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2021年07月07日

国際

中国共産党100年 隣の独裁大国をもっと知ろう【時事まとめ】

「14億の中国人民が血と肉で築いた鋼の長城にぶつかり血を流す」

 中国共産党が結党100周年を迎えました。習近平(シーチンピン)党総書記国家主席)は、北京の天安門広場で開いた祝賀式典で「我々をいじめ、服従させ、奴隷にしようとする外国勢力を中国人民は決して許さない。妄想した者は14億の中国人民が血と肉で築いた鋼の長城にぶつかり血を流すことになる」と、強烈な表現で米国などの外圧に反発を示しました。経済成長を続ける中国は、2030年には米国を抜いて世界一の経済大国になるといわれ、政治的な影響力も強めています。言論の自由がなく、政権批判が許されない一党独裁の国に世界の覇権を握らせまいと、米国は「民主主義国家VS. 専制主義国家の戦い」と位置づけて中国を抑え込もうとしています。米国対中国による「新冷戦」とも呼ばれますが、かつての東西冷戦とは様相はかなり異なります。日本は米国の同盟国であり、自由、人権を大切にする民主主義国ですから、政治的には対立の最前線にいます。ただ、経済的には中国は最大の貿易相手国であり、密接な関係にあります。中国に進出している日本企業は1万3000社超、中国関連ビジネスに関わっている企業は3万社超といわれます。就職したら、何らかの形で中国と関わる人も多いはずです。そもそも中国はどんな国で、中国の台頭で世界はどう変わって来たのか、この機会にもっと知っておきましょう。(編集長・木之本敬介)

「百年の国恥」経て世界2位の経済大国に

 歴史をおさらいします。中国の国土は日本の26倍。漢民族が9割超を占めますが、55もの少数民族が住む多民族国家ですから、治めるのは大変です。初めて統一したのは、漫画「キングダム」でも描かれる紀元前の「」です。その後、「」や「」などが強大な国を築きますが、19世紀になって「」がアヘン戦争で英国に敗れてからは、欧米や日本に多くの権益を奪われる半植民地状態に。1912年には清が滅び中華民国ができますが、1921年に生まれた中国共産党が国民党を台湾に追いやり1949年、毛沢東が天安門で中華人民共和国の建国を宣言しました。このため中国共産党は、アヘン戦争からの1世紀を「百年の国恥」と呼んでいます。

 毛沢東による1966年からの文化大革命で国内は大混乱に陥りますが、その後トップに立った鄧小平は経済再建を優先する改革開放にかじを切り、日本や米国と国交を樹立して「社会主義市場経済」という仕組みで急成長を始めました。世界最多の人口を背景に経済は発展を続け、2008年のリーマン・ショックで世界経済が落ち込んだ際には回復を引っ張る役割を果たし、存在感を示しました。日本を抜いて米国に次ぐ世界2位の経済大国になったのは2010年。今や日本の3倍の経済規模です。

生活を豊かにし、政権批判は許さず

 この間、世界では1989年からの東欧革命共産主義独裁政権が次々に倒れ、1991年にはソビエト連邦(ソ連)が崩壊しました。この過程で民族自決も進み、多くの国が分裂。東西冷戦は、米国を中心とする西側諸国の「勝利」で終わりました。このため、情報がすぐに広まる現代社会では、専制主義の独裁国家でも国民の不満が高まれば、いずれ民主化されるものだと考えられるようになりました。

 ところが、中国は同じ道をたどりませんでした。1989年、民主化を求めて天安門広場に集まった学生らを軍が弾圧して多くの死者が出た天安門事件が起きてから、情報統制を強めて民主化の動きを徹底的に抑え込むようになったからです。多民族国家・中国で民主化や民族自決の動きが広まったら、国がバラバラになりかねません。そこで経済面では世界に市場を開放することで成長軌道に乗せ、国民の生活を良くする一方、言論の自由や共産党に対する批判は認めず、政治的には徹底的に抑え込むというやり方をとったわけです。2008年のチベット騒乱、2009年の新疆ウイグル自治区でのウルムチ騒乱、2019年の香港での大規模デモをきっかけにした民主化運動は完全に鎮圧されました。香港では2020年に国家安全維持法(国安法)ができ、2021年6月に民主派の新聞「リンゴ日報」が廃刊に追い込まれたのは記憶に新しいところ。「自由な香港」は終わりました。

ソ連と中国の違い

 東西冷戦時代、ソ連を中心とする東側諸国は世界に市場を開放しない統制経済だったうえ、欧米・日本の西側諸国の経済力とは格段の差がありました。しかし、今の中国は世界2位の経済大国。世界最大の人口を抱える消費大国で、「世界の工場」と呼ばれる生産大国でもあります。日本や欧州を含めて中国経済に依存する国がたくさんあります。中国をこれ以上肥大化させたくない米国は、日本や西欧、オーストラリア、インドなどによる中国包囲網を築こうとしています。中国の人権侵害には経済制裁も課しています。それでも、中国の世界経済における存在感は大きく、もはや切り離すことなどできないのが現実です。ソ連は核兵器をはじめとする軍事力で米国に対峙していましたが、中国は軍事力、経済力に加え、先進的な技術力でも米国を追う存在です。

なお残る貧困と格差が課題

 中国の国民は、自由にものが言えない社会に不満はないのでしょうか。習近平総書記は共産党100年の式典で、目標としてきた「小康社会(ややゆとりのある社会)」を全面的に実現したと宣言しました。国民の多くは、年々生活が豊かになっているのだから、ある程度の不自由は受け入れているように見えます。「中華思想」とは中国が世界の中心という考え方ですから、米国と並び立つ大国になった中国の存在感にナショナリズムを刺激され、満足感を感じている人も多いと思います。新型コロナウイルスの感染症が最初に広がったのは中国でしたが、強権的な都市封鎖などで抑え込みに成功しました。世界でもっとも多くの感染者と死者を出したのは、民主主義体制の代表である米国です。コロナ封じ込めで、共産党一党体制に自信を深めていることも間違いありません。

 中国には課題も山積しています。経済成長は少子高齢化などを背景に鈍化が避けられず、都市部の富裕層が増える一方、農村住民と格差は大きく広がっています。中国の振る舞いや米中対立は、私たちの生活、そしてみなさんの就活にも大きな影響を及ぼします。日々の中国関連ニュースが大事ですよ。

(写真は、香港紙「リンゴ日報」の最後の紙面になった6月24日付の1面。「香港人、雨中の悲しい別れ」という見出しを掲げた)

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