
■本選考
──本選考について教えてください。エントリーシート(ES)はないそうですね。
11月ごろから6月末ごろまでが本選考の時期です。選考会と面接がベースで、選考会はグループディスカッションではなく「トライアウト」形式です。選考会の予約ではWEBで200~300字の自己紹介を記入してもらいますが、それで落とすことはありません。
──志望動機は?
書く欄はありますが、さほど重視していません。とにかく1対1で会うことを大事にしています。学生も社員に会わずに「この会社に行きたい」と思えるはずがありませんよね。
過去にESで選考したこともありますが、求める人材とギャップが生じたのでやめました。学生には「ESやSPI(適性検査)、TOEICの点数で落とすことはありません。あなたたちの内面を見せて」と伝えています。同時に私たちも学生に選考される立場なので、「あなたたちの目でよく見て、一緒に働きたい会社かどうか見極めて」とも言っています。
──応募者全員に会うのですか。
地方の学生や、研究が忙しく来社できない学生のために、2019年卒採用ではオンラインで面接をした人も数多くいます。
――トライアウトでは具体的に何をするのですか。
学生一人ひとりにテーマを出して、その場でプレゼンしてもらい、すぐにフィードバックします。さらに、その場でブラッシュアップして再提案してもらいます。時間内なら何回再提案しても構いません。最初の提案は甘かったが見違えるほどの再提案をした人、素直で吸収力があって何度もチャレンジする人もいれば、フィードバックを繰り返すうちに諦めてしまう人もいます。実際の仕事は何度も上司に提案してフィードバックをもらって良いものにしていきます。「とにかく良いものを出したい」と何度もチャレンジしてくれる人はCAのカルチャーに合っていますね。
──なぜトライアウト形式?
グループディスカッションだと、エッジのある学生やものすごく優秀な学生が1人いるだけで他の人が引っ張られて実力を出せない場合があります。トライアウト形式にして、個々の能力や性格が明確に分かるようになりました。また、1対1でフィードバックもする形にしました。社員がフィードバックしたことに対し、「この点は納得がいきません」と良い意味で噛みついてくる子もいて面白いですよ。
──テーマはどのようなものですか。
2019年卒採用では3テーマ用意しました。弊社はいろんな事業をしているので、広告系、新規事業系、マネジメント系などから選んでもらいました。たとえば「あなたが内定者でつくる子会社の社長になった場合、チームには年上の部下もいますが、どんなビジョンを掲げて、どんなマネジメントをしますか」といった内容です。
■面接
──次は面接ですね。
面接は4~5回で、人間性や内面を見ます。「何をしてきたか」「将来何をやりたいか」だけではなく、「どんな人間になりたいか」「何を成し遂げたいか」を聞き、面接官自身が「この人を自分のチームに入れたいと思うか」で選んでもらいます。
──多くの会社は「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」を聞いて過去から未来を推測します。
「学生時代に何をしましたか」と聞くと、ピンポイントのことしか聞けません。「今何を大事にしていますか」「夢は何ですか」と聞くと、「じゃあ、どうしてその夢を持つようになったのか」と深掘りでき、人間形成に関わった時期のことを話してくれます。大事なことが大学時代にある人、幼少期にある人、ずーっと続けてきたスポーツにある人とさまざまです。
「どういう頑張り方をしたか」「何かを頑張るときモチベーションの源泉となるものは」と聞くとエピソードを話してくれるので、そこから価値観を感じ取ります。
──面接は全部1対1?
基本的には1対1で20~30分です。トライアウトが1次で、2次が人事面接、3次では現場責任者や子会社社長が面接。4次で人事が志望度やCAでどう活躍したいかを聞き、最終面接前には面談もします。
──世の中への関心は重視しますか。
努力できる人は情報収集が必要になればできるので、それができる素質があるかどうかを見ます。たとえば体育会系の人はITに詳しくないし、パソコンの使い方が分からない人もいます。ただ、20代で執行役員になったとある社員はアマゾンを知らなかったし、フェイスブックは本だと思っていたほど情報リテラシーが全くありませんでした(笑)。情報リテラシーが高ければ優秀というわけではないし、「IT、ネットが好きかどうか」も採用基準ではありません。
――IT業界ではネクタイなしのカジュアルな服装が普通だと思います。面接のときの就活生の服装についてのお考えは?
服装は選考基準に一切関係ありません。学生にも面接時の服装については「自由にお越しください」と伝えています。あくまで企業文化に合うかどうか、専門職であればそのスキルなどを重視しています。
――実際には、どんな服装で来る学生が多いですか。
インターン経験者は社内の雰囲気も、服装が選考基準に関係ないこともわかっているので、私服で来るケースがほとんどですね。
(
後編に続く)
(写真・山本友来)