人事のホンネ

KDDI

2022シーズン⑩ KDDI《前編》
通年採用、早期選考に力 auだけじゃないライフデザイン企業へ【人事のホンネ】

コーポレート統括本部 人事本部 人財開発部 採用グループ マネージャー 足立晶子(あだち・あきこ)さん

2021年01月27日

 人気企業の採用担当者に直撃インタビューする「人事のホンネ」の2022シーズン第10弾は、KDDIです。auブランドで知らない人はいない身近な会社ですが、単なる通信会社を超えて「ライフデザイン企業」へと変わろうとしています。通年採用、早期選考、ジョブ型の「WILLコース」と、採用でも新たな手法に次々と導入しています。詳しく聞いてきました。(編集長・木之本敬介)

■採用実績
 ──コロナ禍での2021年卒採用はいかがでしたか。
 2021年卒から通年採用を始めたので、早期に学生と接点を持ち1~2月にも選考を進めていましたが、多くの学生が動き出す3~4月に新型コロナウィルス感染拡大による緊急事態宣言が発出され、コロナの直撃を受けました。他社の状況も聞きつつ試行錯誤しました。ただ、通信インフラの会社なのにオンライン対応を遅らせることはできないという思いもあり、選考を中断はせず「オンライン」に切り替え「前進あるのみ」の姿勢でスケジュール通りにやり切りました。

 ──採用実績を教えてください。
 2020年入社が278人で、男性188人、女性90人。文理別は業務系が140人、技術系が138人でした。
 2021年卒の内定者は10月入社も合わせて273人で、男性182 人、女性91人。業務系が112人、技術系161人でした。
 技術系は結果として大学院生が多く、これまで“通信会社”のイメージから情報通信系の研究に従事していた学生が多く応募していたのも事実ですが、ライフデザイン領域の事業への進出、そして初期配属を確約する「WILLコース」の拡大によってさまざまな知見が求められるようになり、多様な学部から内定者が出てきています。

 ──コロナは通信業界には追い風でしたが、採用を増やす予定はありますか。
 夏のインターンシップでは、「コロナ禍で通信の重要性に気づいた」とKDDIに興味を持った学生と多く出会いました。コロナで採用を増やすということはありませんが、KDDIは今後、通信をコアに領域を拡大していきますので、「通信」×「何か」で楽しいことをしたいと考えているガッツのある人に来てもらいたいと思っています。
 2022年卒採用は、例年通り260名程度の予定です。

■通年採用と早期選考
 ──通年採用について教えてください。
 経団連が採用に関する指針を撤廃したのがきっかけです。海外の大学で学んでいる学生や外国人留学生、スポーツなどの活動により十分に就職活動ができなかった学生に対して柔軟に対応できるようになり、入社時期も「10月入社」を用意しています。

 ──早期選考はいつスタートしたのですか。
 本エントリーは2019年の12月からです。

 ──毎月エントリーを受け付け、締め切りがあるのですか。
 12月にオープンし、最初の締め切りは1月末でした。その後、随時締め切りを設けて選考を実施しました。4月末までの応募・選考が7割ほど、その後、秋までが3割ほどでした。
 早期選考には力を入れています。まず、OB・OG訪問やインターン、座談会などを通じて、いろんな学生に接点を持ち、きっかけをつくります。学生の中には私たちが通年採用をしていることも知らない人もいるので、積極的に情報を伝えました。
 KDDIのことをまったく知らない学生に対しては、先輩社員を通じて「仕事内容=現場」を伝えました。

 ──KDDIを知らない学生はいないでしょう?
 CMの反響もあり、「au」をきっかけに弊社を知っている学生は多くいます。ただ「KDDI」となるとなかなか業務のイメージを持つのが難しいかと思います。私たちKDDIは通信を軸に「ライフデザイン企業」へ変革しています。新しいKDDIの部分をぜひ学生に伝えたい、興味をもってもらいたいです。そこで積極的にスカウトツールも活用して「KDDIはこういうところです。あなたのスキルをこういう業務にいかせます」とアピールしました。「えっ、KDDIって通信だけじゃないんだ」「auだけじゃないんだ」と新たな発見をしてもらう工夫をしています。

初期配属確約の「WILLコース」は「KDDI版ジョブ型」採用

■職種別採用
 ──2021年卒から採用方法をガラッと変えたのですね。
 3年計画くらいで変えてきました。2020年卒採用から総合職一括採用に加え、初期配属を確約する八つの「WILLコース」を導入し、通年採用は2021年卒から、と徐々に変化してきました。「WILLコース」は、2021年卒で11コース、2022年卒では12コースに増やしました。学生時代の専門知識やスキル、経験から裏打ちされた「やりたいこと(=WILL)」を持つ学生が増えてきているからです。以前は入社前時点で職種を確約できず他社に入社を決めてしまうケースもあり、もどかしい思いもしました。
 WILLコース=未来永劫その職種、と限定するのではなく、あくまで入社時の初期配属領域を約束する、というものなので、本人のキャリアプランに合わせて、入社後のジョブチェンジもあり得ます。

 ──純粋な「ジョブ型採用」まではいかないけれども、総合職の職種別採用ということですね。
 欧米型ではなく、KDDIの良さをいかした「KDDI版ジョブ型」です。

 ──「WILLコース」と従来型の「OPENコース」では、どちらを志望する学生が多いのですか。
 「WILLコース」の初年度の志望者は本当に少なかったですね。次の2021年卒採用では、広報や実際に活躍している先輩との出会いの場も増やし、約4割が「WILLコース」で入社を決めました。2022年卒では5割を目指しています。また、会社に入っていろんな先輩と出会ったり、いろんな業務を経験したりしてからやりたいことを見つけたいという学生も多くいます。そういう人にもぜひ来てほしいので、「OPENコース」も必要だと思っています。

 ──業務系の「WILLコース」には、どんな職種があるのですか。
 法務や著作権などの「リーガル&ライセンス」、経理などの「アカウンティング&ファイナンス」、新規事業などの「ビジネスインキュベーション」の三つは2020年卒から、2021年卒では「営業」のコースもつくりました。2022年卒では「営業」を「アカウントコンサル(法人営業)」と「パートナーマネジメント(代理店営業)」に分けます。業務系でも「初期配属ではこの領域で活躍したい」という専門知識やスキル、経験、そして情熱を持った学生に来てもらいたいです。

 ──多くの学生は営業職に「大事だけれど泥くさくて大変……」というイメージを持っていると思います。
 ホームページ上だけで見て情報を持たず飛び込んでくるとミスマッチになるので、志望する学生におすすめなのが秋冬に開催している1Dayの営業のイベントです。ここでは、グループワークの時間のほか、営業で活躍している社員との座談会も用意しています。座談会では、先輩社員から「こういうことが楽しいんだよ」「こういうところが大変なんだよ」と自身の体験も交えて伝えてもらっています。
 もちろん泥くさい仕事もありますが、「KDDIを知る早道として、KDDIの商材やお客様を理解するために営業コースを志望しました」という学生もいて、コースをつくってよかったと思います。

 ──インターンなどのイベントとセットだと学生に伝わるのでしょうね。学生の評判はどうですか。
 自分の能力がKDDIの実際の仕事にどういかされるのかと思っている学生からの評判はいいですね。インターンを通してKDDIにおける営業の楽しさ、難しさを感じ取り、さらなる興味を持つ学生も多くいます。

 ──「ビジネスインキュベーションコース」は、求める能力が高そうです。
 新規事業の企画や推進の業務に就きたい人向けのコースです。自身の経験やスキルをいかしたいと思う人にはぜひチャレンジしてほしいですね。募集人数は若干名ですが、毎年非常に高いスキルを持った学生に入社(承諾)してもらっています。

地方創生、サバの養殖、医療…加速する多様なビジネス

■ES
 ──選考のプロセスを教えてください。
 エントリーシート(ES)とWEB適性検査による書類選考の後に、面接が3回あります。

 ──ESはどんな内容ですか。
 本エントリーにはまず「基本情報登録」が必要です。学生時代に何を勉強してきたか、何に力を入れて頑張ってきたかなど、履歴書プラスアルファ程度の内容です。
 さらに、ESには400字程度の文章を書いてもらいます。内容はプレエントリー後に確認出来るのでぜひエントリーを! アルバイトや部活動、ゼミや研究等、熱中してきたことは学生それぞれです。実績の大小はあまり見ません。頑張った理由や、自身ならではの工夫、どういう思いで自分がどう行動してきたのかを、ぜひアピールしてほしいですね。

 ──基本情報とESで見るポイントは?
 その人の個性ですね。たとえば、「研究漬けの毎日でした」「野球漬けの毎日でした」「英語が得意です」、それぞれ個性です。多様な個性を見ています。KDDIにはいろいろな仕事があるので、そこに合うような学生に出会えればいい。一律に「ここを見ている」というポイントはありません。

 ──インフラの会社ですから、「何をしたいか」には大きな夢を書く学生が多いのでしょうか。
 「5Gの世界」や「地方創生」という言葉は出てきますね。KDDIは通信だけではなく、地方創生やサバの養殖などさまざまな事業をやっています。5Gの高速通信で「医療に関わる通信を発展させていきたい」という学生もいます。高い通信性能により、今後さまざまな業種のビジネスが加速していくのですが、学生も「何かが変わる」と思っている期待の表れかと思います。「新しいビジネスをつくっていきたい」という内容のESも非常に多いですね。
後編に続く)

(写真・山本倫子)

みなさんに一言!

 自分にとってのやりがい、何をしているときが楽しいか、どういうことに面白みを感じるのか、今までやってきたことを深掘りしてください。面接の場で自分探しをするのではなく、自分自身を把握しておいてほしいと思います。KDDIの業務の中で、皆さんがやりたいことがありそうと思ったら、ぜひホームページを見たり、イベントに参加したりしてください。私たちKDDIは、皆さんと出会えることを楽しみに待っています!

KDDI

【通信】

 KDDIは、通信を中心に周辺ビジネスを拡大する「通信とライフデザインの融合」を推進しています。個人のお客さまには主に「au」ブランドの移動通信と固定通信サービスに加えて、コマース・金融・エネルギー・エンターテインメント・教育などのライフデザインサービスを提供しています。法人のお客さまには、5GやIoTなどの技術を活用し、パートナー企業との連携によりお客さまのデジタルトランスフォーメーションをサポートしています。KDDIグループは、“社会の持続的な成長に貢献する会社”として、SDGsの取り組みを加速させ、お客さまや社会とともに持続的な成長・発展を目指していきます。