ミツカングループ
2023シーズン⑥ ミツカングループ《前編》
大事なのは自ら考え動く主体性 職種別採用でミスマッチ減【人事のホンネ】
人事本部 人材開発部 真貝奈緒子(しんかい・なおこ)さん
2021年11月02日
■コロナ禍の採用
──2022年卒採用はいかがでしたか。
2021年卒採用では「Zoomの入り方が分かりません」「使うのは初めてで」という人もいましたが、コロナ禍の就活2代目となった2022年卒の学生は全然違いました。格段に慣れていて、WEB上のトラブルもほとんどありませんでした。面接官も慣れていたので運営もスムーズでした。
外部セミナーの参加者数が桁違いに増え、当社へのプレエントリー数、本エントリー数も増えました。「気軽さ」というWEBのメリットを学生が最大限に活用した結果だと思っています。
──WEBでのセミナーや説明会の手応えは?
自社説明会は行っていないので、秋から冬にかけて学内セミナーや合同説明会のWEBイベントに出ました。対面のイベントだと1日最大250人くらいの学生としか接触ができません。学生は交通費を負担しなければなりませんし、私たちも会場費がかかり8時間ほど拘束されます。一方、WEB合同説明会だと30分間の説明を1日10回から11回行いますが、1回の説明で1000人規模、最大2000人もの学生が参加してくれました。人事としてはとてもありがたかったですね。その後は3月1日の説明会の映像をマイページ上で公開して、学生がいつでも見られるようにしました。
──コロナ前の説明会はどの地域で行っていたのですか。
学内セミナーは旧帝大や地方の国公立大でも行っていましたが、東京や名古屋が中心でした。WEBになって遠方からのエントリーが確実に増えました。
──対面での面接はできましたか。
最終面接は対面で行う方針だったのですが、緊急事態宣言の状況もあり、結局、対面とWEBが半々でした。まん延防止等重点措置のときは対面かWEBかを学生に選んでもらいました。
2021年卒の面接は最終面接も含めて選考のほとんどがWEBでしたが、入社した学生の社内での評価が高いので、「WEBでも遜色なく見極められる」という判断もありました。
──コロナ禍で工夫した点は?
私たちは採用活動で「学生に寄り添う」ことが何よりも重要だと思っています。その大きな特徴として、個人面接と最終面接の間に、採用担当とWEBで面談する機会を設けています。個人面接を通過した学生に、「最終面接では、もうちょっとここをうまくしゃべれるといいんじゃない」「緊張からかこの部分をあまり話せなかったから、最初にしゃべってみたら」といったフィードバックも含め全員と面談をします。学生からは研修制度や福利厚生面など、今まで聞けなかった質問も自由にできるので、疑問や不安の解消につながったと思います。毎年、内定者からも好評ですし、我々も学生を応援したくなる気持ちが強くなります。面談数が多くて大変ですが、当社らしい寄り添う採用活動になっていると感じています。
とくに理系は、大手の食品、飲料だけでなく、化学や製薬メーカーとも競合します。弊社が内々定を出しても、その後、他社の内々定が出て辞退してしまう人もいます。そういうことへの対応も含め、弊社への動機づけや、人事が寄り添うことに力を入れています。
■内定者フォロー
――WEB選考だけだと、ミスマッチも心配では?
ミスマッチをなくすため内定後のフォローを細かくしています。2020年卒までは、5月から10月までほぼ毎月、1泊2日の内々定者の集合研修を行っていました。社員座談会や内定者によるグループワーク、懇親会など、かなりパワーもコストもかけていました。
2021年卒はコロナ禍で集合研修ができなくなりましたが、できるだけ齟齬(そご)がないよう、社員座談会や社内ツアーのライブ配信などWEBイベントを毎週開き、「参加したいものに参加して」としました。2022年卒でもWEB上での接触の回数を増やしてコネクションを強くしました。応募職種ごとの懇親会、社員座談会やWEB飲み会などですね。全員と個人面談もしました。
──内定者の反応はどうですか。
「直接会えないがWEBイベントをたくさん実施してくれて良かった」という人が多いですね。「学業やアルバイトで忙しいから大変だよ……」と思っている人も中にはいるかもしれませんが(笑)、我々が最も避けたいのは入社後のミスマッチなので、少しでもその懸念がないように手厚くやっています。
――10月1日の内定式もWEBで?
はい。コロナ前はグループごとに事前に課題を与えて内定式で発表することになっていたのですが、2021年卒ではWEBでは難しいと思ってやめました。ところが、そのせいで入社時に同期の顔と名前が一致しない事態になってしまったので今年は課題を復活させたんです。「ミツカンやミツカンの商品のファンを増やす施策を考えましょう」という課題です。すると、内定者は自主的に週に1回はWEBで集まって課題を進めて内定式で発表し、素晴らしい内容でした。職種ごちゃ混ぜの7人で1グループとし、内定者同士も仲良くなりました。
生産技術、デジタル系人材に注力 増えた遠方からのエントリー
──2022年卒採用の選考スケジュールを教えてください。
コースによって違いますが、3月末から4月上旬にエントリーシート(ES)を締め切り、同時に適性検査をWEBで受けてもらいました。4月下旬にWEBでのグループディスカッション(GD)、5月から面接です。内々定は5月末から6月上旬にかけて出しました。
──2022年卒の採用実績を教えてください。
本社採用は40人で女性が25人、男性が15人でした。工場勤務を前提とした別採用のグループ会社採用は12人です。各部門の人員構成と自然退職者の数を鑑みて、毎年調整しています。
──本社採用は職種別6コースでの採用ですが、「事務系コース」(事務系総合職)や「財務・経理コース」「マーケティングコース」に女性が多いのですか。
いえ、むしろ「技術系コース」(技術系総合職)にも女性が多いんです。調味料メーカーなので、食品志望だったり、管理栄養士の資格を持っていたりする女子学生が多く応募してくれます。農学、化学系や食品加工などの専門分野を学んでいる学生が中心ですね。
──「技術系コース」に加えて「生産技術コース」「ITデジタルコース」がありますね。違いは?
「生産技術コース」は生産技術の仕事で、工場の立ち上げや設備の設計をする機械系や電気系の学生がメインです。「ITデジタルコース」は情報系を学んでいる学生が対象で、情報システムやITの仕事です。この両コースは初期配属を確約しています。その後のキャリアは技術系総合職と同じくジョブローテーションがあります。
──職種別採用にした理由は?
必要な人材を採用するためです。とくに生産技術、デジタル系の人材の採用に注力しています。2020年卒採用から職種別採用を始めましたが、素地があって吸収が早く、意欲も高いのでミスマッチも少ない。ただし、先輩がいないので将来のキャリアプランを示せないのが課題です。
──「マーケティングコース」には応募が殺到したのでは?
2021年卒から設けたのですが、若干名の募集なので2022年卒からこのコースだけ自己PR動画の選考を加えました。ちょっとハードルを上げたので、思っていたほど殺到しませんでした。
──本社が愛知県半田市ですが、出身大学は東海圏が多いのですか。
東海圏ばかりではなく、全国各地の大学出身者で構成されています。WEB選考になって遠くからのエントリーが増えて、内定者には北海道や九州の大学の学生もいます。
本社のある半田は、やっぱり、東京や大阪とは違うので(笑)。「思っていた雰囲気と違いました」と辞退する学生もいるので、「名古屋に住んで通っている社員もいます。ずっとそこで暮らす人ばかりじゃないですよ」と説明しています。対面面接で一度は本社に来てほしいと思っています。
斬新な発想求めるマーケティングコース 中高時代の経験でもOK
──求める人物像を教えてください。
採用ホームページ(HP)に挙げていますが、一番大事なのは「主体性」、自ら考えて行動を起こすことです。若手に任せてくれる風土なので、しっかり吸収してインプットしてから一歩踏み出す人よりも、若手のうちから自分でどんどん声をあげて考えて動ける人のほうが絶対に楽しいし、そういう人を求めています。
当社は新入社員研修が短いんです。新入社員研修を2週間受けたら4月中旬にはもう現場に配属され、すぐOJT(オンザジョブトレーニング)で実際に仕事を始めます。新入社員だからといって臆せず自分で周りを巻き込める人が向いています。
──一括採用でしっかり研修するのが日本企業の特徴といわれますが。
当社は昔からそうですね。それで人が育ってきているから変わっていないのかな(笑)。自分たちも同じ育てられ方をしてきたので、みんなが新入社員に声をかけて現場で育てる風土が強いと思います。
■ES
──ESはどんな内容ですか。
「自分で考えて行動を起こせるか」「周りを巻き込んで行動した経験」の設問が中心です。入社後すぐに組織で動くことを求めるので、集団で行動した経験は必ず確認します。サークル、アルバイトの経験を書く学生が多いですね。理系だと「研究室で企業とこんな共同研究をしました」という内容も多いです。「挫折経験」も聞きます。
──非常に優秀でも「一匹狼」はいらない?
そういう人材を採るために設けたのが「マーケティングコース」です。これまではタイプが似ている人が割と多い傾向でしたが、突飛な発想や妄想力を持つ人が必要と考えました。大学でマーケティングを学んできて、「マーケティング思考」が抜群の学生を採用できました。性格は穏やかで、当社にいそうなタイプなんですが、着想が優れていて、我が社に足りないものを持っています。
──あえて「挫折経験」を聞く理由は?
その人の表面的なところだけではなく、深い部分を知りたいからです。面接ではみなさん「いい話」ばかりするので、マイナスからどうリカバリーしたかを聞きたい。「諦めずに粘り強く物事に取り組める人」か、を確認しています。
挫折経験で多いのは受験の話ですね。学部卒のとき就活に失敗して大学院に進んだ内定者がいます。「院生になっても同じレベルではまた失敗してしまう」と思い、この2年間で資格を取り、勉強に取り組んできたそうです。挫折を糧に目標を定めて努力してきた点が高く評価されました。
――コロナ禍で「ガクチカ」(学生時代に力を入れたこと)が書けないと悩む学生が多くいます。
中学や高校時代のことを書く学生も増えています。もちろん大学生活だけで自分を語れるわけではないので中高の話でも大丈夫です。面接では「その挫折経験をどう生かしていますか」「似たような挫折経験が大学でもありますか」と聞くことはあります。
(後編に続く)
(写真・山本倫子)
みなさんに一言!
就活は大変ですが、体が資本です。健康第一で頑張ってほしいです。そして就活はマッチングです。もし、みなさんがテニスサークルを選ぶとしたら、雰囲気が派手なサークル、真面目なサークル、その中間くらいのサークルと、自分に合うところは肌感で分かると思います。食品メーカーにもいろんなカラーがあるので、まずは自分のカラーを知って、そこからすりあわせをしていく、これが就活だと思います。なので、就活は戦いではありません。学生の皆さんにとっては働きたいと思う会社を見つける時間で、我々採用担当にとっても一緒に働きたい仲間を見つける時間です。学生の皆さんも採用担当も選び選ばれる関係だと思っています。皆さんにミツカンを選んでもらえるように、これからも「寄り添いながら」採用活動に励みたいと考えています。
ミツカングループ
【食品】
「やがて、いのちに変わるもの。」を育む変革と挑戦の企業であり続けるミツカングループは、1804年、初代中野又左衛門が、お酒づくりから生じた酒粕を原料に、発酵という自然の力を活かして、お酢を作ることから、事業が始まりました。以降、210余年の長きにわたり、変革と挑戦を積み重ね、今では日本に留まらず、アジア、北米、欧州に活動の場を広げ、グローバルに事業を展開しております。
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