人事のホンネ

人事のホンネ

 前回に続き、「人事のホンネ2020シーズン」からインターンシップに関する話題をピックアップします。IT系や外資系の中には「採用直結」を堂々とうたっている会社もありますが、まだ一部です。インターンに参加すると本番の採用選考にどう有利なのでしょうか。受けないと不利? これで「人事のホンネ」はしばらくお休みし、2021シーズンを夏からスタートする予定です。(編集長・木之本敬介)

(写真は、インターンで実際にあった企業買収に即して資料を作る学生たち=2018年2月22日、大阪市中央区の住友商事関西支社)

採用に有利? 本選考とは別?

 就活ルールは、2021年卒採用から政府が全企業に呼びかける形になります。経団連が「採用選考に関する指針」を廃止するためですが、基本的な内容は引き継がれます。インターンについても、「面接解禁前は採用につながるものは禁止」との方針は変わりません。インターンはそもそも就職の準備や適性を見極めるために行われるもので、仕事への理解も深まります。それなのに、なぜこんな禁止規定があるのでしょう。大学1~2年生が参加することもあるインターンを採用に活用してよいことにしたら、就活が際限なく早期化して学業に支障をきたしてしまう――と大学側が反対しているからです。

 ただ、学情の企業アンケート(2019年1月実施)によると、インターンと採用との連携については、「インターン参加者は通常選考で優遇」が37.1%と最多で、「優遇まではしないが、インターン参加者限定の情報提供やセミナー等を実施」も28.2%。「インターンで選考・内定出し」の5.7%を加えると、7割が何らかの形で連携させていることになります。一方、「参加者と通常受験者との区別はない」は29.0%でしたが、そういう会社のインターンには参加する意味がないのでしょうか。

武田薬品工業】インターン参加者は会う機会が多いため、人となりもよくわかりますが、採用選考での特別扱いは一切しません。当社のバリューであるタケダイズム「誠実・公正・正直・不屈」の観点からも、インターンに参加した人だけがパスするのは不公平なので、(本選考では)全員3回の選考ステップを踏んでもらいました。ただインターンの後、採用選考の面接まで期間が開いてしまうので、インターン参加者と1対1で話す機会を設けて接点を増やしました。学生が一番気になっていることを話してもらいました。人によっては「ESはどう書いたらいいですか」「面接の準備は何をしたらいいですか」と具体的なアドバイスを求めてくる人や、「インターンで私をどう思われましたか」と評価やフィードバックを求める人もいましたが、すべて率直に答えました。

朝日新聞社】マスコミでもインターンに参加した人を対象に早期に内々定を出す会社がありますが、朝日新聞社は採用とは切り離しています。インターンからの早期選考は、選考過程が不透明ですし、コンプライアンス的にも問題があると考えています。「それじゃ、インターンに行く意味がない」と思うかもしれませんが、インターンではたくさんの記者の話を聞き、仕事ぶりを知ることができるので、志望理由を明確にすることにもつながります。マスコミだけでなく、複数の業界のインターンを経験することもお薦めしています。「自分はどんな仕事をしたいのか」「どんな仕事人生を送りたいのか」を固めていく過程では、複数の業界を見た方がプラスになると思います。もちろん、インターンに参加して本選考にエントリーしてくれた人は、志望度が高いということなので、ちゃんと注目していますよ!

インターンと採用を連携させていない会社のインターンにも、参加するメリットはたくさんあることがわりますね。具体的な「優遇」はなくても、インターンに参加した学生のことが気にならない会社はありません。