パイロットコーポレーション
2022シーズン⑤ パイロットコーポレーション《前編》
筆記具好きだけでなく「なりたい自分」が大事 手書きESに思い込めて【人事のホンネ】
人事部 人材戦略グループ 係長 島田澄人(しまだ・すみと)さん
2020年11月04日
■コロナ禍の採用
──前代未聞のコロナ禍での2021年卒採用はいかがでしたか。
とまどいが大きかったですね。学生を集められないので、説明会、面接はWEB化を余儀なくされました。最初は選考の精度が担保できるのか不安が大きかったのですが、何度か面接するうちに慣れてしっかり見ることができました。ただ、途中で緊急事態宣言が出て採用活動全般を4月下旬まで3週間ほど中断。再開のタイミングには苦慮しました。学生にコンタクトをとり「早く再開してほしい? 今はまだ不安?」と聞いて確認しました。総じて「早く始めてほしい」という意見だったので、再開を決断しました。学生からも「パイロットはすぐに再開してくれたし、その後のスケジュールも知らせてくれたので、うれしかった」と聞いています。
──当事者の学生の声を直接聞いたんですね。
今後どうなるのかすごく不安だったようです。再開の見通しが見えれば安心できますが、アナウンスなしの企業が多かったとか。選考のとき学生に「安全面で不安もあるのでは?」と聞くと、「不安もありますが、次に進めるほうが心が楽です」と。ただ、中には「まだ不安」という学生もいて、面接を対面にするかしないかは社内でかなり議論しました。結局、1次面接はすべてWEB、選考が先に進んでいた理系は2次面接までWEBにしました。文系は2次面接から対面にしましたが、切り替えるタイミングは迷いました。
■採用実績
──2021年卒の採用実績を教えてください。
内定者は全部で約30名です。文系・理系でほぼ半々、デザイン職が若干名です。男女比もちょうど半々でした。
今回はモノづくりをするメーカーの人材として技術開発職を増やしています。最近は理系の学生を採用しづらい状況ですが、今回は予定より多く採用することができました。
■WEB説明会
──WEB説明会はいつから、どんな内容で?
3月の企業広報解禁までは学内の企業説明会、合同の企業説明会に出ていましたが、その後、対面の説明会が一切できずWEBで行いました。
通常の説明会の内容を録画し、予約してくれた学生がWEB上で見られるよう、特定の時間に動画を流すようにしました。通常60分のところをWEBでは30分にし、6回行いました。
──参加者数は?
前年に東京・大阪で開いた説明会の参加者は400人程度でしたが、WEBにしたところ約5倍に増えました。リアルの説明会は枠が小さく先着順や抽選なので参加できない学生もいました。WEBで間口が広がり、今まで来なかった人、特に地方の学生にも見てもらえてとても効果的でした。少しでも興味のある人が見てくれたのだと思います。プレエントリー数も前年の約2倍に増えました。
2022年卒採用でもWEB説明会をおこない、新型コロナの状況が改善したら対面説明会をプラスするつもりです。
自分の長所と志望動機、結びつけて考えて
──選考の流れを教えてください。
WEB説明会の後、まずESで選考をして、詳しい仕事説明会と筆記試験、同時にWEB録画面接をする予定でしたが、コロナの影響で詳しい説明会は省略。筆記試験もWEBテストに切り替えました。
──ES選考の後に、筆記試験とWEB録画面接ということは、書類選考が2段階あると。
WEB録画が「書類選考」なのかはわかりませんが、そういう意味合いですね。
筆記試験は学力をはかる簡単な独自テストで、文系は国語・算数・英語のような内容です。ここでかなり絞ります。筆記試験とWEB録画面接を合わせて総合的に判断します。
──筆記試験を自宅でのWEBテストにして問題は?
答えを調べようと思えば調べられるので、回答できる時間を限定して一斉に受けてもらいました。一つひとつ調べていたら間に合わない問題量です。
──WEB録画面接とは?
WEBのシステムにアクセスし、いくつかの質問にそれぞれ1分間ずつで答えてもらいます。前年から導入しましたが、映像は情報量が多いのでESでは分からないその人が持つ雰囲気や意気込みなどが伝わり、判断しやすくなります。
部屋の背景を工夫する人もいて壁のボードに「〇〇です。よろしくお願いします!」と自分の名前を書いてあったり、「私の特長は……」「PRポイントは……」とテロップを使って説明したりする人もいました。とくに制限は設けていませんし、できるだけ目立とう、分かりやすくしようという努力を感じました。
あとは質問に対し、どれだけしっかり考えたか、掘り下げたか、自分を分析したかなどを見ていました。
■志望理由
──ESはどんな内容ですか。
最大の特徴は手書きということです。A3サイズで、左上半分は氏名・大学名などの基本情報、左下半分が「志望理由」です。文系は右半分が「学生時代にぶつかった壁」。理系も左側は同じで、右上半分が「学生時代にぶつかった壁」、右下半分は「今、自分が行っている研究内容」です。
字数制限はなく、罫線だけです。
――ESのポイントは?
読み手に分かりやすく伝えようとしているか、どう表現しているか、自分の言葉として表現しているかは大事です。自分本位に書きたいことを並べ、読み手のことを考えていないのでは困ります。次に内容です。
──「志望理由」欄だけで300文字は書けそうです。
「学生時代にぶつかった壁」を乗り越えた経験も加点になりますが、アルバイトやサークルなど同じ内容になることが多いので、志望理由を重視します。「パイロットはすごくいい会社で」「社是に共感しました」と書く人が多いのですが、それだけでなく「自分のこういうところをいかして、こう役に立ちたい」「会社に入って自分はこうなりたい」という部分があるかないか。「自分ごと」としてとらえているかどうかを見ています。
──文房具は誰もが使うので体験を盛り込みやすいですね。
ただ、「社是に感銘を受けました」「御社の商品が好きで」などしか書いていないと、「文房具が好きなだけなのかな」「好きだからとりあえずESを出したのかな」と思ってしまいます。
「どういうことなら自分が納得して仕事ができるか」「自分の考え方にパイロットが合っているか」を考えてほしいです。文房具や筆記具が好きなだけで入社するとギャップに苦しんでしまうこともあると思います。現実の仕事内容をしっかり受けとめたうえで、ミスマッチではないかをよく考えてほしいと思います。
──ギャップとは?
華やかな業界というイメージを持っている人が多いですね。大型雑貨店の人気店舗の売り場に営業に行って商品紹介や売り場の提案をするというイメージが先行してしまう人もいます。しかし、最初のうちは、店主が一人で経営しているような小さな街の古い文房具店も担当します。なかなか売れなくても、新たな提案をしたり、お店のメンテナンスとしてストッカーから商品を取り出してきて並べたり。店頭のペンの本数を確認して注文をとることもあります。正直、当初のイメージと違うなと思ってしまう新人もいます。みなさんが思っているより地道な仕事もあります。
──だから「自分ごと」として考えているかが大事だと?
はい。自己実現と言うとカッコいいのですが、「なりたい自分になるために、この会社で何ができるのか」といったことですね。たとえば「サークル内で発揮してきたリーダーシップや調整力をいかしてパイロットでもまとめ役として頑張りたい」などと、自分の長所と志望動機を結びつけられるとよいですね。
ガクチカで困難に立ち向かう姿勢、身に付けた力を見る
──ESの右側は「大学時代にぶつかった壁」「その壁へのあなたの取り組み、その後の変化について具体的に記入してください」とあります。質問の狙いは?
いわゆる「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」です。どのように取り組み、どう成長したか、また、困難に立ち向かう姿勢を見ます。ゼミのこと、アルバイトと学生生活の両立、留学中のコミュニケーションなど、学生によって「壁」のレベル感は違いますが、乗り越えるのが大変なことにどのようにチャレンジしているかがポイントです。その経験から学んだことや身につけた力は何なのかを自分なりに表現できているかも見ます。
──印象に残っている学生は?
東京オリンピックを目指していた人、芸能活動をしていた人、動画配信をおこなっている人など、自分では想像できないような体験、チャレンジをしている人がいて、現在の学生の多様性を実感しました。また、横の罫線に縦書きで書いてくる人、絵を描いてくる人もいました。「罫線にこだわらず自由に表現してください」としているので問題はありません。
──横書きの質問には横書きで書くのが常識では?
あえてチャレンジしてきたなと。文系のESの応募は1000通近く来るので、埋もれないよう考えてきたのかなと思いました。すごく字もきれいな人でした。
字の丁寧さも見ます。きれいさは求めませんが、誠実に一生懸命書いているか、見られることを意識して書いているか。たまに文字として成り立たないような人もいるので……。くせ字なのかもしれませんが、読む相手のことを考えて思いを込めて書いてほしい。
同様の理由で字が細かすぎるのも、印象があまりよくないですね。
──理系はさらに専攻について書くんですね。
取り組んでいる研究に触れてもらえると、その人がどのようなことに興味があり、どのような姿勢で取り組んでいるのかわかるのでこの項目を入れています。
また、理系の学生は当社の製造・開発に関する職種につくことが多いので、関連する研究をしていたら参考にします。研究テーマが直接仕事に結びついていなくても、実験プランの構築や進め方、記録の基本が身についていればそれも評価できます。
(後編に続く)
(写真・山本倫子)
みなさんに一言!
就活にはすごくパワーがいります。でも、自分をしっかり見つめ直して、生き方やあり方、どういう人生を歩みたいかを考える貴重な期間です。たくさん悩んで、どんどん行動して、悪戦苦闘して、いろんな会社や人と接点を持ち、いろいろな方の意見を参考にし、分析して、最終的には自分で進路を決断してほしいと思います。自分で考えて、悩み抜いて出した決断であれば後悔することは絶対にありません。
もうひとつ伝えたいことは、会社に入ることはゴールではなく、長い仕事生活のスタートに過ぎません。入社してからどうやって自分の理想とする生き方、あり方を実現できるかが大切です。私も今、自分の納得できる仕事のあり方、働き方を実現するために頑張っています。大変なことも多いですが、頑張りましょう!
パイロットコーポレーション
【筆記具製造・販売】
パイロットコーポレーションは1918年に日本で初めて純国産万年筆の製造に成功、その製造技術から総合筆記具メーカーとして、多くの革新的な製品を誕生させてきました。長時間筆記でも疲れにくい「ドクターグリップ」、消せるボールペン「フリクション」シリーズなど、現在では世界190以上の国と地域でパイロットブランドの製品が使われています。「書く、を支える。」企業として製品を通じて世界中の「書く」を支え、未来の新たな「書く」を、私たちと共に支えていただける方をお待ちしています。
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