人事のホンネ

株式会社オリエンタルランド

2020シーズン【第1回 オリエンタルランド】(後編)
終日グループワークで行動力見る 社会にアンテナ張って!

人事本部人事部マネージャー 中村浩司(なかむら・こうじ)さん

2018年08月28日

 人気企業の採用担当者への直撃インタビュー「人事のホンネ」2020シーズンの第1回はオリエンタルランド。後編では、1日がかりの「終日グループワーク選考」という新たな試みの狙いや、求める人物像について、ズバリ聞きました。(編集長・木之本敬介)
(前編はこちら

■グループワーク
 ──選考の流れを教えてください。
 総合職は1次がES提出と総合能力検査、GROW360、2次がGDと5分程度の個人面接です。3次が個人面接、4次は終日グループワーク選考、5次が最終面接です。
 GDは7人ほどで30分くらい。個人面接は面接官2人対学生1人で1時間くらい。最終面接は担当役員と人事部長による2対1で40~50分です。

 ──終日グループワーク選考とは?
 これまで長時間の個人面接で学生の「素」を見ようとしてきましたが、面接ではしっかり話せたのに、入社して研修や仕事が始まると意外と行動できない人がいました。そこで、最終面接の前段階で終日のグループワークをして学生の行動を見ることにしました。テーマはオリエンタルランドの理解を促すもので、グループごとに発表してもらい、そのプロセスを評価します。午前10時から午後5時まで1日がかりです。
 終日グループワークをすると、普通の面接では分からない面が見られます。1次面接ですごく評価が高くて「内定間違いなし」と思った学生が終日グループワークでは全然話せなかったり行動できなかったりしたため、残念ながら不合格にしたこともあります。1日観察しても動けないということは、優秀だけど行動が伴わないということだと思います。

 ──2次選考でもGDがありますよね。
 時間の長さが違います。午前中はおとなしく受け身で午後になるとググッと頭角を現す人もいます。逆もしかりで、午前中はチームに貢献していたのに午後は諦めてしまう人も。その辺りは1日見ないと分からない。30分は勢いで乗り切れますが、1日は長いですから。

 ──見るほうも大変ですね。
 計12~13日間かかりますが、今までも同じくらいの期間、個別面接をしていたし、1日7人×4チームでワークをすると30人近く見られるので、社員の負担はこれまでとあまり変わりません。

 ──面接で、ニュースや社会への関心について聞きますか。
 必須質問ではありませんが、本人の「思考の広さや深さ」が気になったとき、社会にアンテナを張っているかどうかは聞きます。たとえば1時間面接をしていてもサークルの話しか出てこない人と、学校のゼミや違うネットワークの話題が出る人がいます。学生時代の視野や行動範囲の広さがわかります。

 ──内々定の時期は?
 総合職の内々定出しは、5月下旬~6月中旬ごろでした。

具体的エピソードのないESは厳しい

■求める人物像
 ──志望者にはどんな学生が多いのですか。
 弊社を受けにきてくれる学生の志望業界は多岐に渡ります。金融機関、ディベロッパー、航空会社、旅行会社を受けている人もいます。

 ──「求める人財像」には、「より良く」「やり切る」「一丸となって」と書かれています。
 この三つは入社後も社員評価の基準として使用している指標で、採用する学生にも求めようと考えました。
 テーマパーク事業はこれまでたくさんのゲストに支持されてきましたが、現状に満足した瞬間、いつ飽きられるか分かりません。「より良く」は新しいアトラクションをつくることもそうですし、1時間にアトラクションに乗れるゲストを1人、2人増やすことでも年間を通せば何千人にもなる。常に「より良く」を追求した改善が必要です。
 新しいアトラクションやイベントを開発するとなると2~5年間の大きなプロジェクトになりますから、最後までしっかり「やり切る」ことも求められます。
 1人でできる仕事はないので、どんな職種でも人を巻き込んで「一丸となって」成果を出すことが求められます。

 ──採用HPから会社の「中期経営計画」にリンクが貼られていて、少子高齢化・訪日外国人の増加・労働力人口の減少といった日本社会の課題についても触れる仕組みにしていますね。学生にきちんと考えて受けに来てほしいからですか。
 学生にも考えてほしいのですが、在籍する社員も考えてほしい課題だと思っています。舞浜で仕事を始めるとすべてがここで完結してしまうので、どうしても発想が内向きになりがちです。外に目を向け、アンテナを張ってほしいという意味で載せています。たとえば、AIやVR(仮想現実)による環境変化などにも目を向けてほしい。

 ──AIやVRが進むと、東京ディズニーリゾートのようなリアルな場所はいらなくなるかもしれません。脅威ですか。
 脅威であり、チャンスです。外に出なくても東京ディズニーランドと同じ体験ができるかもしれない。だからこそ、我々の「フェイス・トゥ・フェイス」の価値が再度問われます。支持され続けるには、その危機感を社員全員で共有しないと。

■ズバリ本音
 ──「働き方」については、学生にどう説明していますか。
 学生の関心が高い有給休暇消化率が80%を超えることや、「月平均で16時間くらい」の残業時間を知らせて、ワークライフバランスがとれた環境で働けることを伝えています。
 現場はシフト勤務なので、管理者も朝早かったり夜遅かったり、土日勤務があったりします。育児休職の取得率は高いのですが、子育てをしながらのシフト勤務者に対しても会社としてのサポートを強化していきます。
女性の管理職比率は現在12%ほどで今後増えていくと思います。

 ──良くも悪くも、選考で印象に残っている学生は?
 ESを見るとすごくきっちり書いているが、本質が見えない、具体的なエピソードがない例があります。コピペしただけだな、と分かる人は面接しても厳しいですね。
 選考での身だしなみを気にする人もいますが、茶髪だからダメということはないし、多様な人に来てもらいたいと思っています。茶髪でも多少ラフな格好でも、そこにその人らしさや想いがあれば構いません。以前就活スーツに赤い靴下で来た人がいましたが、あまり思いが感じられなかったので残念でした。

 ――学生に言いたいことは?
 こちらからお願いしたいのは、本音で話してほしいということ。「第1志望です」と言っていただけるのは嬉しいのですが、「他社も受けていて、まだ迷っています」と正直に言ってもらって構いません。第1志望と言わなければ落とす、なんてこともありません。内定を出した後に「実は……」ということもあるので、本当の思いを聞かせてほしいですね。

 ──前回も感じましたが、きらびやかな「夢の国」の運営会社にしては社屋が地味ですね。
 そうですか?(笑)。顧客満足に関わらないところはシンプルな会社かもしれません。

自分の価値観が合う会社を選んで

■やりがいと厳しさ
 ──オリエンタルランドの仕事のやりがいと厳しさについて教えてください。
 学生たちは「氷山の一角」である東京ディズニーリゾートのきらびやかな一面を見て来ます。ギャップを解消するため、選考段階でも「氷山には見えない部分もあるんだよ」と丁寧に説明しています。
 やりがいは、やはりゲストがそばにいること。通勤時にゲストの楽しんでいる顔、満足した顔が見られるのは他社ではないことなので。同時に、ゲストに満足してもらえないと責任を感じる厳しい面もあります。私も以前勤務していたお土産を扱う部署で潤沢な在庫を用意できずに売り切れになったとき、ゲストの残念な顔、がっかり感、厳しい声に直面しました。

 ──新入社員がいきなり100~200人のキャストのリーダー役になるのも大変そうです。
 確かに大変ですが、自己成長の機会でもあります。1年から2年かけてトレーニングする間に何度か落ち込みながらもはい上がって、自分のやり方をつかんでいくようです。30年以上働いているキャストもいます。そういうベテランメンバーに叱咤激励されながら乗り越えていきます。

■中村さんの就活
 ──ご自身の就活について教えてください。
 バブル崩壊直後の1993年入社なので、まだ就活はしやすい時期でした。実家が岐阜の高山という田舎育ちで長男ということもあり、「いずれは地元で役に立つ人間になりたい」と思っていました。就活の軸にしたのは、学生時代に百貨店のアルバイトで体験した「人に喜んでもらうこと」。地元に帰ったとき「地域の人に喜んでもらえるスキル」が必要だと考え、身につけられる不動産やディベロッパー、レジャー業界を受けました。特にディズニー好きではなかったのですが、オリエンタルランドも受けました。当時は東京ディズニーランドができて10年目。現在の東京ディズニーシーの辺りは空き地でした。会社案内の航空写真の隣に「一緒に未来を創りましょう」とあるのを見て、「これは面白そうだ、何か新しいことができそうだ」と思って受けました。
 安易な志望動機で入社した会社でしたが、入社後は、幸いにも人と仕事に恵まれ、地元に帰ることはなく現在にいたっています。

 ──入社後はどんな仕事を?
 最初は商品本部。パークでお土産を販売している部門で2年弱過ごした後、人事部で採用、賃金、労務担当などを2年半くらい。パークの植栽を管理しているグループ会社に3年ほど出向して総務部全般を担当した後、商品本部に戻り、10年近くお土産ものの企画、開発、販売に関わる仕事をしていました。2014年から人事部で社員の採用および教育を担当するマネージャーをしています。
 印象的だったのは商品販売部での仕事ですね。東京ディズニーシーのキャラクター「ダッフィー」の販売サポートを担当しました。当初は知名度も高くなく1店舗だけで販売していたのですが、急に人気が高まってゲストが長蛇の列になり、最高8時間待ちという日もあったほどです。販売店舗を増やしたり、在庫との兼ね合いを見て販売数を制限したり、整理券を発行したり。ゲストには大変なご迷惑をかけましたが、少しずつスムーズにお買い物ができるように環境を整えました。今では人気者になったダッフィーの成長に関われたことは、感慨深いですね。
(前編はこちら

(写真・岸本絢)

みなさんに一言!

 企業をしっかり見て自分の価値観が合致する会社を選んでほしいですね。「人生100年」の時代に「新卒で入る会社選びにそこまで時間をかける必要があるのか」とも言われますが、会社選びは大事です。生涯の中でも仕事が占める時間は長く、特に若い時代の業務経験は自身のキャリアを形成するうえでの基盤となることから、新卒で入社する会社はしっかり見極めてほしいと思います。
 学生と話していると、「働き方」や「自分の成長」を大事にしていると感じます。確かに「働く環境」や「自己成長」は大切ですが、それ以上に企業が持っている価値観や想いと、自分の価値観が合致するかどうかを大切にしてください。仕事を通じて自分は何を提供したいか、その企業が何を提供しているかをよく考えたうえで、会社選びをしていただきたいと思います。

株式会社オリエンタルランド

【レジャー・アミューズメント】

 1960年7月に「国民の文化・厚生・福祉に寄与すること」を目的に創設された当社は、浦安沖の埋め立てから事業をスタートしました。コア事業である東京ディズニーリゾートは、 1983年4月15日の東京ディズニーランド開園に始まり、ひとりでも多くの人に「夢・感動・喜び・やすらぎ」を提供すべく、数々のチャレンジを重ね、今日に至っています。現在では、二つのテーマパーク合計で年間3000万人を超えるゲストを迎えています。「テーマパークは永遠に完成しない」というように、私たちの挑戦に限界や完成形はありません。オリエンタルランドグループでは、これから50年、100年先も「夢・感動・喜び・やすらぎ」を提供し、一つでも多くの笑顔を生み出していけるよう、挑戦を続けていきます。