中島隆の輝く中小企業を探して 略歴

2015年02月12日

荷物運びから企画担当まで、全部の仕事こなしてぐいぐい成長できるホテル(第27回)

 みなさんの中には、ホテル業界に憧れている人がいるかもしれません。
 大都市には、超がつくような高級ホテルが、いくつも建っています。利用する立場から見れば、じつに華やかです。でも、あなたが入社したとしたら、を想像してみてください。
 
まず、まちがいなく、みなさんはそれぞれの担当に分かれます。
最初は、到着した客の荷物をもつベルボーイさん、ベルガールさんあたりでしょうか。チェックイン、チェックアウトをするフロント係さん、でしょうか。
 演劇チケットの予約、航空チケットの手配など、客のさまざまな要望、相談にのるコンシェルジュさんもいますが、これはベテランの仕事でしょう。
 さまざまな宿泊プランをかんがえる企画担当者さん。この仕事も、すぐにさせてもらえるかどうか、微妙なところです。

 でっかいホテルですから、分業しなくては運営できません。だから、分業が悪いわけではありません。
でも、就職したあなたにとって、この分業制って、つらい側面があります。あなたが新入社員として入社し、たとえばベルボーイ、ベルガールとしてはたらきはじめた、と想像してください。
 毎日、客の荷物を運びます。お客さまの大切な荷物なのですから、こころをこめて、笑顔いっぱいに部屋へ届ける日々です。
 しばらく時が過ぎました。担当が、フロント係にかわりました。
 そして、またしばらく時がたち、コンシェルジュになりました。
 そして、またまた時がたち、企画を担当するようになりました。
やっと、ホテル業務の全体像を把握できましたね、おめでとう。でも、入社してからここまでになるには、数年、10年かかるかも。いいえ、もっとかかるかもしれません。
(写真は「ホテル龍明館東京」=公式サイトより)
 東京の御茶ノ水駅と東京駅ちかくにそれぞれ一つずつホテル、さらにレストランを運営する「龍名館」という会社があります。社員は70人、年商およそ17億円。毎年、5~10人の新卒採用をしています。

 御茶ノ水駅近くの「ホテル龍名館お茶の水」は1899年に創業し、画家や作家、芸術家などに愛されてきました。昨年8月、和の雰囲気を大切にした9室のホテルにリニューアルされました。
 東京駅から徒歩3分にある「ホテル龍名館東京」は、ミシュランガイドに掲載されるなど、ビジネスホテルとして高い評価を受けています。135室で、宿泊稼働率は95%を誇っています。
 高級ホテルとはちがって、規模はちいさく、すくない社員での運営です。ここに新卒として入社したら、どうなるでしょう。
 とある私大を卒業、入社6年目の野澤真菜美さん(28=右写真)に語ってもらいました。いまは「お茶の水」でマネジャーをしています。野澤さんの仕事場は、御茶ノ水のホテルのコンシェルジュデスク。「お客さまがいらしたらお出迎えし、ここでチェックインし、お部屋をご案内します」。つまり、ふつうのホテルにある「フロント」が、ここにはないのです。
 「入社してまもなくから、いくつものプロジェクトに参加させてもらっています。そしていま、お客様の送り迎え、チェックイン、チェックアウト、お荷物運び、宿泊プランの企画、そしてコンシェルジュといった仕事をすべて同時にしております」
 経営企画・マーケティング部の部長で、取締役の濱田裕章さん(32=左写真)が語ります。
 「ちいさい会社で少数精鋭ですので、ベル、フロントといった区分けをしていてはホテルが回りません。だから、一人で二役、三役をこなすことになります。それは大変だ、と思われるかもしれません。でも、これがいいのです」 生産性をあげるためには、いくつもの仕事をいっしょにさせること、つまり「マルチタスク性」が効果的だとして、ホテル業界でも注目されているのだそうです。
「ホテルの仕事を幅広く担当する日々が、社員の視野を広げます。すると、自分で仕事での改善点に気づきます。また、さまざまなアイデアもひらめきますね」
 いくつもの仕事を理解していますので、そのアイデアはホテル業務全体を考えてのものになります。採用される可能性は、ぐぐーっと高まります。
なるほど、ホテルマン、ホテルウーマンとしてのやりがいは、高級ホテルに負けません、いや、勝っているかもしれません。
でも、創業110年をこえる老舗というだけで、学生のみなさんは壁を感じると思います。古いしきたりとかあるだろうし、ベテラン社員さんとか、うじゃうじゃいそうだし……。
その点はどうなんでしょう、濱田さん?

「東京駅のホテルを2009年にリニューアルしたことが、ひとつのターニングポイントになりました。積極的にあたらしいことに挑戦し、変化を恐れない。そして、ベンチャー精神を取り戻そうと考えるようになったのです」
毎年の新卒使用も、そのあらわれだったのです。それまでの採用は不定期で、ながく後輩がいない世代もいたとのこと。いまや、社員の平均年齢は30歳を切っています。
 日本茶を食べたり飲んだりするレストランをオープンするなど、あらたな事業展開がはじまっています。
(ホテルのスイートルーム=公式サイトより)
 そして、これから15年後をめどにした大プロジェクトが予定されています。お茶の水のホテルを、100室規模のホテルに建て替えるというものです。
 これから新卒として入社すれば、将来、そのプロジェクトの中心メンバーとして、また新ホテルのスタッフとして、あなたの活躍の場は約束されている、といっても過言ではないのです。
 最後に濱田さん、どんな人材がほしいですか?
 「変化が激しく、数年先が予測できない、何が正解かわからない時代です。接客サービスだけにとどまらず、あたらな価値を創造していかなくてはなりません。だから、自分で考えて行動できる人、うちにいらしてください。」
 山椒は小粒でもぴりりと辛い。そんなホテルです。