人事のホンネ

森永乳業株式会社

2020シーズン【第10回 森永乳業】(前編)
すべての人に健康お届け 柔らかいイメージだが情熱もって!

コーポレート本部 人財部人財グループ アシスタントリーダー 桑野多聞(くわの・たもん)さん

2019年01月22日

 人気企業の採用担当者を直撃する「人事のホンネ」2020シーズンの第10弾は、森永乳業です。創業100年を超えた人気の食品メーカーは、「真っ白な情熱」を採用メッセージに掲げています。いったいどんな人を求めているのでしょう?(編集長・木之本敬介)

■採用実績と職種
 ──2019年卒採用の内定者数を教えてください。
 「ナショナル社員(N社員コース・全国型総合職)」と「エリア社員(A社員コース・地域型総合職)」があります。工場ごとに採用するA社員は大卒、短大卒、高専卒、専門卒、高卒などの内定者がいます。
 N社員の内定者は73人で、事務系の「営業管理コース」35人、技術系38人。技術系の内訳は、「研究開発コース」13人、「エンジニアリングコース」4人、「生産技術コース」18人、「酪農コース」が3人です。

 ──男女比と大学院卒の数は?
 事務系は男性17人、女性18人、技術系は男性29人、女性9人です。大学院卒は28人で全員修士課程です。

 ──技術系は男性が多いですね。
 生産技術コースの18人のうち、女性は1人だけなんです。工学系は学生全体の割合でも女性が少ないので。

 ──「研究開発コース」は化学系の学生が多い?
 農学、生物工学、化学など幅広く、さまざまな強みを持っている人が多いですね。男女半々くらいになるかと考えていましたが、最終的には男性8人、女性5人に着地しました。

 ──辞退者はどこへ行くのでしょう?
 ここ数年、他の食品メーカーに行く割合が増えたように感じています。学生の志望業界絞り込みが早く、それ以外の業界をあまり受けなくなったことが影響していると思います。

 ──「酪農コース」は森永乳業ならではですね。
 かなり特徴的だと思います。「酪農コース」で入社した人の仕事は大きく二つ。「乳の調達」と、牛のエサを酪農家に販売する「飼料販売」の事業です。乳業業界と酪農業界はお互いに支え合って成り立っているので、酪農振興にも精力的に取り組んでいます。酪農業界に貢献し、乳業会社の根本を支えていくといった思いを持った人を採用しています。農学や畜産系の学生が多いですね。

 ──技術系の学校推薦はありますか。
 ありません。全て一般公募です。A社員には高専、高校などからの推薦募集があります。

 ──2018年卒採用のN社員の数を教えてください。
 事務系が36人、技術系が41人でした。ここ数年は同程度の規模で採用していますが、工場の増設や各事業の人員方針などを基に採用数を決定しています。
 2020年卒採用は2019年卒と同程度で計画中です。
 中期的には事務系の採用数を増やしています。現在、中期経営計画で打ち出している国際事業やBtoB(企業間取引)事業などの強化部門へ、人的資源を投入するためです。

ダイバーシティ重視で留学生採用も 若いうちからチャレンジできる

■ダイバーシティ
 ──2019年卒採用で何か取り組んだことはありますか。
 ダイバーシティ&インクルージョン(多様性の受容)が一つのキーワードです。以前からさまざまなタイプの人に入社し、活躍してほしいと考えて採用活動を行ってきましたが、2019年卒採用ではダイバーシティの観点をより強く意識して取り組みました。学歴、出身地、これまでの経験、パーソナリティーなど、本当に幅広い個性を持った「人財」を採用できたと自負しています。
 一連の取り組みの中で、外国籍留学生の採用も強化し、インドネシア、韓国、シンガポール、ブラジル出身の4人を採用しました。これだけ幅広く外国籍留学生を採用したのはこれまでで初めてのことです。

 ──ダイバーシティをあえて打ち出した理由は?
 以前からダイバーシティといった観点は持っていました。そのうえで、森永乳業では2018年を「ダイバーシティ元年」と位置付けて全社的にダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。採用でもこの流れに沿う形でダイバーシティを強化しました。さまざまな個性を持った社員がそれぞれの強みを発揮していくことが、これからの社会で企業が成長していくためには重要であると考えています。

 ──留学生採用は別枠ですか。
 特に別枠は設けておらず、垣根なく採用は行っています。ただし、当初から外国籍留学生の採用強化は考えていたので、留学生向けの就活イベントへは積極的に出展し当社に興味を抱いてもらうきっかけづくりには注力しました。そのイベント経由で当社へ応募してくれた内定者もいます。

 ──日本人学生との違いを感じますか。
 異文化を受容する力、その中でしっかりと自分自身の考えを伝える力は秀でていると感じています。私も含め、日本にずっと住んでいると「当たり前」のことがたくさんありますが、彼らはそういった固定観念がなく良い意味でフラットに考えられています。また母国を離れて日本で生活しているので、世界の中での日本という視点を持っており、さすがだなと感心します。

■学生との接点
 ──学生の絞り込み早期化への対策は?
 これまで業界研究セミナーは「3月企業広報解禁」の直前の2月ごろがピークでしたが、2019卒採用では、1月あるいは年内のイベントへの出展を強化しました。主に、企業研究セミナーや自社主催のセミナーです。学生が志望業界を絞り込む前に接点を持つことを重視しました。
 イベントの中で何を伝えるかの見直しも行いました。これまでは「情報を伝える場」として企業概要、事業全般の説明をしていましたが、情報よりイベントでしか伝えられない「魅力を伝える場」に変えました。

 ──食品メーカーは人気企業ばかりですが、その中で森永乳業の魅力は何ですか。
 全世代に価値を届けられる点です。生まれたばかりの赤ちゃん向けの粉ミルクから、若者が楽しめる飲料、デザート、アイスクリーム、さらにはシニア向けのサプリメント、病気の方の介護食も扱っています。すべての人々に健康をお届けできることは大きな強みだと考えています。内定者の話を聞いても、多くの人の健康に貢献したいという思いがとても強いです。基礎研究にも長年力を入れているので、ビフィズス菌や乳酸菌といった素材を活かした商品開発力も強みの一つです。
 もう一つは社風ですね。当社では、意欲的な社員は比較的若いうちからチャレンジできます。「何年以内に海外へ行く」「必ず決まった部署を経験する」などの制度があるわけではありませんが、自発的に「こういうことをやりたい」「新しい取り組みを始めたい」といった提案をすると、先輩や上司が背中を押してくれる風土があります。若手で活躍しているのは、そうしたチャンスを自らつくり出して活かしている人たちです。

 ――採用メッセージに掲げている「真っ白な情熱」とは?
 学生の食品メーカーに対するイメージは、どうしても商品のイメージに影響を受けやすい傾向にあります。当社は乳製品を扱っていることもあり、柔らかいイメージを持たれがちです。一方で、活躍しているのは、「自分でこうしたい」という情熱があって実践している人たちです。まだ森永乳業に興味を持っていないような人にも、「森永乳業はそういう人たちが活躍できる場なんだよ」と伝えたいと思い、「真っ白な情熱」というコンセプトをつくりました。

 ──商品の柔らかいイメージとは違って、「ガツンといくぜ」というタイプが活躍している?
 もちろんそういった人もいますが、ガツンといくタイプばかりではなくさまざまなタイプの人がいます。タイプは違えど、活躍している社員は共通して内に熱いものを持っている、といった感じです。まさにダイバーシティです。

工学系学生には「トータルエンジニアリング」が魅力

■インターンシップ
 ──インターンシップについて教えてください。
 夏の5日間のインターンシップは、2015年卒生(2013年の夏)から始めました。文理合同のインターンで、学部学科不問、誰でも参加できるものです。

 ──どんな内容ですか。
 前半は、商品開発、マーケティング、営業という三つの仕事を座学や社員との座談会で学びます。後半は、商品を生み出してから、お客様に届けるまでの販売戦略をグループワークで体験してもらいます。
 2年前から、「ナンバーワン」を夏インターンのコンセプトにしました。1位を目指したり、目指すことに魅力を感じたりする人が、我々が求める「真っ白な情熱」を持った人なんじゃないかと考えたからです。選考では、これまでの人生でナンバーワンをとったり、ナンバーワンを目指したりした経験を聞いています。

 ──どんな「ナンバーワン」学生が来ますか。
 分かりやすいところではスポーツですが、学業、アルバイト、ゼミ、海外留学などさまざまな経験を持つ人が来てくれます。
 なかでも「自分で考えて何かを動かした」経験が魅力的です。ただ、「ナンバーワン」と聞いて「成果を出した経験」と思われると少し違います。自分で工夫したり自分の発想で動き出したりすることが大事です。

 ──インターンに参加した40人のうち、内定者は?
 2018年卒生は10人ほど内定につながりましたが、2019年卒は4人でした。これはインターンが学生にとって「軽く」なったからではないかと考えています。学生1人がインターンに参加する企業数は増えているのに、本エントリーの企業数は減っています。森永乳業の夏インターンは、今までは学生にとってなかなか経験できないような5日間だったと思いますが、その希少性が落ちてしまっているのかなと考えています。今後はどのように森永乳業の魅力を伝えていくべきか、改めて検討する予定です。

 ――冬のインターンは?
 2019年卒生(2018年の1月)から、新たに「生産技術コース」「エンジニアリングコース」に特化したインターンを始めました。生産部門の主なターゲットである理系学生が対象で、そのような人たちに食品業界の生産部門ならではの魅力を伝えたいと思い、初めて実施しました。

 ──生産部門というと工学系の学生が多いと思いますが、そういった学生がまず考えるのは機械や自動車業界ですね。
 我々が扱っているのは食品ですが、メーカーなので食品をつくるための機械もつくります。そこでは工学系の学生の強みが活きてきます。当社のエンジニアの場合、「トータルエンジニアリング」といって上流から下流までエンジニアが担っているので、若いうちから幅広い経験を積めます。他の業界の機械に特化した会社だと、長年かけて一部分とか一つのパーツの専門性を深めていくことがあると思いますが、当社の場合はあらゆることに関われることが大きな魅力だと思います。
 2019年卒生のインターンには9人が参加して、最終的に4人が内定に至りました。

 ──高い比率ですが、参加9人は少ないですね。
 我々はインターンをマスへの広報の場としてはとらえていません。そのため、ワンデーインターンを100人単位で何回も開くような取り組みはしていません。
 夏は40人で5日間のインターン、冬は10人程度で3日間。幅広く森永乳業の魅力を伝えるというよりは、参加した学生には社風なども含めて当社について深く理解してもらいたいんです。

 ──内容は?
 エンジニアと生産技術の仕事を1日半ずつ体験してもらいました。実際に本社や工場にも足を運んで、エンジニアや生産現場のスタッフがどんなことをしているのか目で見て感じてもらいます。実際に製造ラインに入れることと、学生1人に社員が1人マンツーマンでつくのが特徴です。
 また、学生1人に課題が一つずつ与えられます。社員が日ごろ取り組んでいる生産効率の向上やエラー防止といった内容です。学生の専攻はさまざまなので、大学での研究概要を提出してもらい、専門に合わせて課題を設定します。自分の強みが企業でどう活きるのか、リアルに感じてもらえます。

 ──インターンの応募数は?
 夏は数千名、冬は数百名です。夏も冬もエントリーシート(ES)と適性検査の書類選考、面接を行います。
 ただ、インターンと本選考は別です。応募したけどインターンに参加できなかったり、当初あまり興味がなく応募しなかったりした人も、最終的に森永乳業に魅力を感じて応募してくれるのはウェルカムです。
後編に続く)

(写真・山本友来)

みなさんに一言!

 就活のゴールは、行きたい企業から内定を取ることではなく、最終的に「この会社に入って良かった」と感じながら働けることだと思います。ぜひ、内定を取ることだけでなく、将来自分自身が社会に出て活躍している姿まで思い描きながら就職活動を進めてください。
 皆さんが実りある就職活動を送れることを応援しています。また、このインタビュー記事を読んで「我こそは!」と感じた方は春にお会いできるのを楽しみにしています!

森永乳業株式会社

【食品・飲料】

 森永乳業は、乳で培った技術を最大限に活かしながら、安全で優れた品質を持つ商品をお客様に提供してきました。私たちの商品は、人の命を支える育児用ミルクや流動食、生活を彩るヨーグルトやデザート、アイスクリームまで多岐にわたり、幅広い世代に「おいしさ」や「健康機能性」という価値を日々届けています。2017年で創業100周年の節目を迎えた当社は、次の100年に向けて「2世紀目を自ら創っていきたい」「乳という可能性を武器にチャレンジしていきたい」という情熱を持った方とお会いできることを楽しみにしています!