SDGsに貢献する仕事

サントリーホールディングス株式会社

  • すべての人に健康と福祉を
  • 安全な水とトイレを世界中に
  • つくる責任 つかう責任
  • 気候変動に具体的な対策を

サントリーホールディングス〈前編〉「水と生きる」を約束 環境に良い活動は全社員の基盤【SDGsに貢献する仕事】

2022年07月13日

 SDGs(持続可能な開発目標)に取り組む企業が増えるにつれ、就活生の企業選びでもSDGsに積極的な企業の注目度が高まり、志望を決めるときの重要な要素になっています。ただ企業のSDGsというと、きれいな「お題目」が並びがち。そこで、SDGsに熱心に取り組んでいる企業を訪ね、実際にSDGs関連の業務に携わっている若手・中堅の社員にお話を聞く新シリーズを始めます。SDGsに関心が高いみなさんのキャリアイメージにつながるヒントがきっと見つかります。第1弾は、「水と生きる」を企業理念に掲げるサントリーホールディングスです。(編集長・木之本敬介)

(冒頭のSDGsアイコンはサントリーホールディングスがとくに重視するゴール)

【お話をうかがった社員のプロフィル】
●香川法子(かがわ・のりこ)さん(写真右)=サステナビリティ経営推進本部
 2007年東京農工大学農学部地域生態システム学科卒、2009年東京大学大学院新領域創成科学研究科修了。同年サントリー入社、サントリー水科学研究所、サステナビリティ推進部などを経て現職。産休・育休2回。
●伊澤樹(いざわ・いつき)さん(写真左)=サステナビリティ経営推進本部サステナブルPET実行プロジェクトチーム
 2020年首都大学東京大学院(現東京都立大学大学院)理学研究科修了(研究内容:高機能プラスチックの重合触媒の開発・評価=プラスチックを環境にやさしく作るために必要な触媒を作る研究)、同年入社

水を育む森を保全するのが私の仕事 「水育」にも注力

■自己紹介
 ──自己紹介をお願いします。
 香川法子さん 北海道出身で田舎暮らしをしていました。父と大雪山に登り、「この山のナキウサギが絶滅する危険がある」と聞かされ、小学5年生にしてこの世界を子どもたちに伝えていきたいと思ったんです。自然を守っていきたいと、大学の専攻では森林科学を選択しました。
 サントリーでは希望通り「水科学研究所」に配属され、全国の研究所を飛び回って水質や水の流れを研究。主に山梨県白州にある「天然水の森 南アルプス」を担当しました。「水源涵養(すいげんかんよう)」という水を育む森を守る活動を社内外で紹介したり、お客様に「天然水の森」の活動を伝えたり。今は国内の活動が成熟してきたので、海外拠点の水源や工場の上流域に関する研究活動を展開しています。

 伊澤樹さん コロナ下の2020年入社で3年目です。大学では化学を専攻し、1~2年生のときは「研究職に就くのかな」と思っていました。ところが、他社の海外インターンシップに参加して現地の社長にプレゼンするなどビジネスの現場に触れ、「こんなにチャレンジングで、世界を舞台にした大きい仕事があるのか」と気づきました。ただ、もっと研究の世界も知りたいと思い、大学院を出て就職しました。
 3年間で担当はいろいろ変わりましたが、一貫してリサイクルやサステナブル関連の業務に携わっています。ペットボトルからはじまって、今はプラスチックも含めたケミカルリサイクルの技術開発の仕事をしています。

■サントリーにとってのSDGs
 ――SDGsは最近できた目標ですが、以前から水や自然と関わりが深い会社というイメージがあります。
 香川 サントリーグループは「水と生きる」をお客様に約束しています。自然環境や社会、人と一緒に成長していきたいという意志です。歴史的にも「人と自然と響き合う」を使命として掲げてきましたし、環境に良い活動をするのはサントリー全社員が持っている基盤です。
 SDGsの観点から言うと、弊社は自然の恩恵を受けて商品を提供しているので、自然からいただいたものを目減りさせてはいけません。水を持続的に守っていくことは、その資源を共有する地域社会のためであり、事業継続のためにも必須です。その水を育む森を保全するのが私の仕事です。

 ──祖業はウイスキーでしたね。
 香川 最初は「赤玉ポートワイン」です。その後、ウイスキーづくりのために良質な水を求めて、山崎(大阪府)にたどりつきました。最初から水に価値を感じてきた会社です。

 ──サントリーにとってSDGsとは?
 伊澤 サントリーではSDGsの17目標のうち、「6 安全な水とトイレを世界中に」「3 すべての人に健康と福祉を」「12 つくる責任 つかう責任」「13 気候変動に具体的な対策を」を重点取り組み領域としています。
 中でも12は、私が担当している容器包装にもつながります。たとえ中味がおいしくても容器がサステナブルじゃなかったら、お客様は飲み終わったときに「環境に悪いのかな」と後ろめたさを感じてしまいます。お客様のためにも地球環境のためにも良いものをつくるのがSDGsへの私たちの貢献です。

 香川 小学生向けの「水育(みずいく)」にも力を入れています。水の大切さを伝える環境教育プログラムです。これまでは「水を守る」活動をベースにしてきましたが、広く伝えることも大事です。水領域のトッププランナーを目指していますが、広めることで他社が「サントリーに負けてられない」と一緒に良い活動ができればいいなと。

 ──全国の「天然水の森」は所有しているのですか。
 香川 多くは土地を所有している国や県、市町村と協定を結んで整備しています。工場の上流域にある15都府県、21カ所の森で、地域の皆様と一緒に活動を実施しています。だいたい30年契約で間伐や植林をする協定を結び、50年、100年後どういう森にしていくかというビジョンを作成し、それに基づいて森の整備を行っています。

 ――「人事のホンネ」でお話を聞いた住友林業は、社有林が日本の国土の800分の1と聞いて驚きました。
 香川 住友林業さんは、実は弊社の水源涵養活動のパートナーです。「天然水の森」活動は科学的知見に基づいた活動をしており、住友林業さんをはじめ、さまざまな専門家の皆さんと一緒に活動しているのも大きな特徴です。

「天然水の森」での間伐体験、全社員が参加

■森林整備体験
 ――「天然水の森」での社員研修があるそうですね。
 伊澤 私もこの前、兵庫県の「天然水の森 ひょうご西脇門柳山」での森林整備体験に参加してきました。「人と自然と響き合う」「やってみなはれ」「利益三分主義」といった企業理念を学ぶ研修の一環で、全社員が1回は参加します。事前研修で活動内容や、なぜ森の保全が大切なのか勉強してから、森に入って木を切ります。森は光が地面に届き土壌を守る下草が育つ状態が望ましいのですが、整備しないとうっそうとした暗い森になってしまいます。土壌が固くなって土砂災害が起きやすくなり、生物多様性も育まれません。定期的に間伐して保全することで森が豊かになるんです。
 「虫が怖い」という人もいましたが、始めるとみんな没頭して黙々と無心に切っていました。最後は日光の差し込む明るい森になって、「こんなに変わるんだ」と身にしみて感じました。高砂工場の水源涵養エリアにある森で、今降った雨が20~30年後に商品になるので、そのころには感慨深く飲めそうだなと思っています(笑)。

 香川 私は社員を森に連れて行く側でしたが、間伐作業を行う前は「営業で忙しいときになんで森に連れてくるんだよ」という人もいました。でも終わると「あー、超いい汗かいた! おいしいビールが飲めそう」と表情がパッと変わるんです。「これをネタに営業頑張るわ」と言われると、よかったなと思います。

(写真は、「森林整備体験」に参加した伊澤さん=左から2人目=サントリーホールディングス提供)

水源涵養活動を世界に広げる仕事

■香川さんの仕事
 ──香川さんの今のお仕事は?
 香川 私の専門は「水文学(すいもんがく)」という分野で、現地調査や水文モデルなどのシミュレーションなどを使って、健全な水循環が保たれているかを調べます。工場の上流域に雨が降って、森に染み込んで、その水をくみ上げて工場で商品化する。その流れが適正に保たれているか研究しています。
 2021年の4月に育休から復帰して、今やっているのは水源涵養活動を世界に広げる仕事です。日本は雨が豊富ですが、海外では乾燥地帯で森や植物があまり育たない場所もあります。そこで使える水をどう増やすか、どう保全するかを現地の専門家と考えます。日本も含め15カ国79工場あって、2030年までにそのうち40工場、2050年までには全工場で水源涵養活動をする目標を立てています。

 ──担当は何カ国ですか。
 香川 主にスペイン、インドネシア、アメリカの3カ国です。コロナですべてリモートでしたが、近々インドネシアに行くことになりそうです。何十年も継続するには土地に合った活動をしなければなりませんから。

 ──やりがいや面白さは?
 香川 地域のために貢献できていると感じます。日本では長く森林整備がきちんとできていなかったのですが、サントリーが一緒に活動するようになって環境が良くなり、地元の人たちが誇れる森になりました。自治体の担当者から「孫たちに財産として受け継ぐことができて嬉しい」と言われ、「間違ってなかった」と思いました。

 ――ご苦労も多いのでしょうね。
 香川 大変なのは合意形成です。利害が絡むので日本でも大変ですが、海外とは文化や環境の違いが大きい。スペインで協働するNGO担当者からは「スペインでは雨が少ないから、木を植えると木が水を吸ってしまい、木の呼吸でも水分が蒸散し水を減らすことになってしまう。その土地に合った水循環の活動をしないといけない」と言われました。日本での森林整備活動をそのまま海外で実施するのではなく、その地域に適した整備を実施する必要があると改めて実感しました。

 ――他にも水源涵養活動をしている会社はあるのでしょうが、違いは?
 香川 社員がここまで直接関わっているのは弊社だけだと思います。多くは森林整備を現地の森林組合にお願いする形です。「水科学研究所」は「天然水の森」活動がスタートした2003年に設立されましたが、海外の社外の方からも「そんなユニークな部署があるんだ」と驚かれます。
後編に続く

(写真・大嶋千尋)

SDGsでメッセージ!

 企業と学生のSDGsの目線は違うので、自分の率直な意見や素朴な疑問を企業の人に伝えることが大事だと思います。企業はそれを待っていると私は思っています。SDGsで将来的に影響を受けるのは若い世代なので、自分たちが主役なんだという意識でぜひ臨んでください。面接や説明会で、身近な生活で感じたSDGsに関する考えを言ってみてください。しっかり考えてるんだなと伝わるし、企業にとってはすごく興味のあることです。(伊澤さん)

 SDGsに取り組む企業は多くなっていますが、その本気度を見るためにも、具体的な進捗率の公表や本業に組み込まれているのか、見てみるのも一つの方法だと思います。とくに、本業に関連のある取り組みであれば、継続する可能性が高く、課題の解決に向けて関われるチャンスがあるからです。そういった視点で企業を見ていただいて、サントリーを選んでくれると嬉しいですね。(香川さん)

サントリーホールディングス株式会社

【酒類・食品・飲料】

 サントリーグループは、「人と自然と響きあう」という企業理念のもと、持続可能な社会の実現を目指し、グローバルにサステナビリティ経営を推進しています。
 あらゆる人々が生きる喜びや充実を感じながら、それぞれの能力を発揮し、人間としての生命を最大限に輝かせること。そのためにサントリーは、食品酒類総合企業として様々な商品やサービスを通じてお客様に新たな価値を提供し、生活文化を潤い豊かなものにしていきます。