フィンテックじゃなく…フェムテックとは
「フェムテック」(Femtech)って聞いたことがありますか? ちょっと似ている「フィンテック」(Fintech)は、Finance(金融)とTechnology(技術)を組み合わせた新しい金融サービスのことで、就活生にとってはすでに必須ワードですね。フェムテックは、Female(女性)とTechnologyをかけ合わせた造語で、こちらも近年注目を集めています。生理や妊娠・出産、更年期障害など、女性は男性にはない体の悩みを多く抱えています。こうした悩みをIT(情報技術)などの最新技術やアイデアで解決し、女性の健康や生活の質向上をはかるサービスやビジネスのことです。代表的な商品に生理用吸水ショーツがあります。下着自体が経血を吸収し、生理用ナプキンを着けたり取り換えたりする心身の負担を軽くします。10年近く前から欧米を中心に広がり、日本では関連企業や商品が急増した2020年が「フェムテック元年」と呼ばれました。背景には、仕事を続ける女性が増えたことに加え、これまでタブー視されていた生理や性の問題を積極的に話せる風潮が広まったことがあります。ヘルスケアブームも相まって様々な商品やサービスが開発されています。男性もこの機会に、ともに働く女性の日常の苦労への理解を深めてください。(編集長・木之本敬介)
「女性の働き方をサポート」
フェムテック関連商品の輸入、販売、コンサルティングなどを手がけるベンチャー企業「フェルマータ」を2019年に起業した杉本亜美奈CEO(最高経営責任者)は、今年1月の朝日新聞の記事でこう話しています。
「女性は男性の視点でつくられた社会のなかで、様々な体の悩みを抱えながら頑張ってきました。更年期がつらくて正社員をやめたり、産後うつで仕事に復帰できなかったりした人もいます。課題が言語化され共有されている環境問題のように、みんなで話し合いやすい分野ではありません。女性が抱える体の悩みは、表ざたになりにくく共有されていないのです。解決につながる商品と出会える場をつくり、フェムテック市場の拡大に努めています」
「コロナ感染拡大の影響で買い占めが起きたとき、トイレットペーパーはもちろん、生理用ナプキンも店頭からなくなりました。代用品として繰り返し使える月経カップを、ネットで探す人が増えました。こんな商品をうまく利用すれば、トイレに行きにくい保育士さんや看護師さん、長時間の会議に出ないといけない人たちが仕事に集中しやすくなる。女性の働き方をサポートできると思います」
(写真は、フェルマータで販売する商品を手にする同社CEOの杉本亜美奈さん=2020年12月、東京都品川区)
働き続ける女性増、晩婚化も影響
女性特有の体の悩みは古来続いてきたのに、なぜいまフェムテックが生まれたのでしょう。大きいのは、働き続ける女性が増えたことです。総務省の労働力調査によると、2019年に女性の就業者数が初めて3000万人を突破し、就業者全体の44.5%を占めるようになりました。結婚や出産で退職して専業主婦になる女性は減り、共働き世帯が増え続けています。
経済産業省の2018年の「働く女性の健康推進に関する実態調査」では、女性の52%が特有の健康課題や症状により勤務先で困った経験があると答え、これらによる労働損失は5000億円近くになるといいます。妊娠・出産といった女性のライフイベントと仕事の両立を支えることが、社会にとって必要不可欠になったわけです。晩婚化や子どもを産む年齢が高齢化していることも影響しています。
GUも吸水ショーツで参入
ベンチャー企業が中心だったフェムテックの市場ですが、ここにきて大手企業の参入も目に付くようになりました。多くの女性を支援するフェムテックは大きなビジネスチャンスでもあるからです。米国の調査会社によると、世界市場は2025年に約5兆円まで膨らむと予想されています。日本市場はまだ小さいものの、同年に1兆円を超すとの見方もあります。
生理用品国内首位のユニ・チャームなどの生活用品メーカーはもちろん、ファーストリテイリングの衣料ブランド「GU」も今年、吸水ショーツなどの下着類で参入しました。大手百貨店の大丸梅田店(大阪市)は2019年にフェムテック商品を扱う売り場「ミチカケ」を開設。生理や女性の健康をテーマにしたセミナーも開いています。総合商社の丸紅は2020年に女性社員を中心とするフェムテックビジネスの開発チームを設けました。
(写真は、GUが発売した吸水ショーツ=2021年3月8日、東京都渋谷区)
商品、サービス、アプリ…広がる市場
フェムテックでは具体的にどんな商品やサービスが生まれているのでしょう。最近の朝日新聞の記事に登場したものを紹介します。
・生理予測のアプリ
・生理中にナプキンを使わず過ごせる吸水ショーツ
・体内で経血を受け止める月経カップ
・母乳が出やすくなるブラジャー
・胸に装着したまま搾乳したり母乳を保存したりできる装置
・子宮などを支える骨盤底筋を鍛える器具
・おりものの状態から妊娠しやすい日を教えてくれる機器
・生理日や基礎体温を記録し月経周期や体調を管理できるアプリ
・更年期障害を改善するプログラム
・妊娠・出産などの健康の悩みを医師や助産師に相談できるオンラインサービス
商品やサービス、アプリなど、幅広いビジネスが展開されているのですね。市場はまだまだ広がりそうです。女性は自身の困りごとや体験がビジネスにつながるかもしれません。男性も、こうしたビジネスに関わることが社会を支えることにもなります。想像力を働かせてみましょう。
(写真は、月経カップやサニタリーショーツなどの生理用品が売られている大丸梅田店の「michikake」=2019年11月、大阪市北区)
◆人気企業に勤める女性社員のインタビューなど、「なりたい自分」になるための情報満載。私らしさを探す就活サイト「Will活」はこちらから。
※「就活割」で朝日新聞デジタルの会員になれば、すべての記事を読むことができ、過去1年分の記事の検索もできます。大学、短大、専門学校など就職を控えた学生限定の特別コースで、卒業まで月額2000円です(通常月額3800円)。お申し込みはこちらから。