人事のホンネ

ミツカングループ

2023シーズン⑥ ミツカングループ《後編》
「変革と挑戦」の歴史 就活は働きたい会社を見つける時間【人事のホンネ】

人事本部 人材開発部 真貝奈緒子(しんかい・なおこ)さん

2021年11月10日

 人気企業の採用担当者インタビュー「人事のホンネ」2023シーズン第6弾、ミツカングループの後編です。江戸時代からの老舗ですが、創業以来「変革と挑戦」が伝統とか。最終面接はプレゼンが恒例で、ここで本気度の差が見えるといいます。(編集長・木之本敬介)
前編はこちら

■グループディスカッション
 ──書類選考の後はグループディスカッション(GD)ですね。WEBでのGDは難しいと、やめた会社もあります。
 2021年卒ではGDを見送って動画選考に置き換えましたが、2022年卒採用はWEBで復活しました。WEBインターンシップでグループワークをしてみて、できると判断しました。
 WEBでのGDは学生の顔を一度に見られるので、表情や集中しているかどうかがすごくよく分かりました。対面で人事が目の前にいると学生も話しづらいと思いますが、WEBだとこちらは画面オフにするので、時間が経つうちに緊張が解けて素が出てきました。

 ──どんな形式ですか。
 7人で50分間、テーマは「文化祭の予算振り分け」でした。発表はなしで議論の様子を見て判断しました。
 その場でZoomのチャットで個人宛に資料を送って、「今から読み込みをしてください。……では討議スタート」というやり方です。

■面接
 ──GDの次は個人面接ですね。
 個人面接は1対1で30分です。学生に伝えきってほしいと思っているので、私が担当する面接では「何でもしゃべっていいよ」という時間を設けています。自己 PRでもいいし、他に頑張ったことでもいいし、「これだけは言いたいこと」を伝えてもらうようにしています。その深掘りと、ESに書いたガクチカの深堀り、この二つですね。最終面接は学生1人に対し、幹部複数名です。

 ──最終面接のポイントは?
 公表はしていないのですが、学生にはバレているので言うと……、冒頭5分間で、テーマに沿ったプレゼンをしてもらいます。事前に資料もつくって、紙でも写真でも絵でも文字でも好きに使って構いません。対面面接では紙の資料をホワイトボードに貼ってプレゼンしていましたが、WEBでは資料を映してもらいました。それが冒頭5分間、残り25分間が面接です。

 ──プレゼンの狙いは?
 15年ほど前に導入した担当者に聞くと、当時は面接官が現在の倍以上の人数がいて、学生が威圧感に押しつぶされてしゃべりきれなかったと。そこで、最初にプレゼンタイムを設けて言いたいことを話す時間をとるようにしたのが始まりです。毎年好評で、私もプレゼンして入社しました。

 ──学生は、言いたいことを言える半面、資料の準備が大変ですね。
 準備が面倒だと思う人は辞退しますし、ミツカンに本当に入りたい人は本気でやるので、ここで差が出ます。
 6~7割は学生時代に頑張ったことを二つ、三つ、ポイントを絞って話しますね。過去には「漢字一文字でしゃべります」という変わった例もありました。

「おいしさと健康の一致」めざす 求められる論理的思考

■社風
 ──創業217年の歴史をもつ老舗です。どんな社風ですか。
 先輩社員が築いてきたものを受け継ぎながら変化させていかないといけないという重みはあります。「古い企業なので、新しいチャレンジがしにくいのでは?」というイメージを持つ人もいるかもしれませんが、まったくそんな社風ではなくて挑戦的な風土の会社です。セミナーや説明会では、変革と挑戦の歴史や今取り組んでいる新しい事業の説明など、ミツカンのことをより理解してもらえる話をしています。

 ──昔ながらのお酢の味を守っている会社というイメージだったので、採用HPに「挑戦」という言葉がたくさん出ていて驚きました。
 そうなんです。200年超の歴史の中で明治維新、世界大戦など、いろんな荒波を乗り越えてきた企業なので、ただお酢を作っているだけじゃ乗り越えられなかったと思います。実際、ビール事業や酪農事業をやったり、銀行やハンバーガーショップを経営したり、まったく違う事業に挑戦した過去があります。

 ──今はどんな挑戦をしているのですか。
 10年先の未来を考え、2018年11月に策定した「ミツカン未来ビジョン宣言」の実現に注力しています。企業理念の「2つの原点」である「買う身になって まごころこめて よい品を」「脚下照顧に基づく現状否認の実行」の考えのもと、創業から「変革と挑戦」を続けてきました。今後、世の中の環境変化はますます激しくなり、気候変動や人口爆発により、食料が不足する時代が訪れると言われています。「未来ビジョン」に沿って「人と社会と地球の健康を大切にする」「おいしさと健康の一致」の実現に向け、新しい食の未来をめざしていきたいと考えています。ただ、当社だけで実現できるものではなく、共感、共鳴していただける方を増やし、そういった皆様とともに、「生活共創価値」を作り上げていきたいと考えています。

 ――「おいしさと健康の一致」とは?
 健康によいものであっても、おいしくなければ続けられないし、おいしいものでも健康によくないのであればよろしくない。実は、「おいしさ」と「健康」って両方を実現させるのは難しいことなんです。これを体現したのが「ZENB」(ゼンブ)というブランドです。
 「ZENB」は、植物を可能な限りまるごと使い、おいしくてカラダにいい、「人と社会と地球の健康」に貢献する、ウェルビーイングな食生活を提案するブランドです。野菜や豆、穀物といった植物のおいしさと栄養を、可能な限りぜんぶ閉じ込め、動物性原料は使わず、添加物に頼らない味づくりで、素材そのもののおいしさをいかした商品です。ECサイトでの通販限定の商品で、当面の間は売上を上げることよりも、「ZENB」の価値をお客様にしっかりお伝えすることに注力しています。日本だけでなく、米国、英国でも展開し、「人と社会と地球の健康」に貢献する商品として、好評を得ています。

■働き方
 ──コロナで働き方が変わりました。今後はどうなるのでしょう。
 生産部門を除く多くの部署が「7割テレワーク」の環境となり、どの部署もローテーションを組んで出社していました。社員はみんな「在宅でも意外と仕事ができる」と感じたと思います。本社や営業所ではコロナ前からコアタイムなしのスーパーフレックスタイム制を導入していてコロナになって急に整備することもなくスムーズでした。インフラ強化のため情報システム部はとても大変だったかと思いますが、このままテレワークが継続されると嬉しいです。

■やりがいと厳しさ
 ──ミツカンの仕事のやりがいと厳しさは?
 やりがいは、若手のうちから仕事を任されて、自分で考え、意見を出しながら働けるところです。厳しい面をいうと、やりたいことを提案できる風通しのよさがある一方、上司から論理的思考で考えることや、説明責任を果たすことを求められます。

 ──健康に関わる責任も重いのでしょうね。
 2004年から「やがて、いのちに変わるもの。」というグループビジョンスローガンを掲げています。このスローガンは、「食品は人のいのちの源であり、安全・安心で健康でおいしいものをお届けしたい」という私どもの気持ちを込めたもので、弊社商品ほとんどに記載しています。

■勤務地
 ──愛知県半田市の本社勤務が多いのでしょうか。
 本社採用の場合、営業以外の職種は、東京、名古屋か、愛知県の半田本社になる確率が高いです。営業は全国各地の支店、営業所での勤務です。グループ会社採用の場合は、基本、全国各地の工場配属です。

 ──学生にとって、勤務地は大きな関心事ですよね。
 内定後の面談ではほぼ100%勤務地の話になって、半田での暮らしとか、ジョブローテーションやライフプランについて聞かれます。総合職なので希望がかなわない場合があることはしっかり伝えています。ネックだと感じる学生もいるでしょうが、「どこでも行きます」と言ってくれる学生も多くいます。

同業他社の「いい人多い」が決め手に

■真貝さんの就活
 ──真貝さんはどんな就活をしたのですか。
 入社は2017年です。モノづくり、中でも食品に関心があり、食品メーカーを中心に見ていました。料理が好きなので、パンとかお菓子といった完成物ではなく、調味料の「さしすせそ」(砂糖、塩、酢、しょうゆ、みそ)を出している会社を片っ端から受けました。

 ──なぜミツカンに。
 いくつか内定をもらった中でミツカンに決めた理由は三つ。一つ目はうちの強みですが、各カテゴリーの中での全国シェア1位の商品が複数あって、お酢やポン酢は6割近いシェアを持っています。鍋つゆ、麺つゆ、納豆など強いカテゴリーを複数持っているので、商売がしやすく、開発面でも挑戦しやすいリーディングカンパニーだと思いました。二つ目は社宅制度などの福利厚生が充実していることで選びました。最後は「人」です。大手食品メーカー2社のOB・OG訪問で「他社とつながりはありますか」と聞いたら、ミツカンを受けているなんて一言も言っていなかったのに、お二人とも「ミツカンさんはいい人が多いよ」と。競合他社からほめられる人材が多いってすごいことだなと思って、それが決め手になりました。

 ──実際に接した社員の印象は?
 いい人が多いです。優しく、かつ厳しい人。単に厳しいだけでなく、優しさと思いやりを持って、厳しいことをあえて言ってくれる、といった印象です。

 ──半田本社はネックになりませんでしたか。
 私は関西出身で大学も関西です。実家を出て、関西以外の知らない土地で働きたいと思っていたので、半田勤務になっても、東京でも名古屋でもむしろ好都合でした。

■印象的な仕事
 ――これまでどんな仕事を?
 最初の2年間は東京で営業を担当しました。家庭向け商品の営業で、ぽん酢とか鍋つゆなどの調味料をスーパーに販売していました。3年目から人事をしています。

 ──印象に残っている仕事は?
 営業のとき、新商品で「カップクック」というおかず調味料を販売することになりました。お肉さえあれば生姜焼きなどができる商品なのですが、透明の容器に調味料が入っていて、小売店では「何これ、お菓子?」という感じで、いい反応がなかなか得られませんでした。あるスーパーで豚肉の販売が好調だったので「このお店ならいけるかも」と担当者と何回も商談をして、一度試食販売をしてもらいました。30個売れれば御の字と思っていたら110個売れたんです。お客様の「おいしい」という生の声も聞けたのが一番うれしかったですね。精肉担当の方もすごく喜んでくれて、加工食品の担当の方からも毎週「何か提案を持ってきて」と言ってもらえるようになり、担当の方と飲みに行くようにもなり、つながりができました。

(写真・山本倫子)

みなさんに一言!

 就活は大変ですが、体が資本です。健康第一で頑張ってほしいです。そして就活はマッチングです。もし、みなさんがテニスサークルを選ぶとしたら、雰囲気が派手なサークル、真面目なサークル、その中間くらいのサークルと、自分に合うところは肌感で分かると思います。食品メーカーにもいろんなカラーがあるので、まずは自分のカラーを知って、そこからすりあわせをしていく、これが就活だと思います。なので、就活は戦いではありません。学生の皆さんにとっては働きたいと思う会社を見つける時間で、我々採用担当にとっても一緒に働きたい仲間を見つける時間です。学生の皆さんも採用担当も選び選ばれる関係だと思っています。皆さんにミツカンを選んでもらえるように、これからも「寄り添いながら」採用活動に励みたいと考えています。

ミツカングループ

【食品】

 「やがて、いのちに変わるもの。」を育む変革と挑戦の企業であり続けるミツカングループは、1804年、初代中野又左衛門が、お酒づくりから生じた酒粕を原料に、発酵という自然の力を活かして、お酢を作ることから、事業が始まりました。以降、210余年の長きにわたり、変革と挑戦を積み重ね、今では日本に留まらず、アジア、北米、欧州に活動の場を広げ、グローバルに事業を展開しております。