人事のホンネ

パイロットコーポレーション

2022シーズン⑤ パイロットコーポレーション《後編》
生活に密着し人生彩る誇らしい仕事 手書きの良さ伝えたい【人事のホンネ】

人事部 人材戦略グループ 係長 島田澄人(しまだ・すみと)さん

2020年11月11日

 人気企業の採用担当者インタビュー「人事のホンネ」2022シーズン第5弾、パイロットコーポレーションの後編です。日々の生活を支え、ときに人生の節目をともにする筆記具ですが、手書きの機会は減りつつあります。手書きの良さを伝える「コトづくり」もこれからのキーワードだそうです。(編集長・木之本敬介)

(前編はこちら

■面接
 ──WEB面接はいかがでしたか。
 2021年卒採用では、文系がWEB面接1回、対面2回。理系はスタートが早かったのでWEB面接2回、対面1回でした。
 WEB面接は昨年、一部の遠方の学生にはしましたが、本格的に実施したのは初めてです。オペレーションが心配でしたが、やってみたら意外にうまくできたなという感じです。画面越しでもface to faceなので、内面もある程度は分かりました。大きなトラブルもありませんでした。

 ──対面面接のコロナ対策は?
 3~4メートル離れて、面接官の前にアクリル板を用意して飛沫が飛ばないようにし、お互いに表情が見えるようにマスクを外した状態で面接しました。

 ──対面面接をしてよかったですか。
 はい。学生の雰囲気とか、入ってくるときの所作が分かります。また実際に足を運んで、どんな会社でどんな面接官なのかを学生に体験してもらいたいと思い、「選考を受けるだけではなく、パイロットがどのような会社なのかを実際に見て、感じてください」と伝えていました。1次面接は課長クラス、2次面接は部長クラスと、会社の中核を担う社員が面接します。ゆくゆくは上司になるかもしれないし、こういう社員たちと会社を動かしていくのだと、少しでも感じてほしいと考えました。

 ──面接の形式は?
 理系は1次のWEB面接が社員2人対学生1人で約30分、2次のWEB面接も2対1で30分です。対面の最終面接は役員4人、学生1人の4対1で30分でした。
 文系は、1次のWEB面接が社員2人対学生1人で30分。対面の2次面接が社員3人対学生1人。最終は役員4人対学生1人、時間は30分くらいでした。

 ──面接で見るポイントは。
 まずは、姿勢や身だしなみ、声の大きさ。内容については、質問の意味をしっかり理解できているか、根拠に基づいて筋道を立てて説明できているか、自分の言葉で自分らしく語れるかなどを見ています。基本的にESや履歴書に書かれている内容についての質問が多いです。

 ──ニュースや時事問題について聞きますか。
 話の流れで時事問題に触れることもあるし、学生が何かを説明するときに時事問題を織り交ぜてきたり、引き合いに出したりすることもあります。「世の中のことを勉強しているな」とプラスの評価になります。

■求める人物像
 ──求める人物像は?
 ひとつは、自ら考え行動できる人。つまり主体的に行動できる人ということです。次に、成長し続けられる人。より良く、より上を目指して自分を変えていけるということです。最後に、グローバルな視野をもっている人。変化の多い現在において、国内外で活躍するために広い視野をもっているということです。
 さらに付け加えると、創業以来の社是のひとつである「三者鼎立(さんしゃていりつ)」を体現できる人です。使う者、売る者、つくる者、三者のいずれかが得をしても、損をしても商売は成り立ちません。自分の利益だけを求めるのではなく、周囲へ配慮した行動ができ、相手の立場に立って考えられるかどうかです。営業も自分の売上目標だけを考えるとうまくいきません。相手もこちらも利益を出すような考え方が必要です。

面倒見がいい家族的な会社 セラミックス部品などの事業も展開

■職種
 ──新卒一括採用見直しや、ジョブ型採用についてのお考えは?
 基本的には新卒一括採用はしばらく続くと思います。ジョブ型採用について現在はおこなっていません。
 大卒で技術開発職以外は、入社初期、当社のベースとしている国内営業を中心に配属します。そこで業界の現状や会社が置かれている状況、自社商品の知識をしっかり身につけます。そして毎年7月に全体の人員配置のバランスを考えつつ、本人の希望や素養を反映して異動をおこないます。国内営業にとどまる人、海外営業や企画職になる人、スタッフ部門に入る人とさまざまです。現状ではジョブ型はなじみませんが、会社がさらに成長していくために強化が必要な特定の職種や役割が出てくると思いますので、今後については検討していこうと思っています。

■インターンシップ
 ──インターンシップについて教えてください。
 今年はまだ具体的に決まっていませんが、WEBで12~1月開催を予定しています。昨年までは対面のワンデーインターンを行っていました。定員制で、複数のグループで本社に来てもらって、業界や当社の説明、構造を知ってもらうために万年筆の組み立て講座をしました。営業体験では架空の店舗にパイロットの商品を提案し、導入してもらうにはどういう提案をしたらいいかというワークもしました。
 技術開発職は化学系と機械・電気系に分け、化学系は神奈川県の平塚工場でインクの配合体験、工場見学をしました。機械・電気系は群馬県の伊勢崎工場を見学したり、実際に働いている人からレクチャーを受けたりしました。

■社風
 ──どんな会社ですか。
 優しい人が多く、家族的な会社かなと思います。チームや組織で動くことが多いので助け合いながら仕事をします。社員同士のコミュニケーションでは仕事以外の話も多いですね。面倒見がいい人が多いです。

 ──コロナ禍で営業の働き方は変わりましたか。
 緊急事態宣言が出て営業は取引先に行けなくなり、メールや電話で営業をおこなうかたわら、今後の施策、マニュアルの作成などをしていました。宣言が解けてからも、直行直帰を続けています。「生産性が上がった」「通勤がない分、時間を有効に使える。家族との時間が増えてよかった」という声もあります。

 ──デジタル化でハンコがいらなくなるかもしれません。ペンはどうですか。
 確かに書く機会は減ってきているかも知れませんが、世界にはまだパイロットの筆記具がいきわたっていない地域がありますので、まずはそこに広めていきます。また、パイロットは「書く、を支える。」をブランドメッセージとして掲げています。今後は物理的に文字を書くだけではなく、手書きの良さを伝えていく、書く機会を増やしていくための「コトづくり」も模索していかなくてはいけない。100年続く会社で歴史もありますが、変えるべき部分は変えて、新しいアイデアや視点を入れて変化に対応していかないといけません。そういった意味で、筆記具の開発で培った技術を応用し、セラミックス部品や指輪など宝飾品の事業も展開しています。

「このペンのおかげで大学受験を乗り切れた」

■やりがいと厳しさ
 ──仕事のやりがいを教えてください。
 筆記具は生活に密着し普段から目にします。どの部署でも自分が携わった商品がお店に並び、手に取ってもらえるのを見られるのは、うれしく誇らしいものです。筆記具は人の助けになったり、節目節目で力になったり、喜びを分かち合えたりします。お気に入りのペンは、気持ちを上げ、人生を彩り、その方の喜びに貢献することができます。さらに、技術開発職だとモノをつくり出す喜び、営業なら一人でも多くの方に当社の良い商品を知って使っていただく喜び、目標に対する達成感もあります。

 ──逆に厳しさは。
 営業に関しては、売上や利益を追いかけなければならないというところは当然あります。単なる数字ではなくシェアを伸ばすということで、どの職種でも地道で細かい仕事もあります。
 また、歴史がある分、保守的な部分もありますが、先に述べたように変わるべきところは変えていこうとしている過程です。

■島田さんの就活
 ──島田さんはどんな就活をしたのですか。
 入社は2002年です。最初は興味がある業界の会社をたくさん受ければやりたいことが見つかると思って、クレジットカード会社、住宅メーカー、車のディーラー、旅行会社などを手当たり次第受け、ディーラーなど数社から内定をもらいました。車が好きだったんですが、はたと「好きだけで選んでいいのか」という思いと、自己分析が甘かったこともあり、6月初めに全部リセットしました。仕事で自分が納得できること、どんなことなら耐えられるかを考えていた7月、パイロットの2次募集を見つけました。パイロットの「ドクターグリップ」には思い入れがあり、「このペンのおかげで大学受験を乗り切れた」とすごく感謝したことを覚えていました。人の役に立って貢献できるモノを自社で生産し、販売に携わることができれば大変なことも頑張れると思い、パイロットを受けました。面接では背伸びせずに思いを正直に伝えた結果、内定を得ました。飾らない自分を受け入れてくれたとの思いもあり、入社を決めました。

 ──入社後の経歴を教えてください。
 入社後1年間は本社で国内営業、2年目に新潟に転勤して3年間営業をしました。その後、東京と大阪で国内営業を続け、2019年7月に人事部に異動しました。

 ──印象に残っている仕事は?
 3年間の新潟転勤を終え、東京に戻ってノベルティーやOEM(相手先ブランド生産)を扱う部署に配属されたときのことです。企業が使う販促用ボールペンなど、OEM先のキャラクター商品を扱う部署だったのですが、提案がよく採用されましたし、金額や本数が大きかったので、印象に残っています。それに、自分が携わったものが実際に配られていたり、店舗で手に取ってもらったりするのを見ると、すごくうれしかったですね。本社内の企画部門の社員、スタッフはもとより、筆記具のパーツの配色や軸の柄を変えるために工場の人と仕様の打ち合わせをし、印刷やパッケージ、シールの業者の方とも直接やりとりしました。いろんな人と一つのモノをつくっていく喜びを実感しました。

(写真・山本倫子)

みなさんに一言!

 就活にはすごくパワーがいります。でも、自分をしっかり見つめ直して、生き方やあり方、どういう人生を歩みたいかを考える貴重な期間です。たくさん悩んで、どんどん行動して、悪戦苦闘して、いろんな会社や人と接点を持ち、いろいろな方の意見を参考にし、分析して、最終的には自分で進路を決断してほしいと思います。自分で考えて、悩み抜いて出した決断であれば後悔することは絶対にありません。
 もうひとつ伝えたいことは、会社に入ることはゴールではなく、長い仕事生活のスタートに過ぎません。入社してからどうやって自分の理想とする生き方、あり方を実現できるかが大切です。私も今、自分の納得できる仕事のあり方、働き方を実現するために頑張っています。大変なことも多いですが、頑張りましょう!

パイロットコーポレーション

【筆記具製造・販売】

 パイロットコーポレーションは1918年に日本で初めて純国産万年筆の製造に成功、その製造技術から総合筆記具メーカーとして、多くの革新的な製品を誕生させてきました。長時間筆記でも疲れにくい「ドクターグリップ」、消せるボールペン「フリクション」シリーズなど、現在では世界190以上の国と地域でパイロットブランドの製品が使われています。「書く、を支える。」企業として製品を通じて世界中の「書く」を支え、未来の新たな「書く」を、私たちと共に支えていただける方をお待ちしています。