(西田芳明社長=右=と新入社員の三好祥平さん。社長と新米社員の距離が近いのも、中小企業の良さです)
参加者は進和建設に入らなくて、いいんです。若い人たちが夢をみつける手助けをしたい、という思いだけなのです。
ばりばりの大阪弁で、冗談まじりに明るく話す西田さん。でも、若い頃は無口な男だったそうです。一級建築士の資格をもつ技術者でしたので、人と話すより、図面をかいていた方が楽しかったのでしょう。
この会社は1968年、西田さんのお父さんがつくりました。でも、技術者肌の西田さんを見て思ったようです。
〈息子は社長の器やない〉
そして西田さんは30年まえ、お父さんに言われました。
「おまえに社長はつとまらん。会社は解散や」
それで引っ込んじゃあ、男がすたる。西田さんは2代目をつぎます。ただし、三つの条件をだされました。
手形を切ったら、アカン。銀行から借金したら、アカン。人の保証人になったら、アカン。
西田さんは、振り返ります。
「難儀でした。でも、お金を速く手にいれなくてはならんやろ。そのおかげで、工期が速くなった。そして、無借金経営になれたわけや」
もちろん、社員さんたちが懸命に働いたからこその無借金経営です。西田さんは、社員をぜったい守る、と決意したのでした。
就活志塾で、西田さんは就活生のみなさんに訴えます。
「仕事はあくまでも手段、人生そのものが目的や」
「好きな仕事につくことは難しい。そやから、仕事を好きになれ」
「仕事が好きになったら、そこで起こった問題の解決策を考えられるやろ」
「問題が起こったとするやろ。その問題は、きみにあたえられた課題だと思おうや。きみには、その課題を克服できる実力がついた、ということや」
「自分の心をどうつくっていくかが大切や。逃げたらアカン」
西田さんは、会社説明会でも、持論を熱くかたります。
大学で建築をまなんで昨年春に入社した三好祥平さん(24)は、言います。
「ボクは就活で悩んでいました。でも、会社説明会で社長の話を聞いていて、心の底からボクたち若い世代に成長してもらいたいと願っているんだな、と衝撃を受けました。この会社に入って成長しよう、と思ったのです」
いま三好さんは、マンションや老人ホームの建設現場で、現場監督をしています。先輩の指導を受けながら監督をしてきましたが、あと半年もすれば独り立ちです。ここが、組織の歯車になってしまう大企業とちがうところです。
「年上の職人さんたちがボクを頼りにしてくれるんです。やりがいがあります。自分が確実に成長できていると実感します。入社して大正解でした」
技術系は入社したらすぐに現場。では、営業系は入社したら、どうなるのでしょうか。