話題のニュースを総ざらい!面接で聞かれる!就活生のための時事まとめ

2020年06月17日

社会

LGBTに優しい会社は…みんな働きやすい!【時事まとめ】

世界から取り残される日本

 同性愛者や体と心の性が一致しないトランスジェンダーなどを指すLGBT(性的少数者)の人たちへの差別をなくす取り組みでは、日本は世界から取り残されています。先進国では同性婚を認めるのが当たり前の時代になりましたが、日本では同性婚はおろか、結婚に準じるパートナーシップ制度を認める法律もありません。一方で、自治体レベルではパートナーシップ制度を公的に認めるところが増え、LGBTの社員が働きやすいように取り組む企業も年々多くなっています。LGBTが働きやすい会社は、そうでない人も働きやすいうえに、成長性も高いといわれます。なぜでしょうか。LGBTを取り巻く状況を整理します。(編集長・木之本敬介)

(写真は、「東京レインボープライド」パレード=2019年4月28日、東京・渋谷)

LGBT「基本のき」

 まず、LGBTについておさらいします。性的少数者のLesbian(レズビアン、女性を好きになる女性)▽Gay(ゲイ、男性を好きになる男性)▽Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)▽Transgender(トランスジェンダー、心と体の性が一致しない人)、の総称です。最近では、性自認や社会的な性、性的指向を確立していないQuestioning(クエスチョニング)、または性的少数者全体を包括する言葉Queer(クィア)を加えて、「LGBTQ」「LGBTQ+」「LGBTs」などと表すこともあります。

 博報堂DYグループのLGBT総合研究所が2019年に20~60代の約42万人を対象にした全国ネット調査では、LGBT・性的少数者は約10%でした。みなさんの中にもいるでしょうし、周りにもたくさんいるはずです。ただ、差別や偏見が根強いため、カミングアウトしていない人がたくさんいるといわれています。

(グラフは、朝日新聞社と東京大学の谷口将紀研究室が2020年3~4月に実施した共同調査。自民党支持層でも夫婦別姓や同性婚に賛成する意見が広がっている)

アジアでは台湾も

 米国の連邦最高裁が6月15日、性自認や性的指向を理由とした解雇は公民権法に違反し、認められないという初めての判断を示しました。2015年に同性婚を全米で認めたことなどに続くLGBTの人権に関する重要な判決で、数百万人の権利が擁護されることになります。判決では、保守派の判事2人が支持に回り驚きが広がりました。

 NPO法人「EMA日本」によると、世界では28カ国・地域で同性婚が認められています。同性愛をタブー視するローマ・カトリック教会の影響が強いイタリアでも、同性カップルに結婚に準じた権利を認める法律ができ、主要7カ国(G7)で同性カップルに法的保障がないのはいまや日本だけです。2019年5月には、アジアで初めて台湾で同性婚を認める法律が制定されました。

(写真は、台北市内の区役所で結婚の手続きをした後、祝福を受ける同性カップル=2019年5月24日、台北)

「憲法違反」と集団提訴

 一方、同性カップルなどの関係を公的に認めるパートナーシップ制度を導入する自治体は増えていて、NPO法人「虹色ダイバーシティ」の調べでは、4月20日現在、全国47の自治体で946組の同性パートナーが認知されています。自治体は申請したカップルに受領証や証明書を交付し、公的な後押しをします。法的拘束力はありませんが、公営住宅への入居申し込み、公立病院での病状説明や手術の同意など、夫婦や血縁者に限られてきたことができるようになります。自治体で同性カップルと認められると、航空会社のマイレージ共有や携帯電話の家族割引といったサービスの対象に同性カップルを含める企業も出てきました。

 しかし、同性婚が法制化されていないため、同性のパートナーは法定相続人になれない、配偶者控除を受けられないなど様々な保障を受けられません。2019年には計13組の同性カップルが、婚姻を認めないのは憲法が保障する「婚姻の自由」(24条)と「法の下の平等」(14条)に違反するとして、この状態を放置している国に賠償を求める訴訟を起こし、いま争われています。国側は「婚姻は男女間が前提」と反論しています。

企業の取り組みは

 企業はどうでしょう。積水ハウスは2019年9月、事実婚の相手や同性パートナーを「配偶者」として扱い、結婚休暇や家族手当などの福利厚生を異性婚の人たちと同等にする制度をつくると発表しました。新制度は、パートナーの出産や、育児や介護の際にも休暇が取れます。また、単身赴任などの際にもらえる別居手当や、慶弔見舞金の支給対象にします。会社で募集する生命保険の受取人にパートナーを指定できるようにもなります。広報担当者は「家族のあり方が多様化している。性的指向や性自認にかかわらず、誰もが自分らしく生き、安心して働ける組織の実現をめざす」と話しています。同様の制度は、日本IBMグーグルゴールドマン・サックスなど外資系企業が先行。近年はパナソニックNTTファーストリテイリング、自治体では千葉市も取り入れるなど動きが広がっています。

 日本IBMが国際NGOヒューマン・ライツ・ウォッチなどとつくった任意団体「ワーク・ウィズ・プライド」は、企業などのLGBTへの取り組みの評価指標を策定し、2016年から毎年表彰しています。指標は、①行動、宣言 ②当事者コミュニティー啓発活動 ④人事制度・プログラム ⑤社会貢献・渉外活動――の5項目。応募は年々増えて、2019年は大手を中心とする194社・団体になりました。大半が最高評価の「ゴールド」に選ばれましたが、とくに先進的で顕著な取り組みを行なった以下の4社が「ベストプラクティス」に選定されました。
JR東日本 当事者社員を対象とした「LGBTネットワーク交流会」を実施
TOTO 性的マイノリティの公共トイレ利用に関する調査結果を公表
日本航空(JAL) 国内初、LGBT ALLY チャーター便を運航
LIXIL(リクシル) オフィストイレのオールジェンダー利用に関する調査結果を公表

こちらの「PRIDE指標2019レポート」には4社の取り組みが詳しく紹介されています。

 各社が積極的に取り組む背景にはグローバル化もあります。いまや世界の企業が優秀な人材獲得競争を繰り広げて、多様な人材こそが成長の源泉となりました。かつて任天堂のゲームで、同性キャラクターが結婚できない設定が欧米で批判を浴び、新しいゲームでは同性婚ができるようにした例もあります。日本の企業も欧米の基準に合わせないとビジネスに支障が出るようになっているわけです。企業のLGBTへの取り組みは、社内の多様性や寛容度を示す指標です。志望企業のLGBT対応に注目するのも大事な企業研究です。

(写真は、婚姻の自由を求めて提訴し記者会見する同性カップルら原告団=2019年2月14日、東京都千代田区)


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