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2022年11月16日

国際

米国の「中間選挙」って? バイデン民主党が負けなかった理由【時事まとめ】

歴史的な大接戦 トランプ前大統領が結果を左右

 歴史的な大接戦となったアメリカの中間選挙は、バイデン大統領の与党・民主党下院ではやや劣勢ですが、上院はギリギリ多数を確保しました。事前には「民主党大敗か」との予想もあった中、「バイデン大統領が負けなかった選挙」といえそうです。大きな争点となったのは、急激な物価高(インフレ)と人工妊娠中絶禁止の是非、さらに民主主義への危機感です。結果を左右したのは民主主義を否定するかのような言動を繰り返す共和党トランプ前大統領の存在です。トランプ氏は11月15日、2年後の大統領選挙への立候補を表明。早くも行方が注目されています。世界一の大国・米国の政治は、日本の政治に、そして私たちの生活にも大きく影響します。そもそも米中間選挙って何なのか、なぜこの結果になったのか、これからどうなるのか、やさしく解説します。(編集長・木之本敬介)

(写真は、米ワシントンで演説するバイデン大統領=11月2日)

バイデン政権の「中間テスト」

 米国の中間選挙は、上院(定数100、任期6年)の3分の1と、下院(定数435、任期2年)の全てが改選されます。4年ごとにある大統領選のちょうど真ん中に実施するので「中間選挙」と呼ばれ、州知事選も多く行われます。任期の半分を迎えるバイデン政権の「中間テスト」の意味合いがあり、次回2024年の大統領選に向けて民主党と共和党のどちらに勢いがあるのかを知る機会としても注目されます。選挙前の議席は、上下両院とも民主党が多数でした。過去の中間選挙では、さまざまな難題に取り組む政権与党が議席を減らすことが多く、今回もバイデン大統領の支持率は約40%と低迷しており、民主党に厳しい結果が予想されていました。

 投票日は11月8日。バイデン大統領は選挙を受けて「民主主義にとってよい日だったと思う。そして米国にとってよい日だった」と語りました。11月17日(日本時間)時点で最終結果は出ていませんが、下院は共和党が過半数に迫っているものの民主党は善戦したといわれています。上院は民主党が50議席を固め、事実上の多数を維持しました。シンボルカラーは民主党が青、共和党は赤のため、バイデン氏は「報道や専門家が予測していた『巨大な赤い波(共和党が席巻する状況)』はなかった」と笑顔で語り、次回大統領選についても「再び立候補する意向だ」とも述べています。

インフレ・中絶禁止+民主主義の危機

 なぜ民主党は負けなかったのでしょうか。米国では40年ぶりのインフレが国民生活を直撃しており、バイデン大統領は批判を浴びてきました。当初はインフレが最大の争点で、民主党不利と予想されましたが、流れを変えたのは、6月にあった連邦最高裁による人工妊娠中絶の権利を認めない判決です。中絶に反対する意見は共和党に強く、9人の判事のうち判決に賛成した5人は共和党の大統領に指名されました。これに対し、中絶を「女性の権利」だとするバイデン政権は判決を強く批判、女性を中心に支持が広がりました。米メディアによる投票所での出口調査では、中絶を「合法にすべきだ」とする人が全体の60%にのぼりました。10~20代の若者も「自分事」として重視するテーマで、接戦州では7割が民主党候補に投票したといわれています。

 さらにバイデン政権が選挙戦を通じて訴えたのが「民主主義の危機」です。トランプ氏は前回の大統領選の敗北をいまだに認めず、根拠なしに「選挙で不正が行われた」と言い続けています。民主党はこうした主張をする共和党の候補者を「選挙否定論者」と呼び、民主主義の根幹を揺るがすと批判。民主主義のリーダーを自任する米国民にも危機感が広まったとみられています。世論調査では、無党派層の票が民主党に流れたことがわかっています。

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次期大統領選の争点は「トランプ」

 そんな中、トランプ氏は15日、「米国を再び偉大で栄光に満ちた国にするために、(2024年の)大統領選への立候補を表明する」と数百人の支持者を前に語りました。中間選挙で独自に推薦した共和党候補のほとんどが当選したと持論を展開しましたが、実際には上下院で150人以上が当選した一方、重要な上院選や知事選などで落選も目立ち、トランプ氏への反発が「敗因」だとの指摘が出ています。また、機密文書の取り扱いをめぐって連邦捜査局(FBI)の捜査を受けたほか、2021年1月の連邦議会襲撃事件に関与した疑いなど、トランプ氏が複数の疑惑を抱えていることが影響した可能性もあります。

 最新の世論調査では、2024年大統領選の候補として共和党支持者が選んだのは、フロリダ州知事選に圧勝したデサンティス知事(41%)がトランプ氏(39%)をわずかに上回りました。有力候補とみられています。トランプ政権を支えたペンス前副大統領らも立候補する可能性があると報じられています。

 トランプ氏は2016年にヒラリー・クリントン氏(民主党)を破って大統領に当選。2020年に再選を目指しましたが、バイデン氏に敗れました。大統領選はちょうど2年後の11月に投開票されます。来年中には候補が出そろい、2024年に入ると両党内での指名争いが本格化する見通しです。トランプか反トランプか、共和党内の主導権争いに注目です。

(写真は、米ペンシルベニア州ラトローブで演説するトランプ前大統領=11月5日)

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