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2021年04月14日

社会

「世界一危険」な普天間飛行場…合意25年、なぜ返還されない?【時事まとめ】

返還は早くて2030年代半ば

 沖縄県にある米軍の普天間(ふてんま)飛行場の全面返還を日米両政府が合意してから、4月12日で25年が過ぎました。「5~7年以内」に返還する約束でしたが、住宅地の真ん中にあって「世界一危険」ともいわれる米軍基地は四半世紀たっても戻ってきません。沖縄県内に代わりの基地をつくることが条件とされ、辺野古(へのこ)沖に移設することになったものの、地元の反対がとても強いうえ、地盤が軟弱であることがわかり工費は巨額に膨らみ工事は難航。返還は早くても2030年代半ばにずれ込む見通しです。米中の対立激化で沖縄の基地が軍事的により重要になっているともいわれる中、今日も普天間近くの住宅や小学校、大学のすぐ上を米軍機が飛び続けています。どうしてこんな泥沼のような事態に陥ってしまったのでしょう。いざというときに米軍が日本を守る一方、日本は米国に基地を提供すると定めた日米安全保障条約に基づく話ですから、すべての国民が「自分ごと」として考えなければならない問題です。「基本のき」を整理します。(編集長・木之本敬介)

(写真は、市街地に囲まれた米軍普天間飛行場=2020年10月、沖縄市宜野湾市、朝日新聞社機から)

合意~混迷~強行

 経緯を振り返ります。1995年、沖縄で米兵による少女暴行事件が起き、沖縄の人々は米軍基地の整理縮小を求める県民大会などで怒りを爆発させました。危機感を抱いた日米両政府は1996年4月12日、宜野湾市にある普天間飛行場を「5~7年以内」に返還することで合意。返還には「県内移設」という条件がつき、2006年に名護市の辺野古に基地をつくる今の案に決まりました。美しい海を埋め立てる案には反対が強く、2009年、民主党の鳩山政権が「県外移設」を模索しますがうまくいかずに断念。翻弄(ほんろう)された県民は政府への不信感を高め「県内反対」論が強まります。しかし自民・公明連立の安倍政権はこれを押し切って2017年に辺野古での本格工事を始めました。その後も沖縄県知事選挙や県民投票で繰り返し「辺野古ノー」の民意が示される中、工事は断続的に続いてきました。さらに、埋め立て海域に軟弱な地盤が見つかり、工期は延長。総工費はそれまでの想定の2.7倍の最大約9300億円に膨らんでいます。

首相11人、知事は5人目

 この25年間に普天間移設問題に関わった首相は11人、沖縄県知事は今の玉城デニー氏で5人目です。政府は「危険性を除くには1日も早い返還が必要で、沖縄の負担軽減にもつながる」とし、辺野古に移れば飛行経路が海上になるため安全性が向上し、騒音も大幅に軽減されると主張。日米両政府は辺野古移設を「唯一の解決策」としています。かつては沖縄との対話に心を砕いた首相もいましたが、第2次安倍政権以降の8年間は「沖縄の心に寄りそう」と言いながら、民意を無視して移設を強行する姿勢を崩していません。

 これに対し玉城知事は、辺野古埋め立て反対が7割を占めた2019年の県民投票も踏まえ、辺野古移設に代わる具体的な協議を政府に求めています。軟弱地盤発覚で政府が出した設計変更申請を県が承認しなければ工事はストップします。その先は国との裁判闘争となる可能性が高く、解決の糸口は見えません。

米中対立の最前線に

 25年の間に日本や沖縄周辺の軍事バランスは様変わりしました。中国は軍事力の増強を続け、尖閣諸島など東シナ海への海洋進出、高性能な射程の長いミサイルの開発・配備を進めてきました。そんな中で普天間飛行場の米軍海兵隊ヘリ部隊を国外や県外に移設させると、海兵隊の機動性を損ない、抑止力の低下につながりかねないというのが日本政府の考えです。

 バイデン米政権は中国との「競争」を掲げ、米中関係は緊張感を増しています。米軍幹部は最近、中国の台湾侵攻について「6年以内に脅威が顕在化する可能性がある」と話しました。沖縄の米軍基地の軍事的な重要性は高まっています。もし台湾海峡で米中の武力紛争が起きれば、沖縄が最前線になりかねないことを意味します。

(写真は、輸送機オスプレイがずらりと並ぶ米軍普天間飛行場。すぐ近くに住宅や学校がある=2019年4月、沖縄県宜野湾市)

自分の大学に米軍機が墜落したら…

 普天間飛行場周辺では2004年、隣接する沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落。2017年には普天間所属のヘリが沖縄県東村で炎上し、2カ月後には同じ型のヘリから重さ8キロの窓が小学校の校庭に落ちるなど、周辺で暮らす人々は常に危険や騒音にさらされています。日米両政府は普天間返還に先立つ負担軽減策として、夜間早朝の騒音規制や訓練の本土移転などを打ち出してきましたが、県外などからの軍用機の離着陸は近年むしろ増えているデータもあります。玉城知事は4月9日の記者会見で「負担軽減と逆行している」と指摘しました。

 戦後間もない1950年代前半、日本国内の米軍基地の面積の比率は「本土9、沖縄1」でしたが、日本の主権回復で本土の米軍基地は次々返還され、いまや国土面積の0.6%に過ぎない沖縄に70%が集中しています。玉城氏は基地負担の面積について「当面50%以下を目指す」と表明しましたが、その道筋は見えません。

 私たちにできることは何でしょうか。まずは歴史と現状を知ること。本土の学生のみなさんは、自分の大学のキャンパス上空を米軍機が飛び交い、夜間や早朝に自宅に爆音が響く様を想像し、身近な問題として考えてみてください。

●日米安保条約については、今さら聞けない「日米安保条約」…これだけ押さえよう【時事まとめ】も読んでください

(写真は、米軍ヘリ墜落で焼け焦げたアカギが残された沖縄国際大学構内で基地閉鎖を求める集いが開かれた=2020年8月13日、沖縄県宜野湾市)

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