人事のホンネ

オムロン

2022シーズン⑥ オムロン《前編》
「社会的課題解決」への共感重視 やりたい仕事、早めに探して【人事のホンネ】

オムロン リクルーティングセンター担当課長 経営基幹職 宮崎ゆかりさん

2020年11月18日

 人気企業の採用担当者に直撃インタビューする「人事のホンネ」の2022シーズン第6弾は、オムロンです。体温計や血圧計などでおなじみですが、グループ企業を含めて実に多彩な事業を展開している最先端企業です。早めに企業研究を進めて、「自分がやりたいこと」を見つけられるかどうかがポイントのようです。(編集長・木之本敬介)

■コロナ禍の採用
 ──前代未聞のコロナ禍での2021年卒採用はいかがでしたか。
 コロナ禍で3月以降に予定していた合同企業説明会のほとんどが中止になりました。自社説明会も対面で実施できなくなったので、2月後半~3月初めにかけて急遽、WEB説明会に切り替えて実施しました。学生のみなさんも急な環境変化に少なからず不安を感じている状況だと思い、その中でも何とか会社についての理解を深めてもらえる内容にしようと考えました。こちらからの一方的な情報発信だけでなく、できる限り双方向のやり取りになるように、人事担当や現場の若手社員を交えたディスカッションをオンラインで開催し、チャットを通じて学生からの質問を受け付け、リアルタイムで回答するなど工夫しました。アンケートでは95%くらいの学生が「満足」という結果で手応えを感じました。

 ──若手社員参加のディスカッションはどのように?
 若手社員5~6人にいろんな質問を投げかけながら話す様子をYou Tube ライブで流しました。質問はチャットで受け付け、その場で社員に答えてもらいました。予約制ではなく、エントリーした学生にURLを知らせてランダムに参加できるようにし、3回実施して約1500人が参加してくれました。

 ──採用スケジュールはかなり変更されたのですか。
 選考スケジュールはほぼ当初の計画通りに進めることができました。「営業・スタッフ職」向けに予定していたグループディスカッション(GD)は中止し、面接をオンラインに切り替えるなどの変更はありました。

■WEB面接
 ──面接はすべてオンラインで?
 ほとんどオンラインで行いました。
 もともとオムロンの面接は、落とすためのものではありません。学生のみなさんの強みや伝えたいことを引き出し、お互いの理解を深めることを重視しています。WEB面接でもこの点は変わりません。学生のみなさんには「リクルートスーツではなく普段着で参加してください」と伝え、緊張感を解く工夫をしました。スーツの人もいましたが、自宅や研究の合間に面接を受ける学生もいて、普段着で受ける学生も多かったですね。初めてオンラインで面接を行う面接官に対しては、事前に「学生の話を聞いている、理解できているということが学生に伝わるように、うなずきやリアクションを普段より大きくしてほしい」とお願いしました。WEB面接は初めてでしたが、対面では緊張しがちな学生もリラックスして受けてもらえたと思います。

 ──なるほど、WEB面接だと研究の合間にも受けられるわけですね。
 はい。遠方の学生だと、長距離の移動がなく授業の合間に参加してもらえるので日程調整がしやすくなるケースもありました。

 ──対面面接より読み取りづらかった面は?
 表情や会話中の相づちなど、「非言語」といわれる部分は対面での面接に比べると読み取りづらい面もありました。画面上では全体像が映らず、目や唇の動きも見えにくく、緊張しているのか落ち着いているか、少し焦っているのかな、困っているのかな、といったことが少し分かりにくかったですね。

 ──逆にWEBだからこそ伝わりやすかったことはありますか。
 自分の研究内容をアピールできる資料を準備し、面接時に画面共有しながら説明してくれた学生もいて、オンラインならではの工夫だなと感じました。資料を持ち込んで落ち着いて話せれば、その後のやり取りもスムーズに進みます。やってみて初めて分かったことです。

 ――カンペを見るのはNGですか。
 NGではありませんが、オムロンの面接はお互いを理解する場としているので、準備したものを読むよりも、自分の率直な気持ちや考えを聞かせてほしいと思っています。

 ──面接で見るポイントを教えてください。
 学生1人に対して面接官2~3人で、時間は40分前後です。1次面接では、専門分野や基礎的なスキル、パーソナリティーを確認します。オムロンの企業理念「事業を通じた社会的課題の解決」に共感し、自らが実践しようという意欲を持っているかという点も重要です。2次面接も評価の観点は同じですが、より具体的にオムロンでどんなことをやりたいのか、どういうものに興味関心があるかを掘り下げていきます。

グループ一括採用だが面接は各社ごとに実施

■採用実績
 ──2021年卒の採用実績を教えてください。
 オムロングループ全体でおよそ100人です。例年、6~7割が「技術職」で、3~4割が「営業・スタッフ職」です。男女比は年によって多少ばらつきはありますが、だいたい社員の男女比と同じで、女性が2割、男性が8割くらいです。
 2020年4月入社は143人でしたから、今年の内定者は前年と比較するとやや少なかったですね。事業状況に応じて採用人数は変わります。

 ──技術職はほぼ大学院卒ですか。
 院卒のほうが多いのですが、グループ全体では学部卒、高専卒も一定数います。

■グループ会社
 ──どんなグループ会社があるのですか。
 制御機器、ヘルスケア、社会システムと、それらを支える電子部品事業を成長エンジンとし、これを担うグループ会社や、その他の領域で事業を通じた社会的課題の解決に取り組むグループ会社もあります。多くの方がオムロンと聞いてイメージされる体温計、血圧計などのヘルスケア事業は「オムロン ヘルスケア」が、駅務機器(自動改札や自動券売機)、公共交通、信号機などの社会システム事業は、「オムロン ソーシアルソリューションズ」が担っています。その他には、ソフトウェアの開発事業を手掛ける「オムロン ソフトウェア」、制御機器や駅務機器などの設置、構築、管理を担う「オムロン フィールドエンジニアリング」や、電子部品関連の事業を行う3社、「オムロン スイッチアンドデバイス」、「オムロン リレーアンドデバイス」、「オムロン アミューズメント」などがあります。
 採用は、オムロングループ一括で行います。

 ──グループ一括採用ですか。
 採用活動はグループで一緒に行いますが、選考時に学生のみなさんに受けたい会社を選んでもらい、面接はグループ各社で行います。
 2021年卒採用から、早い時期にグループ各社の事業などの情報を提供することで、学生のみなさんが早い段階で「志望する会社や希望する職種」を決めてもらうようにしました。各社ごとに特色があるので、やりたいことを自分で探せるように説明会の段階から意識して情報を発信しました。

 ──いろんな事業があるので説明会が大事ですね。
 はい。各事業についてより知ってもらうために自社独自のイベントを採用活動の早い時期に実施し、学内の説明会では各事業の社員にも参加してもらい、具体的な仕事内容を伝えて学生に理解を深めてもらうようにしています。
 さまざまな機会を通じてオムロンの幅広い事業の内容を伝え、それぞれの事業で働く具体的なイメージを持ってもらうことで、学生のみなさんに「制御機器事業で工場の自動化を実現したい」「社会インフラに携わりたい」とオムロンでやりたいことを見つけてもらえたらと思っています。

 ──どんなイベントですか。
 短期・中期のインターンシップです。会社見学ツアーや事業説明会、企業理念体感ワークショップを組み込んだ短期のインターンや、技術職を対象に、2週間の就労型インターンを行いました。2週間で成果が出るようなプログラムを個別に考え、実際の業務を経験してもらうので、現場と学生のマッチ度が非常に高いと感じています。短期・中期のインターンに参加した学生から「オムロンに対する関心が高まった」との声も聞いており、多くの学生がその後エントリーしてくれました。
 2022年卒向けの就労型のインターンやイベントもすでに開始し、多くの学生が応募してくれています。2月ごろまで実施する予定なので、興味のある方はぜひホームページをご覧ください。

 ──本選考のプレエントリー数はどのくらいですか。
 年によってばらつきがありますが、1万5000~2万人です。

■推薦制度
 ──技術職の学校推薦制度はどうなっていますか。
 学校推薦はグループではなく各社ごとに対象校を決めて実施します。オムロンでは3年ほど前からジョブマッチングという方式を取り入れました。もともと学校推薦は大学に求人票を出し、学生が大学から推薦状をもらって受験する流れでしたが、先に面談をして、双方のマッチングが成立した時点でオムロンへの入社可否を判断してくださいという仕組みに変えました。1社しか受けられない学校推薦とは異なり、複数の企業の面談を受けられるので、学生にとっては受けるハードルが下がります。

 ──マッチング成立までは何社か受けられる?
 はい。オムロン以外の別の会社のマッチング面談も受けて、マッチングが成立した A 社、 B社、オムロンの中から選ぶことができます。

制御機器、電子部品、ヘルスケア…どの営業職か選んでもらう

■職種
 ──職種は「技術職」「営業・スタッフ職」の募集ですね。
 「営業・スタッフ職」でも経理や法務は職種別採用です。本人に「法務を受けたい」「経理を受けたい」と選んでもらいます。
 営業でも、オムロンの制御機器の営業をやりたいのか、電子部品か、ヘルスケアか……、事業を自分で選んでもらいます。併願できるので、各グループ会社を全て受験することもできます。

 ──学生は「この営業職がいい」と選べるものですか。
 制御機器、電子部品とヘルスケア、社会システム、それぞれの事業でお客様が異なり営業スタイルも変わるので、学生に選んでもらうようにしています。たとえば、社会システム事業では、鉄道会社がお客様になります。また、入社後ずっと同じ職種、事業で働くわけではなく、別の仕事に挑戦できる社内公募制、社内応募制という仕組みもあります。オムロンでは、社員一人ひとりの志を尊重しており、志を達成するために準備をしている人にはチャンスが与えられるようになっています。

 ──「営業・スタッフ職」は、選考を受けながらさらに細かく選んでいく?
 オムロンは「自分が何をやりたいか」を大事にする会社です。技術職でも選考の中で「やりたいことは何?」「生産技術をやりたい」と言われて「なぜ?」と聞くと、「生産現場の効率化をはかることを学びました」という話が出てきます。「技術営業をやりたい」という学生に「どうして?」と聞くと、「私は技術も好きですが、お客様と接するのが好きです。だから両方やりたい。説明会で話を聞いて興味を持ちました」というように、自分のやりたいことを聞かせてもらって選んでもらうようにしています。

 ──「技術営業」とは?
 技術職にはFAE(フィールドアプリケーションエンジニア)と呼ぶ「技術営業」の仕事があります。工場は自動化が進んでいるので、たくさんモノをつくりたい、不良品を減らしたい、などとお客様から技術的な相談を受けたときに営業だけでは対応が難しい場合があります。技術者としてお客様の現場に行き、課題に対して解決策を提案するのがFAEの仕事です。お客様の現場で最先端の技術に触れ、お客様とともに課題を解決するオムロンならではの特徴的な技術職です。

 ──「専門職制度」があるそうですが、どんなものですか。
 オムロンには総合職である「一般職」と「経営基幹職」があって、経営基幹職の中に専門職とマネジメント職があります。
 一般の会社では一般職の後はマネジメントや会社の経営側になる道しかありませんが、オムロンには専門性をいかして横断型プロジェクトを担当したり、その道のプロとして専門性を発揮したりする「専門職制度」があります。技術系の生産技術などのほか、法務、経理、購買、品質管理にも専門職がいます。現在約100人います。

 ──勤務するエリアは選べますか。
 入社後、条件を満たせば働くエリアを選べる制度はあります。以前は地域限定採用があり、京都で採用されると自宅から通える範囲以外への転勤はなく、仕事もある程度限定的でした。2015年に制度を見直し、男女問わず「子育ての期間はエリアを限定して働きたい」という人に対応するエリア勤務制度を導入しました。子どもが高校を卒業するまでは、エリアを限定して働くことができます。
後編に続く)

(写真・MIKIKO)

みなさんに一言!

 環境の変化が激しく、コロナの影響もあり、来年はどうなるか分かりません。自分自身がどうしたいのか、しっかり考えながら進んでほしいと思います。オムロンだけでなく、若い人たちが挑戦できる領域はたくさんあります。変化に耐えうるような柔軟性としなやかさ、「自分はこれがやりたい」という一本筋の通った考えを大事にしながら、ぜひ納得のいく就活を楽しんでください。

オムロン

【制御機器・電子部品・ヘルスケア】

 オムロン株式会社は、オートメーションのリーディングカンパニーとして、工場の自動化を中心とした制御機器、電子部品、駅の自動改札機や太陽光発電用パワーコンディショナーなどの社会システム、ヘルスケアなど多岐にわたる事業を展開し、約120の国と地域で商品・サービスを提供しています。