人事のホンネ

パイロットコーポレーション

 人気企業の採用担当者インタビュー「人事のホンネ」2022シーズン第5弾、パイロットコーポレーションの後編です。日々の生活を支え、ときに人生の節目をともにする筆記具ですが、手書きの機会は減りつつあります。手書きの良さを伝える「コトづくり」もこれからのキーワードだそうです。(編集長・木之本敬介)

(前編はこちら

■面接
 ──WEB面接はいかがでしたか。
 2021年卒採用では、文系がWEB面接1回、対面2回。理系はスタートが早かったのでWEB面接2回、対面1回でした。
 WEB面接は昨年、一部の遠方の学生にはしましたが、本格的に実施したのは初めてです。オペレーションが心配でしたが、やってみたら意外にうまくできたなという感じです。画面越しでもface to faceなので、内面もある程度は分かりました。大きなトラブルもありませんでした。

 ──対面面接のコロナ対策は?
 3~4メートル離れて、面接官の前にアクリル板を用意して飛沫が飛ばないようにし、お互いに表情が見えるようにマスクを外した状態で面接しました。

 ──対面面接をしてよかったですか。
 はい。学生の雰囲気とか、入ってくるときの所作が分かります。また実際に足を運んで、どんな会社でどんな面接官なのかを学生に体験してもらいたいと思い、「選考を受けるだけではなく、パイロットがどのような会社なのかを実際に見て、感じてください」と伝えていました。1次面接は課長クラス、2次面接は部長クラスと、会社の中核を担う社員が面接します。ゆくゆくは上司になるかもしれないし、こういう社員たちと会社を動かしていくのだと、少しでも感じてほしいと考えました。

 ──面接の形式は?
 理系は1次のWEB面接が社員2人対学生1人で約30分、2次のWEB面接も2対1で30分です。対面の最終面接は役員4人、学生1人の4対1で30分でした。
 文系は、1次のWEB面接が社員2人対学生1人で30分。対面の2次面接が社員3人対学生1人。最終は役員4人対学生1人、時間は30分くらいでした。

 ──面接で見るポイントは。
 まずは、姿勢や身だしなみ、声の大きさ。内容については、質問の意味をしっかり理解できているか、根拠に基づいて筋道を立てて説明できているか、自分の言葉で自分らしく語れるかなどを見ています。基本的にESや履歴書に書かれている内容についての質問が多いです。

 ──ニュースや時事問題について聞きますか。
 話の流れで時事問題に触れることもあるし、学生が何かを説明するときに時事問題を織り交ぜてきたり、引き合いに出したりすることもあります。「世の中のことを勉強しているな」とプラスの評価になります。

■求める人物像
 ──求める人物像は?
 ひとつは、自ら考え行動できる人。つまり主体的に行動できる人ということです。次に、成長し続けられる人。より良く、より上を目指して自分を変えていけるということです。最後に、グローバルな視野をもっている人。変化の多い現在において、国内外で活躍するために広い視野をもっているということです。
 さらに付け加えると、創業以来の社是のひとつである「三者鼎立(さんしゃていりつ)」を体現できる人です。使う者、売る者、つくる者、三者のいずれかが得をしても、損をしても商売は成り立ちません。自分の利益だけを求めるのではなく、周囲へ配慮した行動ができ、相手の立場に立って考えられるかどうかです。営業も自分の売上目標だけを考えるとうまくいきません。相手もこちらも利益を出すような考え方が必要です。

面倒見がいい家族的な会社 セラミックス部品などの事業も展開

■職種
 ──新卒一括採用見直しや、ジョブ型採用についてのお考えは?
 基本的には新卒一括採用はしばらく続くと思います。ジョブ型採用について現在はおこなっていません。
 大卒で技術開発職以外は、入社初期、当社のベースとしている国内営業を中心に配属します。そこで業界の現状や会社が置かれている状況、自社商品の知識をしっかり身につけます。そして毎年7月に全体の人員配置のバランスを考えつつ、本人の希望や素養を反映して異動をおこないます。国内営業にとどまる人、海外営業や企画職になる人、スタッフ部門に入る人とさまざまです。現状ではジョブ型はなじみませんが、会社がさらに成長していくために強化が必要な特定の職種や役割が出てくると思いますので、今後については検討していこうと思っています。

■インターンシップ
 ──インターンシップについて教えてください。
 今年はまだ具体的に決まっていませんが、WEBで12~1月開催を予定しています。昨年までは対面のワンデーインターンを行っていました。定員制で、複数のグループで本社に来てもらって、業界や当社の説明、構造を知ってもらうために万年筆の組み立て講座をしました。営業体験では架空の店舗にパイロットの商品を提案し、導入してもらうにはどういう提案をしたらいいかというワークもしました。
 技術開発職は化学系と機械・電気系に分け、化学系は神奈川県の平塚工場でインクの配合体験、工場見学をしました。機械・電気系は群馬県の伊勢崎工場を見学したり、実際に働いている人からレクチャーを受けたりしました。

■社風
 ──どんな会社ですか。
 優しい人が多く、家族的な会社かなと思います。チームや組織で動くことが多いので助け合いながら仕事をします。社員同士のコミュニケーションでは仕事以外の話も多いですね。面倒見がいい人が多いです。

 ──コロナ禍で営業の働き方は変わりましたか。
 緊急事態宣言が出て営業は取引先に行けなくなり、メールや電話で営業をおこなうかたわら、今後の施策、マニュアルの作成などをしていました。宣言が解けてからも、直行直帰を続けています。「生産性が上がった」「通勤がない分、時間を有効に使える。家族との時間が増えてよかった」という声もあります。

 ──デジタル化でハンコがいらなくなるかもしれません。ペンはどうですか。
 確かに書く機会は減ってきているかも知れませんが、世界にはまだパイロットの筆記具がいきわたっていない地域がありますので、まずはそこに広めていきます。また、パイロットは「書く、を支える。」をブランドメッセージとして掲げています。今後は物理的に文字を書くだけではなく、手書きの良さを伝えていく、書く機会を増やしていくための「コトづくり」も模索していかなくてはいけない。100年続く会社で歴史もありますが、変えるべき部分は変えて、新しいアイデアや視点を入れて変化に対応していかないといけません。そういった意味で、筆記具の開発で培った技術を応用し、セラミックス部品や指輪など宝飾品の事業も展開しています。