人事のホンネ

KDDI株式会社

KDDI〈前編〉
求めるのは「あるべき姿に向けて努力する」「周囲の人と思いを一つにする」【人事のホンネ】

KDDI株式会社 コーポレート統括本部人事本部人財開発部新卒採用グループコアスタッフ 寺澤慧人(てらさわ・けいと)さん

2025年09月17日

 人気企業の採用担当者に編集長が直撃インタビューする「人事のホンネ」。今回は、携帯キャリア「au」などを展開する大手通信会社のKDDIが登場します。2020年度から「 KDDI版ジョブ型人事制度」を導入し、それにあわせて新卒採用も初期配属を確約する「WILLコース」と確約しない「OPENコース」に分けた募集をするようになりました。「あるべき姿に向けて努力する」「周囲の人と思いを一つにする」という求める人財像は、会社の成り立ちに由来しているといいます。選考で見るポイントや、インターンシップの内容についても詳しく聞きました。(編集長・福井洋平)


■2026年卒採用について
 ──寺澤さんは採用を担当されて何年目ですか?
 新卒採用は2年目です。その前はキャリア採用を1年間担当していました。

 ──2026年年卒入社の採用予定数を教えてください。
 予定では、総合職採用が260人です。2025年卒も同じく260人でした。採用の広報はホームページなどで、2024年12月から「エントリー開始」という形で行い、12月から選考開始しました。

 ──エントリー数はどのぐらいですか?
 詳細の数字は公表していませんが、募集期間は1次(12~1月)、2次(1月上旬~3月末)、3次(4月上旬~6月末)とあります。毎年ありがたいことに多くの学生さんにエントリーをいただいています。

「WILLコース」と「OPENコース」で募集

■「WILLコース」と「OPENコース」
 ――KDDIでは「WILLコース」と「OPENコース」に分けた募集をしています。コースの違いを教えてください。
 「WILLコース」は最初の配属先が確約されているコースで、「OPENコース」は入社後に配属先が決定するコースです。「WILLコース」は26年卒対象ではネットワークインフラエンジニア、ソリューションエンジニア、アカウントコンサル(法人営業)など14コースで募集、「OPENコース」は技術系、業務系の2つにわけて募集をしています。
 KDDIは2020年度から、KDDI 版ジョブディスクリプションをベースとした KDDI 版ジョブ型人事制度を開始しました。 専門領域を大きく30領域にわけて職務やスキルを明確化し、年功序列ではなく成果や挑戦の内容、能力をダイレクトに報酬に反映する仕組みを取り入れています。この制度の導入にあわせ、新卒もWILLコースとOPENコースの2コースで採用することにしました。現在、6年目となっています。

 ──2026年卒ですと、採用数のうちどのぐらいがWILLコースですか。
 半分より多いぐらいです。

 ──コースができる前は、文理問わず全部一緒に採用していたのですか?
 一緒でした。文系から研究所配属という人はさすがにいませんでしたが、理系で営業になった人もいました。

 ──採用数は、少し絞られていますか。
 多いときは300人ぐらい採用していました。今はキャリアと新卒の両方で採用戦略をたてていて、会社のコンディションによって、新卒とキャリアの採用バランスを見直しています。

求める人財像は2つ

■採用の流れ
 ――採用の流れは?
どちらのコースでも最初にホームページからエントリーし、エントリーシート(ES)を書いてもらって、本エントリーになります。それから書類選考で、しっかり基準をクリアした人が次のステップに進みます。

 ─―採用までに何回面接を行いますか。
 OPENコースやWILLコースなど、コースによって異なります。基本的にオーソドックスな面接スタイルだと3回、面接時間は1回30分ぐらいです。学生は常に1人で面接を受けていただきます。
 1次面接は1対1で、35歳未満ぐらいの社員がオンラインで面接をします。2次面接は1対2で、社員はマネージャークラスです。部署が違う2人に組んでもらい、偏った見方にならないようにしています。こちらもオンラインです。
 次が最終面接で、こちらは対面で1対3、社員は部長クラスです。当グループのメンバーが、各面接終了後に、「どのような学生の皆さまが、面接に臨んでいただいたか」確認をしています。

■エントリーシート(ES)、求める人物像
 ─―ESの内容を教えてください。
 メインで学生の皆さんに一生懸命書いていただくことは、「KDDIでやりたいこと」と「学生時代に難易度の高かった経験」、いわゆるガクチカです。

 ──ESではどういうところを見ますか。
 KDDIが求める人物像とマッチしているかどうかを一番に見ます。求める人物像は大きく2つあり、1つ目は「あるべき姿に目を向け、具体的な目標を立てて、やり抜く力のある人」。2つ目は「周囲と真摯に向き合い、思いを一つにし、変革していく力のある人」です。

 ──この2つを特に重視している理由は?
 これは、KDDIという会社の成り立ちに関係しています。
 KDDIは合併を繰り返し、2000年にKDDIという大きい会社になってからも、業界最大手のNTTを追い越し一番になりたいという強い思いで、ずっと挑戦を続けてきた会社です。そのため、あるべき姿に向けて、一生懸命に具体的な目標を立てて学生のときに何かをやった経験が大事と考えているのです。
 2つ目の「周囲と真摯に向き合う」というのも、KDDIがいろいろな合併をしてきたという成り立ちが関係しています。1人ではなくいろいろなメンバーチームで物事に取り組むというカルチャーが強いので、思いを1つにして挑戦していく、変革していくことが求められているのです。

 ──「通信業」というところから求めている人物像はありますか。
 まずインフラとして、ちゃんと当たり前のことを継続していく継続力、しっかり何事もやり抜く部分はすごく大事です。通信やインフラ業は保守的になりがちな部分もありますが、KDDIは守りの部分と攻めの部分をしっかりやる両利きの経営です。通信を使って、世の中に価値を創出するということは変革にもつながります。

オンライン面接では事前準備を

■面接
 ──1次面接、2次面接で「ここは見る」というポイントはありますか。
 ここも、今お伝えしたところがけっこう大きいです。KDDIの求める人物像を自分なりに噛み砕いて、言語化してもらえたらありがたいですね。

 ──学生が面接に挑むにあたって、しておいてほしいことはありますか。
 とにかく事前準備です。たとえばオンライン面接あるあるですが、「回線がつながりません」「画面がオンになりません」となると、面接時間は30分と限られているのでもったいないですよね。本気でKDDIに入りたいと思うのでしたら、事前に接続確認をして入室してくれるかなと思います。しっかりと時間通りに来て、人物像に沿ったような形で自分が学生時代に頑張ってきたことを話してもらえるのが一番大事です。

 ──最終面接ではどういうところを見ますか?
 KDDIの求める人物像はもちろんですが、入社して何をしたいのかを、熱く語って頂きたいです。また弊社はLGBTQ+やダイバーシティ推進に力を入れていますので、働く上での健康面での配慮などは最終面接でしっかりと聞くようにしています。もちろん、選考に影響することは全くありません。

■併願について
 ──学生が他社の選考を並行しているか、内定を持っているかは聞きますか。
 聞きますね。それは素直に「どこの会社の内定を持っているのか」「こういう業界を見ているのか」と知りたいためです。通信業界で一貫している学生もいれば、金融やメーカーを見ている学生もいます。ファクトを知りたいだけで、選考に影響することはありません。一番は「求める人物像」に合うかどうかです。

 ──通信業を併願する人は多いのですか。
 多いですね。理系の学生は専門性を持っているので受ける業界がある程度決まっていますが、文系の学生は通信だけではなく、金融、メーカー、マスコミなどさまざまな会社と併願しています。

 ──皆さん、最終面接まで行ったら「本社が第一志望です」と言うのでは。
 絶対に言います。「いや、第二志望です」という人がいたら、逆に評価するかもしれません。

 ──就活生の志望度は、どうやって見きわめますか。
 ESで「KDDIでやりたいこと」を書いてもらうので、その中身を面接でも深掘りして、確認します。

「共創」の思いは他社よりも強い

■KDDIのアピールポイント
 ──御社から学生に対しては、「キャリア3社」という比較でKDDIはどういうポイントがいい、と伝えますか。
 先ほどの成り立ちの部分にもつながりますが、「一番になりたい」という競争、「共につくる」の共創は他社よりも強く、KDDIの良い部分だと伝えます。
 KDDIにはサテライトグロース戦略という戦略があって、通信を中心に据えたうえで、例えば金融、モビリティ、といったサービスの提供で、世の中に新しい価値を生み出す新しい取り組みも積極的に展開しています。グローバルという観点では、KDDIの源流のひとつである国際電信電話(KDD)であり、いまは海外拠点数が50ぐらいあります。また、そのなかでもいろいろな子会社もありますので、営業から始まり人事、技術などいろいろな経験ができるよ、と伝えています。

 ──学生はそういう会社の歴史も知って、受けに来ますか。
 人それぞれで、志望度が高い人はしっかり調べています。「あ、よく調べてるなあ」と素直に思います。

■内定時期
 ──内々定が出る時期は1次、2次、3次とあるそうですが、面接からどのぐらいの時期に出すのですか。
 時期によって若干違いますが、エントリーを締めてから1カ月半~2カ月ぐらいですね。12月スタートだと、2月中旬か下旬ぐらいに内定を出しました。
 今までは3~4月に内定を出しているので、内定出しの時期は早めています。学生の就活の早期化という事実がありますので、そこに合わせていくべきだと考えています。

 ─―27年卒採用の時期も早まるかもしれないですか。
 まさに検討中です。早く出さないと、という意識はあります。

WILLコースにひもづいたインターンシップ

■インターンシップ
 ──インターンシップはどのぐらいの規模で行っていますか。
 8月から9月の間で、技術系は8コース、業務系は6コースで実施しています。これは、「WILLコース」で募集しているコースにひもづく形で、自分がやりたいコースのインターンシップに参加してもらうイメージです。KDDI版ジョブ型人事制度がスタートしてから、採用のコースが増えてくるにつれて、インターンシップの枠も増えてきています。初期配属が確約されるWILLコースは、インターンシップとの相性もいいと考えています。
 ざっくりいうと技術系は5days、業務系は1dayなど単発のいわゆるオープンカンパニーを実施しています。募集人数は単発だと3ケタくらい参加しますし、少ないと10人程度のコースもあったりします。

 ──インターンシップは選考でどのぐらい参加者を絞るんですか。
 選考フローは本選考と同じような感じで、書類選考と面接です。4月から募集をスタートし、いろいろなイベントに出て、広報をしました。

 ──インターンシップの選考では、どういうところを見るのですか。
 基本的に評価軸は本選考と変わることはないと思っています。インターンシップだからと特異なことをすると、本選考で「別の会社?」となってしまうので、大きな相違はありません。志望動機なども聞きます。

 ──志望するのはどんな学生が多いですか。
 5daysの技術系では、「こういう研究をしているから、このインターンでこういう取り組みをしたい」という学生が多いですね。基本的に面接をするのは技術系中心です。割合としては大学院のほうが多いですが、もちろん学部生もいます。学部生だから、と諦めないでほしいですね。

 ──どういう研究分野の学生が多いですか。
 割合としては情報通信が多いのですが、化学や理学の学生もいます。コースもネットワーク系、データサイエンス系、アプリケーションといろいろなコースがあるので、いろいろな理系の学生がいます。
 研究分野がどうかというよりも、本当に学生時代に自分がやってきたことを、どのようにインターンシップでもやってみたいと考えているかを大事にしています。

インターンシップで会社のカルチャーよくわかる

■インターンシップと選考
──業務系のコースはどういったものがありますか。
 募集が多いのはアカウントコンサル(法人営業)とパートナーコンサル(代理店営業)です。両者の一番大きい違いは、直販か間販かというところですね。ざっくり言うと、会社の看板と看板同士で、営業自らが直接お客さまとやり取りするのが直販営業。間販営業は、代理店さまが運営しているauショップやUQスポット、家電量販店の経営層と相対し戦略を練り、それを基に店頭スタッフさまがお客さまと接客します。

──インターンシップは、基本的には職場に入って実施するのですか。
 職場ではなく会議室やオープンスペースなどで、社員がたくさん参加して模擬体験をしてもらいます。例えば技術系は実際にエリアの電波測定をするために新宿の街並みを歩くなど、かなり実務的なことをやったりしたので、参加者のみなさんはすごく楽しそうでした。また業務系では、模擬グループワークや、ロールプレイングをしています。会議室だけでなく、いろいろな拠点に行って経験を積んだりします。
 事業部の皆さんの協力があってこそのインターンシップです。例えば、ロールプレイングでは実際に代理店に商談をしに行きます。社員が代理店の社長役をするので、実際にリアルなフィードバックもします。KDDIのやっていることが実地で体験できるプログラムです。

──インターンシップからは選考に直接つながるルートがありますか。
 インターンシップに参加しないと本選考に合格できない、ということはありません。インターンシップに参加しなくても、本選考にエントリー可能です。ESや面接をスキップできるというアナウンスはしていません。もちろん、インターンシップ参加者で内定者は一定数います。参加者の志望度は上がっていると思います。KDDIの実際の仕事内容だったり、社員とコミュニケーションを取ったりするので、カルチャーや雰囲気がよく分かります。そこは参加したからこその特典というか、メリットが大きいと思います。

(9月24日の後編に続く)

(インタビュー写真・岸本絢)

みなさんに一言!

 皆さん、こんにちは。学生時代、楽しんでいますか?私からは2つのメッセージをお伝えします。
 まず1つ目は学生時代に全力で頑張っていることに取り組んでください。しっかりと学生時代にやっていることに取り組んでいくと、自分のやりがいが出てくると思います。そして2つ目は自己分析をしっかりとしてください。自己分析も1人だとつまずくこともあると思うので、そういったときは仲間、家族、いろんな人の意見を聞きながら、自己分析をしていただけたらと思います。そういったやりがい、自己分析を掛け合わせることによって、自分のやりたいことが見つかってきますので、ぜひ頑張ってください。その中にKDDIでやってみたいことが見つかれば、私たちもうれしく思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

KDDI株式会社

【通信業】

 KDDIは、中期経営戦略において「サテライトグロース戦略」を推進しています。  5G通信と、Data Driven、生成AIを中心に、お客さま接点である通信基盤を生かして成長領域であるDX、金融、エネルギーといった付加価値サービスの提供で事業成長を加速していきます。LXは次なる成長領域として、モビリティ、スポーツエンタメ、Web3メタバース、ヘルスケア、宇宙の5領域を定義して事業拡大を目指すほか、事業を通じて社会の持続的成長につなげていく未来への取り組みを推進しています。