人事のホンネ

城南信用金庫

2022シーズン④ 城南信用金庫《前編》
対面面接にこだわり安全策徹底 本気のES、読めばわかる【人事のホンネ】

人事部 上席調査役 桜井努(さくらい・つとむ)さん、人事部 主任 佐原行雄(さはら・ゆきお)さん

2020年10月21日

 人気企業の採用担当者に直撃インタビューする「人事のホンネ」の2022シーズン第4弾は、東京・神奈川を基盤にした地域密着の金融機関、城南信用金庫です。新型コロナウイルスの影響でWEB面接も実施しましたが、なんといっても顧客とのコミュニケーションが第一の組織だけに、安全対策をほどこしたうえで対面での面接にこだわりました。エントリーシート(ES)も面接も「本気」の人は伝わるそうですよ。(編集長・木之本敬介)

■2021年卒採用
 ──前代未聞のコロナ禍での2021年卒採用はいかがでしたか。
 佐原さん(写真右) 内々定は例年6月上旬に出してきましたが、今年は前倒しして5月上旬に出す予定でした。ところが、コロナで1カ月ほど選考がストップし、「4月末からWEBの1次面接→6月下旬に対面の2次面接→7月上旬に対面の最終面接→内々定」という流れになりました。
 従来の1次面接は集団面接で4~5日間で終わっていましたが、WEB面接は個人面接で実施したため、面接官との予定を調整しながら、最終的に12日間かけて行いました。

 ──採用実績を教えてください。
 佐原 この数年、115人、63人、94人と入庫していますが、例年理系は2~3人です。現状、2021年卒の内定者は男性26人、女性35人の計61人です。

 ──ずいぶん増減がありますね。
 桜井さん(写真左) 予想より多く入ってくれたり、辞退が多かったりしたためです。他社の動向で辞退率は増えたり減ったりするので、翌年に少し調整することはあります。2021年卒の61人はおおむね予定通りです。

 ──例年、女性のほうが多いのですか。
 佐原 年によりますが、男性より女性に人気がある業界で、応募の時点で男女4対6くらいです。

 ──かつて女性に人気があった一般職はなく、すべて総合職ですよね。
 桜井 私が入行したころから一般職はありませんでしたが、実際には女性は窓口担当で営業には出ませんでした。その後、男女区別しないで活躍する流れになり、今は男性も女性も一度は営業をしたり、外へ出て渉外活動をしたりして、その人の持つ能力や可能性を引き出します。
 今も受付や事務だけを希望する女性もいますが、城南信用金庫を目指す女性はそれだけでは物足りない、せっかく仕事をするならいろいろ活躍したいという人が多いと思います。

コロナ禍で理解不足のままWEB面接 会話のような面接で素を引き出す

■面接
 ──2021年卒採用では対面の面接をしましたか。
 佐原 面接は3次まであって、1次だけ1対1のWEB面接にしました。人物重視の採用なので、やはり直接会いたいということで、2次は対面で1対1の個人面接、最終は対面の集団面接で学生3~4人対役員クラス4~5人です。時間は2次も3次も20分くらいでした。

 ──すべてWEB面接にするか最後は対面にするか、多くの会社が迷ったようです。
 桜井 ほぼ全員が「対面で判断してしかるべき」という考えでした。お客様と会ってコミュニケーションをとりながら進めるのが我々の仕事なので、画面越しのやりとりでは伝わりづらい部分があります。信用金庫の標語ではありませんが、お客様だけでなく職員に対しても「face to face」で接するのが当たり前ですから。

 ──WEB面接で苦労した点は?
 桜井 これまでなら会社説明会や学内説明会で城南信金について知ってもらい、共感や理解をしたうえで応募してもらう流れでした。しかし今回は、コロナ禍で学生の理解が不足したままWEB面接が始まったため、「城南信金はこういうところですよ」という話をしながら進みました。面接なのか説明会なのか分からないようなところがあり、30分では時間が全然足りませんでした。

 ──説明会はどうしたのですか。
 佐原 今までは3月下旬に本店で200人規模の説明会や、学内セミナーをしていましたが、今年は全くできませんでした。新たに説明動画をつくったり、もともとホームページ(HP)にある活動紹介の動画なども交えたりして、You Tube上で限定公開しました。

 ──WEB面接に良い点はありますか。
 桜井 どこでも面接ができることですね。会社に行かなくてもいいのは大きなメリットです。私も自宅から面接をしました。
 デメリットは、言葉は同じでも発する情熱や思いが伝わりづらいことです。初めてのWEB面接だったので、何回もやれば経験でカバーできるのかもしれませんが。

 ──対面面接での安全策は?
 佐原 面接室は1対1なので「密」ではないのですが、3メートルくらい離れてソーシャルディスタンスを意識しました。アクリル板を立て消毒なども徹底しました。マスクを外す時間は極力短くして、学生は面接直前までマスク着用、面接時だけはマスクを外してもらい、笑顔も見せてもらいました。
 桜井 意外に困ったのはアクリル板1枚あるだけで声が届かないことです。WEB面接よりやりづらかったですね。

 ──面接で気をつけていることはありますか。
 桜井 私は面接というスタンスではなく、世間話というか普段の会話のような雰囲気づくりを心がけています。型どおりに「志望動機は?」と聞けば、覚えてきたことをそのまま話す流れになってしまいます。たとえば「今日はどうだった? 暑かったんじゃない?」という会話から入って、学生の素の部分を引き出し、うちに向いているか向いていないかを判断しています。

■気になるニュース
 ──面接で「気になるニュース」を聞きますか。
 桜井 けっこう聞きます。ズバリ、何に興味を持っているかを知りたいですね。時事問題やニュース、最近身の回りで起こったことなどを聞くようにしています。経済の詳しい話でなくてもいいので、気になっていることを聞くと、性格やいろいろな面が見えてきます。くだらない答えでもいいんです。物事に対してどう思うかを自分の言葉で一生懸命伝えてほしいと思います。

 ──実際の営業の仕事だと、顧客に寄り添うために何が必要ですか。
 佐原 人柄も必要ですが、どれだけお客様に興味を持てるかが大事です。興味を持てば、いろいろなアンテナが立ったり、自分で考えたりもします。
 桜井 たとえば、営業先の玄関に絵が飾ってあったり、小さい靴が何足も並んでいたりすると、それだけでも話すきっかけになります。浅く広い知識が必要かもしれません。お子さんの話をすると盛り上がりますし、そこに気づけない人は難しいかもしれませんね。

利益追求の企業と違う、利己主義の人はご遠慮を インターンはWEB+対面で

■ES
 ──最初の書類選考は「履歴書」とありますが、中身はエントリーシート(ES)ですね。
 佐原 学生には、WEB上のマイページで入力してもらいます。2021年卒採用では、志望動機に加えて、「あなたが城南信用金庫で働く姿を教えてください」「普段あなたが人との出会いや関わりにおいて大切にしていること」「これまで人生で一番大変だったことが今の自分にどう活かされているか」をそれぞれ最大250文字で書いてもらいました。

 ──何を重視しますか。
 佐原 自分の言葉で、伝わるように書けているかですね。本当に入りたい人は文字を読むだけで伝わってきますし、城南信金だけに向けた内容かどうかは文章を読めば分かります。WEBでは同じ文章を簡単に引用できますので、ほかの信用金庫さんにも同じ文面を使っているんだろうなあという人も分かります。ただ、書類選考で多く落とすわけではないので、まずうちに興味を持って書いてくれたかを見ます。

 ──コピペは分かる?
 桜井 ネットなどで模範解答が出回っているんでしょうね。だいたい同じ書き方です。だからこそ、実体験や感じたことを書いてもらうと印象が良くなります。

 ──「城南信金で働く姿」は難しいお題ですね。
 桜井 実は働いている我々もまだ答えが出ていません(笑)。株式会社のように利益を追求する企業ではないので、その中でどう働くかを知りたいと思っています。金融機関ですから「自分の利益のためなら、ほかはどうなってもかまわない」という利己主義な人はご遠慮願いたい。人とのコミュニケーションのとり方、自分がどうやって働きたいか、人生の夢を書き、面接で語ってもらえるとすごくうれしいです。

 ──採用HPにも「意欲や夢を積極的にアピールして」とあります。夢をどう評価するのですか。
 桜井 面接前日の夜に考えて「これをしゃべろう」という人と、前々からずっと考えていて、実現できるかどうか分からないけれども、少しずつでも取り組み始めている人が発する言葉は、同じ言葉を使っても断然重みが違います。本物は、言葉だけじゃなく目がキラキラしていたり、笑顔にあふれていたりします。記憶をたどって、暗記してきたことをたどたどしくしゃべるのではなく、自分の言葉でよどみなくしゃべれます。夢は大きくても小さくてもかまわないのですが、考えているかいないかで差が出ます。

 ──適性検査の活用法は?
 桜井 どのくらい自分自身のことを知っているか、どうやって良いところを伸ばしていくか、悪いところをどう改善していくか。そういう切り替えができる人がいいので、性格的な判断をするために適性検査を使っています。学力が飛び抜けて優秀な人だから採用、といったことは一切していません。あくまで参考程度です。

■エントリー数
 ──エントリー数の増減は?
 佐原 本エントリーは800人ほどで、ここ数年は減少傾向にあります。
 桜井 金融業界自体が低迷しているためだと同業者とも話しています。メガバンクの採用減のニュースが流れて「親に反対された」という話を内定者から聞きますし、最終的に親に相談して内定辞退する人もいます。

■インターンシップ
 ──インターンシップについて教えてください。
 佐原 これまではワンデーインターンの形で、定員40人×10回ほど、本店で朝8時半から午後5時まで丸一日がかりで行っていました。今年は対面で行うのは難しいため、WEBで2~3時間行い、1カ月後に本店で対面で行うという2段階にする予定です。
 対面は定員を減らして20人×10回くらい、広い会場で行います。10月下旬から12月上旬にかけて何回かWEBで行い、12月中旬~1月中旬に対面で行います。リアルインターンは2~3時間。長時間の接触は極力避けたいと思います。

 ──どんな内容ですか。
 佐原 まずYou Tubeの公開限定動画を見て城南信金の基本情報や取り組みを知ってもらいます。次のWEBインターンでは、営業の取り組みについて伝えます。営業職の若手職員が参加し質疑応答もあります。リアルインターンでは実際に職員と会って社風を感じてもらいます。今までの振り返りや、若手職員との座談会、グループワーク、今後の面接に向けた面接演習などをします。
後編に続く)

(写真・岸本絢)

みなさんに一言!

 自分のこれまでを振り返って、やってきたことに自信を持って就活に臨んでもらいたいなと思います。自分が体験したことであれば、ありのまま話せば気持ちはきっと伝わるので、自信を持ってください。社会に出たらいろいろ厳しい面もありますが、夢や目標、向上心があれば乗り越えられます。熱い志を持ち続けて生活してほしいと願っています。(佐原さん)

 就活はすごく大変なイベントですが、自分自身を見つめ直す、最初で最後のチャンスかもしれないと考えて取り組むと、より良い方向に進むと思います。これから就活を進める中でいろいろな人と出会うと思います。先輩だったり、企業の採用担当だったりしますが、一期一会と考えて出会いに感謝する気持ちで臨むと、就活でも社会人になってからも良い結果につながると思います。頑張ってください。(桜井さん)

城南信用金庫

【信用金庫】

 東京都品川区に本店を置き、東京・神奈川に86店舗を有する協同組織金融機関。「健全経営・堅実経営の徹底」という経営方針のもと、地域の皆様の笑顔の実現の為に活動している。金融機関の枠を超えた「お客様応援企業」を目指し、近年では全国の信用金庫が連携したマッチングの枠組みである「よい仕事おこしネットワーク」を立ち上げ、コロナ禍においてもこのネットワークを活用した様々な中小企業支援策を実践している。