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2024年02月09日

国際

今年は「モンスター選挙」年 世界情勢は流動化、アンテナを高く持とう【時事まとめ】

世界の情勢左右する選挙が目白押し

 1月15日の「週間ニュースまとめ」でも触れましたが、2024年は世界情勢に影響を与える国や地域の選挙が目白押しで、「モンスター選挙年」とも呼ばれています。外国の政治の問題は、一見就職活動とは遠いように感じます。しかし、いま世界はさまざまな分野で分断がすすみ、選挙の結果によって国の方針が大きく変わって世界情勢が不安定さを増すリスクが高まっています。その結果、経済情勢に重大な影響が出ることも十分考えられるのです。ロシアウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫化が物価高を引き起こして経済に大きな影響を及ぼしている現状を見れば、深く納得がいくでしょう。「モンスター選挙年」の選挙日程をあらためて確認し、起こりうる「変化」に備えるマインドを養いましょう。(編集部・福井洋平)

●2024年は世界情勢に影響与える選挙が続く【週間ニュースまとめ1月9日~14日】はこちらから

(写真・米共和党主催の夕食会で、支持者を前に演説をしたトランプ前大統領=2023年7月/写真はすべて朝日新聞社)

トランプ氏勝利ならパリ協定離脱

 今年の選挙日程については左の図をご覧下さい。すでに台湾総統選が行われ、アメリカとの協力関係をすすめてきた民進党の候補、頼清徳(ライチントー)氏が勝利しました。

 今年最大の選挙はなんといってもアメリカ大統領選です。前アメリカ大統領のトランプ氏が現在、野党である共和党の候補者選びで独走しています。与党・民主党の候補は現職のバイデン大統領になる公算が高く、11月に予定されている大統領選は前回同様、トランプとバイデンの戦いになりそうです。

 在職中はその言動で世界中をひっかきまわしたトランプ氏ですが、復権したらその影響は1期目のとき以上に大きくなることが予想されます。たとえば気候変動への対応について。トランプ氏は1期目に気候変動の国際ルール「パリ協定」から離脱しており、バイデン政権期に復活したものの、トランプ氏が勝利すれば再び離脱することが確実視されています。昨年12月のテレビインタビューで「あなたは独裁者にならないといえるのか」と聞かれたトランプ氏は「ならない、ならない。初日を除いては。初日は、国境を閉ざし、(化石燃料を)掘って、掘って、掘りまくる」と切り返したそうです。上智大学の前嶋和弘教授(米国政治)は、トランプ氏は電気自動車を推進したら、彼が敵視している中国に有利になる、と考えていると指摘しています。

ロシアが勝利する可能性高まる

 また、深刻化するイスラエルパレスチナ問題にも大きな影響が出るでしょう。トランプ氏は1期目にイスラエルのネタニヤフ首相と関係を密にし、米国大使館をテルアビブからエルサレムに移すなど親イスラエルの姿勢を打ち出していました。いま国際社会はガザ攻撃をやめないイスラエルへの批判を強めていますが、トランプ氏が勝利すればアメリカがイスラエル支援を強化する可能性が高くなります。

 トランプ氏はロシアのプーチン大統領とも友好関係を保ち、ウクライナへの軍事支援に否定的な姿勢をみせてきました 。トランプ氏が勝利すれば、ウクライナへの軍事支援が停止される可能性が高くなります。ロシアからすればトランプ氏が大統領になれば勝利の可能性が高まるわけですから、いま早期停戦に応じる必要もなくなります。ちなみにそのロシアも今年3月に大統領選が予定されていますが、プーチン大統領の再選は確実視されています。

 そして6月には、欧州連合(EU)の立法機関である欧州議会の選挙があります。ウクライナ支援や世界をリードする環境対策などで大きな力を発揮してきた欧州議会ですが、ヨーロッパ各国ではエネルギー価格や物価の高騰で市民生活が苦しく、反移民政策を掲げる極右政党や右派勢力の台頭が目立っています。そのため、東京大学の鈴木一人教授(国際政治経済学)は欧州議会で極右勢力が勝つ可能性が高いと指摘しています。そうなればヨーロッパでも、ウクライナ支援の動きが止まりかねません。アメリカとヨーロッパが手を引けばロシア勝利の公算が高まります。つまりはロシアの侵略を容認する、力で領土を奪うことを認めることになるわけで、世界の秩序は危機に瀕します。

(写真・2019年に来日したプーチン大統領)

世界の分断が深まっていく?

 今年の選挙で、民主主義のふりをした「権威主義」が世界に広がることが怖いと鈴木教授は指摘します。

バングラデシュでは1月に選挙がありましたが、15年近く首相の座にあるハシナ氏が野党指導者らを拘束するなど強権的な手法をすすめたことから、最大野党が抗議のために選挙をボイコットしました。
・中米のエルサルバドルでは、令状なしの逮捕を可能にする非常事態宣言を出すなど強権的方法で治安を劇的に改善させたブケレ大統領が再選され、暴力に苦しむ他の中南米諸国が注目しています。
・世界最大の14億超の人口を抱えるインドでは4~5月に総選挙が予定されています。インドでは近年、ヒンドゥー至上主義が強まり、イスラム教徒をはじめ少数派が抑圧されているとして、国際社会から懸念の声があがっています。
・年内に大統領選が予定されている南米ベネズエラでは、現職のマドゥロ大統領が、野党の有力候補の立候補を禁止しました。ベネズエラでは昨年12月に、隣国ガイアナの一部地域をベネズエラ領とするかどうかを問う国民投票が行われ、賛成が9割を超えました。投票結果を支持するマドゥロ大統領が再選すれば、両国間の緊張が高まるおそれがあります。

 こうした国のなかには、強権的な指導者によって、経済発展や治安の改善が大きく進んだ国があるのも事実ですが、その一方で「自由」や「人権」といった概念を軽視する傾向が強まっているのです。

 ロシアをはじめこうした権威主義の国が増えていくと、はたして国際平和を実現する枠組みは作り出せるのでしょうか。今年の選挙結果によっては、国際社会が不安定化する方向性が強まってしまいそうです。世界のつながりが分断されれば、コロナ禍による落ち込みから成長に転じた 世界経済に急ブレーキがかかるかもしれません。日本ももちろん、その影響を免れ得ません。

世界の情勢が仕事に直結

 米大統領選については、日本にもすでに直接的な影響が出ています。日本製鉄は米鉄鋼大手のUSスチール買収を発表しましたが、トランプ氏は1月末に「私なら即座に阻止する。絶対に」「(大統領在任中に)我々は鉄鋼業を救った。(買収を阻止して)国内に雇用を取り戻したい」と発言、バイデン大統領もそれに対抗して、買収反対の姿勢を打ち出しています。日本製鉄の今後の戦略にも、大きな影響が出そうです。

 世界の情勢は日々変化します。グローバル化が進み、世界情勢と無縁の仕事はいまや考えられません。今年の選挙の動きについてぜひ関心をもってチェックし、自分が志望する業界や企業とのつながりについても考えてみましょう。


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