人事のホンネ

城南信用金庫

2022シーズン④ 城南信用金庫《後編》
「誰かの役に立ちたい」人来て 地域と一蓮托生の家族的な組織【人事のホンネ】

人事部 上席調査役 桜井努(さくらい・つとむ)さん、人事部 主任 佐原行雄(さはら・ゆきお)さん

2020年10月28日

 人気企業の採用担当者インタビュー「人事のホンネ」2022シーズン第4弾、城南信用金庫の後編です。金融機関にもいろいろありますが、信用金庫って地方銀行とはどう違うのでしょう。株式会社ではないので、利益は追求せず、「貸すも親切、貸さぬも親切」「銀行に成り下がるな」という元理事長の言葉が受け継がれています。(編集長・木之本敬介)
(前編はこちら

■求める人物像
 ──求める人物像を教えてください。
 佐原 「明るく礼儀正しい人」です。接客業なので第一印象が大事です。お客様に不快な思いをさせない、相談したいと思わせる印象をすでに持っている人に来てもらいたい。職員同士も相談し助け合うシーンが多く、1人で完結する仕事はほとんどありません。連携のとれる人、誰とでも分け隔てなく接することができる人でないと気持ち良く仕事ができません。明るく社交性のある人を求めています。
 桜井 第一印象はいま一つでも、話しているうちにどんどん良くなる人もいます。面接では自分にウソをついても仕方ありません。ありのままの姿をさらけ出してマッチするかどうかですね。

 ──ほかに求めるものは?
 佐原 自分本位ではなく、「誰かの役に立ちたい」「誰かの笑顔が見たい」という人に入ってきてもらいたい。「自分が自分が」という人が結果を残す業界もあると思いますが、うちはそうではありません。入ってもギャップを感じてしまうと思います(笑)。「業績ありき」の業務ではないので、そういう人が間違って入ってしまうと、「自分はこんなに一生懸命やっていて、あの人は全然やってないのに……」という考えになってしまいます。

 ──とはいえ業績も大事で、新しいビジネスモデルにもチャレンジしていますね。イノベーティブな人は求めていますか。
 桜井 新しい発想は求めています。ただ、根底にある考えが揺るがない人が望ましいし、発想力や企画力はその先に行く手段という気がします。もちろん、発想力や企画力がある人は大歓迎ですが、個人主義に走るような人は相いれません。

■資格
 ──金融機関ではさまざまな資格が必要とか。お二人はいくつ持っていますか。
 佐原 銀行業務検定など小さいものを含めれば10くらいです。
 桜井 私も同じくらいです。お客様と接する中で、財務を知らないと会話もできませんし安心してもらえません。逆に「勉強しないと」という気になります。職員には「勉強したほうがいいよ」と言いますが、強制はしません。一人ひとりが仕事をしていく中で「勉強しなきゃ」と思うようです。

 ──すると、大学の成績はともかく、勉強嫌いな人は向かない?
 佐原 極端に勉強が苦手な人は難しいかもしれません。
 桜井 ただ大学受験をクリアしていますからね。そもそも勉強が苦手だと、この業界は目指さないかもしれません。

■働き方改革
 ──コロナ禍で働き方が変わったと思います。
 桜井 8月まで2班態勢で1日おきに在宅・出勤を繰り返していましたが、9月から通常に戻りました。ただ、働き方は柔軟にしました。通常の就業時間は8時半から17時までですが、早く来て仕事して早く帰るとか、できる人には在宅勤務を認めています。
 コロナ禍では2班態勢でしか出社できず、今までほかの人に甘えていた仕事も自分で全部やらなければいけなくなりました。その結果、職員一人ひとりの能力が劇的にアップしました。通常の1班体勢に戻ったら、「あれ、意外に仕事ってすぐに終わるよね」という状態になりました。

 ──営業の仕事は?
 桜井 店舗には資金繰りに困った方、売り上げが9割減、ゼロという方が駆け込んでいらっしゃる状態だったので、店舗にいないと対応できませんでした。外に出て営業するより店舗での対応に追われていました。

 ──東京都選定の「TOKYO働き方改革宣言企業」に選ばれていますね。
 桜井 「笑顔あふれる、やさしく、たくましい金庫」にしようという宣言が選定されました。ダイバーシティーの観点での取り組み、育児中の職員の働き方、時間外労働、年次有給休暇を改善しようと取り組んできました。
 佐原 2018年の全職員の時間外労働は月に16時間くらい、一般職員だと月10時間弱です。繁忙時期によっても変わってきますが、基本的には17時台には全員帰る感じです。

生活基盤変えずにずっと働けるから女性にも人気

■銀行との違い
 ――採用で競合するのは?
 桜井 同じ信用金庫が多いのですが、地方銀行も競合します。東京にある23の信用金庫を全部受けて、四つも五つも内定が出る人もいます。基本的に信用金庫は考え方が同じなので、多くの信用金庫から求められるんでしょうね。

 ──銀行との違いは何ですか。
 佐原 地域性でしょうか。地域に根ざして、生活基盤を変えずに将来もそこでやっていきたいという人が信用金庫を受けていて、だから女性からも人気があるのかもしれません。

 ――では、地銀との違いは?
 桜井 地銀はメガバンクと差別化をはかり、信用金庫に似てきています。ただ、株式会社組織の地銀は東京支店、大阪支店と出せますが、我々は協同組織金融機関なので地域でしか活動できません。「あそこがもうかりそうだから出店しよう」ということはできませんし、しない業界です。地域が死んだら我々も死ぬし、盛り上がれば我々も盛り上がる。一蓮托生(いちれんたくしょう)です。地銀にもその傾向はあると思いますが、信用金庫のほうが徹底しています。
 学生にもそういう説明をしていて、理解すれば銀行と信用金庫の両方を志望する人はあまりいないはずなんですが、「金融機関」としてひとくくりにして志望する人もいます。

■城南信金とは
 ──どんな職場ですか。
 桜井 家族的ですね。今はコロナ禍で無理ですが、仕事が終わったらみんなで飲みに行ったり、食事に行ったり。悩みがあったら仕事のことでも、仕事以外のことでも支店長に相談できるような職場です。
 佐原 チームワークを重んじる人が多いですね。支店では職員の席も近いし、何か困ったことがあれば上下関係なしに相談できます。

 ──金融機関の経営が厳しい中、信金の存在意義は?
 桜井 ゼロ金利の時代ですし、稼ぎが利息だけということを考えれば、厳しいのは間違いありません。ただ、我々は地域で求められている存在です。お客様が「売り上げを伸ばしたい」「お金を貸してほしい」「事業経営で困っている」「税務で困っている」といったとき、かゆいところに手が届く存在でありたい。あらゆることをフォローできる「お客様応援企業」を掲げています。

 ──近年、全国の信用金庫のネットワーク化をはかっていますね。
 佐原 「よい仕事おこしフェア」というイベントを東京国際フォーラムで毎年開いていましたが、今年はコロナ禍により、イベント会場での開催は中止になりました。別の形として、今年は「47 CLUB」というサイトでお客様が物販できるようにしています。また、開業したばかりの「羽田イノベーションシティ」内に「よい仕事おこしプラザ」をオープンし、WEBで商談を行っています。
 桜井 信用金庫は日本全国どこにでもあるので、タッグを組めば何でもできると思います。我々が知らない情報も、たとえば、北海道や九州と協力し合えば手に入れられることもあります。お客様が成長すれば、取引していただいている信用金庫も良くなるという考え方です。

 ──やりがいと厳しさは。
 佐原 やりがいは、お客様のためになる仕事をして「ありがとう」という感謝の気持ち、お声をいただくことです。自分の業績が伸びても、お客様のためにならない仕事だったらそこまでの関係性は築けません。「本当にお客様のためになることは」と考え、提案し実現すると感謝の気持ちをいただける。そこにやりがいを感じ、また次のお客様に向かっていく繰り返しです。うまくいかないことも、失敗することもありますが、引きずらずに前向きな気持ちでやっていく心がけも大事です。厳しさは、信頼関係を築く難しさですね。

「貸すも親切、貸さぬも親切」「銀行に成り下がるな」

■お二人の就活
 ──ご自身の就活について教えてください。
 桜井 就職氷河期の1996年入行です。金融機関がバタバタ倒産していた時期ですが、商学部で金融に関する勉強をしていたので、単純に金融機関を志望していました。ただ、いろいろな人と話していくと、真面目な堅い人が多かったんですが、非常に厳しい業界だと。
 ところが、城南信金に来たら「全然違う業界の人なのかな」と勘違いするぐらい面白かったのを覚えています。当時は盛んに「不良債権比率」が言われていましたが、城南信金は限りなくゼロに近かった。「貸すも親切、貸さぬも親切」、自分の企業のお金もうけのために人にお金を貸すのは不親切だよ、本当にお客様のためになる融資をしようという言葉があります。そういう融資を徹底した結果、不良債権にならず、お客様も不調に陥ることなく済んでいました。そんな話を聞かせてくれたのも「金融機関っぽくないな」という人たちで非常に魅力的に感じました。

 佐原 2006年入行です。私も商学部で学生時代に簿記の資格を取っていたし、静岡の実家で親が農協に勤めていたこともあり、金融機関にしようと思っていました。ただ、最初は軸がないまま就活をしてしまって、金融でもカード会社、保険、証券といろいろ受けていました。途中から、居酒屋でホールのアルバイトをして楽しかったときのことを思い出し、「人と接することが実感できる仕事がいいな」と思ううちに信用金庫を知りました。
 最終的に城南信金に決めたのは東京・神奈川に地盤があり、いろいろな人や企業に出会えるという興味ですね。「貸すも親切、貸さぬも親切」「銀行に成り下がるな」という小原鐵五郎・元理事長の名言を聞いて「信用金庫で頑張っていこう」と思うようになりました。

■印象的な仕事
 ──これまでの仕事について教えてください。
 桜井 神奈川県相模原市と川崎市の支店の後、本店の融資部、融資・企画部、東京都品川区の支店、企画部、人事部と異動しました。
 営業店の仕事が楽しくて、つらくて、思い出に残っています。20代のころ、業績が悪くて潰れそうな電気工事会社のお客様がいました。一人で改善計画をつくって先方の家まで行き、高齢の会長とケンカするくらいの勢いで「何とか融資したい」「資金繰りを改善したい」とやりとりして立て直しました。

 佐原 私は東京都大田区と世田谷区の支店の後、外部研修で早稲田ビジネススクールに通い、人事部に異動しました。印象に残っているのは、営業店でお客様の新規開拓を担当したことです。まず会ってもらうのがすごく大変なんです。どうしたら会ってもらえるか考え、一社一社に手紙を用意して、投函して、少し経ったころに電話するというルールを決めて実行しました。不動産賃貸の会社に手紙を出して、電話して、会ってもらえるようになったんですが、最初の1カ月は週に1度うかがって雑談して帰るだけ。やっと2カ月目に悩みを聞かせてもらったところ、「いろいろなところから借り入れて複雑になっているから見直したい」と。数社からの借り入れの一部を城南信金に一本化しました。私の異動後も取引が続いているようで、そういう話を聞くとうれしいですね。

(写真・岸本絢)

みなさんに一言!

 自分のこれまでを振り返って、やってきたことに自信を持って就活に臨んでもらいたいなと思います。自分が体験したことであれば、ありのまま話せば気持ちはきっと伝わるので、自信を持ってください。社会に出たらいろいろ厳しい面もありますが、夢や目標、向上心があれば乗り越えられます。熱い志を持ち続けて生活してほしいと願っています。(佐原さん)

 就活はすごく大変なイベントですが、自分自身を見つめ直す、最初で最後のチャンスかもしれないと考えて取り組むと、より良い方向に進むと思います。これから就活を進める中でいろいろな人と出会うと思います。先輩だったり、企業の採用担当だったりしますが、一期一会と考えて出会いに感謝する気持ちで臨むと、就活でも社会人になってからも良い結果につながると思います。頑張ってください。(桜井さん)

城南信用金庫

【信用金庫】

 東京都品川区に本店を置き、東京・神奈川に86店舗を有する協同組織金融機関。「健全経営・堅実経営の徹底」という経営方針のもと、地域の皆様の笑顔の実現の為に活動している。金融機関の枠を超えた「お客様応援企業」を目指し、近年では全国の信用金庫が連携したマッチングの枠組みである「よい仕事おこしネットワーク」を立ち上げ、コロナ禍においてもこのネットワークを活用した様々な中小企業支援策を実践している。