人事のホンネ

KDDI株式会社

KDDI〈後編〉
KDDI版ジョブ型は「人間力」も評価する【人事のホンネ】

KDDI株式会社 コーポレート統括本部人事本部人財開発部新卒採用グループコアスタッフ 寺澤慧人(てらさわ・けいと)さん

2025年09月24日

 人気企業の採用担当者に編集長が直撃インタビューする「人事のホンネ」。携帯キャリア「au」などを展開する大手通信会社のKDDIの後編をお届けします。2020年に導入したKDDI版ジョブ型人事制度の目的は、変革の時代にあわせ社員1人1人がプロフェッショナルになっていくこと。実力本位の評価制度で、初任給から差がつくこともありますが、専門家としてのスキルアップだけでなくKDDI人としての人間力も評価の対象としています。KDDIで働くやりがい、自身の就活期の体験についてもくわしくうかがいました。(編集長・福井洋平)
(前編はこちらから


■ジョブ型人事制度について
 ──KDDI版ジョブ型人事制度は2020年度からのスタートですが、なぜこのタイミングでスタートしたのでしょうか。
 一番大きいのは時代背景です。変化が激しくて、先が見えない世の中で、KDDIの社員一人ひとりがプロフェッショナルになっていくことが大事だと考えました。変化していく時代時代に合わせて、価値を創造し、成果を創出していかなければいけない。そういったときにKDDIの社員の1人1人が、プロフェッショナルに成長していくことが必要です。リーダーとしてプロフェッショナルになっていくということもあるし、自分の持っているジョブを尖らせて、エキスパートになっていくという方向もあります。社員がそうやって成長することが、KDDIの持続的成長にもつながる。なおかつ、社会にも価値を出していける、と考えました。

新卒採用の時点でキャリアについての意思決定ができる

 ──なぜ、そのためにジョブ型制度を導入したのでしょうか。
 以前は基本的に、キャリアのスタートは社員の意思に関係なく、全員ゼネラリストと決まっていました。OPENコース、WILLコース採用を導入することで、特定の領域のエキスパートになるか、それとも様々な職種を経験してリーダーになるかという自身のキャリアについての意思決定ができるようになりました。専門分野のプロフェッショナルとなり、エキスパートとして早く活躍できるというケースもありますし、ジョブチェンジしたきっかけをつかんで、ゼネラリストとしてプロフェッショナルに成長し、リーダーになるというケースもあります。コース別採用により、社員一人ひとりがプロフェッショナルをめざすことにつながる制度になった、と思います。

 ──なぜ「KDDI版」とついているのですか。
 自分の担務やジョブをしっかりやることで成果がつき、どんどんプロになっていくというのが、世間一般的にいわれるジョブ型です。しかし、KDDI版のジョブ型では人間力、KDDIらしさもしっかり磨き、そこもしっかり評価することが特徴になっています。

 ──人間力というのは具体的にどういうことですか?
 普通のジョブ型だと特定のジョブのスキルがしっかりと評価されればいいのですが、KDDIではさきほど求める人財でも言及した「共創」をして一緒に仕事をしていくためのチームワークやフォロワーシップ、それに伴う課題形成力、課題遂行力といった「人間力」も成長していき、そのうえで自分の担務、ジョブを磨いていくことをめざしています。スキルと人間力がかけあわさることで、KDDIのプロフェッショナルとなる、という感じですね。

 ──具体的に制度はどう変わったんですか?
 評価の方法も変わりました。具体的には先ほど言った人間力と、ジョブの部分の評価です。評価は社員の「グレード」によって変わります。グレードは基幹職と経営基幹職という2つの大きい枠があり、基幹職がいわゆるマネージャーではない人たち、経営基幹職がマネージャー層です。基幹職については基本的に評価軸は同じですが、経営基幹職では、専門性を深められるようなエキスパート向けの評価と、マネジメント力を発揮できるようリーダー向けの評価と分かれています。専門性をどんどん深めてエキスパートになっていく人と、マネジメント力を磨いてリーダーになっていく人がいます。

入社年次や年齢で評価は変えない

■評価の方法
 ──若い社員はどういう評価軸で見ていますか。
 KDDI版ジョブ型人事制度のいいところは、年功序列ではないというところです。基幹職、いわゆるマネージャーではない人たちの評価基準は全員一緒なので、入社年次や年齢が評価に影響するということはなく、「このぐらいの評価であれば、このぐらいの賞与」としています。初任給も一律ではなく、同じタイミングで入社しても初任給は違いますね。また、20代から経営基幹職になれるようになりました。旧制度ではマネージャーになるのは35歳とか36歳でした。

 ──初任給は何によって変えているんですか?
 学生時代にいろいろと頑張ってきた経験です。例えば論文だったり、学会発表だったりが代表例として挙げられます。

 ──技術系と業務系では差がつきますか。
 技術系と業務系で差分が出るケースもあると思います。ただ、技術系と業務系は評価軸を別に考えており、その中でKDDIが定めている初任給の評価基準に合致するか、合致しないかで初任給が決まります。技術系だから、業務系だからというのではなく、その人が学生時代にどうだったかというところで判断しますね。

 ──四大卒と院卒の違いもないですか。
 そうですね。学部か院卒かよりも学生時代にやってきたパフォーマンスが大切です。技術系だと学会や論文、文系だと司法書士といった資格がイメージしやすいと思います。とにかく学生時代に今、自分が一番力を入れていることを頑張っていただくのがいいと思います。

社内副業でめざすキャリアを実現する

■社内副業
 ──ジョブ型制度を入れたことで、具体的に変わったことは。
 私自身は、自分のキャリアビジョンを描きやすくなったと感じています。具体的な施策で言うと、月に1度、上司との1on1がルール化されました。今までは上司との1on1はフィードバック評価で半期に1回、2回の実施だったのですが、いまは月1回以上になったので、上司との会話数が増えていろいろ相談したり、キャリアについての話がしやすくなったりしました。
 それから、ジョブディスクリプションがあるので、どういう経験を積む必要がある、ここまでパフォーマンスを発揮する必要がある、と言語化されて、目指すものが具体的になりました。それを達成するうえで社内副業制度ができて、自分のキャリアを描くうえで「このジョブの要素が必要だ」と思ったら、社内副業でチャレンジできるようになりました。
 社内副業のいいところは、普通の異動ではなく、自分の本業の担務はしつつ、社内副業として業務の最大20%を割いて取り組むことができることです。私も営業をやっていたときに、人事の人財育成の仕事に興味を持ち、社内講師の副業にチャレンジしました。人財育成に携わりたいと気づき、人事のキャリアを歩んでいこうという意思が強まりました。

 ──まさにKDDI型ジョブ型制度のおかげで、今の人事本部にいらっしゃったのですね。いつごろ社内副業を始めたんですか?
 2021年、制度ができてすぐに始めました。社内副業は「こういうことをやりますよ」という公募がまずかかります。そこで上司に相談して、志望動機、エントリーシートを書いて、エントリーします。エントリーしたら、副業先と面談をして、受け入れるか、受け入れないかを副業の募集先で決めてもらう。受け入れてもらう場合は、本人、向こうの上司、今の上司で三者面談をして副業の期間や内容の計画を立てます。

 ──寺澤さんはどんな副業をしたのですか。
 私は新入社員に対して講師役をしました。新入社員の研修に入り、ビジネスマナー、ロジカルシンキング、内省の方法などを伝えました。KDDIラーニングという子会社に行き、講師のスペシャリストたちからレクチャーを受けながらインプットして、新入社員にアウトプットして、丸1年、社内副業をやっていました。

■KDDIの制度の魅力
 ──そのほか、学生に伝えたいKDDIの制度の良さは何でしょうか。
 キャリアステップが歩みやすい、簡単に言うと「すごく、自分が成長するよ」と言いたいですかね。今の学生は効率よく、自分のスキルを身に付けたいと思うそうですが、KDDI版ジョブ型人制度は具体的なジョブディスクリプションがあるので、目指しやすいです。KDDI DX Universityという社内大学だったり、研修制度だったりも充実しています。ちゃんと自律的なキャリア形成が歩める施策が備わっています。

 ──転勤はありますか。
 総合職採用では、どうしても転勤になる可能性はあります。でも、ジョブしだいなところがあり、人事ですと本社で仕事をするので、子会社や転勤の可能性は低くなります。私自身は代理店営業をしていたときは和歌山、仙台、札幌と異動しました。

新しいこと、ワクワクすることができそうな会社

■寺澤さんの就活
 ──寺澤さんの就活について教えてください。
 私は2014年入社で現在12年目 です。2013年に就活をして、見ていた業界は通信、金融、鉄道とマスコミとバラバラでした。学生時代は陸上の短距離走をやっていましたね。

 ──なぜ、通信業界を選んだのですか?
 すごくシンプルに言うと、自分が一番身近でお世話になっていると感じたからです。中学生のときから携帯電話を持っていて、ずっと手元にあるなあと。金融や鉄道も身近な存在で、なおかつどれも世の中の支えになり、影響力も大きいので、通信、金融、鉄道を見ていました。マスコミはアナウンサーを受けていましたが、選考とKDDIの最終面接がかぶって、KDDIを選択しました。

 ──KDDIの他に内定は取られたんですか?
 いただいていましたが、これから新しいこととか、ワクワクすることがKDDIだったらできるだろうな、世の中に出していくだろうな、と思ったのが決め手でした。あとは社員と会う中で、この人たちと働きたいなと感じたのも大きかったですね。

 ──どういう社員、社風と感じていましたか。
 当時はまだKDDI版ジョブ型制度は導入前でしたが、若いうちから活躍できる会社だと感じました。シンプルに言うと、社員のみなさんがすごくかっこよく映ったんですよね。その当時、入社3年目の男性社員がいたのですが、いい意味ですごく自信を持って仕事を語っているし、「3年目でこんなになれるんだ」「こんなかっこいい人がいるんだな」と衝撃を受けました。
 それから、KDDIは新しいサービスをどんどん世に出していくだろうな、と思いました。私が中学校1年生のときにauが携帯の「着うた」を始めたんですよ。それでauの携帯がほしくなって、カタログを各社調べたところ、auはダブル定額という、パケットをいくら使っても料金が変わらないというサービスも初めて出していました。「新しいことをやる会社なんだな」と、すごく印象に残っていました。

 ──実際入ってみて、社風はいかがでしたか?
 私個人は、若いときからいろいろとやらせてもらっています。初期配属で和歌山に行ったときも、若手中心の支店でした。支店長も40歳ぐらいで、若い人の意見を尊重してくれ、ガンガン営業をやらせてもいました。入社3年目で仙台に行ったときは新店舗の立ち上げを担当し、マネジメントスキルも身につけることができました。

 ──就活のときにやったことで、よかったと思われることはありますか?
 とにかく自己分析ですね。「周りを巻き込んで、どこの組織でも目標に向けて一翼を担う人間です」と伝えたと思います。

 ──どうやって分析されたんですか?
 キャリアセンターに足繁く通い、恥ずかしさを捨てて、部活の仲間とも話し合いました。陸上は自分との戦いですが、タイムと向き合って、目標をクリアするというのは、実は周囲との関わりが大事です。部として共通の目標に取り組み、自分のモチベーションを高めることができます。仲間と話し合って、「自分のやりたい会社はここだよね」判断軸がぶれなくなりました。

 ──それがまさにKDDIの求める人財とピタッと合ってという。
 合っていましたね。確かに。それが採用にもつながっていればいいなと思います。

たくさんの人から「ありがとう」と言ってもらえる

■KDDIの働きやすさ
 ──会社にいて働きやすさは感じますか?
 めちゃくちゃ感じます。一番はコミュニケーションの取りやすさですね。本当に上司やグループのメンバーとも、分け隔てなく、何でも話し合える関係です。人事本部だと部長や本部長との距離も非常に近く、コミュニケーションに苦労しません。
 それから、子育て中の人にも優しい会社だなと思います。私は子どもがいて朝は保育園の送り担当ですが、フレックス制度を使って、朝10時に出社しています。妻が忙しいときは私が仕事を早めに切り上げ、子どもを保育園に迎えに行って、寝かしつけ、その後に仕事をすることもあります。上司と話し合った上で、自由に働けますので、ここも働きやすさのポイントです。

■KDDIで働くやりがい
 ──KDDIで働くやりがいは。
 たくさんの人から「ありがとう」と言ってもらえるのが、やりがいです。代理店営業の仕事だと、代理店さまの社長やマネージャー、店頭スタッフ、そしてお客様がいて、と関わる人が多いので、「ありがとう」と言ってくれる人が多くて、うれしいんです。今、新卒採用をしている中でもチームを取りまとめる立場にいるので、メンバーのみんなを一緒に巻き込みながら仕事を進めて、「ありがとう」と言い合っています。これがすごく働く上で自分の中でのやりがいになっています。

(インタビュー写真・岸本絢)

みなさんに一言!

 皆さん、こんにちは。学生時代、楽しんでいますか?私からは2つのメッセージをお伝えします。
 まず1つ目は学生時代に全力で頑張っていることに取り組んでください。しっかりと学生時代にやっていることに取り組んでいくと、自分のやりがいが出てくると思います。そして2つ目は自己分析をしっかりとしてください。自己分析も1人だとつまずくこともあると思うので、そういったときは仲間、家族、いろんな人の意見を聞きながら、自己分析をしていただけたらと思います。そういったやりがい、自己分析を掛け合わせることによって、自分のやりたいことが見つかってきますので、ぜひ頑張ってください。その中にKDDIでやってみたいことが見つかれば、私たちもうれしく思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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 KDDIは、中期経営戦略において「サテライトグロース戦略」を推進しています。  5G通信と、Data Driven、生成AIを中心に、お客さま接点である通信基盤を生かして成長領域であるDX、金融、エネルギーといった付加価値サービスの提供で事業成長を加速していきます。LXは次なる成長領域として、モビリティ、スポーツエンタメ、Web3メタバース、ヘルスケア、宇宙の5領域を定義して事業拡大を目指すほか、事業を通じて社会の持続的成長につなげていく未来への取り組みを推進しています。