人事のホンネ

東京エレクトロン株式会社

東京エレクトロン〈後編〉
一生、勉強しつづけられる人に来てほしい【人事のホンネ】

東京エレクトロン株式会社 人事部スタッフィンググループリーダー 大久保智也(おおくぼ・ともや)さん  人事部スタッフィンググループ 阪井素子(さかい・もとこ)さん

2024年08月07日

 人気企業の採用担当者に編集長が直撃インタビューする「人事のホンネ」。業績好調な半導体製造装置メーカーの東京エレクトロン、後編をお届けします。同社は2006年に制定した「TEL Values」で、社員に大切にしてほしい行動規範として誇り、チャレンジ、オーナーシップ(主体性)、チームワーク、自覚の五つを定義づけ、そこにフィットする学生を求めています。半導体業界は日進月歩の世界で、安定を求めるのではなく常に勉強しつづける姿勢が大切といいます。人事担当者おふたりの就活時代も振り返っていただきました。(編集長・福井洋平)

前編はこちらから


■本選考の流れ
 ──本選考は12、1月ごろからスタートされるとのことですが、採用ルートを教えて下さい。
 阪井素子さん(写真右) エントリー後は必ず説明会には出席していただき、そのあとに一般的なSPI検査を受けていただきます。合格基準に達した方の応募書類は全員分目を通し、ジョブマッチング、いわゆる面接に進みます。当社はエントリーシートは必要なく、書類の内容で学生を絞ることはありません。応募書類には一般的な経歴、学生時代にどんなことをやってきたかを書いてもらいます。理系の学生が多いので、研究内容や大学時代に一番力を入れた科目を200字程度で書く形ですね。あくまで面接で深掘りするテーマを見つけるために書いていただいています。

 大久保智也さん(写真左) 理系の学生が主なので、学問としてのバックグラウンドを確認したいと考えています。

エントリーシートはなし SPI通過すれば面接

 阪井 開発に携わる社員はどういった視点で課題を見つけ、どうアプローチして、解決するかが重要です。PDCAサイクルを回すスキルは入社してからも重要ですので、そこを見ています。

 ──よく「もうアルバイトをしっかりやってきました」みたいな人もいると思うんですけど、そういうガクチカもありですか。
 阪井 ありですね。面接は何回かあり、それぞれの段階で聞く内容が異なります。最初の面接では研究内容でなくアルバイトやサークルのことを話す学生もいますが、それはそれで問題ありません。どんなところが大変で、どういったところから何を学んだか、それを今どう生かしているのかが知りたいです。会社に入ってからも、失敗からどう学んで、どう生かしていくかということを経験していきますので。
■面接
──面接の回数は。
 阪井 オンラインで2~3回です。最初は人事担当が1対1で面接し、人となりをみます。

 ──先ほどおっしゃったTEL Valuesにフィットするという観点で見ていると思いますが、どういうところに注意して見ていますか。

 大久保 TEL Valuesの全てに当てはまる人はいないと思います。書類を見たときに、「この人はこういう取り組みをしているから、チームワークで強みがありそうだな」と思ったら、「アルバイトでリーダーとしてどんな活動をしてきたんですか」「何人ぐらいと接してきたんですか」「マネジメント的なことをやっていましたか」と質問していくイメージですね。最初の面接で高いスキルを求めることはありません。

成長スピードについてこられる人が欲しい

 ──毎年、応募者が増えていると、面接も大変ですよね。
 大久保 可能性を広く持っている学生をどう判断するかは非常に悩ましいです。当社も成長とともに採用枠を拡大していますが、一方で採用市場は縮小したり、売り手市場が強まったりしているので、なかなか学生を絞るほうに舵を切れないところがありますね。

──次の面接は何対何ですか。
 大久保 次は学生1人にこちら側が人事担当と、職種にあわせて技術者や部門の社員の計2人です。

 阪井 ここでは、応募職種が求めているスキルや思考を持っているかをチェックします。まだ学生なので、学んできた学問が職種にマッチしているか、研究内容に親和性があるかといったところをみます。

 ──TEL Valuesに沿った確認事項はあるんですか。
 阪井 チームで働いていけそうかはみます。チームで仕事をする場面が多いので、もともと今いるメンバーの中に溶け込めそうかをみます。また、今の課題に対して何かやってくれそうという期待感を持てるかどうか、主体性、オーナーシップをもっているかどうかを研究活動からも見るようにしています。

 ──最終面接はどのクラスの人が見るんですか。
 大久保 最終は人事部からは人事部長クラスか次席クラスが1名、それに加えて役員層が1名の合計2名で見ています。

 ──最終面接ではある程度人数を絞るんですか。
 大久保 結果的には絞られます。

 ──改めて、どういう学生に来てほしいですか。
 大久保 理系の学生でいうと知識、技術を追究できる人ですね。半導体業界の技術革新は非常にスピードが速いので、成長スピードについてこられる人が欲しいです。

 阪井 ずっと勉強を続けていく姿勢が必要になります。今はもう引退したエンジニアが「自分たちが入ったときの最先端の技術が、自分が引退するときにはかなり遅れている。それだけその間ずっと、新しい情報を仕入れて、自分を成長させていくための勉強は欠かせない」と言っていました。そういうことが好きでないと、ついていくのが大変かもしれないですね。

研究開発に投資する姿勢が魅力

(写真は東京エレクトロン提供)
■競合他社
──応募学生はどういう業界と併願していますか。
 阪井 職種によって全然違いますし、本当にありとあらゆるところが競合です。

 大久保 例えばメカとか機械系、電機系の人であれば、自動車業界ですね。

 阪井 電機系だと総合電機メーカーもいますし、情報だと、SIer含めソフト関連、IT業界。営業だと商社とかコンサルですね。同業他社とも競合はありますが、海外メーカーとの競合はあまりないです。

 ──競合が幅広い中で、東京エレクトロンの魅力を学生にどのように伝えていますか。
 大久保 半導体は工程ごとに用いられる装置が違います。国内の他社は特定の工程に特化した製品を扱っていますが、当社は幅広く製品を持っていて、かつそれぞれのシェアも高いという状況なので、優位性があります。

 阪井 研究開発にもかなり力を入れており、今期の研究開発費は2500億円を計画しています。今後も5年間で1兆5,000億円以上の投資を予定していますので、モノづくりをしたい学生にとっては潤沢な投資も魅力だと思います。やりたいことがやれる可能性が高いですね。よく「研究費で制約の多い大学の研究室とは違う」と言われます。
(オフィスの様子/東京エレクトロン提供)
 ──半導体という分野については、どういう魅力がありますか。
 阪井 こちらが魅力を訴えるというよりは、もう「半導体は必要不可欠なんだ」と身をもって体験している学生が多いですね。

 大久保 半導体不足の影響ですかね。自動車の納期が遅れたり、ゲーム機が買えなかったりしましたから。

 ──半導体という産業だけで見ると、日本は大変な時代もあったと思います。そのときは御社のビジネスはどうでしたか。
 大久保 取引していたお客様が半導体事業から撤退するなど、少なからず影響はありました。一方で海外の投資が強くなるという状況になり、そちらで新しいビジネスが生まれました。ただ、数年前までは本当に私たちの業界は注目されにくく、採用計画は満足いくものではなかったです。

 阪井 採用できる職種、できない職種があって、採れない職種はショートしていました。そのため職種特化型の説明会やDM、勧誘をして、「こんな業界もあるんだよ」と知ってもらうようにアピールし、デバイスメーカーと装置メーカーの違いを意識して説明しました。

いろんなチャレンジしたい学生に向いている

 ──今は人気企業となりましたが、そのなかでも今でもベンチャーイズムがあるのは、アピールしたいポイントですか。
 阪井 そういったところが好きな学生であれば、すごくハマるかなと。

 大久保 安定志向、大手でじっくりやりたいという人はちょっと違うと感じるかもしれません。若いうちからいろんなチャレンジをしたいという思考を持っている人がいいですね。

 ──営業は商社やコンサルと競合になると思うんですけど、学生にはどういうアピールをしていますか。
 阪井 どういう商材を扱いたいか、どういう営業スタイルでやっていきたいかという点で訴求します。当社は商社とは違って扱う商材がオーダーメイドで、業界もお客様も限られています。オーダーメイドをつくるために、どうやってお客様のニーズを聞き出すかが大切。その後は開発をしなくてはいけないので、それこそチーム一丸となる旗振りを営業がするというスタイルを知ってほしいですね。

 ──文系の方も、半導体に興味があるかどうかというのはかなり重要ですね。
 大久保 重要ですね。お客様によって求める仕様も違いますし、お客様の作ろうとしている半導体にもいろいろな種類があったり、半導体をつくるための工程、半導体のデバイスのこの部分にはこの装置、とかなり細分化されていますので。同じお客様と話をするにしても、そのお客様が何をしているかを網羅してないといけない仕事です。

■社内制度、社員のタイプ
──社内のキャリアアップの仕組みを教えて下さい。
 大久保 入社してからOJTをじっくりやりますし、Web教育も導入しています。当社の場合は教材やコンテンツは用意しますが、必要な知識は自分で獲得していくスタンスです。

──職種が変わることはありますか。
 大久保 ゼロではないですが、そこまで多くはないです。

 ──どういったタイプの社員が多いと思いますか。
 阪井 個性的ですね。

 大久保 一概には言えませんが、開発は負荷がかかって大変な場面も多いと思うんですけれども、あまり暗くならず、ポジティブにというかちょっと楽しみながら、冗談を言ったりして逆境を乗り越える方が多いですね。

 阪井 社内、同じ部内、近ければ同期、先輩、後輩、そういったところで、話して乗り切っていますね。「今こんな風に大変なんです」「大丈夫か」「何かあったら言えよ」という人が多いですね。

会社が本当に好きな社員が多い

■阪井さんの就活
 ──お二人の就活について教えてください。阪井さんは何年入社ですか。
 阪井 2007年です。もともと一般職で入社し、総合職に転換をしました。文系出身ですが、親がメーカーで働いていたので、「実際に自分はつくれないけどモノづくりに関わりたい」「B to Bで、あまり知られていないけど一級品みたいな会社がいいな」と探していたときに、学校のキャリアアドバイザーが「すごくいい会社ですよ」と東京エレクトロンを紹介してくれました。実際に会社説明に行ったら、すごく人事の方がフランクで、いろんな相談に乗ってくれそうな人が多かったんですね。自分の大学の専攻を全く使わずに就職をするのであれば、すごく苦労したり、覚えたりすることもたくさんあるだろうと思ったときに、支えてくれる人が少しでも多い会社がいいなという観点で選んで、17年経ちました。大正解でした。

 ──一般職から総合職の乗り換えは、制度があるのですか。
 阪井 そうですね。1年に1回機会があって、私は2019年に転換しました。

 ──印象深いお仕事は。
 阪井 一般職時代、営業部の営業アシスタントをしていたとき、お客様に出荷した装置が相手国の通関を通れずに戻ってきたことがありました。でも、その理由がなかなか分からない。どうしたらそれがお客様のところに届くのか、何が必要なのか、情報がない中で「全部のパーツの写真を準備して」「重量や大きさを全部エクセルにまとめて」と言われ、工場の製造部隊と協力をして、何百というパーツの写真の資料を揃えて、ようやく半年経ってお客様に届き、売上が上がりました。
 出荷できない装置はそのまま成田空港に置いておけず、移動したり、時間が経ちすぎると梱包も変えなくてはいけなかったり。管理部門からは「いつ売上が上がるんですか」と聞かれても答えられず、お客様からは「日程がどんどん後ろ倒しになっていくけど、どうなるのか」と言われ……。営業からは「逆にお客様からむこうの国に掛け合ってもらおう」と提案があり、いろいろと手探りで対応して、同じようなお客様を担当している違う部署の人に「こういうとき、どうしていましたか」とアシスタント同士で連携もしました。前例がないようなトラブルが毎年起こるので、営業が何かするというよりはアシスタントと一緒に工場を巻き込んで、解決策を探っていく。納期調整から工場対応まで生き物のように毎日数字が変わっていくので、それを追いかけて営業担当者に繋いでいくということをやっていました。
(半導体製造装置/東京エレクトロン提供)
 ──東京エレクトロンで働くやりがいは何ですか。
 阪井 社員は本当に東京エレクトロンが大好きな人が多くて、ここで働きたい、その人たちのために管理部門として何か役に立ちたいと感じられます。それがまた、社内をより良くしていこうという動きに繋がっていると感じます。

 ──働きやすさは感じますか。
 阪井 ルーティンが決まっていなくて、1日のスケジュールを自分で組み立てられます。何を重点的にやるべきか、自分のスケジュールによってここまでやろうとか自分で構築できるので、すごく働きやすいです。

■大久保さんの就活
 ──大久保さんは中途採用とのことですが、新卒のときは何年入社ですか。
 大久保 2010年です。リーマン・ショックのあおりを受けて、だいぶ厳しい時期でした。東京エレクトロンが3社目です。

 ──1社目はどういう会社でしたか。
 大久保 最初は保険会社で、保険の審査業務や総務人事をしていました。2014年からは人事系のアウトソースを受ける会社で、オペレーションやコンサルをしていました。保険会社で労務関係、給与関係のベース部分を担当していたことを生かして、2社目でも会社の制度や運用に携わりました。

ビジネスの規模の大きさ魅力

 ──東京エレクトロンを転職先に選んだきっかけは。
 大久保 アウトソーシングの会社はクライアントが幅広く、半導体関連の会社ともつきあいがありました。ちょうど2016年の頃に車の自動運転、IoTという言葉が出てきて、私も事業会社に戻りたいという気持ちがあり、半導体業界なら間違いなく伸びていくと感じられました。その中でも国内の半導体メーカーというとデバイスメーカーはかなり限定されますし、製造装置メーカーに目を向けたときに東京エレクトロンは非常に良いポジションにいる会社でした。私はもともと宮城の出身で、東京エレクトロンの開発・製造拠点である宮城で採用されています。一般的な面接ではバックグラウンドを深掘りすると思いますが、私のときは2回の面接ともすごくフランクな雰囲気で、ほぼ雑談で終わったので、落ちたと思っていたら「合格です」と言われました。

 ──宮城だと東京エレクトロンは身近な存在でしたか。
 大久保 「東京エレクトロンホール」という当社の名前がついた施設があるなど、以前から聞いたことがあったんですが、転職を考えるまでは何の会社か分からないというのが正直なところでした。

──働く上でのやりがいは。
 大久保 ビジネスの規模がすごく大きいこと、世界で誰もやったことがないことをやっているところです。私たちの取り組みや成果が世の中に反映され、デバイスや電子機器に搭載されると生活が豊かになる。そういったところに思いを馳せると、やりがいに繋がります。

 ──日頃、働いていて働きやすさは感じますか。
 大久保 非常に働きやすいですね。社員の人柄がいいですし、ガチガチに管理されることがなく自分の判断でいろいろな計画を立てられたり、時間の使い方を考えられたりするので、ありがたいです。
 部署によって違うかもしれませんが、休みもかなり取りやすいです。育休の制度も整い、私も3年前に3週間ほど取得しました。上司から「育休を取ったら?」と声をかけてくれ、周囲もサポートしてくれました。期間は個人差がありますが、エンジニアたちも取っています。

(インタビュー写真・山本友来)

みなさんに一言!

 大久保 これから就職活動を開始するみなさん、ぜひ自分が興味を持った業界や企業について、しっかり時間を取って調べてみてください。また関連する報道などに目を向け、新聞やインターネットの記事なども見てみるといいと思います。学業との両立で大変かと思いますが、頑張ってください。

 阪井 東京エレクトロンはまだ多くの方には知られていない企業かもしれませんが、好奇心を持って楽しむ開発者がいたり、会社の中を良くしようという社員がいたり、本当にいろんな人が働いています。私もそんな人たちに魅力を感じて、この会社に入りました。ぜひ、そういった人たちの魅力をみなさんにも知ってもらえたら嬉しいです。

東京エレクトロン株式会社

【半導体製造装置】

革新的な半導体製造装置のリーディングカンパニーである東京エレクトロンは、世界の半導体デバイスメーカーに優れたプロセス性能と量産性能をもつ数々の製品を、確かな技術サービスとともに提供しています。日本、アメリカ、ヨーロッパ、アジア、各地域に広がるグローバル拠点をベースに、東京エレクトロンは世界中のお客さまの生産ラインに日夜貢献し、たゆまぬ技術革新を通じて、デジタルネットワーク時代の未来を切り拓いていきます。