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(前編はこちら)
■ES
──2023年卒採用のエントリー数は?
WEBエントリーが5000人くらいで、ES提出は約1500人です。
──選考スケジュールの中に、技術系では「事業所見学」、事務系には「リクルーター面談」がありますね。
事業所見学は選考の途中で実施します。実際に働くことになる工場や研究所を見て日清紡で働くイメージを持ってもらい、そのうえで日清紡で働きたいと思ってくれた人を最終面接に案内しています。入社後のミスマッチを起こさないためです。
事務系のリクルーター面談にも選考要素はまったくなく、ミスマッチ軽減と学生に納得感を上げてもらうのが目的です。1時間くらいの1対1の面談で、何でも自由に聞いてもらっています。もちろん、採用担当は面談には入りません。リクルーターの社員には良い面も悪い面も含めて正直に話すよう徹底しています。2023年卒採用ではすべてWEBで行いました。
──ESの項目ですが、志望動機、自己PRのほかに「挑戦や創造をした経験」とあります。
いわゆる「ガクチカ」(学生時代に力を入れたこと)ですが、「挑戦や創造」は弊社の企業理念から取っています。2019年に掲げた「挑戦と変革。地球と人びとの未来を創る」という理念で、会社の考え方や想いの源なので、これを体現できる人やマッチする人に来てほしいと考えて入れました。
──コロナ禍でのガクチカに悩む学生が多かったようです。
ガクチカが、ボランティアとかアルバイトとか学校の勉強以外の課外活動じゃないといけないとは思っていません。「大学の授業でこれに頑張って取り組みました」とか、技術系なら「研究室でこういう課題にぶつかって、こんな方法を試してみたらうまくいきました」でいいんです。
中には「筋トレ頑張りました」という人もいましたよ。コロナ禍で筋トレやマラソンについて書くESが増えました。どれだけ頑張ったかのエピソード次第で自己PRになると思います。「盛り盛り」にしなくても、そういう日常の生活の中のことで構いません。
──技術系は研究内容が大事ですね。
技術系で院卒以上の人はESとは別に研究概要1枚を出してもらいます。書式は自由です。
■面接
──面接はどんな形式ですか。
1次は、各事業の担当者と人事担当による2対1の個人面接です。日清紡の面接は学生一人ひとりに会う個人面接が基本です。1回の面接時間は30分から45分程度です。コミュニケーション力があるか、簡潔に話せるか、ポジティブに考える人か。人柄も見ます。
技術系だと研究をどれだけ頑張ってきたか、研究内容に弊社の事業とマッチしている部分があるかも聞きます。事業分野が決まった段階での面接なので、ブレーキ事業ならその担当者が面接して研究概要についていろいろ質問します。人事からは、志望理由の深掘りと今まで頑張ってきたこと、日清紡に合う雰囲気があるかを見ます。
──どういう人が合うのでしょう。
真面目にコツコツやっていく社員が多い会社です。チームでの業務が多いので、チームで協力して仕事をしたい人やコツコツタイプの人は合うと思います。
──事務系の面接のポイントは?
まずはコミュニケーション力です。技術系、事務系を問わず、チームでの仕事がメインとなります。端的に分かりやすく話せているか、質問への回答が質問の意図からそれていないか、基本的なところを見ています。そのほか、事務系もブレーキ事業ならブレーキ製品に携わると確定しているので、どれだけその職種、事業製品に興味があるか、といった志望度も見ています。自動車が好きじゃないのにブレーキに関わるのは苦痛だと思いますから。経理の志望なら数字に苦手意識がないか。数字と向き合う仕事なので、緻密で論理的に考えられるか。経理を通して何を身に付けたいかも聞きます。
──グローバル企業ですから語学力は重視しますか。
採用時点ではとくに見ていません。日清紡では「まずは行って、やってこい」というところがあるので。新入社員研修では海外赴任経験のある先輩社員との座談会も行っているんですが、そこで海外赴任者は「語学力よりもコミュニケーションを積極的に取りにいくことが大事」とも言っていました。
──面接は何回ですか。
事務・技術とも3回です。2次面接は人事部長との1対1です。1次通過者全員に会うので大変です。
──人事部長だけの面接は珍しいですね。
2次面接は、学生がどんな人なのか、何をやりたいのか、といった見極めはもちろんしますが、加えて最終面接に向けてさらに志望度を上げてほしい、という思いも持って行っています。私が受験したときもそうでした。大学のある京都の話から始まり、会話の中に「なんで人事をやりたいの」「ゼミではどんなことをしてるの」と、ちょこちょこ面接の要素がはさまってくる感じでした。会話を通しての面接は緊張をほぐしてくれたので、自分の言葉で伝えたいことを伝えられたな、と感じます。内定者にも「じっくり話を聞いてくれたから」と決めてくれる人が多いですね。
──最終面接は?
人事担当の執行役員1人と各事業会社の社長や執行役員による2対1の面接です。ブレーキ事業だとブレーキ事業の社長が出ます。ここで再度、研究概要の深掘りをします。
面接担当者によりますが、最終では突拍子もない質問されることもあります。たとえば、経理志望なら「3桁×3桁の計算を暗算でやってみましょう」とか。私のときは「1日が25時間になったらどうしますか」と聞かれ、「何て答えたら正解なんだろう」と戸惑いながら「食事に時間を費やします」と答えました。食べることが好きなので(笑)。学生が準備してないことを聞いて、人柄や考え方、本質を見ているのかなと思います。