SDGsに貢献する仕事

株式会社みずほフィナンシャルグループ

  • エネルギーをみんなに そしてクリーンに
  • つくる責任 つかう責任
  • 気候変動に具体的な対策を

みずほフィナンシャルグループ〈前編〉カーボンクレジット普及に向け、企業に伴走【SDGsに貢献する仕事】

2025年04月09日

 SDGs(持続可能な開発目標)関連の業務に携わっている若手・中堅社員に直撃インタビューする「SDGsに貢献する仕事」。第22回は3大メガバンクの一角、日本を代表する金融機関であるみずほフィナンシャルグループ(FG)が登場します。社会と経済がサステナブルに発展していくことは、あらゆる産業の下支えをする役割も果たす金融業にとって重要な課題です。幅広い分野でサステナビリティ推進にかかわるみずほFGですが、今回はそのなかでも脱炭素の取り組みにつながる「カーボンクレジット」推進に携わる社員に話を聞きました。(編集長・福井洋平)

【お話をうかがった方のプロフィル】
サステナブルビジネス部 ビジネス開発チーム ヴァイスプレジデント 山下翔平(やました・しょうへい)さん
2014年東京理科大学経営学部卒、同年みずほFG入社しみずほ銀行名古屋支店(中堅中小法人営業)。2017年~2019年みずほ銀行池袋支店(大企業営業)、その後みずほFGフロンティアビジネス推進PT、従業員組合専従を経て2023年より現職。

経済、産業、社会の持続的な発展が金融業の発展につながる

■山下さんの社歴
 ──山下さんの社歴を教えて下さい。
 2014年に入社しました。最初にみずほ銀行名古屋支店、次いでみずほ銀行池袋支店(東京都)に配属され、そのあとはみずほフィナンシャルグループ(FG)で新銀行設立のプロジェクトを担当していて、お客様とともにジョイントベンチャーでフィンテックの新しいサービスをつくっていました。その後、1年間の組合専従を経て、2023年8月に現部署に来ました。サステナビリティに携わったのは今の部署が初めてです。「SDGsって何だろう?」というところから仕事を始めました。

■みずほフィナンシャルグループにとってのSDGs
 ──みずほFGにとって、サステナビリティーはなぜ重要なのですか。
 私たちのビジネスモデルは金融が基になっています。金融機関は融資、投資などの資金提供を通じていろいろな産業の基盤を支えるインフラのような存在でもあり、経済、産業、社会、これらが持続的に発展していかないと我々金融業界も発展していけません。我々がサステナビリティ、そして環境の保全に取り組むことは社会、経済の持続性を担保するために重要と考えています。

 ──みずほFGとしては、特にどういう項目が重要と考えていますか。
 金融機関として社会の期待感にこたえられるかどうか、そしてみずほFGの持続的な成長にとって重要かどうかという二面性を考える必要があると思っています。今は社会の変化が激しく、我々にとっての重要度も毎年変化しています。その中で毎年重要性の高い項目を「マテリアリティ」として特定し、注力しています。
 金融機関は法人と個人、どちらもお客様にいらっしゃいますので、サステナビリティに取り組む範囲が広くなることが難しい点です。社内でも、まだ私が知らないサステナビリティの取り組みをしている社員が多くいると思います。

 ──銀行となると、関わらないジャンルがないぐらい広範囲の事業とのつながりがありますね。
 そうですね。そのため、正直我々は17あるSDGsの目標どれに対しても注力をしています。ただ、その中で毎年重要な項目が変わるので、重要性を切り分けて取り組む範囲を定めて選択と集中をしています。いま私はSDGsの目標でいえば7番「エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」、13番「気候変動に具体的な対策を」を中心に12番「つくる責任つかう責任」にも関わり、脱炭素に関する業務を多くてがけています。毎日知らないことにつきあたり、そのたびに調べる日々です。

サステナビリティをビジネスとして成立させる

■みずほFGの体制
 ──みずほFGはどういう体制でサステナビリティに取り組んでいますか。
 グループのサステナビリティを統括するCSuO(Chief Sustainability Officer)が2022年9月に設置され、その下にサステナビリティ企画部、サステナブルビジネス部の2部署がおかれています。私たちの取り組みは、みずほ自社としての取り組みと、お客様である法人・個人を支援しともにサステナビリティを目指す取り組みの2つに大別されます。自社の取り組みを担当するのが企画部で、お客様との取り組みがビジネス部という分担になっており、私の所属するビジネス部はみずほFGのお客様とともにサステナビリティを達成していくことを目指す部署です。なかでも、企業に出資をして、リターンを得るだけでなく事業のコンセプトづくりから事業開発の推進まで、その企業の社員のように伴走をするのが私の仕事です。

 ──CSuOを設置したねらいを教えて下さい
 それまでもサステナビリティの実現に取り組んできたのですが、サステナビリティを取り巻く環境が急速に変化し、お客さま、そして 〈みずほ〉が直面する課題が複雑かつ多様化する中、グループ一体での推進力をさらに強化するためです。 さきほど述べたように私たち金融機関は様々な社会活動の基盤でもあり、サステナビリティを根付かせるためには私たちが先頭に立って動いていく必要があります。そのため、目指すゴールを明確にして達成する意思を明確にしようと、CSuOの設置に至りました。

■山下さんの仕事内容
 ──山下さんの具体的な仕事内容について教えてください。
 企業への出資を通じたアライアンスを組み、その中で事業開発をしていくことが主な仕事です。私たちのチームは人によって事業推進のアプローチが 違うので、悪く言えば「形がない」、良く言うと自分の意思がそこに入れられるのが面白い点です。私は、かなり自分の色を入れ、ストーリーを構築し、 プッシュ型の提案をすることが多いです。

 ──部署のみなさんは、どのように課題の設定をしているのでしょうか。
 我々はどちらかというと、短期的な数字目標を追うのではなく、長期的な取り組みを扱う部署です。サステナビリティというと「儲からないんじゃないか」「企業のPRなんじゃないか」と思われがちですが、PRだけで終わらせずにいかに資本主義、経済の中に組み込んでいくかが大事です。
 今はビジネスモデルとして成立していない、本来はまだ融資できないところに我々の広範なネットワークを活用し、バリューチェーンの創出や出資などをする。それによってビジネスとして成立する時期を少し前倒しし、数年後、数十年後には営業担当が目標としているような枠組みをつくっていこうとしているのです。今は将来への種まきの時期で、成果がすぐに目に見えない分、つらいところはありますけれども。
 ──数字はいったん置いておいて、将来の種をまくということですね。
 そうです。もちろん出資ではなく、なるべく早く融資にしたいという気持ちはあります。さまざまな部署やグループ会社から案件が持ち込まれます。我々も予算が限られているなか、どこに出資するかの決断は会社や上司がすることもありますが、最終的には私たち担当者がアクセルを踏まないと前にすすまないですね。
 今の部署では結構自分の意志が反映されるので、驚きました。私が入社する前にドラマの『半沢直樹』が放映されていて、「銀行ってこんな感じなんだ」と思っていましたが、自分の意思が反映されるところはドラマと違っていて、みずほFGは結構チャレンジングな会社なんだと思います。私の仕事はお客様の支援というよりも事業開発をすることがメインなので、銀行業のなかでもさらに自由度が高い部署なのかもしれません。

 ──参考まで、出資と融資はどう違うのでしょうか。
 融資はお金をお貸しすることで、お返しの際にいただく金利が我々の収益になります。お金が返ってくることが前提になるので、利益率は低く、確実にお金が返ってくるかどうかが融資を決断する際のポイントです。
 出資は、ベンチャーキャピタルを例に挙げると分かりやすいと思います。例えば、株価が1株1万円のときに株を買い、その会社が育って株価が10万円になれば9万円儲かるので、利益率としては高くなります。ただ、この株がゼロになる可能性もあるわけで、融資はローリスクローリターン、出資はハイリスクハイリターンとなります。

カーボンクレジット普及に注力

■カーボンクレジット
 ── 今、山下さんが一番注力しているプロジェクトは何ですか。
 企業が削減したCO₂の排出量を認証し売買する「カーボンクレジット」に関連したビジネス企画・開発に注力しています。直近では、カーボンクレジットをAmazonや楽天のように購入できるプラットフォームを運営する会社と、どうすればカーボンクレジットが流通しやすくなるのか、お客さまにとってより良い商品・サービスは何なのかを一緒に考えています。金銭的リターンを見つつも、その会社と何をするかというコンセプトの部分から、事業開発の推進までを一緒にやること、これが私の仕事です。

 ──カーボンクレジットについて詳しく教えて下さい。
 カーボンクレジットは「排出回避・削減系」と「吸収・除去系」の2つに大別されます。「削減系」は、CO₂の排出量を何らかの対策をすることで下げ、もともと見込まれていた排出量からの下げ幅を「カーボンクレジット」として認証します。「除去系」は、実際に大気中のCO2を何らかの形で吸収・除去し、そのCO₂量を「カーボンクレジット」として認証します。例えば、従来型の低効率ボイラーが導入されていた場合の見込排出量をベースラインとして、高効率ボイラーによる実際の排出量との差を価値化するのが「削減系」、 木を植えることでCO₂の吸収量を増やしたり、大気中のCO₂を直接回収する「DACCS」のように新しい技術を使いCO₂を除去したりすることで生み出されるのが「除去系」のカーボンクレジットになります。どちらにも多様な方法論があり、「CO2を容器に詰め込み、北極の氷の中に埋める」など奇抜な事業アイデアや、まだ認証機関に認められていないアイデアが持ち込まれることもあります。

 ――認証機関とは何ですか。
 CO₂がどの程度削減されたかを確認しカーボンクレジットとして認証する機関です。決められた方法論にのっとって事業が運営されカーボンクレジットが創出されているかについて、測定・報告・検証を経て認証しています。

 ──どういう人がカーボンクレジットを買うのでしょうか。
 自らの排出削減の取り組みに加えて、削減努力をしても残ってしまうCO₂排出に対し、クレジットを活用することにより相殺するという手段に注目が集まっています。バリューチェーン外で社会貢献の位置づけとして、民間企業がボランタリーで活用しています。そのほかに、政府の規制や制度に則って活用することも進みつつあります。例えば国内ではまだ制度設計の段階ですが、排出量取引制度を本格稼働させようという議論が進んでいます。そのなかで一部、カーボンクレジットも活用できるという仕組みです。そうした制度設計やルールが確立されればCO₂を減らす意識がさらに浸透し、購入を検討する人も増えて、流通も進むと思います。

 ──今後はどのような展開を考えていますか。
 我々は、カーボンクレジットをどのように流通させるかを考えています。それには、グローバルに物事を考える必要があると考え、シンガポールで官民連携で設立されたカーボンクレジットの取引所であるClimate Impact X(CIX)に出資しています。CIXにはTemasekの脱炭素投資専門子会社である GenZero、DBS Bank(シンガポールの銀行)、SGX Group(シンガポール証券取引所)、Standard Chartered(欧州の銀行)という4社が出資しており、我々が5番目の株主になりました。CIXのビジネス範囲は世界です。
 また、日本版のカーボンクレジットとしてJ-クレジットという制度があり、そちらもどう流通させていくかを考えています。

みずほFGのリサーチ力で普及を後押しする

(写真・Climate Impact Xのシンガポールオフィスでのディスカッション風景=みずほFG提供)
■CIXとのアライアンス
 ──CIXとアライアンスを結ぶきっかけは。
 みずほFGは、2023年に制定したサステナブルビジネス戦略のなかで、カーボンクレジットを「2030年のカーボンニュートラル目標あるいは2050年のネットゼロ目標に向けて長期的に取り組むべき重要課題の一つ」と位置づけています。社会の脱炭素を実現するには、日本だけでなく世界全体を動かす必要があります。例えば、石炭火力発電を、電力インフラを損なうことことなく早期にリタイアさせることは、基幹電源として使用しているアジア各国での共通の課題です。そこにカーボンクレジットの仕組みを使えないか。CIXとその株主の方々と、そして我々みずほとで、そういった脱炭素への課題や取り組みへの考え方、カーボンクレジットが脱炭素において重要な役割を果たすというビジョンが一致したのが最初のきっかけです。
 CIXが拠点とするシンガポールはASEANに位置し、アジアでのカーボンクレジットのハブになりやすい。また、官民連携からスタートしているCIXであれば、日本も含めたアジアでの制度設計やルールメイクの土台を築きやすいのではないか。そう考え、プロジェクトに参加することになりました。

 ──CIXは、日本でのカーボンクレジットの普及をみずほFGに期待しているのでしょうか。
 日本国内はもちろん、アジアをはじめ世界各国に進出している日系の企業へのアクセスを期待していると思います。
 多くの企業では、2030年の脱炭素目標を設定しており、その目標達成に向け、自主的な削減の取り組みを行っています。他方で、努力してもなお残ってしまう排出量に対し、カーボンクレジットを活用するニーズは今後ますます高まると考えています。みずほの顧客網を通じ、そういった顧客にアクセスしていくことを期待していると思いますし、我々は信頼性の高いプラットフォームであるCIXを日本企業に紹介することで、お客様のカーボンニュートラルの実現に貢献できると考えています。
 もちろん、我々は金融業なので、最終的にはカーボンクレジットの事業に融資ができるようなパッケージを作り上げたいとCIX出資を通じて考えています。
 ──そのプロジェクトで、いま山下さんが具体的にしているお仕事は何ですか。
 1つが、CIXとの共創案件をつくりだすことです。日本の企業のみなさんと一緒に何かビジネスをつくりだせないか、お客さま・CIXと一緒に企画します。そもそも「カーボンクレジットとは何か」からの説明となることも多いですし、長期的な話なので「数年後に考えます」「勉強になりました」で終わってしまうこともありますが、多くの企業とディスカッションしていくことで、新しい着想を得ることもありますね。
 もう1つの仕事が、「御社なら、こういうことにカーボンクレジットを使えばビジネスにつながります」と提案することです。投資信託の提案であればもう商品ができあがっているので、商品知識さえあれば提案ができます。しかし、カーボンクレジットは制度設計自体がまだ設計途上なので、自らの発想が営業先に全く当てはまっていないときは、場が白けてしまいます。はまると、「一緒にやってみよう」という話になります。

 ――成約に至る決め手は何だと思われますか。
 みずほFGの強みであるリサーチ力を基盤とした構想力です。実際に取り組む際にはビジネスとして成り立つかどうかを調べる作業が必要になりますが、みずほFGが持つ広範な情報提供力は助けになると思います。
 また、こういうプロジェクトはなかなか1社では始められません。やってみたいけれども自社では10段階の1から5までしかできない、という場合は、私たちのお客様のなかから「5から10までできる」という他社を紹介して、つなげることができるのも大きなポイントだと思います。そして一番は最後に実際に始める際、前に進めるためのお金をアレンジできる。だからこそ、「御社のプラスになる可能性がある」という提案にとどまらず「実際に前にすすめましょう」という提案ができると考えています。
 そして、私たちはその企業の事業内容を調べて伴走するからこそ、提案に真実味が増す、迫力が出ると考えています。汎用資料を片手にローラー作戦で1日に何社も営業に回ったほうがいいのかもしれませんが、私は1社1社調べて、ちゃんと考えて提案しに行くという半ば効率の悪いやり方にこだわっています。

(後編はこちらから

(インタビュー写真・山本友来)

SDGsでメッセージ!

 みずほFGは、さまざまな挑戦をいろいろな領域で行っています。その中で私は、サステナビリティという領域で事業開発のチャレンジをしております。今後は社会の要請、期待によって、これがサステナビリティから別の分野に移ったり、いろいろと発展をしたりすると思います。場面、場面でみなさまと一緒にチャレンジをしていきたい。そして私も負けないように、もっともっとチャレンジしていきたいと考えていますので、ぜひ一緒にチャレンジできるメンバーを募集しております。
 就職活動のときは本当にいろいろな悩みがあると思うのですけど、自分がやりたいことや働き方など、いろいろな軸で判断して最終的には決めてもらえればなと思います。NTTデータは働きやすさも、やりたいことも実現できる会社だと思いますので、ぜひ一緒に働けたら嬉しいです。お待ちしております。(岩垣さん)

株式会社みずほフィナンシャルグループ

【金融】

 みずほフィナンシャルグループは、銀行・信託・証券など幅広い金融サービスを提供する総合金融グループです。みずほ銀行、みずほ信託銀行、みずほ証券を中心に、個人から大企業まで多様なニーズに対応し、特にデジタル技術を活用したサービスや、環境・社会課題に取り組むサステナビリティ戦略を強化しています。グローバル展開も進め、日本経済の発展に貢献し金融を通じて新しい価値を生み出し、未来を創ることを目指しています。