
■自己紹介
──自己紹介をお願いします。
香川法子さん 北海道出身で田舎暮らしをしていました。父と大雪山に登り、「この山のナキウサギが絶滅する危険がある」と聞かされ、小学5年生にしてこの世界を子どもたちに伝えていきたいと思ったんです。自然を守っていきたいと、大学の専攻では森林科学を選択しました。
サントリーでは希望通り「水科学研究所」に配属され、全国の研究所を飛び回って水質や水の流れを研究。主に山梨県白州にある「天然水の森 南アルプス」を担当しました。「水源涵養(すいげんかんよう)」という水を育む森を守る活動を社内外で紹介したり、お客様に「天然水の森」の活動を伝えたり。今は国内の活動が成熟してきたので、海外拠点の水源や工場の上流域に関する研究活動を展開しています。
伊澤樹さん コロナ下の2020年入社で3年目です。大学では化学を専攻し、1~2年生のときは「研究職に就くのかな」と思っていました。ところが、他社の海外インターンシップに参加して現地の社長にプレゼンするなどビジネスの現場に触れ、「こんなにチャレンジングで、世界を舞台にした大きい仕事があるのか」と気づきました。ただ、もっと研究の世界も知りたいと思い、大学院を出て就職しました。
3年間で担当はいろいろ変わりましたが、一貫してリサイクルやサステナブル関連の業務に携わっています。ペットボトルからはじまって、今はプラスチックも含めたケミカルリサイクルの技術開発の仕事をしています。
■サントリーにとってのSDGs
――SDGsは最近できた目標ですが、以前から水や自然と関わりが深い会社というイメージがあります。
香川 サントリーグループは「水と生きる」をお客様に約束しています。自然環境や社会、人と一緒に成長していきたいという意志です。歴史的にも「人と自然と響き合う」を使命として掲げてきましたし、環境に良い活動をするのはサントリー全社員が持っている基盤です。
SDGsの観点から言うと、弊社は自然の恩恵を受けて商品を提供しているので、自然からいただいたものを目減りさせてはいけません。水を持続的に守っていくことは、その資源を共有する地域社会のためであり、事業継続のためにも必須です。その水を育む森を保全するのが私の仕事です。
──祖業はウイスキーでしたね。
香川 最初は「赤玉ポートワイン」です。その後、ウイスキーづくりのために良質な水を求めて、山崎(大阪府)にたどりつきました。最初から水に価値を感じてきた会社です。
──サントリーにとってSDGsとは?
伊澤 サントリーではSDGsの17目標のうち、「6 安全な水とトイレを世界中に」「3 すべての人に健康と福祉を」「12 つくる責任 つかう責任」「13 気候変動に具体的な対策を」を重点取り組み領域としています。
中でも12は、私が担当している容器包装にもつながります。たとえ中味がおいしくても容器がサステナブルじゃなかったら、お客様は飲み終わったときに「環境に悪いのかな」と後ろめたさを感じてしまいます。お客様のためにも地球環境のためにも良いものをつくるのがSDGsへの私たちの貢献です。
香川 小学生向けの「水育(みずいく)」にも力を入れています。水の大切さを伝える環境教育プログラムです。これまでは「水を守る」活動をベースにしてきましたが、広く伝えることも大事です。水領域のトッププランナーを目指していますが、広めることで他社が「サントリーに負けてられない」と一緒に良い活動ができればいいなと。
──全国の「天然水の森」は所有しているのですか。
香川 多くは土地を所有している国や県、市町村と協定を結んで整備しています。工場の上流域にある15都府県、21カ所の森で、地域の皆様と一緒に活動を実施しています。だいたい30年契約で間伐や植林をする協定を結び、50年、100年後どういう森にしていくかというビジョンを作成し、それに基づいて森の整備を行っています。
――「人事のホンネ」でお話を聞いた住友林業は、社有林が日本の国土の800分の1と聞いて驚きました。
香川 住友林業さんは、実は弊社の水源涵養活動のパートナーです。「天然水の森」活動は科学的知見に基づいた活動をしており、住友林業さんをはじめ、さまざまな専門家の皆さんと一緒に活動しているのも大きな特徴です。