人事のホンネ

株式会社東急ハンズ

2023シーズン⑩ 東急ハンズ《前編》
「好き」だけではギャップ 好奇心と集団での振る舞い重視【人事のホンネ】

人事部 採用研修グループ 川口純奈(かわぐち・じゅんな)さん

2022年01月12日

 人気企業の採用担当者に編集長が直撃インタビューする「人事のホンネ」の2023シーズン第10弾は、東急ハンズです。2021年暮れにホームセンター大手のカインズのグループに入ることが発表されました。2022年3月いっぱいで東急グループを離れることになるため、将来的には屋号が変わる可能性がありますが、当面は「東急ハンズ」の店舗名を維持しつつカインズとの連携を強化する方針です。採用では「ハンズが好き」で受ける人が多くマニアックな人も歓迎ですが、ビジネスに広げて、入社したらどんなことをやってみたいかまで語れると良いそうですよ。(編集長・木之本敬介)

■説明会
 ――カインズのグループに入るという発表には驚きました。
 東急グループを離れ、カインズのグループに入ることになりますが、ハンズ事業は続きますのでご安心ください。デジタル基盤やPB(プライベートブランド)開発基盤などカインズの強みを活用していくことで、ハンズらしさをより尖らせ、磨き上げていくことができると期待が大きいです。2社はお互いの強みを融合して新しい価値を共創できるパートナーと考えているので、これからのハンズの進化を楽しみにしてください。

 ──2022年卒採用はいかがでしたか。
 選考がWEB化して2年目で、学生も弊社も慣れていたので非常にスムーズでした。2022年卒は説明会、1次、2次面接、「最終面接直前セミナー」まではWEBで行いました。最終面接は悩んだのですが、学生も私たちも双方が納得できる面接をと考え、対面を選びました。

 ──説明会はどんな内容ですか。
 二つの説明会があります。最初にYouTube動画の説明会を全員に見てもらい、エントリーシート(ES)での書類選考を通過した学生にはWEBでの体験型説明会にも参加してもらいました。体験型説明会は2019年卒採用からやっていて、2021年卒からWEB化しました。

 ──体験型の説明会とは?
 入社後1年目、5年目、10年目の仕事内容を、それぞれグループワークで体験します。東急ハンズというと接客業のイメージだと思いますが、商品を販売するだけではなく、イベントの企画や、ゆくゆくはマネジメントの仕事もします。入社してから「そんな仕事もあったんだ」と気づくのではなく、「いろんなことをやっている会社なんだ」と体感し、ハンズの仕事の面白さを知ってから選考に参加してもらおうと思い、始めました。

 ──WEBでどう体験するのですか。
 1年目~10年目までの仕事内容を、ブレイクアウトルームに分かれてグループワークをしてもらいます。
 たとえば1年目では「ヒントラック」という棚を企画します。キッチン用品のお弁当箱なら「新生活を始める人のためのお弁当箱」などヒントを伝える特集の棚づくりをします。5年目はイベントの企画で、たとえば渋谷店にどんなお客様を集めて、何を切り口にしてイベントを行うか、4人で考えます。入社10年目は、管理職としてフロアのメンバーにモチベーション高く働いてもらうためにどんなことをしていくかを考えます。
 1ターム10分ほどの短いもので、計2時間から2時間半くらい。各回6~7グループで行いました。

 ──エントリー後の説明会は珍しいですね。選考の要素は?
 一切ありませんので安心して参加してください!
 「ハンズは名前を知っているから応募してみようかな」と思って来た学生は「意外といろいろできることがあるぞ」と思うようです。「接客販売以外の仕事もあるんだ」「まさかハンズでイベントの企画ができるなんて」「自分がどんな道を進んで行けるのか分かった」といった声を聞きますね。

 ──WEB化して変わったことは?
 対面のときは関東近郊の大学生が多かったんですが、今はさまざまな地域から参加してもらえるようになりました。海外から参加した学生もいました。

■採用実績
 ──2022年卒の内定者数を教えてください。
 関東と関西の採用があり、関東8人、関西2人の計10人でした。全員、総合職です。2020年卒は18人、2021年卒は12人でした。2023年卒採用も同程度の予定です。

 ──男女比は?
 2022年卒は男性4人、女性6人です。2021年卒は男性が2人、女性が10人でした。男女関係なく来てほしいのですが、エントリーも内定者も例年、女性のほうが多いですね。

 ――エントリーはどのくらいですか。
 WEBエントリーの数はとても多いのですが、実際にES提出して選考に参加する学生は2割くらいですね。

志望動機をビジネスに広げ、入社したらどうしたいか語って

■ES
 ──選考スケジュールを教えてください。
 2022年卒採用では、2月にWEBエントリーを開始し、YouTube動画の説明会を見てもらいました。3月1日から10日間ほどES提出を受け付けました。締め切りはこの1回だけです。2021年卒採用より選考を少し前倒ししました。内々定は5月下旬でした。

 ──ESはどんな内容ですか。
 今回は就活サイトのオープンエントリーシートに、独自の質問として、志望動機、長所・短所、「ハンズの社員として必要なスキルや素質だと思うものを挙げてください」の三つを加えました。それぞれ200~300文字です。

 ──「スキルや素質」はハンズの仕事への理解度を見るんですね。重視する項目は?
 志望動機はじっくり読みます。熱量が高いESは読んでいて「おっ」となります。
 「東急ハンズが好き」という思いの中に「ハンズはもっとこういう変化をしないと!」などと書かれていると会いたい気持ちが高まりますね。ビジネスへの広がりがあり、入社したらどうするかまで語れるといいですね。

 ──「好き」だけで受ける学生が多いのですか。
 多いように感じます。私もそうでしたが、モノが好き、雑貨が好きという理由で弊社を受けてくれる人もいます。もちろんその理由もとても嬉しいんですが、「好き」だけでは入社後のギャップがうまれて本人が辛くなってしまう。好きじゃない仕事も待っているかもしれません。お店では接客だけではなく、フロアを回して、売り場をつくるといった仕事が待っています。なので面接では好きなことだけではなく、今後のキャリアを想像してもらえるよう「この先、ハンズに入社したらどんなことをやってみたい?」と聞いていきます。

GD・集団面接では主体的に話せるか、周りと意思疎通できるか見る

■面接
 ──面接はどんな形式ですか。
 1次、2次、最終の3回です。どんな方なのかじっくりお話を聞きたいので、1次は個人面接です。15~20分の予定ですが、おしゃべりな面接官が多いので長いと30分くらいかかります(笑)。1次では社会人としてどのように成長していけそうか、個人の性格を見ます。2次はグループディスカッション(GD)の後、集団面接です。

 ──「WEBだとGDや集団面接は難しい」とやめた会社もあります。
 面接官からは「結構スムーズにできた」と聞いています。GDでは面接官がカメラをオフにして完全に存在感を消すと、もしや面接官がいることを忘れているんじゃないかと思うくらい闊達(かったつ)に話していましたよ。20~25分の討論後、発表してもらいます。2022年卒のテーマは「20代の集客策」でした。弊社はお客様の平均年齢が高めなので、今後20代の方にもたくさん来店していただきたいと考え、このテーマにしました。

 ──評価のポイントは?
 主体的に自分から話ができているかと、周りと意思疎通できているかがポイントです。自分だけワーッと話してしまう人、逆になかなか自分の意見を言えない人もいますが、協調性が大切です。コミュニケーションを取りながら話ができているかを見ますね。

 ──好奇心やひらめきを重視する会社だと思いますが、GDで見るのですか。
 ひらめきや好奇心はGDでは出しづらいと思うので、1次の個人面接で見ています。どんなものに興味を持っているか、じっくり聞きます。
 2次の集団面接は1人あたり10分くらい、GDを合わせるとトータルで1時間から1時間20分くらいですね。集団の中での振る舞い方を見ます。

 ──次はいよいよ最終面接です。
 最終は対面で、社員5人対学生3~4人の集団面接です。会社側は、社長、常務、人事担当取締役、人事部長、人事の管理職が並びます。採用数が少ないこともあり、じっくりお話をしたいと考えています。見た目はかなり堅い感じの「ザ・面接」で、「圧迫面接かと思いました」と言われます(笑)。実際は非常にフランクな面接内容なので、緊張しながら向かった学生さんが「楽しかったです!」と帰ってきてくださると、ほっとひと安心です。
 パーテーションを置き、距離も十分にとって感染症対策を万全にしたうえで、マスクをするかどうかは学生に選んでもらいました。2021年卒採用ではマスクを付けて受けた人には最後に「笑顔だけ見せて」と一瞬だけ外してもらいましたが、2022年卒ではマスクのまま面接を受けた人はいませんでした。こちらが用意した透明のフェイスシールドを使う人もいました。学生が安心して選考に臨めるよう、2023年卒選考でも感染対策は万全にしていきます。

 ──最終をグループ面接にする理由は?
 弊社ではチームで働くので、集団の中での振る舞いを重視しています。東急ハンズの社員としてフィットするかどうかも確認しています。

 ──どういう人が合うのでしょう。
 接客業のイメージが強いですが、弊社の仕事内容は多岐に渡り、商品をつくる開発部や法人向けの営業部もあります。ジョブローテーションで2~3年ごとに仕事が変わるので、「DIY(Do It Yourself)だけ永遠にやっていたい」など好きなことだけを深掘りすることはできません。店舗はもちろん、商品開発や管理部門などいろんなところに行っても楽しめるというフットワークの軽さは非常に重視します。

 ──「最終面接直前セミナー」とは?
 最終面接へ参加する学生にインターンと会社説明会で伝えきれなかった部分を知ってもらうWEBセミナーです。インターンでは若手社員の登壇が多いのですが、直前セミナーでは中堅から重鎮を呼んで、ハンズの未来やライフイベントの際に仕事とどう両立したかを話してもらいました。ハンズの未来をデジタル戦略部の部長が語る「ビジョン」、海外赴任経験のある女性管理職にシンガポールのお店との違いや暮らし方を聞く「キャリア」、産休直前の女性社員が話す「ライフ」の3コースのうち、気になる分野を選んでもらいます。もちろん全部出ても構いません。

 ──ニュースや世の中への関心は重視しますか。
 世の中のトレンドをつくっていく会社なので、新入社員には「新聞を読んで情報を取るんだよ、ニュースに敏感になってね」と伝えます。面接では、ニュースそのものより「今後の小売業がどう変化していくと思う?」などと聞きますね。小売業がどう変わっていくかは、ニュースからの情報や自分の考えがないと語れないと思います。

■求める人物像
 ──採用ホームページの「求める人物像」には、「好奇心」「熱意」「閃き」といった言葉が並んでいます。
 好奇心はとくに重視します。
 自分の思い出の品物を持ってくる人もいます。以前、大学時代に集めた白い文房具セットを持参して、どうして集めようと思ったのか、どんなにいい商品なのかを長時間語った学生がいました。面接は長引きましたが、無事に入社しました(笑)。熱く語れる人はいいですね。

 ──一つのモノに熱すぎて困ることはありませんか。
 弊社の社員はマニアック気質というか、好奇心旺盛な人が多いので、「めちゃくちゃこれが好きで」と語る人を困るとは思いません。むしろ「ちょっと変わった人、おいで」となります。会社としては、マニアックな人は大好きなので。

 ──「好きだけではダメ」ということでしたが。
 「ほかのところも見てね」とは言います。バランスは大事です(笑)。白い文房具の人も「好き」だけならダメでしたが、ハンズでどう展開していくか、何を伝えたいのかに落とし込んでいました。
後編に続く

(写真・山本倫子)

みなさんに一言!

 就職活動を何から始めたらいいんだろうと迷っている人もいると思います。情報があふれていますが、まずは自分が社会人になったら何をしたいのか、何を大事にしたいのか、その都度立ち止まりながら、考えながら就活するといいと思います。興味があるなしにかかわらず、いろんな業界を見てみてください。ぜひその中で選ぶ会社の一つに東急ハンズがあったら嬉しいです。お会いできるのを楽しみにしています!

株式会社東急ハンズ

【小売業】

 東急ハンズは「ここは、ヒント・マーケット。」をブランド・ステートメントとした住まいと住生活・手づくり関連の製品・道具・工具・素材・部品の総合専門小売業です。お客様の生活文化の創造をお手伝いするべく、さまざまな商品を幅広く取り揃え、親切で丁寧なコンサルティングセールスを目指しています。また、店頭販売に留まらず、オンライン相談やワークショップのサブスクリプションなど、時代にあわせてお客様のニーズに寄り添える提案を続けてまいります。