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2022年05月25日

国際

QUAD、IPEF、TPP、RCEPって? 米国の狙いは「中国包囲網」【時事まとめ】

「陰の主役」は中国

 米国のバイデン大統領が初来日し、日米首脳会談や「クアッド」(QUAD=日米豪印)首脳会合が開かれたほか、「IPEF」(アイペフ=インド太平洋地域の新たな経済枠組み)の発足が決まるなど、岸田文雄首相とともに盛りだくさんの日程をこなしました。クアッドはまだ聞き慣れないし、IPEFってなんのことやら……という人が多いと思います。IPEFのニュースには、「TPP」(ティーピーピー=環太平洋経済連携協定)や「RCEP」(アールセップ=地域的包括的経済連携)という枠組みも出てきます。いずれの枠組みでも「陰の主役」は中国です。IPEFもクアッドも、インド太平洋地域で覇権主義的な動きを強める中国に対抗する枠組みだからです。中国はRCEPには加わっていて、TPPには加盟申請中です。横文字だらけで、なんだかややこしいですね。ただ日本は中心メンバーですし、どれもこれからニュースによく登場するキーワードですから、この機会に何のことか、何が起こっているのか、これからの注目点は何か、基本的なことを押さえておきましょう。(編集長・木之本敬介)

(写真は、クアッド首脳会合に臨む〈左から〉豪州のアルバニージー首相、バイデン米大統領、岸田首相、インドのモディ首相=2022年5月24日、首相官邸)

「民主主義と専制主義の戦い」

 今回の新たな動きの背景にあるのは、中国への警戒感であり、米中対立です。経済成長を続ける中国は、2030年にも米国を抜いて世界一の経済大国になるといわれ、政治的な影響力も高めています。東シナ海南シナ海で強引な海洋進出を続け、台湾への軍事的圧力も強めています。言論の自由がなく、政権批判が許されない一党独裁の国に世界の覇権を握らせまいと、米国は「民主主義専制主義の戦い」と位置づけて中国を抑え込もうとしています。日米同盟だけで対処するには限界があり、日米と関係の深い豪州に加え、人口14億人の成長著しいインドと協力することで、中国に対抗しようというわけです。岸田首相はウクライナ侵攻でロシアを非難した際、中国を念頭に「欧州とインド太平洋の安全保障は不可分であり、力による一方的な現状変更は世界のどこであっても許されない」と訴えました。

(写真は、IPEFの発足会合に臨むバイデン米大統領、岸田文雄首相、インドのモディ首相ら各国首脳=2022年5月23日、東京都港区、代表撮影)

IPEFで半導体などのサプライチェーン強化

 そんな中で発足するのがIPEFです。「Indo-Pacific Economic Framework」の頭文字なので、直訳すると「インド太平洋経済枠組み」。バイデン米大統領が5月23日、13カ国で発足させると正式に表明しました。世界の国内総生産(GDP)の4割を占める巨大経済圏になります。地域の経済活動のルールづくり、半導体や重要物資のサプライチェーン(供給網)強化などに取り組み、中国に対抗します。

 米国にとっては、2017年に当時のトランプ大統領が離脱を決めたTPPに代わる新たな枠組みです。TPPとは違い、関税の引き下げや撤廃による貿易推進には取り組まず、緩やかな経済連携になりそうです。米国ではアジアなどの製品が大量に入ると自国の雇用や産業に打撃を与えるとの心配が強く、関税引き下げには慎重です。ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国にとっては、米国への輸出拡大につながらないためメリットが乏しいとの指摘もあります。

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「半導体ウォーズ」何が起きてる? 基礎から学ぼう【就活生のための時事まとめ】

自由化レベル高いTPP RCEPには中国も参加

 そのTPP(Trans-Pacific Partnership)はアジア太平洋地域の11カ国で関税撤廃や投資・サービスなどのルールを定めた協定で、2018年末に発効しました。域内人口は約5億人で世界のGDPに占める割合は1割ほど。将来的にはほぼすべての品目で撤廃することを目指すなど自由化のレベルが高く、昨年申請した中国の加盟が実現するかどうかは不透明です。日本は米国のTPP復帰を期待していますが、米国内の反対が強く望み薄です。

 RCEP(Regional Comprehensive Economic Partnership)は、アジア太平洋の計15カ国が参加する経済連携協定(EPA)です。全体の人口は約23億人、世界のGDPに占める割合は3割で、TPPより規模が大きい。工業品や農産物の関税の削減や撤廃、投資や知的財産の保護、電子商取引の共通ルールなどが定められています。中国とASEANの全加盟国が参加していることと、関税撤廃や貿易ルールの自由化の度合いがTPPより低いのが特徴です。

クアッドは安保・経済など多様な協力

 一方、クアッドは「4」を意味する英語で、日米と、オーストラリア(豪州)、インドの4カ国が安全保障や経済など多様な分野で協力する枠組みです。対面での首脳会合は2021年に次いで2回目。4カ国は太平洋やインド洋に面する民主主義国家で様々な価値観を共有していて、日米が中国を念頭に提唱する「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現を目指しています。今回は、今後5年間でこの地域に500億ドル(約6.3兆円)以上のインフラ支援や投資、災害救援、人道支援の連携強化などで合意しました。中国の巨大経済圏構想「一帯一路」への対抗策です。

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日米豪印の「Quad」って? 陰の主役は中国【時事まとめ】

したたかなインド

 クアッドのカギを握るのはインドです。インドは伝統的に全方位外交を掲げ、兵器の半分近く、エネルギーも調達しているロシアとの関係が深く、ウクライナ侵攻後も名指しの批判は避け制裁にも参加していません。クアッドとは別に、ロシアや中国などが参加する新興5カ国(BRICS)や中国を中心とする上海協力機構にも参加するなど、したたかなバランス外交を展開しています。中国とは国境紛争を抱えていますが、最大の貿易相手国でもあり、クアッドの共同声明には「中国」の文字は盛り込まれませんでした。岸田首相は「(クアッドは)特定の国を対象にしたものではない」とあえて強調しました。ASEANにも中国との関係が深い国が多く、賛同する国を増やすためには「対中包囲網」という警戒感をもたれるのは得策ではないとの判断です。

中国は反発、日本は?

 当の中国は米国のインド太平洋戦略を「アジア版NATO(北大西洋条約機構)の形成」と見ており、クアッドについては「中国を封じ込め、米国の覇権を守るための道具だ」と批判しています。しかし、クアッドが米中対立をあおるものになってはいけません。地理的に米中のはざまにある日本は、難しい外交の舵取りが求められることになります。

(写真は、クアッド首脳会合を終え、議長国会見で質問に答える岸田首相=2022年5月24日、首相官邸)

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