人事のホンネ

JA全農(全国農業協同組合連合会)

人事のホンネ2021シーズン【第6回 JA全農(全国農業協同組合連合会)】(後編)
「チーム力」「現場力」「コミュ力」必要 公務員とも会社員とも違う

総務人事部 人材育成課 課長 小野哲也(おの・てつや)さん、人材育成課 服部拓矢(はっとり・たくや)さん

2019年11月06日

 人気企業の採用担当者インタビュー「人事のホンネ」2021シーズン第6弾、JA全農(全国農業協同組合連合会)の後編です。メインの仕事は、農家の生産した農畜産物の販売(販売事業)と農家への資材の供給(購買事業)。農業分野の商社のような役割ですが、公的な側面もあります。お役所とも民間企業とも異なる独特な団体です。(編集長・木之本敬介)
(前編はこちら

■求める人物像
 ──求める人物像は? 農協関連の団体というと、「堅い」「真面目」など公務員に重なるイメージがあります。
 服部(写真左) 組織上さまざまな人と関わりながら仕事をしていくので、対人能力が必要です。組織や農業の課題を解決する問題解決能力も必要ですね。事業を提案して若手の力を発揮する場面もあるし、責任ある仕事を任される職場なので、「チャレンジ精神」も掲げています。

 ──受けに来る学生は?
 服部 安定志向の学生もいれば、「何でもやります、どこでも働きます!」という学生もいますね。
 小野(写真中) 安定志向の人は、裏を返せば手堅く仕事をするので悪いわけではありませんが、「安定」が全ての優先順位になっているように感じられる人は難しいですね。現実のJA全農に、安定的に仕事を進める人間が多いからこそ、若手にブレークスルーの機会を与えたい、多少のことには目をつぶってもチャレンジ精神のある学生を採用したいと思っています。とくに事業環境が変わる中、自己改革に取り組んでいる今はなおさらそうした企業風土が必要だし、「減点主義」ではなく「加点主義」で採用したいと考えているので、採用担当者には「加点主義でお願いします」と言っています。面接官によっては判断基準や目線が違うこともありますが、そういう場合には、自分の印象で良いので「一緒に仕事をしたいか」「同僚と一緒に働かせて大丈夫か」で考えてと言っています。

 ──農業は、TPP(環太平洋経済連携協定)、日米交渉など世界情勢が大きく影響します。ニュースについて面接で聞きますか。
 小野 「農業で気になることはありますか?」などと「農業」をキーワードに聞くことはあります。ただ、「今日のニュースを見て適当に言っているな」と感じる上滑りの返答もあるので、必要以上に背伸びしなくても大丈夫です。

■社風
 ──JA全農はどんな団体ですか。
 小野 組織内外の関係者と協調しながら、チームで仕事を進める団体です。JAグループの一つなので、組織連絡やチーム力を大切にした仕事の仕方をしています。といっても組織でガチガチに縛るわけではなく、みんなとのコミュニケーションやネットワークを大切にしながら仕事を進めています。一人ひとりのサムライが自由に仕事をしているわけでも、組織力を前面に押し出しているわけでもありません。

 ──JAグループで連携する仕事が多い?
 服部 常に連携しているわけではありません。機能分担がしっかり分かれていて、JA全農は経済事業を担っており、商社やメーカーのような仕事です。農林中金は銀行、共済連は保険、全中は指導と役割が分かれています。常に連携しているのは地域の市町村にあるJA、経済連ですね。

 ──グループ内の最大組織ですよね。
 服部 JA全農は「全国を統括している」と考えている人もいますが、そうではなく、全国規模で経済事業を行っているということになります。統括している、指導しているという立場ではなく、あくまで役割分担です。
 小野 たとえば、トマトを生産して市場に出荷するにしても一農家・一農協では販売先であるスーパーなどに年間を通して安定供給することが難しいかもしれない。そうしたときにJA全農が全国で各産地の出荷時期を調整しながら供給を維持して良い販売条件を得る。そしてそのメリットはJA、農家に還元する。あるいは飼料用のトウモロコシは数万トン単位の大型船で輸入しますが、一農家・一農協ではそれだけのボリュームを消化できない、かといって数十トン単位のコンテナで輸入すると輸送コストが上がる。そうしたときにJA全農が大型船でトウモロコシを輸入して配合飼料を製造し各畜産農家にお手ごろな価格でお届けする、そういった農家・JA単独では実行が難しい、あるいは効率が低い機能を補完するのがJA全農のミッションであると考えています。

農業関連の商社・メーカーより農家と「一緒に働いている」感覚

■やりがいと厳しさ
 ──JA全農の仕事のやりがいと厳しさを教えてください。
 服部 たとえばお米なら、生産者がつくり、JA全農がそれを集めて全国的に発売したり、取引先を見つけたりします。JA全農が取引先を見つけられないとお米が売れない。売れた値段によって生産者に還元できる金額が決まってくるので、自分の仕事が農家の収入に直結します。肥料や農薬だと、「全農価格」が指標価格として見られるし、そうした責任があります。責任とやりがいを同時に感じられます。
 小野 他の農業関係の商社やメーカーと比べると農協・農家と直結した局面を感じることが多く「一緒に働いている」と実感できます。たとえば、先日の台風15号で千葉県内のハウスがたくさん倒れた際には、JA全農からもハウスの復旧などの支援活動に職員が派遣されました。日々の業務でも、とくに県本部では実際に農協・農家に足を運び相談を受けたり意見を頂戴したりする機会も多いことから、「農業をやるなら現場で」と思っている学生にはやりがいが大きいと思います。一方で、生産現場と関わる現場力、コミュニケーションが必要だし、「泥くさい仕事はイヤだ」という学生には厳しいかもしれません。

 ──今回の台風15号の被害の場合、本所の職員が行くのですか、それとも県域ですか。
 小野 基本的には県域の職員が対応していますが、本所や被害の無かった本部からも職員が派遣されました。また、直接的な復旧支援ではありませんが、台風被害により農産物の出荷がストップした場合、生産が回復するまでの間、他県や他地域と連携して取引先への商品供給に穴を開けないようにするなど、業務を通じたサポートも行っています。

 ──民間企業、会社員との違いは?
 小野 株式会社は株主に利益を出すことが最大の正義で、それは当然のことです。これに対し、協同組合は事業を通じて組合員にメリットを還元します。配当ではなく事業そのものが組合員のメリットにならないといけない。組合員が目指すのは自分の生産物が高く売れることであり、生産のための資材が安く買えること。それが組織の切実な目的、理念であり、組織の成り立ちとなっています。
 服部 我々の事業は「農家、農業のため」にあります。農家が作った安心・安全な食べ物を消費者に提供するために、我々が間に入って仕事をします。我々が肥料や飼料を安く仕入れれば農家のコスト削減になり、作物を農家に代わって高く売れば利益を還元できます。
 しかも利益だけを追求するわけではない。たとえば、地方に行くとJAのガソリンスタンドがあります。事業だと採算がとれず撤退する場合が多いのですが、JA全農は採算性が低くとも地域に必要なら事業を続けます。公務員とも一般企業の会社員とも違うのは、そうした点ですね。

 ──海外拠点を増やしているようですが、海外志向の学生は多い?
 小野 はい。JA全農は海外拠点や海外輸出に関係した日本食の店舗などを増やしています。学生たちも輸出をフロンティア、チャレンジングな仕事ととらえて、志望してくる人数はかなりいますね。