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2022年06月08日

環境・エネルギー

脱炭素による電力不足で「原発回帰」加速? 注目は再エネ【時事まとめ】

骨太の方針に原発「最大限活用」

 今年の夏は電力が足りなくなる心配があるとして、政府は全国規模で節電を要請することを決めました。地球温暖化防止で「脱炭素」の流れが加速し、火力発電所の休止や廃止が進んでいることが原因です。そんな中、政府が経済財政運営の基本となる「骨太の方針」で、原子力発電について昨年は盛り込まれた「可能な限り依存度を低減する」との表記を見送り、東日本大震災での東京電力福島第一原発事故後初めて「最大限活用する」方針を盛り込みました。「原発回帰」の動きです。欧州でも脱炭素を進めるため、二酸化炭素(CO₂)を出さない原発に回帰する流れが強まっています。ロシアのウクライナ侵攻でエネルギーの安定供給が重視されるようになったことも影響しています。事故が起きれば取り返しのつかない事態を招く原発をゼロに近づけていくのか、地球温暖化防止にはプラスの原発に頼っていくのか、日本は大きな岐路にあります。インフラやエネルギー業界を目指す人はもちろんですが、電力はすべての人に身近な問題でもあります。どんな業界・企業を目指すのかにも関わります。自分の問題として一緒に考えてみてください。(編集長・木之本敬介)

(写真は、北海道電力の泊原子力発電所=2021年6月、北海道泊村、本社機から)

原発再稼働をめぐる動き

 最近、原発の再稼働をめぐる大きなニュースが二つありました。
北海道電力が再稼働を目指す泊(とまり)原発(北海道泊村)の1~3号機について、道内外の約1200人が北電を相手に運転差し止めなどを求めた訴訟で、札幌地裁は5月31日、運転を認めない判決を言い渡した。裁判長は、現在ある防潮堤が「安全性の基準を満たしていない」と述べた。
中国電力 島根2号機(松江市)について、島根県知事は6月2日、再稼働に同意すると表明。10年以上運転が止まっていた2号機は、早ければ2023年度にも再稼働する可能性が出てきた。

 泊原発は再稼働の見通しが立たなくなり、島根原発は地震や津波に備える安全対策工事の計画の認可や工事が順調に進めば稼働できます。国内の原発は、2011年の東日本大震災の前は全国で54基が稼働していましたが、事故後に安全性の基準や事故に備える避難計画の内容が厳しくなり、これまでに再稼働したのは10基。このうち、いま動いているのは4基だけです。関西電力 美浜3号機(福井県)や九州電力 玄海3、4号機(佐賀県)は、テロ対策施設の設置期限を守れず止まっています。

冬には「電力使用制限令」も?

 原発の再稼働がなかなか進まない一方、老朽化した火力発電所の休廃止が相次ぎ、電力需要が増える夏と冬に十分な供給力を確保できないのが今の状況です。そこで、政府は家庭や企業に夏の節電要請を出すことにしました。

 具体策としては、エアコンを使う際の室内温度を28度にすることや、冷蔵庫の設定を「強」から「中」にすることなどを盛り込みます。電力会社には、休止した火力発電所の再稼働を促し、発電設備が急に止まらないよう点検などを入念にするよう求めます。冬はもっと厳しい見通しで、企業などに法令で節電を義務づける「電力使用制限令」も検討しています。

政権内に新増設容認の声も

 いま強まっているのが「原発回帰」の動きです。福島の事故後、原発の運転期間は原則40年になり、最長20年の延長ができます。今は建設中を含め36基ある原発は、仮にすべてが延長しても2050年には23基、2060年には8基に減り、いずれゼロになります。

 国民の間には「反原発」の世論が強いため、福島の原発事故以降、歴代政権は表だっての原発推進論は避けてきました。ところが最近になって、原発の新設・増設やリプレース(建て替え)を容認する声が政府・与党から出始めました。ある官邸幹部は「最新の技術でリプレースした方がよほど安全で、規制委の基準もゆうにクリアできる」とし将来的な検討を示唆。首相周辺は「現実的に今のエネルギー事情で原発なしはありえない」として、「再稼働だけでなく、リプレースなどの議論も年内には表明しないといけない」と話します。7月の参院選前に争点化することは避け、選挙後に議論が始まるかもしれません。

小型原発開発でも「核のごみ」は未解決

 世界では、「小型モジュール炉」(SMR)と呼ばれる次世代型原発の開発が進んでいます。発電出力は、100万キロワット以上ある通常の大型炉の3分の1以下。小さいぶん冷えやすいので、重大な事故を防げるかもしれないと注目されています。工場で組み立ててから設置でき、コストも抑えられます。日本企業では三菱重工業が開発中で、IHIは米国の新興企業の原子炉事業に参画。日立製作所は米ゼネラル・エレクトリック(GE)と共同で取り組んでいます。ただ、小型原発でも発電すれば「核のごみ」と呼ばれる放射性廃棄物が出ます。その処分先が決まっていないのは大型炉と同じです。

再エネが普及がカギ

 だとすると、脱炭素を進めつつ原発依存を減らすには、太陽光発電風力発電などの再生可能エネルギーをもっともっと普及させるしかなさそうです。再エネは発電量が天候に左右されるのが弱点ですから、蓄電設備の整備や送電網の使い方の工夫が必要です。海に囲まれている日本では洋上風力発電を広げられる可能性があります。これまでは政府が力を入れてこなかったこともあり、欧州に比べて大きく出遅れていますが、中部電力、九州電力、三菱商事など力を入れる企業が増えてきました。新たな取り組みに注目して企業研究を深めてください。

 洋上風力の可能性や、変わる電力業界の勢力図については、
洋上風力で変わる電力業界地図 「安定」より「革新」へ【業界研究ニュース】
を読んでみてください。

(写真は、茨城県の鹿島港洋上風力発電所の完成イメージ=ウィンド・パワー・エナジー提供)

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