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2018年03月27日

経済

「TPP11」年内発効? 得する業界はどこだ!?

アメリカ抜き11カ国で署名

 「アジア太平洋に一つの経済圏を作ろう」と交渉が続いてきたTPP(環太平洋経済連携協定)に参加する11カ国が3月8日、南米チリで新協定「TPP11(ティーピーピーイレブン)」に署名しました。参加国は日本のほか、カナダ、メキシコ、ペルー、チリ、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、マレーシア、ベトナム、ブルネイ。過半数の6カ国が批准すれば今年中にも発効します。「世界一の経済大国」アメリカがトランプ大統領になって離脱したため、TPP11が国内総生産(GDP)で世界の経済に占める割合は1割強ですが、自動車など輸出産業やコンビニの海外進出など多くの業界にメリットがあります。志望業界への影響を押さえておきましょう。
(写真は、南米チリの首都サンティアゴでTPP11の署名を終え、並んで手を組む各国の閣僚たち=2018年3月8日南米撮影)

そもそもTPPって?

 TPPは「Trans-Pacific Partnership」の略。参加国どうしが輸入品にかけている関税を減らすかゼロにしたり、国ごとに違う貿易ルールを統一したりして、ヒト・モノ・カネの行き来を自由にし、域内の経済を活発にするのが目的です。2010年以降アメリカのオバマ政権主導で交渉が進み、2013年に日本が加わって計12カ国に。GDP世界経済の38%を占める「巨大経済圏誕生か」と注目されてきました。

 ちなみに、GDP世界2位の中国はTPPに入っていません。習近平政権が掲げる中国主導の「シルクロード経済圏構想(一帯一路)」に歯止めをかける意味合いもあるのです。

(図版は、TPPをめぐる今までの主な動き)

トランプ大統領が離脱

 TPPはいったんアメリカを含む12カ国で合意し、2016年には署名までしました。ところが、2017年1月に就任したトランプ大統領は「TPPはひどい協定。アメリカには不利益」と、選挙公約で宣言していたとおり離脱してしまいました。「アメリカファースト(自国第一主義)」を掲げるトランプ大統領は、TPPのような多国間協定よりも、自国に有利に交渉できる二国間協定を優先しているからです。
(写真は、アメリカのトランプ大統領)

自動車、コンビニ、食品業界に恩恵

 そこで、残った11カ国はもう一度合意をやり直し、新協定の署名にこぎつけました。アメリカが抜けて世界経済に占めるGDPの割合は13%に減ってしまいましたが、それでも日本の経済へのメリットは大きいため日本政府が交渉を主導しました。

 日本企業のメリットを整理すると――カナダやメキシコ向けの自動車部品の輸出関税が下がり、現地工場に部品を送るメーカーには有利になります。ベトナムなど東南アジアでは出店規制が緩和されるため、コンビニ業界の海外展開にも追い風です。一方、農産品や繊維製品などの輸入関税は段階的に撤廃されるため、国内での価格は下がります。輸入牛肉の関税は38.5%から少しずつ減らして将来は9%になります。国内の農業には痛手ですが、食品メーカーや外食産業、流通業界は日本の消費者にオーストラリアの安い農産物を提供できるようになります。食品関連の業界を志望する人は知っておきましょう。
 TPPはモノの貿易に限らず、投資や知的財産、環境、労働など幅広いルールを定めているので、他の業界志望の人も影響を考えてみてください。
(図版は、TPPをめぐる各国の思惑)

アメリカが波乱要因

 実は、TPPはまだ決着ではありません。TPP11に合意したころ、トランプ大統領が「以前よりずっといい協定が得られるなら私はTPPをやる」と復帰を臭わせ始めたからです。アメリカが復帰するとなると、また再交渉が必要で長い時間がかかります。せっかくここまで各国が妥協を重ねて「ガラス細工」のように作りあげてきたTPPが壊れてしまいかねないため、11カ国は米国抜きでスタートさせることにしました。ただ、各国とも巨大市場のアメリカが加わるメリットは大きいため、11カ国で結束しながら復帰を促していくことになるでしょう。

 ここへ来てトランプ大統領は、鉄鋼やアルミ製品の輸入に高い関税をかけることを正式に決めました。「アメリカの安全保障が脅かされている」というのが理由ですが、自由貿易を促進するTPPとは相いれない身勝手な「自国優先」の姿勢です。TPPは今後もアメリカに振り回される波乱の道をたどることになりそうです。
(図版は、アメリカの鉄鋼・アルミ関税をめぐる動き)