKをだし、課長がOKをだし、部長がOKをだし、担当役員がOKをだし……、でも役員会でダメだし。そんなこともあるかもしれません。そもそも、あなたがいなくても、大きな組織なので会社は回ります。
 自分がいなくてもいいんじゃないか、自分はこの大企業で何をしているのか分からない。そう悩んで退社した人を、わたしは何人も知っています。

 さて、横浜市に「シティコミュニケーションズ」という会社があります。飲食、ネットカフェ、パチンコ店、デザイン事業、食品開発など、幅広くてがける総合エンターテインメント業の会社です。1995年設立で、従業員はおよそ800人。
 この会社、原則として、すべて社員の発案、考えにまかせているんです。思いっきり自主性にまかせているのです。

 社員が、こんな事業をしたいとアイデアを提案します。もちろん、適当なアイデアではだめです、練りに練って立案するのです。その提案が幹部会にかけられ、社員の本気度とちょっぴり収益性を見極めて、OKがでたら社員は自分の提案の事業化につきすすめる、という仕組みです。
 社長の三田大明(ひろあき)さん(42=写真左)は言います。
 「こういう事業をするから、おまえやれ、では本物にはなれません。商売は、いいときも悪いときもあります。おまえやれ、とやらされていたら、悪いときに心が折れてしまうんです。『わたしがやりたかったわけじゃない、言われたからやってるだけさ』と投げ出してしまうかもしれません。自主性にまかせるからこそ、悪いときにも歯を食いしばれるのです」

 この会社のすごいところは、日本一を目指していることです。何の日本一かといえば、社内イベントの数です。
 ボウリング大会、バーベキュー大会、富士登山、全社あげての女子会、2年に一度のラスベガス研修などなど、その数、年間およそ30。さらに増殖中なのです。
 もちろん、これも社員からの発案です。社内イベントですが、参加は自由ですし、査定に響くことはありません。費用は会社持ちです。

 三田さんは言います。「エンターテインメント産業は、お客さまを10点満点の笑顔にしなくてはなりません。それには、働く側が10点、いや20点の笑顔をしていなくてはだめなんです」

 三田さんは1995年、慶応大の経済学部を卒業しました。慶応ボーイの経済学部ですから、就職活動をめぐる周りの考え方は、銀行、証券会社、そして不動産、この3つに入らなければダメ学生--だったとのこと。これがいやでした。

 三田さんは、自分さがしを始めます。ただし、旅行にいくのではありません、めちゃくちゃ安上がりなことをするのです。それは、ノートに、自分がしたいことを書いていく、ことです。
 三田さんは、何がしたいかノートに書いていきます。一冊、かきました。でも、出てくるのは、遊びのことばかり。新しい形のレストランをしたい、エンターテインメントをしたい、とか。

 となれば、と三田さんはゲーム会社に入社し、ゲームセンターの店長になりました。その経験をいかし、ゲーセン、カフェ、レストラン、パチンコ店などがひとつのビルに入る複合施設をつくっていこうと考え、この会社があるのです。

 楽しいことが大好き。だから、社員も笑顔にしたい、それには、社員の自主性にまかせる、ということになるのです。大企業では、ぜーーーったいにないことです。

 昨年春に入社した須永佳介さん(23=写真右)はいま、パチンコ店をいとなむ「パーラー事業部」にいて、店での接客などを担当しています。社内イベントには積極的に参加しているとか。「店の中で頑張っているんですが、どうしても、店の中で自分はどんな貢献をしようか、という考え方になります。社内イベントに参加すると、会社全体の中で自分はどんな貢献をしようか、と考え方が大きくなるんです」
 まだまだ未熟者だという須永さん。でも、自分なりに、貢献できることを考えたそうです。それは、会社のみんなを笑顔にすること。大学でサッカーをしていた彼が、もっとも得意なのは大食い。忘年会でやったカレーの大食い大会で優勝、みんなを笑顔にしたのだそうです。
(写真はシティコミュニケーションズが開発している食品の数々)
 さて、この会社は毎年30~40人を新卒採用しています。配属先は、本人が希望するところです。異動も、本人の希望。希望する部署がなければ、自分でつくってしまうことだって、あり。広報室やアニソン事業部などは、社員が自主的につくってしまったのだとか。

 どんな人材がほしいのでしょうか。三田さんは言います。
 「稼ぐ力は、入社してから身につければいいんです。それよりも、何かとんがった部分がほしいですね。わたしはいじめられていました、とか、わたしはいじめられている子を、ひとりでかばいました、とか。それだけで、採用ですね。時間に一度も遅刻したことがありません、とか、ちいさいときから皆勤賞でした、とか。それも採用ですね」

 たくさん社員がいても、みーんな同じタイプ、金太郎飴のような組織にはしたくない、と三田さんは言います。どこぞの大企業など、金太郎飴ばかりなので、打たれ弱い、弱い。
 さて、もし、あなたがこの会社に入社したとしましょう。すると、何年後かには、ホテルで大リーグ流のシャンパン・ファイトを楽しめると思います。2006年に年商500億円を達成したときなど、ホテルでビールかけをしてしまいました。いま年商は650億円ほど。1千億円になったら、大リーグ流への昇格です!

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