人事のホンネ

九州電力株式会社

2023シーズン⑦ 九州電力《後編》
電気事業のノウハウでサーモン養殖も 当たり前の暮らし守る仕事【人事のホンネ】

人材活性化本部 人事グループ 安藤里奈(あんどう・りな)さん

2021年11月24日

 人気企業の採用担当者への編集長インタビュー「人事のホンネ」2023シーズン第7弾、九州電力の後編です。豪雨災害が増える中、人々の当たり前の暮らしを守る責任はより重くなっています。一方で、電気事業のノウハウを生かして、なんとサーモンの養殖事業にも乗り出す「攻め」の会社でもあります。(編集長・木之本敬介)
(取材はオンラインで行いました)
前編はこちら

■インターンシップ
 ──インターンシップについて教えてください。
 2023年卒向けの夏のインターンは2日間、すべてオンラインで行いました。「共通コース」と「技術限定コース」の2コースです。1日目の内容は両コース共通で、電源構成やエネルギーミックスに関する議論を通じて、エネルギーの特性、コストを念頭に置き、未来の状況を予測しながら、エネルギー業界をワークショップ形式で体験するプログラムです。
 「共通コース」の2日目は、九州電力の社員の立場で新規事業を立案するグループワークを行いました。多くの社員と交流してもらいたかったので、「インキュベーションラボ」という新規事業を企画・立案している部署の社員も呼んで、念入りにフィードバックをしました。「技術限定コース」の2日目は、希望部門に分かれて、部門が用意したコンテンツを受講してもらいました。部門紹介、座談会、グループワークなどいろいろ盛り込みました。社員に直接会えない分、座談会や新規事業担当など多くの社員との交流を大切にしました。
 参加者は各回25人くらいで4日程行ったので、計100人ほどですね。秋のインターンは今行っていて、冬にも実施する予定です。

 ──学生の評判はどうですか。
 エネルギーミックスのワークショップは、学生の口コミサイトで「本当に行ってよかった」インターンシップの「総合評価が高かった部門」で全国5位に入りました。実際の予算規模並みの設定で本当の仕事に近い体験してもらったのですが、ゲーム感覚で楽しみながら九州電力やエネルギー業界のことを知ってもらえたことが評価された要因ではないかと思います。
 インターンを始めてからまだ3年目で歴史は浅いのですが、学生の立場に立って楽しみながら九州電力を知ってほしいと思い、採用担当チームで意見を出し合ってつくりました。

■働き方
 ──コロナで働き方が変わっていますが、社員の出社率はどのくらいですか。
 緊急事態宣言の発出中は、オフィスワーク職場において出勤者の7割削減を目指してテレワークを実施しました。感染拡大防止のためではありますが、以前の通勤時間をプライベートや育児に充てるなど、ワークライフバランスの充実につながりました。新型コロナウイルスが終息しても継続する予定です。
発電所などで現場に出向く仕事がある日にテレワークをするのは難しい面がありますが、デスクワークのみを予定している日はテレワークで対応することもできます。

 ──電力の安定供給という重責があり、3交代勤務や宿直もあるそうですね。
 事務系も技術系も、ほぼ全員が一度は営業所や支店、発電所などの現場で勤務します。電気を安定供給するためにどれだけの人員が必要で、どうやってお客さまのもとに電気が届いているかを実感できるので、非常に貴重な経験になります。キャリアステップを踏んでいくうえで大きな学びになると説明しています。

常に「お客さまのために」「誰かのために」

■社風
 ──ズバリ、どんな会社ですか。
 非常に温かい人が多い会社です。電力の安定供給を通じて、常に「お客さまのために」「誰かのために」と思って仕事をしているので、それが温かさにつながっているのではないでしょうか。私も入社する前はとても堅い雰囲気なのかな、上司に意見が通りにくいのかなと思っていました。でも入社してみたら、インターンや採用イベントの内容を完全に任せてもらえていますし、論理的にしっかり説明できれば意見を受け入れてもらえる会社です。風通しがよく、一人ひとりの裁量も大きいですね。

 ──電力会社はこれからどうなっていくのでしょう?
 いつの時代でも事業を進めていくには、攻めの姿勢と守りの姿勢が必要です。今後、幅広い領域でビジネスを進めていく変革がないと、電力会社は電気事業の中で生き残れません。ただ、やみくもに海外事業や都市開発事業に挑戦しているわけではなく、電気事業のノウハウを生かしてビジネスをしていると学生には伝えています。たとえば最近では、豊前火力発電所内の遊休地を活用した九州最大規模のサーモン陸上養殖場の事業化を決定しました。

 ──サーモンの養殖ですか!? 九州電力のどんなノウハウが生かせるのですか。
 火力発電所は海水の取水・放水設備を備えていて、安定して地下水を確保できますし、IoT(モノのインターネット)の技術を用いた水温管理などさまざまな強みを生かして新たな事業領域に挑戦しました。

 ──電力やガスの会社は全国に複数ありますが、九州電力ならではの特徴は?
 日本最大の地熱発電所である大分県の八丁原発電所を有するなど、九電グループが国内の地熱発電の4割以上を占めています。インドネシアでは世界最大級のサルーラ地熱発電所プロジェクトに参画しています。再生可能エネルギーはグループ会社の九電みらいエナジーとともに、エネルギーミックスの一つとして域外展開も積極的に進めています。再生可能エネルギーの導入拡大や原子力発電所の安全・安定運転などの努力によって、当社はCO₂を排出しないゼロエミッション電源で国内トップランナーとなることができました(2019年度)。
 グループ各社が強みを生かして営業しているのも特徴です。たとえば、QTnet(キューティーネット)という通信事業会社と連携し、九州電力の電気をご契約のお客さまが、スマートフォン「QTモバイル」や、インターネット「BBIQ(ビビック)」を契約された際は、スマホやネットの料金をセットで割引します。このように、グループで力を合わせて営業活動ができるので可能性も広がります。

■やりがい、競合
 ──九州電力の仕事のやりがいと厳しさはどんなところにありますか。
 一番のやりがいは、九州の人々の生活を根本から支えていることです。地震や災害が起きたときのお客さま対応は営業拠点の仕事です。停電を復旧させて電気がついたとき、感謝の気持ちを伝えていただいたことが数え切れないほどあります。直接、人の役に立っているんだなと実感しました。
 一方で、停電が続いたりしてお客さまから厳しい言葉をいただくこともあります。常にお客さまの立場を考えて一生懸命対応しなければいけない仕事です。
 また、当社は地域・社会のお客さまに育てられ、ともに歩んできた会社です。その強いつながりがあるからこそ、お客さまと一緒に考えながら、さまざまな分野の事業にチャレンジできます。壁にぶつかることもありますが、事業が九州や世界のお客さまの役に立つ未来を思えば頑張れますし、努力が実を結んだ時の喜びと感動はひとしおです。

 ──採用で競合する業界は?
 内定を辞退した学生には、メーカー、公務員のほか、出身エリアの電力会社に入社した人もいます。九州に拠点がある会社と競合になることも多いですね。