人事のホンネ

メルカリ

 人気企業の採用担当者への編集長インタビュー「人事のホンネ」2024シーズン第1弾、メルカリの後編です。新卒から3年で多くが組織を引っ張るレベルになるというメルカリ。新卒社員だからと特別扱いせず、結果を出す社員はどんどん引き上げる社風が社員の成長を後押ししています。求める人材は「エンジンの大きな人」。どんな経験でもいいからたくさん積んで、何かにのめりこむことを大切にしてほしいそうです。(編集長・福井洋平)

(前編はこちらから)


■なぜ新卒を採用?
 ──新卒と既卒を分けずにフラットに採用されているのが特徴だと思います。その中で新卒を取る理由を、改めて聞かせてください。
 若い人、優秀なタレントプールを早い段階で獲得しておくのは会社としてすごく大事です。特に今、全社的には女性の採用も含めていろんなダイバーシティ採用が難しい。ただ、新卒だとある程度ボリューム感を持って優秀な人、中途市場だとなかなか出てこない人を獲得できるのがメリットかなと思います。実際に入社した新卒がめちゃくちゃ活躍していて、早い段階で中核人材になっています。たとえばメルコインのCEOは、新卒でまだ6年目です。執行役員レベル、マネージャー、マネージャー以外の専門職も出ていますし、業界で有名になっているケースもあります。新卒の多くが組織を引っ張るレベルになっている。やっぱり下からどんどん採用して、会社を引っ張れる人たちを増やしていきたいという思いはあります。

 ──通常、新卒は育成コストがかかる側面があると思うんですが、なぜそんなに優秀な人が入ってくるんでしょうか?
 最初の入口が高いと思います。本当にかなり絞って、世界中からトップタレントを集めています。それから新卒だからと特別扱いせず、成果を出す人は機会を使って上に上がっていく環境もあると思います。

 ──既卒採用も新卒採用のフローと一緒ですか。
 インターンはありませんが、ほかは一緒です。技術テストもほとんど一緒のレベルで、ポジションによっては中途の方が難易度が高いこともあります。中途のプロセスに新卒が合わせているといった方が近いです。

 ──新卒採用をスタートしてまだ7年で、他にもいろんな競合他社がたくさんある中で、優秀な人を引きつけられた要因は何だったのでしょう。
 2018年に70人ぐらい採用したときは、マーケティングがすごくうまくいきました。当時、「Bold Internship」という、学生をアメリカ50州に派遣するインターンがありました。エンジニア、プロダクトマネージャーの職種で50人ずつ集めて、1州に2人ずつ、合計100人を派遣し、そこでインタビューした結果をもとにメルカリのプロダクトの改善案を提案するという内容です。そこまでできる企業はなかなかありませんし、そういう面白いインターンに飛び込んでくるアグレッシブな人を集められたので、これはプロモーションがうまくいった事例だと思います。

日本にいながらグローバルな会社

 ――当時、インドからもたくさん採用をされました。
 インドのIIT大学から数十名採用し、それが各種メディアにも取り上げられ、話題になりました。他の会社があんまりやらないことをぱっとやって、世の中に認知形成する。そんなマーケティングとプロモーションがうまくいき、今もその貯金があるという感じです。
 新型コロナウイルスの影響などもあり、この3、4年はインドのIITのような大学から現地採用はしていませんでした。今年はまた新たにインドだけではなく、ASEAN諸国、シンガポール、インドネシアのジャカルタ、台湾などでプロモーションをして、採用する予定です。

 ──メルカリというサービスがない国で、どうやってメルカリという存在をアピールするんですか。
 SNSを使ったり、大学や人材系の会社と連携したりします。メルカリはインド出身のエンジニアが比較的多いんですね。インドはSNSで情報をつかみにいくカルチャーがすごく強い国です。誰であっても、アグレッシブに仕事の機会を探す人たちが多いので、そうした人が受けに来ています。

 ──インドの人々はメルカリをどういう会社と見ているのでしょうか。
 日本のユニコーン企業という認識だと思います。結構認知度はあり、インドで募集すると1~2日で3000件ぐらいの応募があります。

 ──外国で求人するとライバルはAmazon、Googleだと思うんですけど、そこと比べてのアピールポイントってどういうとこなんでしょうか?
 日本発のグローバルテックを目指しているフェーズであり、日本で働く経験ができるのはアピールポイントかなと。。

 ──かなりコストをかけて新卒を採りに行っている。ベンチャーだと珍しいんじゃないでしょうか。
 大変珍しいと思いますね。優秀な若い人を採りたい、せっかくなら普通のことをやるなという経営陣の考えがあると思います。Go Boldすぎるぐらいがちょうどいい、失敗してもいいからやろう、と。

 ──Eコマースという世界は学生から側から見てもいろんな会社の選択肢があると思います。メルカリはどういう会社だと説明をしていますか。
 日本にいながらグローバルな会社というのはユニークで、外せないポイントです。エンジニアリング組織の約半分の人が外国籍で、社内で日本語と英語どっちも使えます。グローバルに攻めている会社はあるけれど、エンジニアや社内の人が外国籍という会社は多分それほどないと思います。

 ──業態としてはドメスティックで成立する会社だけれども、あえてグローバルな会社にしてきた。
 そうですね。グローバルな会社にすると決めたときから、それがちゃんと成り立つ組織作りを全社的にやってきたと思います。ミッションとしても世界展開を予定し、今もそこに合わせた組織作りをしています。
 スピード感も早いですね。インパクトのあることをやろうとしている会社だから、マーケットの先進事例になることも多いです。例えば採用だと採用事例や海外の人を入れる組織作りなどが参照されるケースが多いです。
 福利厚生の制度設計も新しいことをいっぱいやっていますね。休暇制度もそうですし、上限200万円までの補助が出る卵子凍結の制度もあります。今はいろいろな企業で制度化されていますが、当時は先進的な事例だったと思います。

 ──スピード感があると。
 そうですね。エンジニアもどんどん新しい技術言語を採用しています。直近ではLLMが話題ですが、それも専門の組織を作ったり、生成AI系のチームもすぐにできて、社内版のChatGPTを作って、それをメルカリのサービスにはめ込んだりしています。技術的なチャレンジもスピード感を持ってやっています。