人事のホンネ

三菱商事

2022シーズン① 三菱商事《前編》
WEB面接+対面で見極め 人が見える「自分らしい写真2枚」【人事のホンネ】

人事部 採用チーム 次長 田中裕美(たなか・ひろみ)さん

2020年09月09日

 人気企業の採用担当者に直撃インタビューする「人事のホンネ」の2022シーズンがスタートしました。第1弾は、日本を代表する総合商社、三菱商事です。新型コロナウイルスの影響で大混乱に陥った2021年卒の採用選考。この国内トップ企業は、WEB面接を軸としつつ、最後は対面の面接を実施して話題になりました。どんな思いで踏み切ったのでしょう? 「写真2枚」添付というユニークなエントリーシートに込めた思いは? 根掘り葉掘り聞いてきました。(編集長・木之本敬介)

■オンライン選考
 ──前代未聞のコロナ禍での2021年卒採用はいかがでしたか。
 限られた時間の中で、何がベストなのかを考える大変さは、正直なところありました。ただ、就職活動中の学生の皆さんはもっと大変だったと思います。学生の安全をいかに確保できるか、不安をいかに小さくできるかを一番に考え、一部の手法やプロセスを変えました。3月1日の採用広報解禁以降、会社説明会はほぼ100%、オンラインでのセミナーや座談の形で開きました。今までテストセンターで受けてもらっていた筆記試験についても、多くの学生を1カ所に集めてしまうことを避けたいと思い、地域にかかわらず受験できる自宅でのWEB試験に切り替えました。

 ──面接はどう変えたのですか。
 これまでは6月・7月選考それぞれで、対面の面接を3回行っていましたが、2021年卒採用では6月選考は1次から3次までをWEB面接とし、最終の4次だけ対面にしました。7月選考は1次、2次をWEB面接、最終の3次を対面にしました。全部WEB面接にするか迷いましたが、学生からは「人生の多くを過ごすであろう会社に一度も行かず、社員にも会わずに決めていいのか」という不安の声が聞こえていました。会社としても、一緒に働く仲間を一度も会わずに決めてしまっていいのかと考え、最後だけは対面を残しました。弊社の面接はWEBでも対面でも、学生1人対社員2人です。最終面接は東京と大阪の2会場で実施しました。各面接の時間は30~40分です。
 6月選考をこれまでと異なる4回の面接としたのは、7月選考と比べ受験者数が多く、安全性の面から対面での面接人数をなるべく少なくしたかったためです。

 ──WEB面接を始めた時期は?
 6月1日です。延期も考えましたが、不要に学生の就職活動時期を長引かせたくない思いもあり、昨年同様としました。

 ──「三菱商事が最終面接を対面で」の決定はニュースになりました。
 仕事をすべてオンラインで完結できる会社はWEB面接だけでもいいかもしれませんが、弊社の場合、最後は人と人が会って仕事をします。そういう会社で働く仲間をWEB面接だけで選考してしまう懸念もありました。
 最終面接では厳重な安全対策をとりました。検温を実施し、面接ではアクリル板を立ててマスク着用で行いました。お互いの表情が分かるマスク無しがベストでしたが、今回は安全が最重要事項。それに、マスクを着用していても、対面してお互いの思いを伝えることで得られるものが、学生、弊社の双方であったと思います。

 ──WEB面接は初めて?
 はい。各社3月ごろからセミナーや面接をオンライン化したので、学生は場数をこなして慣れていたようで、面接官をする社員のほうが大変という側面もありました。社員には「自分が話しすぎない」「学生のいいところ、言いたいことを引き出す」といった点を意識してもらいました。社員も半分以上が在宅での面接でした。

 ──WEB面接のメリットは?
 学生は圧倒的に効率のよい就活ができたのではないかと思います。対面だと1日に2~3社ですが、オンラインなら4~5社受けられます。自宅で受ける人が多く「本当のホームなのでアウェー感が少ない」「おかげで素が出せた」と言う学生もいました。

 ──緊張感に欠けるケースもあると聞きます。
 最後に対面を入れたのは結果的に良かったと思います。仕事では、会社や取引先・出張先などで誰かと対面するというアウェーな状況が必ずあります。そこで自分の言いたいことが言えるか、自然体でいられるかも仕事には大事です。

プレゼン型で話の内容際立つWEB面接 6月・7月に選考実施

■コロナ後
 ──もしコロナが終息したら、今後WEB面接はどうしますか。
 今回のWEB面接の経験を踏まえてしっかりと分析を行い、いいところは残していきたいですね。WEB面接は効率の良さだけではなく、対面面接より発言の中身にフォーカスできる特性もあるようです。コミュニケーションがプレゼン型になるので、話の内容が際立つのだと思います。ただ、やはり一度は対面面接を行いたいとは思っています。

 ──6月選考と7月選考に違いはありますか。
 応募要件に差異はありません。ご自身の都合によって、6月・7月選考のいずれかを選んでもらっています。実際には、7月は海外の大学から戻った留学生、司法試験・国家公務員試験や教育実習を受けていた人が多いです。

■採用実績
 ──2021年卒採用の内々定数を教えてください。
 127人が入社した2020年卒採用と同程度です。その前年の2019年卒の総合職は123人でした。毎年の採用人数は、各部局の中長期的なニーズに基づき決めています。
 例年、女性は3割くらい、理系は2割ほどですが、性別や学校名、専攻などで割合を決めているわけではありません。受験者数の割合が、結果的に内定者の割合に近くなっている印象です。

 ──理系が意外に多いですね。
 理系の学生には2パターンあります。一つは、自分の研究分野を仕事に直結させたいと考えて受験するタイプ。たとえば、食品化学分野の研究をしていたので食品やヘルスケアの仕事をしたいという学生です。もう一つは、研究内容と志望理由を直接結びつけていないタイプです。どちらもウェルカムですし、大切なことは、学生と弊社とのマッチングだと思いますね。

 ──エントリー数を教えてください。
 プレエントリーが約2万人、本エントリーが1万人弱で、ここ数年それほど変わりません。今年はコロナの影響でどうなるのかと思っていましたが、同じくらいでした。

■インターンシップ
 ──インターンシップについて教えてください。
 想定していたインターンシップはコロナの影響でできず、簡易的なものを3~5月にかけてオンラインで実施しました。選考時に提出してもらった課題に対し社員がフィードバックしたり、学生同士でそれぞれの提案するプロジェクトをプレゼンしてもらったりしました。採用選考とは分けてキャリア教育としているので、2年生以下の学生もいました。

 ──インターン全盛の時代なのに地味ですね。
 そうかもしれません。会社やキャリアについて知ってもらうにはどういう形が本当に学生のためになるのか、インターンという形式にこだわらず考えています。

ダメな志望動機はない、達成したいこと書いて 面接でビジネスプレゼンも

■ES
 ──2021年卒採用のエントリーシート(ES)はどんな内容でしたか。
 まず、最初にお伝えしたいのは、弊社はESによる選考はしていないということです。筆記試験の合格者だけにESを書いてもらう仕組みにしています。その前提で説明すると、今回の具体的な記載事項は、いわゆるガクチカ(学生時代に力を入れたこと)を、複数の観点で書いてもらいました。チームで何かを達成した場合でも、自分の関わり方や工夫・努力が分かるような形でお願いしています。さらに、自分らしさが表れている写真2枚を添付し、それぞれのエピソードを教えてもらいました。それぞれの分量は、50字~400字程度です。

 ──志望動機は?
 なぜ三菱商事で働きたいのか?という観点ではなく、入社後の具体的なイメージを質問するために、三菱商事で手がけてみたいビジネスや、働く中で獲得したい経験やスキルについて聞きました。

 ──「何でもいいから三菱商事で働きたい」という志望動機はありですか。
 だめな志望動機というのは無いと思っています。「〇〇をやりたい」が具体的でなくても、なぜ弊社を選んでいるのか、何を達成したいのかが分かればいい。「成長する環境」とか、「ビジネス」という側面でも、誰と働くかという観点で「人」でも構いません。
 逆に「どうしても〇〇ビジネスをやりたい」という人もいますが、三菱商事では成長を促進するためのジョブローテーションがあるので、面接を通じて適性をじっくり確認します。

 ──「写真2枚」は珍しいですね。狙いは?
 その人が見えます。留学していたときの写真と家族写真とか、部活、アルバイトの写真もあってさまざまですし、その人の素の状態に近いように思います。写真があると、文章だけよりも人となりが見えやすくなり、面接で深掘りしやすくなるんです。

■筆記試験
 ──筆記試験が非常に重要ですね。
 面接での評価を重視しており、できるだけ多くの学生と面接でお会いしたいと考えていますが、そこに進むためのプロセスという意味では、確かに筆記試験は重要です。言語、非言語、英語、適性検査等を受けてもらい、いろいろな角度から評価しています。

 ──自宅でのWEBテストだと、本人が解いているか分かりません。
 今年に限らず、フェアな採用活動を強く意識しています。皆さんに実力を発揮してもらうことが何より大切ですし、学生からの「真面目にやった人が損をするのは困る」という声も受け、最終面接の際に追加でテストを受けてもらいました。

 ──成績表や語学力は重視しますか。
 エントリー時に学業成績を提出してもらっています。それだけで合否判定には使いませんが、学業は学生の本分ですので「努力のひとつの形」として見ます。プラス材料ですね。
 語学力はあるに越したことはありません。こちらもそれだけで選考の対象とはしていませんが、英語を使う機会は多い会社なので、内定の時点からしっかりと英語の研修を受けてもらいます。

■時事テーマ
 ──商社の業務には国際ニュースが影響します。面接でニュースについて聞きますか。
 話の流れで聞く面接官もいます。情報を広く見ているか、本質的な情報に若いころから触れているかは、ビジネスをする上で大切な要素です。

 ──情報感度の高さはどう見極めますか。
 たとえば、今年の2次面接では、ビジネスや社会課題に関するお題をその場で伝え、考えをまとめてプレゼンしてもらう形を取りました。短時間で完璧なプレゼンは難しいので、「どうして、そう考えたの?」「もう少し、こうしたら良くなるんじゃない?」とQ&Aを行いながら深めていきます。その中で、どれだけ幅広い興味関心を持っているか、情報に触れているかは垣間見えます。

 ──難しそう!
 私もいま就活生じゃなくて良かったと思います(笑)。テーマについては、たとえば「米中貿易摩擦」など普段から興味を持っている人だけが有利になるテーマだとフェアじゃないので、誰でも知っている身近な題材にしています。
後編に続く)

(写真・岸本絢)

みなさんに一言!

 就職活動は自分のそれまでの人生を振り返るすごく良い機会だと、実体験からも思います。就活を楽しんでできる人が強い。面接でうまくいかないこともあると思いますが、落ち込んだときほど人と話すようにして、新しい見方や情報を入れることが大事です。凝り固まった視点で見るのではなく、たとえば商社なら事業会社に出向する、海外に行くというキャリアパスは想像できますから、そういう経験をしている社員の話を聞くとか、深さだけでなく幅も持たせて就活をするといいと思います。就活で出会った人と20年近く経った今もつながっているので、大変だけど楽しい期間なんだと思ってもらえたら嬉しいです。

三菱商事

【商社】

 三菱商事は、世界約90の国・地域に広がる当社の拠点と約1700の連結事業会社と協働しながらビジネスを展開しています。 天然ガス、総合素材、石油・化学、金属資源、産業インフラ、自動車・モビリティ、食品産業、コンシューマー産業、電力ソリューション、複合都市開発の10グループ体制で、幅広い産業を事業領域としており、貿易のみならず、パートナーと共に、世界中の現場で開発や生産・製造などの役割も自ら担っています。これからも私たちは、常に公明正大で品格のある行動を信条に、豊かな社会の実現に貢献することを目指し、さらなる成長に向けて全力で取り組んでいきます。